提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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第三十九話

北上が電の下へ駆けだす。しかし、神通が腕を伸ばしてそれを遮る。

 

「神通!どいて!!電…電が!!」

「北上さん。勝負はまだついていません」

 

「見りゃわかんじゃん!電が…!嫌だ……電ぁ…」

「いいえ、電さんはまだ生きています。そして…この勝負は…」

 

電の頭が動いた。苦しそうに息を切らしているものの、蒼い眼で響を見つめていた。

 

「なんで…なんでなのですか…」

「………レ…」

 

響が俯きながら何かを言っている。声が小さく、北上や神通達には聞こえないが…。

 

「オノレェ…邪魔ヲ…シオッテェ…」

「はぁ…はぁ…響…ちゃん…!」

 

「な、なに…?電、何があったの…?」

「……電さんの砲撃は直撃しました。敵の艤装が吹き飛んでいるのがその証拠です。ですが、敵の砲撃は…電さんとはおおよそ見当違いのところに撃った…ように見えました」

 

「え…なんで…」

「わかりません。完全に途中までは殺す気でいたようですが…」

 

神通が言うには深海響はわざと攻撃を外した、と言うよりは何かの強い意志で電への攻撃を逸らした、と言うべきか。

 

「ググ…グググ…最後ノ最後…デ…グアアアアア!!!!!」

 

獣の咆哮のようなものをあげるとドサリとそのまま倒れてしまった。反対に電はよろよろと立ち上がる。電が立ち上がり、深海響が倒れた。それはつまり…。

 

「…電さんの勝ち…ですね。もう深海棲艦は立ち上がれないでしょう。そして、電さんが立っていますので…」

 

その言葉を神通から聞いた北上は、ヘナヘナとへたり込んだ。電が勝った。それだけで、緊張の糸が切れてしまった。瑞鶴や摩耶達もふう…と息を吐いた。

 

「提督。こちら翔鶴です。第一、第二艦隊。全員無事に深海棲艦の襲撃部隊を殲滅しました。電さんも無事です」

『……そうか。わかった。警戒を厳とし、気を付けて帰って来てくれ』

 

玲司の言葉もどこか張りつめていた物が解けたような。そんな安堵した声だった。

 

「さあ、瑞鶴。皆さん、帰投準備をしましょう…電さん…?」

 

よろよろと深海響に歩み寄る電。摩耶が近寄るなと言う制止の声をあげるも聞こえていない。北上が摩耶を止める。

 

「…ちょっと待って。見届けよう。響はもう…戦えないみたいだしさ…」

「い、いや、けどよ。何するかわかんねえぞ」

 

「心配ない。あれはもう深海棲艦の響じゃないと思う」

 

……

 

「ひび、き…ちゃん…ひびきちゃん…」

「う、かはっ……ふふ…ようやく、隙…みつけて、表に出た…よ。私の妹は…死なせ、ないさ」

 

「響ちゃん…響ちゃん!!」

 

ボロボロの体。疲れと痛みで意識を失いそうになりながらもよろよろと響に歩み寄りそして…響の上半身を抱えた。

 

「ああ…暖かいな…。この、冷たく凍ったような体が…暖かい…。懐かしい…な。この温もり…。いつも、電に抱き着かれていた…からね…」

 

泣きながら抱き抱えている電の頬に手をそっと当てる。人の温もり。響の心にあった怒りや憎しみが消えていく。世界は青い海のような世界ではなく、色のついた世界。電の肌も。沈みゆく夕陽もすべてが久しくみた色のある世界だった。

 

「ああ、まぶしいな…夕陽が。夕陽がこんなにも眩しいと思える日が…来るなんてね…電…。きれい…きれいな眼…だね…宝石のようだ…」

「……響ちゃん…ごめん…なさい…痛かったですよね…」

 

「謝る必要はない…。私は深海棲艦で電は艦娘。敵対し、殺し合わなければならなかった…。私は電に艦娘のままでいてほしかった。私のように…なってほしくなかった。だから…最後にアイツの邪魔をしてやった…。電を…殺さなくてよかった…」

 

「電は…電は響ちゃんを撃ってしまったのです!電のことを憎んで怒るべきなのです!!!」

「私はそんなことはしないよ。私のかわいい妹を…殺さなくてよかった。殺されるべきは、深海棲艦の私だ」

 

自虐的に笑う響。倒すべきは深海棲艦で。守るべきは艦娘で。意識を乗っ取られながらも心の奥底で意識を匿い、怒りと憎しみ。電にとどめを刺すことに目が眩み、心に隙を生んだからこそ、響はその一瞬の隙をついて心を取り返し、電への砲撃を明後日の方向へと撃たせた。

自分には電の攻撃が直撃。残された左腕の砲は吹き飛び、深海棲艦としての機能を果たさなくなった。致命傷である。だが、これでいい…。滅びるべきは自分である。そう響は覚悟のうえで攻撃を食らい、電への攻撃は外した。

 

「電だって…響ちゃんを撃ちたくなかったのです…こんな形で…響ちゃんとお話…したくなかったのです!!!」

「すまない…私が深海棲艦になったばかりに…私の心が弱かったばかりに…電に…こんな、こと…カハッ!」

 

青くどす黒い血を吐き出す。痛みが体中からなくなる。それは…響に終わりが近づいていると言うこと。もっと…電の顔を見ていたい…。けれど…目が霞み始め…よく見えなくなりつつある。

 

「響ちゃん!!!」

「電…もう電の顔が…よく見えない…。最期によく顔を見せてくれ…」

 

「いや…いやなのです!響ちゃん…そうだ…今から鎮守府に帰って修理をすれば…!!」

 

「それは駄目だ…私はもう電の知る響じゃない。何をするか…わからない」

「いやなのです!いやなのです!!!!響ちゃんにこうして会えて…ちゃんとお話もできているのです!!!ここでお別れなんて…お別れなんて絶対にいやなのです!!!!!」

 

「ははは…困った…子だよ…。電」

「響ちゃんとお別れするならいくらでも困らせるのです!!お願い…いなくならないで…いなくなっちゃ…いやなのです…」

 

響を強く抱きしめる。普通なら痛いくらいの抱きしめ方だが、響にはもうその痛覚はない。しかし…電の温もりだけは伝わっている。それだけは、なぜか。

 

「……嫌だ……。私だって…嫌だ…。もう、一人ぼっちは嫌だ…。暁も…雷もいない。暗い暗い海の底のような世界で一人…。寂しい…電に…やっと会えたのに…嫌だ。電…私を離さないでくれ…」

 

電の服を握る手の力が少し強まる。やっと再会できたのに。やっとこうして話ができるようになったのに…。また、また一人ぼっちになってしまう。最愛の妹と…離れたくない。

 

「ひびきちゃん…いやです…いなづまをひとりにしないで…なのです」

「いなづま…わたしもだ。私も一人にしないで…。最期は電の温もりを感じながら…眠りたい。電…一人にして…ごめん」

 

号泣する電とは対照的に冷静な響。相変わらず泣き虫だなぁ…と目を閉じて思った。ああ、体が軽い。北上達は見た。響の体から黒い煙のようなものが出ては消えていくのを。

 

「電…帰りたい…。帰りたい…。電と一緒に。帰りたい…なぁ…」

「響ちゃん…。電も…響ちゃんと帰りたいのです…。今、鎮守府はとっても楽しいのです。雪風ちゃんや…時雨ちゃんたちも元気になったのです!だから…だから…、電を置いていかないで…」

 

電が響を死なせないと言っても、響の体は無情にも沈んでいく。撃沈をされてしまっているのだから、当然のことではあるが…。

 

「ひび、きちゃ!?いや!いやなのですぅ!!!響ちゃん!!!響ちゃん!!!!!」

「電…。私は…沈むべきなんだ…。もう…電の温もりは十分もらった。手を…離してくれ。私は…深海棲艦…。海の底へ…還る…」

 

「いやああああ!!!響ちゃん!一人にしないでなのです!!!」

「電はもう一人じゃないだろう…。友達がいて…仲間がいる。だから…大丈夫だよ…」

 

「違うのです!違うのです!暁ちゃんも、雷ちゃんも…そして響ちゃんも…。第六駆逐隊は誰もいない…のです!お友達はいても!お姉ちゃんがいないのです!!!お願いなのです…響ちゃん…!そばにいてほしいのです…そばに…いて…」

 

電の目から零れ落ちた涙が響の頬を濡らす。体が半部に以上海に沈んでいる。このまま手を離せばすぐに響は海の底へ落ちていくだろう。電が頑として離そうとはしないが。

電が流した涙は蒼い眼と同じように蒼く輝き、響にかかる。

電は気づいていない。響の体がうっすらと光っていることを…。

 

……

 

「電…。そうだよね。響にずっとべったりだったし…」

 

「ああ…。響が沈んじまったあとも…ずっと響の名前を呼んで泣いてたからな…」

 

電の悲痛な叫びは北上や摩耶にも聞こえていた。電は響の後ろをずっとついて回り、何かがあれば響に抱き着いて甘えるだけの存在だった。響に甘えることで自我を保ち、辛いことから逃げていた。摩耶達と居た時も、何かと響の名を呼び、摩耶は自分では何も解決できないのかと落ち込んだこともあるくらいだ。

 

だからこそ、電が響を沈めないために必死に呼び止めている気持ちは痛いほどわかる。北上は大井を。摩耶は愛宕を失っている。姉妹を失い、沈む際も何が何でも繋ぎとめたかった。沈めたくなかった。奇跡がもし起こせるのなら。帰ってきてほしい。側にいてほしい…。

 

「何とかしてあげたいけど…私たちにはそれは…」

「翔鶴姉…」

 

電を見守る皆がうなだれる。誰にも響を救うことは…できないのだろうか?

 

……

 

「いつまで泣いているつもりだ!泣いてばかりで役に立たん!!解体するぞ!」

「司令官、それは聞き捨てならないな。私が代わりに働く。それでいいだろう」

 

「儂に意見するな駆逐艦風情が!!!貴様が!働くのは!当たり前だ!!!」

 

パシーンと乾いた音が執務室に響く。自分の頬がぶたれた音。強くぶたれたから、頬がジンジンと痛む。感情のない目で司令官を睨むかのように見つめる。その態度はひどく彼を苛立たせる。小汚い脂ぎった顔が怒り狂っている。汚い顔がさらに汚い顔になったな、と響は思った。思わず吹き出しそうだ。

 

「ちっ…どいつもこいつも儂を馬鹿にしやがって!!もういい!とっとと失せろ!そいつの泣き声がやかましくて敵わん!!」

「そうかい。じゃあ休ませてもらうよ。行こう、電」

 

「ああ!イライラする!」

 

と閉じたドア越しに司令官の声を聞いた。イライラするのはこちらのほうだ。暁も雷も沈め、電まで無茶させて…。好き放題罵ってくれて…憎い…。あいつが憎い…憎い憎いにくいにくいにくいニクイニクイニクイニクイ……。

 

「ひびききちゃ……」

 

電の弱々しく呼ぶ声にハッと我に返る…。今の…感情は…まずいな。いつもの顔のフリをする。

 

「どうしたんだい、電」

「ありがとう…なのです。でも、響ちゃんが…痛かった…ですよね?」

 

「何、あれくらいで済んだのなら安いものさ。さあ、今日は休もう。一緒に寝よう」

「はいなのです…側にいてほしいのです…」

 

そうだ。怒ったって仕方ない。電を守らなきゃ。今の私には電が全てなんだ。だから、守るんだ。私がどうなってでも。

悲しい決意だった。それでは何も解決はしない…。しかし、それしか思いつかなかった響は少しずつ、電の為に壊れていく。電に固執し、司令官と衝突し殴られる回数も増えた。そのたびに心の奥底に憎しみを溜めていった。これこそが、響を恐ろしい深海棲艦に変える要因になった要因の一つ。

 

「響、あんた大丈夫?様子がおかしいけど」

 

ある日北上に声をかけられた。電が泣いていないか心配だから早く部屋に戻りたかった。

 

「何だい、北上さん。私は忙しいんだ」

「あんた、電のためにいろいろ揉めてるみたいだけどやめたほうがいいよ。それがかえって電を苦しめてるってわかんない?」

 

…こいつに私と電の何がわかるって言うんだ。姉妹でもないくせに、知ったような口を聞くな。うるさいな…ウルサイナウルサイナウルサイナウルサイナウルサイナ。

 

「ひ、響!!」

 

北上が自分を呼ぶ声でハッとなる。何だろう、手が痛い。見ると両手が血まみれだ。強く強く握りしめてしまっていたのか?目の前が青く染まって…何もかもがうるさくて、忌々しい…私、は?

 

「すまない、北上さん。体調が優れない。部屋に戻って休むよ」

「響…あんた…」

 

汚いドックの汚い水に手を入れ、傷を治す。その後水道で手を洗い、血を流して顔を洗う。くすんだ鏡で自分の顔を見る。やつれてくぼんだ目。ひどい顔だな、と笑いたくなった。私はどこかおかしくなってきているようだ。でなければあんなことにはならない。まだだ、まだ私はやれる。電を守らなきゃ…。

 

その思いにいつしか囚われ、守るべき物も忘れ、司令官に、電を守ろうとしない仲間に苛立ちを覚え。そうして…冷静さを欠いた私は…。

 

「響ちゃああああああああん!!!!」

 

沈みゆく私は電の悲鳴を聞いた。守らなきゃいけない、のに。私が側にいなきゃ…泣いてばかりいるのに。私はついに電を守れなかった。手を電に伸ばしたところで何も見えなくなった。

 

ふと目を覚ますと私は再び海の上にいた。周囲は誰もいない。私は助かったのか?私は愛しい妹の名を呼ぶ。

 

「イナ…ヅマ…」

 

自分の耳におぞましい声が聞こえる。敵…か?いや…まさか…。

 

「イナヅマ…イナヅマ」

 

水面に映る私の姿。青白い肌。青い眼。そしてこのおぞましい声。ああ、私は…なってしまったのか…。深海棲艦に…。意識がはっきりしているのが驚きであるが、私はそれよりも、もう二度と電を抱きしめてあげたりすることができなくなったこと。敵になってしまったことに絶望した。

 

それと同時に胸にこみあげる、憎しみ。うっすらとしか思い出せないが、とても忌々しい存在がいたことを思い出した。私をこんな風にした奴が憎い。殺せ。殺せ。コロサナキャ。コワサナキャ。アア、デモ会イタイ。

 

(ジャア会イニイコウヨ。私ガ探シテアゲル)

(本当かい?電にまた、会える?)

(モチロンサ。ダカラ私ニ任セテ今ハユックリオヤスミ)

(ああ、そうか…私はもう疲れた…)

 

それこそが失敗だった。気がついたら身も心も乗っ取られた。私自身の深海棲艦となった闇に。電を探す名目で艦娘を傷つけた。こんなことしたくなかったのに。そして私はやっと再会できた電にまで傷つけてしまうほど乗っ取られた。だけど、もうお前なんかの好きにはさせない。電は私が守るんだ!ここから出ていけ!!

 

そうして私は最期の最期で…電に抱きしめられ…役目を…終える。もう電は私がいなくても大丈夫。北上さんや、素敵な仲間がいるんだ。君を守ると言いながら…結局それを言い訳に憎しみを集め、深海棲艦なんかになってしまった私よりも…みんなの方が…。

 

私はまた、ひとりぼっち…か。ひとりぼっちでまた沈む。寂しいなぁ…いつまでも私は…ひとりぼっち、だ…。電…寂しいよ。ひとりはさみしい…。

きれいな蒼い眼。泣いているのかい?泣かないで…私が側にいるから。ずっとずっと。側にいるから…。最期くらい…電の笑顔が…見たい、な…。

 

目を閉じる。目を閉じてもうっすらと蒼い光が見える。そんな、はずは。視力はもうほぼないのに…。体が熱い…。なぜ?目を開く。電は私の胸に顔うずめ、泣いている。私の胸が強烈に蒼く輝いている。まぶしい。私の体が光っている。体に感覚が戻ってくる。手が動く。鈍いけど動く。私の手は…肌色?

 

「いな、づま…」

「響ちゃん…電は…響ちゃんを助けたいのです…!響ちゃんを助けて!」

 

ものすごい光が響を包む。離れたところで見ていた摩耶達でさえ目がくらむほどの眩しさだった。北上が光の下へ走り出す。直視しないように。近づくにつれ、暖かさを帯びる光。何が起きているかわからず、北上は電と響の名を呼ぶ。

 

「電!響!」

 

光が消えると同時に、北上が電の肩を抱く。顔を覗き込めば、先ほどの蒼い眼ではなく、いつもの茶色の瞳だった。響も訳が分からないかのように北上を見た。その目は深海棲艦の青い眼ではなく、先ほどの電と同じ蒼く光る眼で。そして光を失うとかつての響の薄く青い眼だ。ややこしいが、深海棲艦の眼ではない。

肌は自分たちと同じ肌色で。沈みかかっていた体は海に浮かんでいる。

 

「響…あんた、響…?」

 

光が収まると私の心は嘘のように黒い物はなくなり、憎しみや怒りなんて感情はなく。心の中でもがいていたアイツの気配もない。視界も。聴覚も。すべてが澄んでいて。風の感触も。海の匂いもわかる。私は…。

 

「響ちゃん…?」

 

電が顔を覗き込む。私は…生きているのか。私はもう幽霊か何かで本当は生きていないんじゃないかと思うが…。電の頭を撫でながら、ちょっとおどけてみようかと思った。

 

「響だよ。その活躍から不死鳥と呼ばれたこともあるよ。不死鳥は…帰ってきたよ…電」

「ひびき、ちゃ…響ちゃん!響ちゃん!響ちゃん!響ちゃん!」

 

「い、痛いよ電…優しくしてくれ…」

 

電に強く抱きしめられ、痛い。けど、その痛みでさえ今は嬉しかった。私は帰れるんだ。電と一緒に。もうひとりぼっちじゃ…ないんだ。ああ、嬉しいな…。

 

 

「提督。駆逐艦響さんを『ドロップ』として確認しました。鎮守府に連れ帰ってもよろしいでしょうか?」

 

翔鶴が玲司にそう確認をする。その響が何であるか、玲司にはすぐわかるだろうが、あえてそう言った。よその泊地や鎮守府の者が傍受したとしても。これなら響がどういった存在であるかわからない。

 

『こちら執務室。了解した。許可する。じゃあ、13人で気をつけて帰ってきな。待ってるからさ』

「了解いたしました。間もなく帰投準備に入ります。以上です」

 

翔鶴が笑みを浮かべていた。翔鶴も電に近寄る。雪風もついてきていた。

 

「電さん。作戦は完了しました。帰りましょう。提督にはすべて伝えてあります。響さんを『ドロップ』したとも。響さん、ようこそ横須賀鎮守府へ…なんて」

「翔鶴さん…ああ、СПАСИБО」

 

「電ちゃん、帰りましょう!響ちゃんと一緒に!」

「はい…はい…!」

 

雪風の手を借りてよろよろと立ち上がる電。グスグスと泣きながら。響は翔鶴に抱えられている。

 

「これは…少し恥ずかしいな…」

 

帽子を深くかぶり、恥ずかしさを隠す。翔鶴のクスクスと言う笑い声が聞こえた気がする。昔の重苦しい雰囲気は何一つない。

 

「おっし!帰ろうぜ!あたしお腹減った!提督のおにぎりが食べたい!」

「夕立もペコペコっぽーい!。早く帰るっぽい!」

 

「大和さん、お疲れさまでした。帰りましょう、私たちのお家へ」

「扶桑さん…ぐすっ、はいっ!」

 

「瑞鶴さん、立てますか?」

「名取…うん。ありがと…」

 

「みんな!お疲れさま!これより横須賀鎮守府へ帰投致します!動ける方は警戒を厳としてください!帰りましょう、私たちのお家へ!」

 

そう言うと皆全員で頷いた。帽子で隠した響はこんな自分にも帰ろうと言う言葉。そして、家と言う言葉に感極まって翔鶴に抱かれながら泣いた。その涙はとても、温かかった。

 

私はもう。ひとりぼっちじゃないんだ。

 




電vs響。決着は電の勝利で終えました。やっぱり、響も連れて帰りたい。そう思って書きました。終わりはやっぱり、幸せな結末がいいですね。

響の思い。電の奇跡。そして負け続きの終わり。
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