提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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またしても一癖ありそうな艦娘が登場します。うちの大淀さんは激チョロですね…w

今回まではオムライスばかりですが、少しずつレパートリーは増えます。オムライスしか作れないわけじゃないんです。ちゃんと別のおいしいのも作れます。食材がオムライスに偏ってるだけで…


第四話

安久野 楠男(あくの くすお) 身長162cm

玲司が着任する前の横須賀鎮守府提督。己の欲求を満たすためならばどんなことでもやる。年齢49歳。容姿に関しては非常に醜く肥満体系。背が小さいことも相まって人呼んでヒキガエル(写真で見た玲司曰く、ヒキガエルを車で3回くらい潰したみたいな顔)。階級は大佐。自己中心的であり、全ては自分が中心でないと気が済まず、気に入らないことにはすぐに激怒して怒鳴り散らし、相手が折れるまで怒鳴り続ける。不潔でもあり、無理やり艦娘に手を出すまでは付き合っていた女もいない(付き合ってもこの性格のため、すぐに捨てられる)

 

妖精さんが見えると言う理由から提督になりはしたものの、もともと国を守る気などさらさらなく、ただ自分の言いなりで動く艦娘を好き放題できてしまったがため、暴虐の限りを繰り返し、金を使って憲兵、整備士まで買収。最後は管理が甘かったために艦娘に大本営にまで逃げられ、本性をばらされて逮捕。おそらく死ぬまで檻の外へは出られないであろう刑期を今後言い渡される予定だが、自分は悪くない。艦娘が誘ってきた。殴れと言ってきたなど反省は微塵もしていない屑の中の屑な人間である

 

 

………

 

 

/大淀の視点

 

 

(なんでこんな簡単な仕事もこなせんのだ!!)

 

(負けて帰って来てドックに入れさせろだと?何様のつもりだ!恥晒しはそのまま出撃だ!勝つまで帰ってくるな!!)

 

(誰が沈んでいいと言った!勝って帰って来いと言ったのに役立たずめ。代わりなどいくらでもいる。なあ、夕立?)

 

(役立たずにも優しい提督様だからな。食事を与えてやる。感謝するんだな)

 

(黙って儂にやられろ。儂に逆らえば誰かを解体だぞ?ん?)

 

 

お風呂に入る直前になぜか安久野提督の怒鳴り声が何度も何度も頭の中でよみがえる。もう、怯える必要も遠慮をすることもないのに。あの人の影響はとても大きな重圧であり苦痛でした

 

 

…瑞鶴さんの手を借りてドックに入る。あの下水道じゃないかと思っていたドックが見違えるほどきれいになっていました。汚いカビも、臭くて不衛生な生ぬるい湯船の水も。うそのように白い壁、透き通ったきれいなお湯。お湯は温かく、肩までじっくり浸かれるほど張られていた。はああ…と息を吐きながら湯船に浸かります。それだけでズシリと重たかった体の疲れがお湯に流れ出ていくような感覚。とても…気持ちいい。

 

深海棲艦にやられ、折れて変な方向へ曲がってしまった足。安久野提督には資材の無駄とほったらかしにされてしまい、歩きにくいし痛いし…。その足の痛みはすっかり取れ、自由に動かせる。高速修復材と書かれた緑のバケツがドックの隅に置かれていました

 

 

「バケツまで使っちゃって…大淀さん、どーお?湯加減とか」

 

「はい、とても気持ちいいです。お風呂ってこんなに気持ちのいいものだったんですね…足もすぐに治りました。本当に…三条提督には感謝しなくてはいけませんね…」

 

 

「ただの変態かと思ったけど…少しはいい提督なのかもね。でも、私はまだ信じちゃいないわよ…人間のせいで、翔鶴姉ぇは…」

 

「瑞鶴さん…」

 

 

彼女の姉、翔鶴さん。翔鶴さんもまた、安久野提督や多くのここにいた人間に酷い目に遭わされ、心を病んでしまった人…。瑞鶴さんの献身的なお世話のおかげでなんとかお外を歩けるようにまでなりましたが、古井司令長官が来られた時、偶然鉢合わせてしまい発狂。人間の男性に拒否反応を持ってしまっています。

 

 

どうにか三条提督を信用してもらうことはできないでしょうか…。優しくて…素敵な…はっ、いけない、何を考えているのでしょう。私が三条提督をそのように思うなんておこがましい!

「コホン。いずれは、打ち解けてくれるといいなと思います。三条提督は悪い人ではないと思うので…」

 

「まあ、摩耶たちみたいに強烈に拒否するのもあれだから様子を見ることにするわ。あれはもうおかしいくらいだもの」

 

 

「しかたがないと思います。私たちはそれだけのことをされてきたのです。被害者ぶって大きいことは言えませんが、それでもひどすぎました」

 

「ふう…だよね…。大淀さんの体も、お風呂に入っても消えない傷だらけ。私たち、艦娘だけど女の子よ?それをあの男!」

 

「私はまだマシです。時雨ちゃんや村雨ちゃんは…もう再起不能のように…」

 

 

大破した彼女たち。それでも、安久野提督は資材の無駄とドックにいれさせることはなく、ついには足が腐り、目もつぶれたまま…あまりのひどさに何度陳情したことか。逆らったとして殴られ、営倉で何度も…思い出したくもない。提督は彼女たちをどうするおつもりなのでしょう…不安しかありません

 

 

「ぽい!時雨気を付けるっぽい。もうすぐお風呂だからね!」

 

「村雨さん、しっかりしてください。もうすぐ治りますよ!」

 

 

ドックにやってきたのは4人の小さな影。噂をすれば何とやら。ボロボロの時雨ちゃんと村雨ちゃん。それを支える夕立ちゃんと雪風ちゃんだ。

 

 

「ふ、二人とも…出てこれたの!?よかった…、さあ、こっち。いい?まず時雨ちゃんからいくよ。ゆっくり。うん、次村雨ちゃんね」

 

 

ゆっくりと湯船に入れられる二人。体は傷だらけだったが、高速修復材のおかげで消えていく。それでも体は大きな傷だらけだ。私よりひどい。時雨ちゃんは右肩甲骨あたりからおしりの左部分までのひどい傷跡。村雨ちゃんに至っては顔に大きな傷痕が残ってしまっている。かわいい顔に大きな傷が…ああ、ひどい。

 

 

「時雨、村雨…どう…?大丈夫っぽい?」

 

「ああ…生き返るって…このことを言うんだね…」

 

「あったかいなぁ…私、まだ生きてるんだね…私…生きてるよ…!」

 

 

「ぽい~…二人とも…よかった…よかったよぉ…!えぐっ、ひぐっ…」

 

「夕立には…私たちのせいでひどいことをさせちゃったよね…ごめんね…ごべん…ね!」

 

「ゆう、だち…。泣かない、でよ…僕も…泣いちゃう…じゃない、か…ううっ」

 

 

どれほど三人は泣いていたでしょう…。三人が抱き合い、大粒の涙を流してわんわん泣いていました…。私には姉妹がいないのでわかりませんが、その辛さ、苦しさをわかち合う絆と言うものがとてもまぶしく思えました。思わず、私も泣いてしまいました

 

 

生きていてよかった。この言葉の重さは筆舌に尽くしがたいものです

 

 

「それにしても、新しい提督はすごい人だよね!村雨の目、もう見えなかったって言うか完全に潰れてたのに!」

 

「僕の足もだよ。わからない。どうして、誰が見ても修復不可能なこれを治せたのか…」

 

「提督さんはすごい人っぽい!夕立は一生ついていくっぽい!」

 

 

「はあ!?村雨ちゃんの目ってもう…え?時雨ちゃんの足も黒く腐って…ええ!?ドックに入れてももう治せないんじゃなかったの!?」

 

「ええ…ですが、確かに村雨ちゃんの左目は元通りに…時雨ちゃんの足も…」

 

 

「僕にも何がなんだか…僕の足や村雨の目やお腹に、提督が血をたらしたんだ。そしたら、すぐに治って…」

 

「ぽい~。提督さんはすごいっぽい~。よくわからないけどすごいっぽーい!」

 

 

「でも、この顔の傷はやっぱり痕になっちゃったなぁ。あーあ…女の子の顔が…これじゃきっと新しい提督も気持ち悪がるよね…」

 

「まだ、わかりません。あのお方は優しいお人だから…きっと、気にされないと思います!」

 

「あっれー?大淀さんすごい提督の肩持つんだね。もしかしてぇ、惚れちゃった?はいはーい!村雨も提督にアピールしちゃいまーす!」

 

 

「え、ええ!?い、いけませんそんな!」

 

「村雨、やめなよ…まだわからないよ…」

 

「ぽーい!夕立も提督さんについていくっぽーい!」

 

 

「ダメだって!あんな変態!怖い目にあわされるだけだって!」

 

「む!瑞鶴さん!提督のことを変態変態って!」

 

 

何だかよくわからない小競り合いが発生してしまいました。夕立ちゃんは髪もべちゃべちゃのまま「提督さんに会ってくるっぽい!」と浴衣だけ着て飛んで行ってしまいました。浴衣にはんてん…11月も半ばとなれば横須賀と言えど冷えます。私たち艦娘にはあまり寒さは気にはなりませんが、その気遣いがとても嬉しかったです。とてもさっぱりしました。髪を洗えば泡は真っ黒…体を洗っても泡は真っ黒。瑞鶴さんもさんざん文句を言っていましたが、汚れが落ちてさっぱりしたのか上機嫌で翔鶴さんをお風呂に入れようと自分のお部屋へ戻っていきました。ああ、提督…私は…私はもう…貴方が来てくださって…まだお会いして一日も経っていませんが…はう…

 

 

/食堂

 

 

布団を業者に手配しておいたのが届いたのでとりあえず雪風と間宮と協力して各寮の談話室に置いておいた。玲司が部屋一つ一つに届けるわけにもいかなかったので、雪風に連絡は任せてある。それはさておき、夕飯も食材がオムライスの材料しかないので夕飯も仕方なくオムライスである。間宮は目を輝かせて構わないと言ったので、苦笑しながら準備に取り掛かっていく。間宮もほう、と息を吐くほど見事な包丁さばきでタマネギをみじん切りにしていく。ちょっと大きいほうがうまいんだよ、と解説までつく余裕ぶりだ

 

 

「ほうほう、これはおいしそうだねぇ。あたしの分もよろしく頼むよ、新提督」

 

 

いつの間にか誰かがのぞき込んでいた。気だるそうな雰囲気の目。黒い髪、ちょっとめんどくさそうに束ねたおさげ

 

 

「北上か。腹が減ったのか?」

 

「やっほー。まあね。お昼にあーんなおいしそうなにおいさせちゃってたら、来るしかないっしょー」

 

「あー、わりい。その辺の考慮が足りなかったな」

 

 

「んやー、いいよいいよ。おいしいご飯ってやつが食べれるならおーるおっけー」

 

 

この何ともやる気のないような雰囲気とつかみどころのない性格。これが北上だ。玲司はよく知っている。一度火がつけば、すさまじい戦果をもたらす、巡洋艦最強の魚雷性能を持つ重雷装巡洋艦。機嫌を損ねればてこでも動かないなまけものになる。多くの提督は彼女の扱いに難儀するだろう

 

 

「そうかい。んじゃ米が炊けないと何もできねえから、そこで待ってな」

 

「ほーい。いやぁ、楽しみだねぇ♪」

 

 

下ごしらえが終わり、間宮が窯で炊いている米が炊けるのを待つ。しばらくすると元気よく玲司に飛びつく少女がやってきた

 

 

「提督さーーーーーん!!!」

 

 

ぼふっ

 

 

「おおっとっと。おー、元気がいいこったなー夕立ー。なんだよ、髪乾かしてねえじゃんか。ちょっとそこ座んな」

 

「ぽいっ!」

 

 

どこから取り出したのかわからないが、ドライヤーを取り出して夕立の髪を乾かしていく。櫛でしっかり髪も梳いていく。その手つきはとても慣れており、バサバサだった夕立の髪はつやつやのサラサラになった

 

 

「おおーっ、髪がさらさらっぽい!提督さん、すごーい!」

 

「おう。俺は元美容師の息子だからな」

 

「えっ、コックさんだったのでは…」

 

 

そうこうしているうちに村雨や時雨、大淀もやってきた。瑞鶴と雪風は部屋に戻ってしまったという。雪風は眠いのだそうだ。布団で寝てみたいと言って帰ってしまった。

 

北上は目を疑った。重傷でベッドから満足に動けず、足が腐っていった時雨。左目が敵の砲弾で潰れ、そのままほったらかしにされたためにひどい見た目になっていた村雨。村雨の顔の傷が残ってしまったとは言え、なぜこの二人が元気になっている…?大淀の足も治っている。ドックが動き出したと言っていた。でもそれだけじゃない。夕立も大淀も。村雨も。目に生気が戻っている。僅か数時間で、ここまで…

 

 

「…そっか…ふうん、そっか…無事…元気に…」

 

 

ぼそっとつぶやいた北上はおもむろに立ち上がり、玲司をじろじろと見まわして言った

 

 

「おっけー、ごうかーく。重雷装巡洋艦北上。あたしは提督の味方になるよ。摩耶たちに提督を追い出そうって言われたけど、いいひとそうだしめんどくさいからパース。さ、提督。あたしにもおいしそうな料理を出すべきだよ」

 

「なんだそりゃ。ふふん、俺のオムライスを食って腰抜かすなよ?よーし、時雨と村雨も食ってくだろ。ちょっと待ってな」

 

 

「おむらいすー!提督さんのおむらいすは最高っぽい!」

 

「あー、うるさい。あーくちくうざーい」

 

「北上さん、おさえてください」

 

 

そういいながらも北上は笑っていた。これでつまらない毎日からおさらばできる。きっと、これから絶対おもしろい毎日が始まるぞ、と期待していた。

 

 

オムライスを食べた時雨、村雨は号泣、北上はひたすらにうまいうまいと言いながら食べていた、なぜか夕立と大淀もまた食べて泣いていた

 

 

/玲司の寝室

 

 

とにかく前の提督の悪趣味なインテリアを寝る前に処分していた。特に意味不明だったのはバカでかい額縁に入れられた特大の写真だ。たぶん、自画自賛と艦娘を連れて来ては崇めよとでも言っていたのだろう。朝起きて、このヒキガエルを車で3回くらい轢いたような顔を見た日には一日のやる気もそがれてしまうだろう。とてもじゃないが無理だ。なので燃えるゴミの分別カゴに折りたたんで捨てた。額縁もそれなりにいいやつなので、リサイクルに出せばいい収入になるのではないだろうか。明日は誰かとこのバカげたインテリアを捨てに行こう。そう考えてながら寝室に戻ると、布団の上で三つ指をついて座っている大淀がいた

 

 

「大淀、何の真似だ」

 

「提督がゆっくりお休みになれるよう…その…夜伽を…これは、その…お昼に優しくしていただいたお礼と申しますか…」

 

 

ため息がでる。もっと別の方法があるだろうに…。いや、彼女たちは知らないのだ。これこそが当たり前なのだ。だからこそ平気で夜伽などと言う言葉が出る

 

 

「大淀、部屋に帰って寝な。俺は夜伽なんて頼んでないぞ」

 

「し、しかし、それでは提督にご恩が!」

 

 

「俺は別に恩返しなんていらないぞ。それがほしくて飯作ったり、風呂掃除したわけじゃねえんだから。だいたい、そんな強要してやるようなもんでもないだろ?そんなもん一人でやってるのと変わらねえ。えっちってのはお互いが気持ちよくなってこそだ。どっちかが嫌々やってるならそれはもう自慰だぜ。わかったらほら、帰った帰った」

 

「…あ、あう…」

 

 

「まあ、一人が怖くて寝れないなら、隣に布団敷いてやっから寝ろ。いいな?」

 

 

隣で寝てもいい、の言葉にぴょん!と体が跳ねた。いそいそと大淀はどこかへ消えたかと思うと、布団と毛布と枕を慌てて持ってきて敷いた

 

 

「ふ、不束者ですがどうぞよろしくお願いします!」

 

「なんだそりゃ…。ほいじゃ電気消すぞ」

 

 

部屋は闇に包まれた。でも、大淀は恐怖を感じなかった。隣では男が寝てるというのに。自分を、仲間を助けてくれた提督がいる。それだけで何だか胸がドキドキしている

 

 

「てい…とく…」

 

 

早々に寝てしまったのか聞こえてくるのは規則正しい呼吸音。起こさないように…そっと玲司の手を握った。温かい…胸のドキドキが一層強くなってしまったが、布団の柔らかさと暖かさ。そして玲司の手からくる安心感に、まるで電気のスイッチを切るかのように大淀は眠りについてしまった

 

 

いつもなら、朝までまったく眠気がこずに仕方なく何日も起きているくらいなのに。大淀は生まれて初めて熟睡と言うものができた。そして、生まれて初めての寝坊を翌朝にやってしまうのだった




ようやく長い一日が終わりました。これからは新艦娘の登場は抑えて一人ずつ掘り下げて、トラウマや心の傷の解消を掘り下げていこうかなと思います。北上や雪風、間宮、時雨、村雨
失踪だけはしないように頑張ります

サンマ祭り…予約取れなかった…(´;ω;`)
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