提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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満潮と朝潮達の長い一日。人に裏切られ、捨てられ、妹を壊された朝潮。そしてそれに従う大潮。満潮との激突は回避されるのでしょうか

そして、もう一人。荒潮は一体…。

朝潮達の心を開くには…?満潮の視点から始まります。


第五十七話

霞があんなに安心して眠っている所は大本営でさえなかった。涎まで垂らして寝てるなんてね…。優しくしてもらえたのね。まあ、あの子がそんなに甘える性格じゃなかったんだけど。

もともときれいな眼をしていたけれど、今はもっと。ガラス玉のような眼。無邪気で。悪意も善意も何もかもがわからないほどになって。ここで、霰たちに優しくしてもらって…。忘れられないだろうけど、少しでも安心して笑っていられますように。

 

司令官やここの艦娘は変なことはしない。ご飯もいっぱい食べれるし、お昼寝もできる。きっと笑っていられるから。霞は…心配だけど、霰や大和さんが笑っていたし、妙高さんも気を許していたし、とりあえず大丈夫だと思う。

 

それよりも…問題はまだ山積み。さて、その問題の一つのところへ行ってみましょうか。

 

……

 

鎮守府、と言う日本の要とも言える場所だけに寮も大きい。私たちみたいに突然艦娘が収容されたとしても、それを簡単に受け入れてくれて部屋までちゃんと用意してくれる。この鎮守府は駆逐艦が多いけれど、それでもまだまだ寮の部屋は余りに余ってる。それにしても…駆逐艦が多いって…司令官って駆逐艦が…?何考えてんのよ、バカバカしい。

 

駆逐艦…。アイツはよく言っていた。駆逐艦なんて所詮代わりのいくらでも利く捨て駒でしかない。駆逐艦が多くとも消費は少ないし、沈んでも負担は少ない。少ない資材でいくらでも建造ができると。駆逐艦の存在はそんなものだって。じゃあ、ここの司令官も…一緒のことを考えて…?

 

いや、違う。そうじゃない。ここの司令官はそんなことはしない…本当に?本当にそう言える?裏では吹雪や…時雨を捨て駒に…。ダメだ…やっぱり私も…まだ、司令が…。それでも乗りかけた船だ。私は司令官を信じると…決めた…!そのために、まずは朝潮姉さんたちを…!

 

「満潮?どうしたの?」

 

ここは駆逐艦寮…あれ?どうしてここに…?

 

「扶桑…?」

 

「満潮?大丈夫?顔色が悪いけれど」

 

「…荒潮の部屋?一体、何を…」

 

「朝ごはんを届けたのよ。ほら、全部食べてくれたのよ」

 

 

扶桑の手には野菜のヘタだけになったお皿とカップ。

 

「へ、へえ。荒潮がご飯を食べるなんて。大本営でも一口も手をつけなかったのに」

 

「お腹が空いていたのねぇ…慌てて食べようとしていたから止めたのだけれど」

 

「それもあるけど、どうやって食べさせたの?」

 

「どうやってって…普通にお箸と手で食べていたわよ?あーんしてあげましょうか?って言ったら断られてしまったけど。残念だわ」

 

 

……違う、そうじゃない。どうやって荒潮が扶桑に心を許したのかが聞きたかったんだけど…。ううん、言ってもたぶんダメだ、たぶん。だって…こんなぽやーっとした人なんだもの…。

 

「そう…まあ食べてくれたのならそれでいいわ。ありがと、扶桑」

 

「いいえ。あの子はただ優しさがほしかったのよ。私は優しくしてあげよう、なんて思ってはいないけれど。私を見た時、あの子に殺してやろうかと言われたわ。でも、あの子の目は、そうね…何か助けを求めている目に見えたわ」

 

「助け…を?私にはそんなふうには見えなかったけど。全部を憎んでるような感じ」

 

扶桑はゆっくり首を横に振った。顔は笑ってる。扶桑の笑顔は…きれいだな。何だか落ち着く。私も…無性に抱き着きたくなる…。えっ!?

 

「満潮…。あなたも、一人で何でも背負い込まないでね。私でよければ、あなたの支えになるからね?」

 

いつの間にか私は扶桑に抱きしめられていた。暖かい…いい匂い…。耳元で聞こえる扶桑の声は…とても…優しくて…落ち着く。

 

「ふ…そう…」

 

「……落ち着いたら一緒にお買い物に連れて行ってもらいましょうか。提督に。けえきと言う甘いものがおいしいらしいわ。時雨と一緒に行きましょうね?心配いらないわ。あなたの頑張りはきっと報われるから…」

 

「う…ぐっ…」

 

私も誰かに甘えたかったんだ。司令官に頭を撫でてって言ったのも。一人でピリピリとして。司令官さえも信じられなくって。一人で朝潮姉さんたちのことも全部解決してみせるって。

 

「大丈夫。あなたには提督が。そして私もいる。困ったら私を頼ってね。頼りないかもしれないけれど、満潮の助けになるように頑張るから。ね?」

 

「ふそう…ふそう…!」

 

「頑張り屋さんねぇ…満潮は。でも、それだけじゃ疲れちゃうでしょう?時には休むことも大切よ。私にはよくわかってあげられなくてごめんなさい。けど、ずっと頑張ってきたのよね…?」

 

扶桑が優しく頭を撫でてくれる。優しく抱きしめてくれる。一人で何とかしなきゃって。司令官にも迷惑をかけられないって。他の艦娘には頼れない。頼ったら迷惑になるって。そう思っていたから。不安だった。これから行く朝潮姉さんと大潮姉さんの所へ行くのも。私で説得できるのかって。荒潮を止められるのかって。頼っていいんだ…甘えてもいいんだ…。そう言ってくれることは私にとって何よりも救いだった。

 

「うっうぐっ、あのね…私ね…怖かった…!わたじ一人で何とかしなきゃって!朝潮姉さんたちみんな、私のこと裏切者って言うんじゃないかって怖いの!でも、司令官に迷惑かけられないし、まだ、こわいし!えぐっ、時雨も力になってくれるってね!ひくっ言ってくれたけど!やっぱりたよれなぐて…!」

 

「うん、うん」

 

「今からあさじおねえざんのとごろにいぐのも…怖いの!わたじじゃぜっだいぜっどぐでぎないって!私なんかが!ひっく、私なんかじゃ!あそこにいだみだいに誰も助けられないって!あられややまとさんがかずみに…うぐぅ!懐いてくれて…あんじんじで…うううう!」

 

「そう…霰さんに大和さん。満潮が言ったわけじゃないけど、手助けしてくれたのね。よかったわ。ほら、これで満潮を手伝ってくれるお仲間が二人。私もいるから三人。提督がいて四人。時雨は?ね?満潮にはいーっぱいお仲間がいてくれるのよ。満潮は一人じゃない。こうして自分から手伝ってくれる人がいっぱいいるでしょう?」

 

「うん…でも私…」

 

「大丈夫よ、と言っても…信じてくれるかわからないけれど…あなたには味方がいるわ。ほら、泣かないで。私はここに来て満潮の笑顔を見ていないわ。笑顔を見せて?泣き顔は私も悲しくなってしまうもの。でも、今まで我慢していた分だけ、いっぱい泣いて。私が全部受け止めてあげる」

 

「うっうっ…わあああああ!!!!」

 

扶桑に抱き抱えられて私はただ大声で泣いた。その泣き声に雪風と時雨が来てしまったけれど。

 

「み、満潮?どうしたんだい?」

「何かあったんですか!?」

 

「溜まっていたものが全部出てきてしまったみたい。私のお部屋に連れて行くわ」

 

「僕も行くよ。満潮を放っておけない」

 

「雪風もお供します!」

 

「まあ、優しいのね。それじゃあ、行きましょうか。ほら、満潮。よしよし」

 

「待って扶桑。そっちは巡洋艦寮だよ!」

 

「扶桑さん、こっちです!」

 

「あ、あら…私ったら…ふふ」

 

私は扶桑に抱かれながら扶桑の部屋に連れていかれた。ああ、朝潮姉さんたちと話ができない…それよりも私は、この胸に溜まりに溜まったものをきれいさっぱり涙で流したかった。いや、流すしかなかった。

 

 

満潮が行くはずであった朝潮と大潮の部屋。二人は寄り添い、これからどうすればいいのかがさっぱりわからず、途方に暮れていた。

 

「うう、朝潮姉さん。大潮達はこれからどうなるのかな…」

「…わからない…。でも、もう…もうどうしたらいいのか…」

 

何をどうするわけでもなく。行動に移せず、ただただ部屋で無為な時間を過ごすしかない。朝は知らない艦娘が朝食を持ってきてくれた。名取、と言っていたか。とりあえず、毒とかは入っていなさそうだし、食べた。お腹は空いていたから。

 

パンと言うものを見て、それと一緒にあったものから香る匂いにお腹がグゥとなり、夢中で食べた。名取と言う人がおいしい?と言っていたがよくわからなかった。どうしてこんな駆逐艦に食事を寄越すのか不安になってきた。これを食べて出撃してこいと言う意味だろうか?しかし、招集がかかったわけでもなく、不安だけが募る。

 

大潮も不安だらけで落ち着かない。食事なんて出されたことがなかった。気持ちが悪くなる燃料と弾薬しかもらえていなっただけに、こんなもの…空腹に負けて食べてしまったが。

 

そうして二人は食事をとったあと、名取が話をしても一言も話さずにいた。食器を下げ、名取は出ていき、残った二人は言いようのない不安と虚無感だけが残った。

 

「……満潮は、どうなっちゃったのかなぁ」

「満潮は司令官を信じると言っていたわね…大丈夫なのかな…」

 

「また出撃と言われてどっかに連れていかれるたんじゃ…!」

「そ、そんな…今度は満潮が…!くっ、私、司令官のところへ行ってくる!!」

 

「あ、朝潮姉さん!」

 

思い込んだらそれしか考えられない猪突猛進な朝潮は、カッとなった頭で大潮の制止も聞かずに部屋を飛び出した。執務室への行き方は何となく覚えている。長い黒髪を振り乱して執務室へと駆けた。

 

執務室の前に辿り着いたはいいものの、満潮のことを聞くのが怖かったり、どう聞き出せばいいかがわからず、ノックをしようと手をあげては下ろすを三回ほど。どうにも勇気が出せずに執務室の前で佇む。執務室の中では、誰かと会話をしているのか司令官の声が聞こえてくる。あまりよくは聞き取れないが…。

 

(馬鹿野郎!!!ふざけんな!!!!!そんな話が聞けるわけねえだろうが!!!!うちの朝潮達はうちの子達だ!!!!冗談じゃねえ!!!寝言は寝てから言え!!!!)

 

突然中から怒鳴り声が聞こえた。司令官だろう。ものすごい声だった。朝潮の心臓がバクバクするくらいだった。それよりも、朝潮達は…うちの子?どういうことだろう。

 

(て、提督。いかがなされましたか?)

 

(ふざけんじゃねえってんだ!朝潮達がいなくなって、見つからないんだってよ!このまま見つからなかったら轟沈扱いになっちまうからうちで第八駆逐隊が余ってたら轟沈してないようにできるから朝潮達寄越せだってよ!!ふざけんじゃねえぞ!!!)

 

(す、宿毛湾泊地…ですか?)

 

(大本営の内密の査察で艦娘の登録数と数が合わねえって指摘が入ったんだと。朝潮、大潮、荒潮、満潮、霞。妙高は抜けてるけど言われなかった。こいつら余ってたらくんね?だってよ!!冗談じゃねえ!!!!本当のこと指摘してやろうかと思ったよ!!!クソが!!!!)

 

自分達のことを話しているらしい。それにしては、昨日食堂で見た、聞いた声とまったく違う。ものすごく怒っている。

 

(前の提督もそうでしたけど、どこも同じなのですね。駆逐艦を蔑ろにしているのは)

 

(駆逐艦が盾だ身代わりだなんて馬鹿じゃねえのか、マジで。使い捨てとか言ってる奴の気が知れねえよ。俺は戦艦や空母よりも駆逐艦のが重要だって思ってんだよ。戦艦や空母を守るにも、練度が高いほうが損害も出しにくい。雪風を見てみろよ。あいつ、どれだけ扶桑や瑞鶴を守って役立ってる?)

 

(それはまあ…確かに…。それに駆逐艦は潜水艦に有効打を与え、魚雷は必殺技と言ってもいいでしょう。時雨ちゃんの魚雷。それに村雨ちゃんの砲撃も侮れません)

 

(駆逐艦は一番と言っても過言でないほど危険な役目を回される。護衛、対潜、砲撃、雷撃。時に防空も任されるな。何でもやらなあかん。せやから、建造したての駆逐艦をぼんぼん捨て駒に使うより、より練度を高めていったほうが艦隊としては大きな力になる。ここのクソッタレも宿毛湾のアホンダラもわかってへんなぁ)

 

(そんなんは二の次だ。そんなことよりいなくてもどうでもいいみたいに思って、いざ自分のところの査察が入ってから駆逐艦を寄越せだなんてふざけんじゃねえって話!うちの大事な駆逐艦をあんなクソ野郎に誰が渡すか!)

 

(まあ、なぁ…そんなん言うてるくらいやから、駆逐艦なんか何の役にも立たん盾代わりにしか思うてないんか。ようそれで艦隊運用しとるな。大湊の一宮君や…えーと何ちゅう人やったかなぁ。あの何や牛乳瓶の底みたいな眼鏡かけてー…あのー…あの牛みたいなでっかい乳しとる女の子…あー浮かばん!牛みたいな乳しとるんだけ覚えとる!!)

 

(七原提督だろ…。七原すみれ提督。あそこの提督も会議に涼風を連れてきてて馬鹿にされてたな。何か今度うちに来たいって言ってたけど…何て言ってたか早口なのとぼそぼそ言うもんだから…何か駆逐艦を大事にしてるところだからってさ)

 

……

 

宿毛湾の…と聞いて足が震えた。しかし、それとは別に司令官は自分たちを「うちの朝潮達」と呼んでいた。どうしてそう呼ぶのかわからない…。自分達は宿毛湾の艦娘。どうして、そこまでして怒ったのか。駆逐艦である自分達なんて…そんな価値はないはず…。

 

(で、そこでこそこそ話聞いてんのは誰やー?)

 

「…!?」

 

慌てて口を押えて走り出した。まずい、このままではまずい!ガチャッとドアが開いた音が聞こえた時には、朝潮は角を曲がって消えた。

 

急いで部屋に戻る。飛び込むように部屋に戻ると、大潮がものすごく困った顔で朝潮を見つめてきた。

 

「あ、朝潮ねえさぁん…」

 

部屋に漂ういい匂い。そして…

 

「やあ。おはえひ」

 

「おかえりなのです~。響ちゃん、お口に入れながらしゃべるのはお行儀が悪いのです」

 

呑気に自分の部屋のようにくつろいで何かを食べる人と、それを注意する人がいつの間にかいて…朝潮は目が点になった。

 

 

「夜も満足に眠れていなかったのかもしれないね」

 

「ええ。眠らせてあげましょう。泣き疲れたのと、気が抜けたんだと思うわ。いろいろと気を張っていたみたいだし」

 

扶桑の部屋に連れてこられた満潮はしばらくの間、扶桑にしがみついたまま大泣きしていた。しっかりしていても駆逐艦。一人で考え、行動に移すには荷が重すぎたらしい。

 

「ふふ、扶桑に抱き着いたときの安心感はすごいからね。何でも包み込んでくれそうな気がするよ。僕も安心する」

 

「そうなのかしら…吹雪さんも少し前に一緒に眠った時は安心してぐっすり眠れたと言っていたわねぇ…」

 

「やっぱり扶桑には癒しの何かがあるのかな?戦闘でも頼りになるしね」

 

「まあ、そういってくれるのは嬉しいわ」

 

どんな時でもニコニコとみんなを見守る印象の扶桑。駆逐艦みんなに好かれ、摩耶や最上、五十鈴達からも一目置かれる存在。鎮守府内ではよく行き先を間違えたり、ボーっとしていることが多いのも好かれる理由の一つなのだろう。

 

「扶桑さんはみんなのお姉ちゃんって感じです。雪風も扶桑さんに甘えるのが大好きです」

 

「あら、雪風ちゃん。ありがとう♪」

 

「えへへー♪」

 

雪風を抱きしめると嬉しそうに笑った。

 

「かわいい妹がたくさんで嬉しいわ。こうしていられる時間が私には何よりも幸せな時間よ。荒潮さんも早くなじめるといいのだけれど…」

 

「荒潮と会ったの?ど、どうだった?何かすごく怒っていた感じだったけど…」

 

「荒潮さんも…いろいろとあったみたいよ。これは私と荒潮さんだけの秘密。約束を破るわけにはいかないから、多くは話せない。けど、荒潮さんも。単に怯えているだけ。優しさと温もりがほしいだけの子。私があの子を癒せるのなら、私は甘えさせてあげるだけよ。ああ、提督にだけはお話しておかなきゃ…」

 

時雨や吹雪、そして満潮でさえ拒否し、部屋から出てこない荒潮。その怒りに満ち溢れた目は、時雨もやはり心配だったようだ。扶桑が目を細めて荒潮を思いやるかのような表情をしていた。彼女はどんなものも包み込み、和らげる。そんなように見えた。柔らかな物腰と佇まい。いざ戦闘になれば、敵戦艦でさえ震えあがる気迫を持っているのに、普段は微塵も感じさせず。深い懐を持った母性に溢れる艦娘だ。

 

「満潮…満潮も苦労したんだね」

 

「守りたい人がいるのに、守れない。これほどまでに辛いことはないでしょうね…」

 

「守ろうと思っても。何もできない。雪風も、もうそんな思いはしたくありません。あんな…あんなこと」

 

雪風が感じるもの。守りたかったもの。いなくなってしまった仲間。多くの死を見てきた雪風の重い言葉。

 

「雪風のたからものはしれい。そして、今いるみなさんです。扶桑さんも。時雨ちゃんも。新しいお仲間も。妖精さんも。ぜんぶぜんぶあたしのたからものなんです。しれえと同じ思いです。もう誰も沈めない。艦隊をお守りします。それが雪風のやるべきことなんです」

 

「雪風さん。私も同じ思いです。共にがんばりましょう。私たちは一人ではないもの。私もいるし、時雨や提督。みんながいるものね。私も、もーっと強くなって、みんなを守れるように頑張るからね」

 

「扶桑さんが強くなるなら雪風ももっともーーーーーっと!強くなります!!」

 

「うふふ、頼もしいですね。では、もっと強くなるために、いっぱい食べましょうね。お昼ご飯にしましょうか」

 

「扶桑、そういってお腹が空いただけでしょ…」

 

「あ、あら、そういうわけではないのよ?で、でもそろそろお昼の時間だし…」

 

「やっぱりお腹が空いたんじゃないか…はあ、雪風。ご飯をもらいに行こう。満潮がいるし、扶桑に見ててほしいから。僕たちが行ってくるよ。荒潮の分はどうしよう?」

 

「お昼はいらないそうよ。眠りたいと言っていたから」

 

満潮も、荒潮も。皆疲れているんだな、と時雨は思った。

 

(僕も力になれるなら何か協力したいな。提督に何か相談してみようかな)

 

誰かのために一生懸命何とかしたい。それはいつも提督がやっていることだった。特に教えたわけでもないし、やりなさいと言ったわけでもない。それでも、玲司を見てきた時雨たちは知らずのうちにそれを学び、行動に移したいと強く思うようになった。

 

かわいそうだから…なんてことは考えない。自分達だって提督にそう言われたり思われたこともない。

 

(誰かを助けたいって思った時に、理由なんていちいちつけてらんねえよ。時雨や村雨の時もそう。翔鶴や雪風のときもそう。助けたいって思ったら、もう体が動くんだよ)

 

当たり前のように玲司が言った言葉。時雨は他の人間のことは、今日を生きることに必死だったために忘れているし、今いる人間は玲司しかいないから、玲司に言われたことを真似してみようとしか考えない。扶桑に似て思慮深いのだ。

 

玲司に助けてもらった感謝の気持ちを、時雨も雪風も忘れない。自分もそうなりたい。荒潮は扶桑に任せて、自分は満潮を何とかしてあげたい。そう思っていた。

 

人は成長する。艦娘も心があるから成長する。お互いがお互いを助け合う。横須賀鎮守府の艦娘はまだまだ成長途中。時雨も。雪風も。これからもっと成長し、他の鎮守府とは違う艦娘に成長していくのは、まだまだ先の話。




朝潮は玲司の話を聞いてどう思ったのでしょう?次回、フリーダムなハラショー娘となのです娘を交えて書いていきたいと思います。

余裕のなかった満潮は扶桑の優しさに包まれ、一休みとなってしまい、朝潮達と話ができませんでした。ですが、今は休んだ方がいいのです。自発的に動いている横須賀の艦娘達のほうが、余裕があり、包容力もあると思うので。意外な形で満潮に救いがありました、と言うお話

では次回こそ、朝潮達のことを語ることができればと思います。

それでは、また。
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