提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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フリーダム響と電と朝潮大潮のお話。朝潮の本音を聞き出そうとする(?)響。まんまと釣られた朝潮。二人のやりとりはもうちょっとだけ続きます。

ところで、アイス食べませんか。暑い…。


第五十九話

チャーハンの次はようかんをもきゅもきゅと食べ出す響と電。もう何だか怒るのも疲れるので響の誘いに乗り、ようかんを食べる。大潮はもうついていけなくて泣きそうだった。本当に何なのだろう、この二人は…。

 

「ふぉふぉろであふぁひお。はんむふのいひはふぁひふいへはふぇふぉ」

 

「食べながらしゃべらないでください。何を言っているのかわかりません」

 

「ところで朝潮。艦娘の生き方についてだけど、だそうなのです」

 

「何でわかるんですか…」

 

「響ちゃんは電の相棒だから!なのです!」

 

「はふぁふぉー」

 

「ハラショー、だそうなのです」

 

ビシッと親指を電と立て合う響。ああ、もう…頭が痛い…。今夜はしっかり2100には寝よう…。そう決めた朝潮であった。響がごくんとようかんを飲み込む。お茶をゆっくり飲んで…一息ついて…。

 

「寝るなあ!!!!」

 

「んお…すまない。牛になってしまうところだった。スパシーバ」

 

ダメだ。本当にこの人は苦手だ…。早く自分の部屋に帰ってほしい。しかし、電も響も一向に帰るつもりがない。

 

「私は…」

 

「はい、今度は何ですか…。牛乳でも飲みたくなりましたか…」

 

「私は司令官を完全に信用はしていないよ」

 

「は、はい?」

 

突然の話にまたずっこけそうになったが、今までと雰囲気が違う。

 

「私は人間の無茶で一度沈んだ。電は泣かされてばかり。暁も雷も人間のせいでいなくなった。仮に、今の司令官が暁と雷を建造したとしても、それは私の知る二人じゃない。私の知る暁と雷はもういない。ひとまず今の司令官は害はなさそうだし、電も懐いているし、信用はしている」

 

ちょっと待って、この人は誰だ。今までと別人じゃないか。そう慌てるも響は話を続けていく。

 

「私は別に司令官を信用しろとは言わない。私自身が信用していないのに、信じてくれなんて言えない。どちらかと言えば私は艦娘のほうを優先して信じるよ。戦場では嘘はつけない。みんな生きるために戦う。だから信用はできるかな。私の体験と、朝潮達の話を聞いて、人間は正直信用に値しない」

 

「で、では、響さんは何のためにここに…?」

 

「決まっている。私は電がいるからここにいる。電が沈んでいたなら私は潔く海の底だ。電が別のところに行ったなら、私は電のいるところへ行く。これをこの鎮守府の艦娘に言うと気を悪くしてしまうだろうから。電には話しているし、理解は得ている」

 

艦娘は深海棲艦に太刀打ちするための手段として艦娘を作り、自分たちを守る兵器として海へ送り出す。人は信じない。妹を守るために存在する艦娘なんて…。

 

「そ、それでは艦娘の存在意義が消えてしまいます!私たち艦娘は海を、人を。日本と言う国を守るために作られた兵器です!それを一蹴しては私たちがいる意味は!?」

 

「そ、そうですよ!そ、そんなことを言ったら解体されちゃいますよ!」

 

「されなかったよ。司令官は笑ってそうか、電を守ってあげな。と言っていたよ」

 

「なっ!?」

 

「朝潮。自分を兵器と言うなら、どうして君の妹の身を案じるんだい?さっきもそうだったじゃないか。大潮を解体するならまず私からって。満潮や荒潮は大丈夫だろうかって。なぜだい?兵器で、不要と言われたなら何だってよくないかい?なのに君も大潮もお互いをかばい、自分をと名乗り出た。なぜだい?」

 

わからない。もともとこの人の言うことは理解が半分もできなかったが、今彼女が言っていることも理解ができない。大潮は何となく気付いたような顔をしたのを見た響はこくりと大潮を見て頷いた。

 

「大潮はわかったみたいだね。朝潮は…わからないかな」

 

大潮を見ると不安そうに朝潮を見ていた。大潮…どういうことなの?と聞こうとした矢先に響が大潮を止める。

 

「大潮。言ってはダメだ。朝潮が自分で気づかないと、朝潮はこの先どこにいても戦えない」

 

「うええ?あ、あう…」

 

大潮は響と朝潮をキョロキョロと見る。が、響の雰囲気に飲まれ、下を向いて黙ってしまった。

 

「電は響ちゃんと共にいることも大切です。けど、雪風ちゃんや吹雪ちゃん、電をずっと守ってくれた摩耶さんや最上さん達。優しい扶桑さん、大和さん。大淀さん達。そして、司令官さんをお守りするためにここにいるのです。国とか、そんなのは考えたことはないのです」

 

電も似たような答えだった。響と違うところは個人ではなく、横須賀鎮守府の仲間も含んでいることだった。これでまた朝潮はわからなくなってしまった。艦娘の存在意義。自分はどうしてここにいて。生きているのか。

 

「お、大潮も…大潮も。朝潮姉さんや満潮ちゃん、荒潮ちゃん、霞ちゃんと一緒にいられれば。ここにみんなと一緒にいてもいいのなら、それで…」

 

「お、大潮!?艦娘としての役割を放棄するのですか!?」

 

「ち、違う!ちゃんと艦娘として深海棲艦とも戦うよ!でも、でもそこに大潮のお姉さんや妹がいないなら意味がない!」

 

「沈んだところでまた別の朝潮と第八駆逐隊を組めばいい!私も大潮が沈んでしまって、新たな大潮が配属されたなら、その大潮と組む!!!」

 

「あ、朝潮姉さん!!!!」

 

大潮が驚愕する。信じられないと言ったような顔で姉を見つめていた。それを見ていた響は魔法瓶を持ったまま、大潮に詰め寄る朝潮に向けて歩き…。

 

ジャアアアっと冷たいお茶を朝潮にぶっかけた。

 

「な、な…」

 

「頭は冷えたかい。ああ、タオルがここにはなかったね。まあ、いいか」

 

「何がまあいいかですか!!!!何なんですか!!!人にこのようなことをして!!さっきから、さっきから人を馬鹿にして!!!!」

 

「そのつもりはなかったんだけどね」

 

「こ、これが馬鹿にしていないと言えるのですか!?」

 

「今は馬鹿にしてるからお茶をかけたんだ。馬鹿も馬鹿。真面目馬鹿だね」

 

「こ、このぉ!!!!!」

 

朝潮が響に飛びかかり、頭や顔を叩こうとしたり、髪を引っ張ったり。響は顔を守り、抵抗する。ドタンバタンと大騒ぎ。しばらくなすがままだった響がうまく足を動かし、朝潮を蹴飛ばす。また大きな音を立てて朝潮が尻餅をつく。

 

「はあ!はあ!はあ!出ていけ!この部屋から出ていけ!」

 

「はぁ…はぁ…嫌だね。君が気付くまで私は出て行かないよ」

 

「な、何事!?どうしたの!?」

 

騒ぎに気付いた吹雪が飛び込んできた。響と朝潮が睨み合い、再び一触即発状態。

 

「吹雪ちゃん。ちょっとここで座って見てるのです。今響ちゃんは、朝潮ちゃんにとても大事なことを伝えようと必死なのです」

 

「え、ええ…ただのケンカにしか見えないんだけど…」

 

「響ちゃんは教えるのがヘタなだけなのです。けど、ここで朝潮ちゃんが気づかないと、最後にはとても後悔することになるのです。はわ、お茶は響ちゃんが朝潮ちゃんに全部かけちゃったのでなくなってしまったのです…」

 

「ええっ!!?」

 

響のただならぬ雰囲気と電の促しで「いいのかなぁ…」と言いながらも電の隣に座る。

 

「吹雪ちゃんも聞いておくといいのです。とっても。とっても大事なお話なのです。電たちが電たちであるために。そんなお話なのです」

 

電の目は真剣だ。口調も真剣。ただ事ではないが、それ以上に重要なことらしい。なぜか正座して響と朝潮を見守ることにした。

 

「あなたが出て行かないなら私が出て行きます。馬鹿馬鹿しい」

 

「逃げるのかい?」

 

「はあ!?この期に及んでまだ私を馬鹿にするつもりですか!?」

 

「馬鹿だろう。君は。君は大潮の気持ちを踏みにじった。これは許せない。いくら私でも許せないことはある。それは、姉妹の。仲間の繋がりを踏みにじる奴だ」

 

「私が…大潮の何を踏みにじったと言うんですか」

 

「はあ、ここまで馬鹿とはね。いいだろう。馬鹿な君のために一から説明してやろう」

 

再び朝潮が飛びかかろうとするも、吹雪が止めた。

 

「響ちゃん。響ちゃんも言いすぎだよ」

 

「すまない。私も思ったより頭に血が上っていたみたいだね。では説明しよう。朝潮。今そこにいる大潮が沈んでしまい、新しい大潮がやってきたとしよう。今まで通りに接することができるかな?私は今ここにいる電が沈み、新しい電がやってきたなら、私はその電を無視する。悪いけどね」

 

「な、何を…」

 

「では君はその大潮に昔話をできるかい?あの施設でひどいめに遭ったときは大変だったね、と」

 

「できるわけがありません。その大潮は…大潮は…」

 

「何を言っているんだ?と言われるだろう。辛かった時の思い出は、もう大潮とは共有できない。それを見た満潮や荒潮は何を思う?壊れた霞を見て、大潮はどうしてここの霞はこんなことになっているんだい?と聞かれて、君は冷静に説明ができるかい?大潮。君ならどうだい?」

 

「お、大潮は…大潮は…今の朝潮姉さんでないなら…悲しい…です。だって、朝潮姉さんは朝潮姉さんでも。もう大潮の知っている朝潮姉さんじゃないから」

 

朝潮を見る大潮の目は悲しそうだった。それと同時に絶対いなくならないで、と言う目だった。響の言葉と大潮の言葉が朝潮に突き刺さる。

 

「大潮の言っている意味がわかったかな?今ここにいる朝潮は君でしかない。別の朝潮が来たとして、大潮はまったく今までやって来たことを一切知らずにいる朝潮を朝潮と言えるのか?死んだはずの朝潮が帰ってきたわけでは…ないんだよ」

 

膝がガクガクする。どうして、どうしてそんな簡単なことに気づかなかったのか。大潮が沈み、帰ってきたとしても過去を共有できない。姉と慕ってはくれるだろうが、別人である。果たして、その時自分は大潮を大潮として…認識できるはずだ。だが、想像すると虚しさしかなかった。

 

「お、大潮…代わりが来るだなんて…私は…私はなんて…ことを…」

 

「だから君は馬鹿だって言ったんだ。何も考えず、単に艦娘の役目というものにばかり目がいくからそうなる。そんなものはここでやっていくなら。妹を守りたいなら捨てた方がいい」

 

朝潮にとって駆逐艦。艦娘の本分を捨てることは容易ではない。朝潮にとってはそれこそが全て、と言う頭がある。朝潮はとにかくその信念のもとで存在し、それを捨てて艦娘として生きるなどありえない。とまで。

 

その本分を発揮できず、ただただ邪魔者扱い。物のように扱われた。それでも構わない。いつか駆逐艦「朝潮」として役目を果たせるなら。そして死していくのも本望であると。

 

「できません。その駆逐艦としての本分を捨ててまで、ここでこうしているわけにはいきません。私は駆逐艦。朝潮型駆逐艦一番艦「朝潮」として役目を果たし、役目を終えるその時まで戦う!そう考えているんです!それを、あなたみたいにふわふわと漂うクラゲか空に浮かぶ雲のように浮かんでいるかのように生きているあなたとは違う!!!」

 

朝潮の性格はとにかく真面目であり、馬鹿正直であり、頑固である。その性格の一部は、妹の霰が少し受け継いでいる。自分を曲げずに突き進む。

 

「宿毛湾の司令官にその本分を折られたのに…?」

 

「ならばまだ正せばいい!ここの司令官にご命令を頂きます。この朝潮、この身朽ちるまで司令官のために戦いますと!そして司令官のために散りますと!それが、それがこの朝潮の生きる道なのです!私が朽ちようと私の代わりが私の後を継いでくれると信じて!」

 

拳を握りしめ、響に向けて言う。その目は一点の曇りもなく。自分の信念を曲げようとはしない。しかし、その誓いは針で刺すかのように、チクリと何か胸が痛んだ。確固たる揺らぎない信念のはずだった。今はそれは、朝潮の中で、言ってみたものの本当に良いのだろうか?と言う迷いが実は生じていた。迷いを与えたのは紛れもなく、今目の前で自分を見つめる青い目の同じ駆逐艦。何かはわからないが大きく揺らぐ不安。

 

そうして響が近づいてくる。何をする気だろうか…。

 

ゴッ

 

鈍い音が部屋に響き、視界は揺らぎ、自分は手をついて床に座り込んでいた。見上げると、響が自分を殴ったそのままの格好で佇んでいた。再び朝潮の頭に血が上る。見下ろす響を睨む。響は北海の流氷のような冷たい青い眼で朝潮を見下ろしている。

 

「駆逐艦の本分だ、信念だって言う鎖に繋がれているみたいだったから、それを外してあげようと思って」

 

「何をわけのわからないことを…!」

 

「海に出たこともない。誰かを守ろうとしたこともない。妹でさえ守ろうとしない。そんな君が。駆逐艦の本分を語ったところで空論だよ。そんな朝潮じゃ、本分を果たすこともなく砲撃で死ぬだけさ。信念を語るんなら、まずは私を言い負かしてからにしてもらおう」

 

冷たい目。けれど、その目は軽蔑する目ではなく、どこかまだ、朝潮を見捨てていない目だ。

 

「そう言っておきながら、大潮を解体しないで自分を解体してくれと言ったのはなぜかな。海に出て、駆逐艦の本分を果たしたいなら、その言葉は出なかったはずだ。朝潮、教えてくれるかい。なぜだ」

 

「そ、それは…それ、は…」

 

「簡単だよ。大潮を守りたいからだ。大潮や満潮がいなくなるのは悲しい。辛い。想像したくないからだろう。妹を思っているからだろう。そう思っているのなら、駆逐艦の本分なんていう嘘の信念は捨てるべきだ。少なくとも私は捨てた。いや、電も。吹雪も」

 

「朝潮姉さん。大潮は死にたくない。朝潮姉さんにもいなくなってほしくない。大潮の朝潮姉さんは今ここにいる朝潮姉さんだけだもん…大潮は朝潮姉さんが無理をするなら止める。満潮ちゃんや荒潮ちゃん。霞ちゃん。大潮達をかばってくれた妙高さんと一緒にやっていきたい…」

 

「国のため、この国の人のためなんて言っても、疲れるだけなのです。電が一人守ったところで国も人もほめてくれないのです。それなら電は、一緒に戦って、ご飯を食べて。お風呂に入って、一緒に眠る仲間と。がんばったなってほめてくれる司令官さん。優しくしてくれる商店街の人たち。電の近くにいる人を守りたいのです。その方が、死ねないと思うし、がんばれるのです」

 

「私もそうかな。電ちゃんや響ちゃん。扶桑さんたちに司令官。みんながいるから頑張る。ここにいるみんなは代わりなんていないから。一緒に歩いていきたいから。大事にしてくれる人が…いるから」

 

カシャンと何かが外れる音が朝潮には聞こえた。何のために霞をこれ以上痛めつけないでくれと懇願したのか。満潮や荒潮、霞、妙高を心配したのか。いなくなったら悲しいからに決まっている。霞の心が壊れてしまった時、一番泣いたのは朝潮だった。妹を守れなかった悔しさ。何もできなかった怒り。何もかもを忘れてしまった霞に対しての悲しみ。

 

だと言うのに。それを押さえつけてまで駆逐艦の本分。役目などと口に出した自分が恥ずかしくなり、情けなかった。手を見るワナワナと震えている。歯がカチカチと鳴っている。

 

「自分に素直になりなよ、朝潮。自分がどう生きるのか。どうしたいのかは艦娘の本分と言う決まり事みたいなものでも。司令官や人間の命令でもないんだ。自分の生き方は自分で決める。私たちはそれを持っている」

 

「ど、どこに…どこにそんなものが…」

 

「…気づいているだろう?もう。ほら」

 

響は拳を握り、トンッと静かに朝潮の胸に当てた。

 

「ここだよ。自分の心に聞いてみるんだ。頭ではなく、朝潮の心が。自分はどうすればいいか。素直に教えてくれる。私たちは確かに兵器かもしれない。けど、私たちは艦娘だ。人と同じ、心がある。心があるからその心の思うように戦う。私は電のため。そして横須賀の仲間のため。司令官がそう言っていた。私もこれには賛成だ」

 

響が手を離す。胸に手を当てる。響の手の温もりとは違う、内からやってくる温かい何か。今まで固執していた鎖はその温もりと、嵐のようなものに吹き飛ばされていった。

 

「人だ国だと言う前に、まずは目の前にあるものを守って見せなよ。それすらできない奴が、国や人や海なんて大きなものを守るなんて無理さ。私は永遠にそんなものに興味はない。居心地のいいここを守ることしか考えていないよ」

 

「朝潮ちゃん、私たちと一緒にがんばろうよ。ここは、響ちゃんも言うとおり、とっても居心地がいいところ。今は信じられないと思うけど。心から私はここのみんなを守りたいって思ってる。白雪ちゃんや叢雲ちゃんと来れなかったのは、寂しいけど…」

 

「吹雪ちゃんが来てくれてよかったのです。電も暁ちゃんや雷ちゃんと一緒に過ごしたかった。響ちゃんだけでも帰ってきてくれてよかったのです。今度は守り抜くのです!」

 

吹雪や電がそれぞれの心の内を明かす。そこに嘘偽りはない。

 

「私も…私もここで…妹たちと…」

 

「やってみるといい。難しい。けれど、無事帰って来れたときの喜びは大きい。そしてその後に入る風呂とご飯はハラショーだね」

 

ようかんを一切れまた口に頬張っている。食べることしか頭にないのか、この人は。

 

「んー!間宮さんのようかんおいしー!」

 

「吹雪はラッキーガールだね。ようかんにありつけるなんて。ハラショー」

 

先ほどまでの緊迫した雰囲気ではなく、またフワフワと捕らえ所のない響に戻っていた。

 

「大潮…ごめんなさい。心にもないことを…妹に対してなんて酷いことを…殴ってもいいわ。私はそれだけ酷いことを言ったんだもの」

 

「できない…かな。ちゃんと大潮のことを思ってくれたこと、嬉しかったよ。姉さん。みんなで頑張っていきましょう。司令官はまだ怖いけど、ここにいる皆がいてくれるなら大丈夫だよ!」

 

「うん、私たちがサポートするからね!」

 

「吹雪…さん」

 

「満潮ちゃんともよーく話し合おう?今度は私も一緒にがんばるし。一緒にがんばろうよ!」

 

吹雪の言葉と笑顔は今の自分にはまぶしい。自分の遥か向こうを歩いているような感じ。

 

「私も吹雪さんに追いつけるでしょうか…?」

 

「追いつけるよ。すぐだよすぐ!朝潮ちゃんも大潮ちゃんもみんな。一緒にご飯食べて、一緒にお風呂入って、楽しくやろうよ!」

 

「ふむ。私も頑張らなくては。雪風や夕立みたいな冗談じゃない相手は別として。私も負けないよ」

 

「……いつか、響さんにも追いついてみせます。勝ち負けにこだわる気はありません。ですが、あなたにだけは負けたくはありません」

 

「そうかい。楽しみにしているよ」

 

ふっと響が笑った気がした。自分の鎖を外してくれ、奮い立たせてくれた人。大事な妹たち。吹雪を始めとする仲間。そして…目標とすべき人。やろう。手探りだけど、これからは支えてくれる人がいる。迷ったら手を引いてくれるから。司令官はまだ怖いけど。少しずつ慣れていこう。

 

「大潮も朝潮姉さん達とドーンと頑張ります!ま、まだいろいろと怖いですけど…」

 

「大潮ちゃん。私がいるからね。響ちゃんたちもいるし。今日は一緒に寝よっか」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

「私は電と部屋で寝るよ。私がいると嫌そうな顔をしそうだからね」

 

「は、はあ!?そ、そんなことは…ありません!」

 

「もう。響ちゃん、仲良くするのです」

 

「…仕方ない。電と吹雪がそういうのなら」

 

別に嫌ではないのだけど…頑張って響さんとも仲良くならなくては…と決めた朝潮。

 

「ところで響ちゃん。響ちゃんの言ってることはかっこよかったのです。本気で朝潮ちゃんをバカにしてたらどうしようかと思ったのです」

 

「ああ、あれかい?ほとんど口からでまかせだよ。頭の固い子だ、と思ったし、怒鳴られてうるさくてムッとなってしまったのも事実だよ」

 

「…は?」

 

空気が凍りつく。朝潮の表情がみるみるうちにまた怒りに変わっていく。

 

「適当に言ってたら怒らせちゃったのは謝るよ。まあ、結果として朝潮の本音が聞けたのはよかったんじゃないかな」

 

「朝潮…ちゃん…」

 

「ああ、でもちょっと泣きそうな顔はかわいかったし、真っ赤になっていたところなんかもかわいかったよ。うん、手で朝潮に触れたとき、そうだね、膨らみは私といいしょうぶもがもが」

 

「ひ、響ちゃん、それ以上ダメだって!朝潮ちゃん、落ち着いて…ね?」

 

「こ、このお!人がせっかくあなたを目標に決めたのに!台無しにしてくれて!もう許しません!」

 

「わ、わー!朝潮ちゃん、ダメー!い、電ちゃん!朝潮ちゃんを止めて…ってあれぇ!?いない!?」

 

「お、お茶のおかわりを…って」

 

「え、えええええ!?そんなぁ!!」

 

ドターンと朝潮が響に飛びかかる。

 

「何ですか!?私のほうがあるじゃないですかこの嘘つき!!」

 

「そんなはずはない。君だってないも同然じゃないか」

 

「それこそありえません!!くぅ!私のほうが!」

 

「待って、朝潮ちゃん!何でブラウス脱いでるの!?ダメ!やめてええええ!!」

 

「よし、では私も負けていられない…ウラー!!」

 

「響ちゃん!勢いよくダメだって!!あーん誰か助けてー!!!」

 

泣きそうになっている吹雪。なぜかバスト比べを始めてしまう響と朝潮。おろおろと止められない大潮。吹雪は思った。私がこの子達のお世話をしなきゃなんて…と。

 

「って言うか何でこんなことになってるのー!?」

 

その後、戻ってきた電が下着姿になっている二人を見て「えっちなことはいけないのです!」とお怒りになり、全員正座させられ、大潮と吹雪は「なんで私(大潮)たちまで…」と妙な仲間意識が芽生えたとか。朝潮は途中で電の眼が蒼くなったところを見たとか。

そして夜寝るときは「仲良くするのです!」と朝潮と響は隣同士で眠ることになったとか。

 

駆逐艦寮はこれからも大層賑やかになりそうである。




ドタバタコンビと朝潮・大潮のお話、まあ、うん、その…結果オーライと言うことで(目そらし)

玲司との会話はまだ怖いので、とりあえずは響、電、吹雪と朝潮、大潮で少しずつ慣らしていく感じになるでしょうか。玲司は玲司で何かを考えているようなので、その時に打ち解けられるでしょうか?

次回は心を閉ざした荒潮に、駆逐艦の良いお母さんこと扶桑がやってきます。どんな話をしていたのか、を明かしていきます。母性溢れる扶桑に荒潮はどのように心を開くのか。次回をお楽しみください。

それでは、また。
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