提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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横須賀鎮守府の妖精さんは仕事熱心です。熱心なのか、それともやりたい放題やってるのか、謎なのが妖精さんです。たのしい(?)建造のお時間です。

独自設定が今回入っておりますので、気に入らない、納得がいかない場合はブラウザバックをどうぞ。


第七十話

ある日朝食を終えて執務室に入ると、大淀が「提督ぅ…」と困った顔で玲司を見つめてきた。机の上には「断固抗議」や「徹底抗戦」と書かれた日の丸の鉢巻を巻き、お子様ランチ用の国旗をどこからともなく持ち出して、わーわーと何かを言っている妖精さんがたくさん。日の丸の鉢巻は統一しているくせに国旗は国がバラバラ…。ちょっと待て。「滅殺」とか物騒な言葉が書かれた旗もある。おそらく、意味は分かっていないだろう…。

 

「なんだなんだ、妖精さん。どうしたんだ?」

 

「れいじさん、かのじょたちのこえをしっかりきくのです」

「わたしたちはもうがまんならない!わたしたちからしごとをうばうていとくさんにだんここうぎするー!」

 

「そうだそうだ」

「われらにもけんりをー」

「うおおおおお」

 

あっ…と玲司はわかってしまった。そう。あれから一つもやっていないのだ。「アレ」を。定期的に頼みますよ、と言われていたにも関わらず、聞かなかった玲司の落ち度ではあるが。

 

「けんぞうさせろー!」

「「「させろー」」」

 

やっぱりそうだ。建造の要求。いや、デイリー資材を支給してもらうための建造はしていたが、艦娘を顕現させるものではなく、近代化改修に回してしまう艤装のみを建造する中途半端なものである。装備開発とは異なり、建造は同じ艦娘がダブることもある運である。

艤装に魂を宿し、人の形をとった艦娘にするかどうかはその鎮守府の提督の判断と、妖精さんの仕事。提督の許可が降り、妖精さんが謎の力で魂を艤装に吹き込むことで艦娘となる。降霊術とは少し違う気がするが。艤装にするだけなら妖精さんは片手間でできる仕事量。艦娘として顕現させるのであれば多くの妖精さんが仕事に励むしそれだけの数が必要である。

 

玲司は横須賀の艦娘のこと、朝潮達のこともあって妖精さんに顕現の許可はしていなかった。鎮守府が落ち着いてから、と念を押していたが、ついに妖精さんが爆発してしまったようだ。わいわいと数十人はいるであろう妖精さんが旗を振って抗議する。「かわいこちゃんをふやせ」などと動機が不純な妖精さんも一部…。

 

「あー…大和と霧島以来すっかりやってなかった。わかった、ただし条件がある」

 

ゴクリと一斉に妖精さんがツバを飲み込むような音がした。真剣な表情で玲司に視線が集まる。

 

「大型建造は禁止。俺が指示した通りの資材を投入すること」

 

その言葉に「やったー!!」と歓喜する子もいれば、「えー!?」と反発する子もいるわけで。彼女達は聞いていた。伝説の戦艦「大和」を顕現させた鎮守府であると言うことを。最高の名誉ある仕事をした。伝説をこの自分たちが創ったのだと。それを聞いているだけに、建造させろと玲司の耳にタコができるのではないかと言うくらい説いてきた。わたしたちはこんなところでくすぶっているやつじゃない。世界サイキョーの妖精さんになるのだ、とよくわからない説明付きで。

 

が、いざ建造する、と耳にして喜んだのだが、大和が生まれたくらいの資材の投入は不可。世界サイキョーの妖精さん物語が始まると思ったら…。

 

「ありゃ俺も勉強不足だったの!うまいことのせられていつの間にか大型建造をさせられて、その後の資材管理、大変だったんだからな!?そりゃあ大和が来てくれたことは嬉しいよ。よりによって戦艦レシピで大型建造二連ちゃんなんてやられたら、これから北方海域の出撃があるかもしれんのにやってられるか!」

 

「うおおおおやらせろー!でんせつにあらたなイチページをー!ちくしょうめー!」

「こんどはむさしがきますよ。ぜったい。ようせいさんうそつかない」

 

「いやいやしなのがきますよ、しなのが」

「ダーメーだ!この条件を飲まないなら建造はしない!さりげなくそそのかすんじゃねえ!」

 

「おうぼうだー!しょっけんらんようだー!!」

「俺おかしいこと何か言ってっか!?」

 

わーわーと言う妖精さんともめる玲司。まるで子供のケンカのようだ…。大淀は本人達はいたって真面目なのだろうが、言い方が子供のような妖精さんと、それをたしなめる親とのつまらないケンカのように見えて微笑ましくなった。しかし、大型建造なんてまたやられた日にはこれからの作戦のこともある。資材は決して潤っているわけではない。一気に燃料や弾薬、鋼材が吹き飛んだ収支報告を見てメガネが割れそうになったくらいだ。

 

「信濃はこの世界には存在しない。いいね?」

「お、おう…」

 

何やらよろしくない脅しをかけていたような気がするが、聞かなかったことにしよう。ポン、と大淀が手を叩く。その音に玲司も妖精さんも口論を止めた。

 

「よ、妖精さんでもわかる『教えて!大淀先生!』のコーナー!」

「「はぁ?」」

 

玲司も妖精さんも白い目で大淀を見ていた。適当だ。提督達を黙らせるための適当をぶっこいたらめちゃくちゃ恥ずかしいのを思いついただけだ。ああ、もう知らない。野となれ山となれ。

 

「いいですか。建造は提督のご許可が降りなければ艤装止まりです。ですので、妖精さんは提督の許可がないと建造ができません。そして、艤装止まりでも多少の資材は消耗します。ですが、それを補って支給される資材のためにこうしているわけですが」

 

うんうん、と妖精さんが頷いている。大淀はどこから取り出したかわからない指示棒を手にホワイトボードのいろいろと書いていく。

 

「そしてこれが現在の横須賀鎮守府の資材の総数です。安久野提督のせいで、三条提督が着任された時の資材がこれ。三条提督が建造や開発は、デイリー任務分で済ませてくださったので徐々に回復傾向です。ですが、ここ。ここで見てください。急降下です。なぜかわかりますか?」

 

折れ線グラフは緩やかではあるが右肩上がりであった。しかし、ある時急にドンとまた三条提督が着任したての頃のような数値にほぼ垂直にグラフが急下降。ほとんどの妖精さんはわからないはずだ。

 

「はい!そこのあなたとあなたとあなた!何をされたか覚えていらっしゃいますね!?」

 

「ぴ、ぴーぴー」

「すひゅーひゅーひゅー」

 

「口笛を吹いてごまかさない!そう!大和さんの顕現です!うちに大和さんが来てくださったことはありがたいと思いますが、これであの『沖ノ鳥島!vs深海響さんとガチンコ対決』だったんです!大和さんも出ました!大破撤退で修復もしました!!耳から脳が出るんじゃないかってくらい霧島さんと考え抜いて何とかなりました!」

 

バン!とホワイトボードを叩く大淀。そのギリギリぶりには玲司も冷や汗をかいて出撃したものだ。あの時の大淀と霧島は本当に夜遅くまでいかにして資材をうまく切り詰めて出撃をするか。おまけに二日目は連合艦隊のように2艦隊出撃させた。ボーキサイトは余裕があったがそれ以外はこれでミスったら出撃不可であった。大淀が血の涙を流さん勢いで妖精さんを睨む。妖精さんは全員一歩引いた。バァン!とホワイトボードを強く叩きすぎて壁に吹っ飛んでいくほどの力で叩いて熱弁する。

 

「大型建造は許可しません!!!提督と同意見です!!!2連続でせっかく司令長官から頂いた資材をお、おお、大型建造になどして…今度の作戦もどれだけ何があるかわからない。ですから、提督の指示に従わないのであれば今後大型建造の炉は明石に解体してもらうように指示します!!!!」

 

ガガーン!と言う音が聞こえてきそうなくらい妖精さんはショックを受けた。いや、できるわけねえだろ、と玲司が言おうと思ったが、それを言うとまたごちゃごちゃしそうだったのでやめた。

 

「そ、そんな…なにとぞ、なにとぞおかんがえなおしを…」

「あれがなくなればわたしたちは…おやめください!」

 

「では、提督の指示に従いますね?」

「むさし…」

 

「明石ー!」

「はい。おまかせください。われわれがわたしがせきにんをもってけんぞういたします」

 

折れるの早!そうしてなぜか大淀は妖精さん達から「せんせい」「あねさん」と呼ばれるようになったとか。何とか通常の資材投入で行える建造にこぎつけた。盛大に一時間は費やした。

 

「提督。どの艦種を建造されますか?」

「ああ、まず大本命は空母だ。翔鶴と瑞鶴だけじゃ空母機動部隊も作りづらい。それから戦艦ではなく単純に巡洋艦を増やしたいのと、駆逐艦がもっとほしい。駆逐艦はたくさんいた方が遠征に輸送に必要だ」

 

事実翔鶴と瑞鶴の2人だけでは厳しいこともある。長門と並び頼もしいリーダー格だった加賀さんが存命だったら…と大淀は思った。最期まで横須賀の未来に希望はある、と長門とともに励ましてくれた人。沈んでしまって…どこかで眠りについている彼女。また、「お墓」にお参りに行かねば。

話が逸れてしまった。本来なら戦艦も少ない。それよりも空母や巡洋艦も増やさねば。欲を言えば、潜水艦だって欲しい。重労働の資材確保に駆り出され、昼夜問わずに出撃させられ全滅してしまった。ううん、必要な艦娘が多すぎる。

 

「さ、さあ。どんなかんむすをけんぞうしましょう?」

「そうだな。レシピは紙に書いてきた。これで頼むよ」

 

建造のメモはちょうど炉4つ分。

 

250/30/200/30 を3つ

300/30/400/300

 

ああ、昔を思い出す。「強い奴はありったけ放り込めば出るに決まってる」と言う理屈でオール999を回したこともあったか…いやいや、今の提督がそんなことをするはずがない。3つは駆逐艦から巡洋艦まで幅広く建造できるレシピだ。幅が広すぎて誰が出るかわからないのがネックだが。一方空母レシピはある程度消費を抑えた量だ。資材状況を把握している玲司だからこそのレシピである。

 

妖精さんは先ほどの大淀の言葉を恐れてはいたが、いざ建造の許可が下りると嬉しそうに資材を運び、放り込み混ぜていく。トンカチを持った妖精さんがたくさん、そこから出てきたものを打つ。箱に入った何かを忙しそうに持ってきては置き、また取りに戻る。

 

同時に出る予想建造終了時間

 

一番炉 1:00:00

二番炉 0:20:00

三番炉 0:22:00

四番炉 2:40:00

 

「おっ、駆逐艦が二人。一番炉は巡洋艦だな」

「四番炉は誰が来てくれるんでしょう、楽しみですね」

 

「ま、それは楽しみにしておこう。んじゃ、大淀。食堂に全員集合をかけてくれ」

「??全員、ですか?」

 

「おう。大事な話さ。ちょっち喋ろうと思ってな。よろしくー」

 

重要な話…一体なんだろう。建造について…。その時大淀はハッと気がついた。建造するということは…そうだ。いや、しかし…。大淀は頭の中で考えを逡巡させながらマイクで全員集合に号令をかけた。

 

 

食堂に全員が集まり、なんだなんだと隣の子と話をしたり、「大淀さん、お話ってなぁに?」と駆逐艦から質問攻めに遭ったり。大淀は提督から大事なお話があります!としか言えない。遅れること数分、いつものように気だるそうに、ではなくピシッと真剣な眼差しだった。

 

「提督、どうしたの?全員集めて。ボク達に大事な話って?」

「おう、そうだ。大事な話だ。これは俺にも、お前たちにも大事な話だ」

 

どよどよとざわめく食堂内。妙高に抱かれた霞だけが、何もわからずにただ指をくわえて玲司を見ている。

 

「あー、本日は晴天なり。集まってくれてありがとな」

 

その言葉に瑞鶴や摩耶はズッコケそうになった。が、いつも通りの肩の力の抜けた話し方に幾分緊張は和らいだ気がする。

 

「まず、大淀には話したけど、横須賀は本格的に艦娘の保護だけでなく建造も行なっていく。理由は後ほど。で、ここで余計なお世話かもしれないけど建造をするにあたってなんだけどな、建造をすると言うことは…かつて沈んでしまった仲間が顕現するかもしれないと言うこと」

 

その言葉に北上や雪風、電、摩耶達は顔色を変えた。みんなの顔を見回しながら、玲司はやはりか…と思った。それぞれの姉妹、友達。仲間が非業の最期を遂げている。姉を犠牲にされた妹。少ない生き残りの友人を沈められた者。それぞれだ。

 

「それはやめてくれ、と言われるかも知れんがやめられない。横須賀は四大鎮守府の一つ。国が存亡の危機にあった、街が襲われた際、泊地や警備府の仲間が駆けつけてくれるまでに時間がかかることもある。守れませんでしたでは済まされない。そんな重責が鎮守府にはある。

悪い、これは横須賀鎮守府の提督として私情抜きだ。過去を思い出す。昔の傷をほじくり返す。そんなことは言っていられない。国を守る最前線に立つ場所が、今一番艦娘の数が少ない。こんなことでは守れるべきものも守れない」

 

大淀達は真剣に聞き入っている。鹿島にとってはごく当たり前のことだが、横須賀の古参の艦娘達はわけが違う。込み入った私情がある。国を守る。海を守る。そんなこととは関係ない事情で沈められた仲間が大勢いる。自分の名を、沈んだはずの仲間が目の前にいて、笑顔で呼んだ。どう対応すればいい?摩耶も、最上も、五十鈴も、目を泳がせている。

 

「まあ、国を守れ、海を守れ、国の民を守れ。こんなもんどうでもいい」

 

鹿島は玲司のその言葉に開いた口が塞がらなかった。ありえない。何を言っているんだ、この横須賀鎮守府の最高責任者が何を言っているんだ!!

 

「俺は今この場にいるみんな。そして、これから新たに増える艦娘。みんな家族だ。仲間だ。俺はこのみんなが帰るべき家。ここを守る為に頭を使う。大淀や鳥海、霧島とな。俺は今まで生きて帰って来い、と言う命令ただ一つしか出していない。これを曲げるつもりもない。勝ち負けは問わない。とにかく生きて帰って来い、とそういつも言ってるはずだ」

 

北上と雪風がぎゅっと胸に手をあてる。初めて「生きて帰って来い」と聞いた時の胸が熱くなる気持ちを思い出した。

 

「生きて帰る為には一致団結しなきゃならない。そのためには、過去に沈んだ艦娘のことを振り返り、みんなが立ち止まっちゃダメなんだ。立ち止まっていては成長しない。俺だってそうだ。今まで過去ばっかり振り返って、ショートランド泊地のみんなと、今ここにいるみんなを比べていた。けど、それはもうやめだ」

 

翔鶴が玲司を見て強く頷いた。

 

「俺は前を見る。俺の前で戦っているみんなを守る為に。誰一人、横須賀のみんなを死なせない為に。立ち止まってる子の手を引いて前へ一緒に進めるように。そして、みんなで勝利を分かち合う為に。これが俺の。俺の提督としてのやり方だ。そして、俺は」

 

窓の外を指差す。全員がその先を見る。その先は…海だ。何もない水平線。

 

「みんなと一緒に暁の水平線に勝利を刻む。刻んで刻んで刻みまくって、最低の評価な横須賀を最高の鎮守府に変える。そして、お前らこそが名誉ある横須賀の艦娘だって、今お前達をバカにして見下している奴らに知らしめてやる。鹿島がたまたま来てくれた。こいつはラッキーだ。みんなが強くなれる方法を教えてくれる」

 

「ちょ、ちょっと提督さん!?私そこまではできません!!」

 

「ははは!冗談だよ。でもどうだ?少し変わったんじゃないか?今は基本だけど、それは大事だ。もっともっと、お前らは強くなれる。仲間と一緒に笑いながら帰ってこれるようにな。で、話は戻るんだけど、そうしたいために、建造した仲間がここに来たら、温かく迎えてやってくれ。そんで、みんなでがんばろう。どうしても無理なら異動も許可するよ」

 

「冗談じゃねえ、異動ったってここよりいいとこがあるかよ」

 

摩耶が立ち上がった。

 

「あたしはやるぞ。また、また帰ってきてくれたんなら、同じような最期を見るのは嫌だしな。今度はそいつと勝ちを喜びたいな」

 

「そうですね…また。また同じ時間を共有すれば思い出になります。重なることもあるかもしれませんけど、名取達は艦娘です。同じ艦娘が現れることもあります。その時は楽しいこと、辛くても最後は笑って話せるような関係に、私はなりたいな」

 

「あの時は守れなかった。でも、今は提督も違う。みんな強くなってる。雪風達もいる。やれる。あたしは、みんなと笑って、いたい」

 

「しれえ!お友達が増えるのが楽しみです!!」

 

朝潮達も何となくわかる。吹雪は目に涙をためていた。妙高も…目を閉じて思いを馳せているのか。宿毛湾でのろくでもない記憶は消えないが、ここにきてからの充実した日々。前を向いて走り出した満潮と荒潮も互いに手を握って。

 

「ありがとな、みんな。けどまあ、ちょっとずつだけどな。でも、いつかはここが、在りし日の横須賀鎮守府のように、最強に返り咲きたい。ここにいる。来てくれたみんなで。誰一人欠けることなく。甘い夢だろうと思うけどな。でも、俺はここにいるみんなとなら走っていける。一緒に走ってくれ。俺と。俺と一緒に、てっぺん取ろうぜ」

 

まるで試験で100点を取ろう、みたいに簡単に言うがとてつもなく難しい。敵も強い敵とぶつかることもある。ピンチが何度も訪れるだろう。他の人間にバカにされることもある。それでも、ここで余裕ありげな顔で笑っている提督を見ていると、できるような気がしてきた。

 

「変わるぞ、横須賀は。変えるんだ。みんなの力で」

 

「なのです!お友達が100人ほしいのです!」

「………」

 

「響…ちゃん?」

「何、できる限り努力はする。暁や、雷が来た場合は…どうだろうね。私にはわからない」

 

わぁっと食堂に歓声が広がった。みなやる気に満ちた顔で。北上が言っていたこと。「勝つための戦い」。これになれるよう、玲司はやはり考えていたのだ。その為にはたしかに過去に囚われてばかりではいけないと。前を向いて走り出せ。後ろには大きく背中を見守ってくれる大切な人がいるから。

響だけは複雑な表情であったが…。

 

「よっし、明日からまた走り込みがんばりますかねぇ」

「雪風もお供します!」

 

「っしゃあ!!ますますやる気出てきたぁ!吹雪、やるぞっ!」

「はい!頑張ります!」

 

(そうか。あんたのその言葉、姉やんが聞いたら泣いて喜びそうやけど内緒にしとこか。きっかけをくれたんは、間違いなくあの子や)

 

あの子。妹と練習中だったのだろう。大きな弓を持って妹と話している。

 

翔鶴。

 

彼の心を変えたのはまたしても艦娘だった。彼の時間は艦娘と共にいる時間の方が長い。彼女が何を玲司に言ったかはわからない。しかし玲司の心を大きく動かしたのは間違いなく翔鶴だ。まだ開いたのは一部だろうがそれでいい。少しずつ、ショートランドの時とは違うやり方でやっていけばいい。そうすれば、玲司が言う鎮守府のあり方に近づけるだろうから。

 

(がんばりや、玲司。翔鶴。もーほんま見てて初々しいなぁ)

 

玲司が翔鶴に何かを話している。翔鶴の顔は花が咲いたかのように嬉しそうで。瑞鶴と共に玲司とどこかへ行ってしまった。

 

(かー、瑞鶴。そこは二人きりにさせえや…んー、まあ、ええか)

 

何を期待していたのだろうか…。龍驤はつまらなさそうに明石とおもろなってきたな!と食堂でそのまま雑談を始めた。

 

 

横須賀鎮守府の庭の外れには、横須賀の長門と加賀がひっそりと作った石を積み上げただけの簡素な、大淀や瑞鶴は「お墓」と呼ぶ場所がある。石で囲いを作り、真ん中に少し大きな石を立てた本当に、墓と呼ぶのもためらわれる墓。玲司は北上と大淀にこの「お墓」の場所を聞いていた。北上だけが知っていたもの。安久野がいなくなってから、大淀と瑞鶴にだけ教えた秘密の場所。そして玲司が、ここの沈んでしまった艦娘達の慰霊碑みたいなものはないのか?と大淀に聞いて、定期的にお参りには来ていた。

 

「あれ?玲司じゃん。未来の奥さんとお墓参り?それにしちゃあコブが一つついてきちゃってるねぇ、あはは」

「ちょっと、どういう意味よ?私は提督さんが瑞鶴もどうだ、って言うから来たのよ」

 

「お、奥さん…わた、わたし、が…?」

「おーい翔鶴。もどってこーい」

 

「奥さんはまだ先の話だなぁ。ま、そのうち、な」

「ふぇえっ!?」

 

「おーっと、爆弾発言きたよ!提督さん、言質取ったからね!」

 

真っ赤になっている翔鶴とカカカと笑う玲司。それはさておき、柄杓で水を石にかける。雑草も抜いてきれいにしていく。

 

「今度商店街行ったら、花屋さんに交渉してみるかな。ここに定期的には花を供えたいから何かいい方法ないかなって。線香も買っておきたいな」

「へえ、そんなことするんだ」

 

「人間でもそうだな。お花を供えて、線香たてて。お墓をきれいにして亡くなった人に挨拶して。そうして亡くなった人に思いを馳せて偲ぶ。ここではそうだな。沈んでしまった艦娘の魂を慰める。そのために、長門や加賀がここに作ったんだろ。お墓と言うよりは慰霊碑、かな。どちらも大切なものだ」

 

草を抜きながら玲司が語る。誰が言うわけでもなく、北上も、翔鶴も瑞鶴も掃除を始めた。

 

「いいところに作ったなぁ。桜の樹の下で、ゆっくり眠ってもらえるように、か。ゆっくり眠れないような最期の子が多かっただろうけどな…」

 

「ここにはアイツには内緒で大井っちの艤装の一部、長門さんと加賀さんの艤装の破片。くちくたちのも…内緒で埋めた。海でさまよってほしくないから。せめて、一部でもここに連れて帰ってきて、その桜を見ながら、安らいでほしい。持って帰れなかった子がほとんどだけどね。お墓ってそういうものなんでしょ?」

 

石を優しく撫でる北上。そうか。そんなことまで北上は気を利かせてやっていたのか。草取りを終えた玲司が墓の前でしゃがみこみ、静かに手を合わせる。翔鶴と瑞鶴も続く。北上も真似る。

 

「ここに眠る子たちに、この鎮守府を変えていくって誓おうと思ってな。みんなが笑って暮らせる。ここに新しく埋める子を増やさないように。心配しないで、安らかに眠ってください、ってな…」

 

「そっか。あたし達も手伝うし。そうだね。大井っちに心配ないよってこの頃よく言いにきてるんだ。加賀さんや長門さんには、雪風が元気になったよ。翔鶴も、時雨も、村雨も。みんなみんな、元気でやってるよって。ひび、ひびきも…帰ってきたよ、って」

 

泣くのを堪えているのだろう。北上の声が震えている。

 

「北上さん…ありがとう。私の身まで案じてくれて…」

「そりゃあ、ね。あんたも心配だったから…。でも、もう悪い報告は聞かせなくて済みそうだよね、ね、玲司?」

 

「そうだな。いいことをいっぱい報告して、安心してもらわなきゃな」

「うん…。提督さん、今度お花をお供えするとき、絶対私たちも呼んでよ?あの無表情な一航戦に、まだまだ言いたいことが山ほどあるんだから!」

 

「おいおい、そりゃちょっと…」

「へへっ、冗談よ。私は加賀さんに散々バカにされて言われ続けてきたこと、やっとわかったからさ。お花でもお供えして、ありがとうって言いたいから」

 

「ん、わかった」

 

瑞鶴の頭を撫で、また墓に手を合わせる。ムシのいい話かもしれない。けど、今横須賀にいる子達、そしてこれからやってくる新しい仲間を、どうか見守っていてください。そう願って。3人も同じ思いを込めて。静かな時間。頭上の桜はもう咲きそうであった。玲司は何かを思いついたのか、墓を見てニッと笑った。




実際に建造してみたら全部書いた建造時間、艦娘共に外れましたwww

誰が建造されるかは次回明らかとなります。はたして誰なのか?予想してお待ちください。

それでは、また
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