提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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大本営に呼び出された玲司。ここではドタバタでゆっくり話ができなかった1人の提督ともう1人、新たな提督との出会いがあります。どんな提督でしょうね

ブラック提督ではないです。BLACK提督でもないです。


第七十二話

北方海域攻略への足がかりがようやく掴めたのか、玲司にも大本営への招集がかかった。玲司としてはもう少し静観していたかったのだが、舞鶴、佐世保、呉のいずれかが参加に名乗りをあげたが、その他泊地や警備府が「なぜこういう事態に備えて艦娘を準備していないのか。いつまでも出撃もなく我々に負担をかける役立たずな鎮守府を出すべきだ」と抗議が入り、大本営としても動かさざるを得ない状況であったために、玲司を招集した次第である。

 

「まったくうるせえジジババ達だぜ。いつどこで迷惑かけてんだ。沖ノ鳥島では未知の駆逐艦が出たくらいで騒ぐだけ騒いで出撃しなかったくせに」

「そうは言いましても、ここ2年ほどは他の泊地や警備府、鎮守府にご迷惑をかける状況でしたからね…」

 

「ちっ、それもそうか。あんな連中と手組んでやりたくねえなぁ」

 

よその泊地の文句を垂れる玲司を大淀が止める。昔からよその、特に古参の提督は嫌いだった。口だけはうるさく、腰は重い。結果として貸しがある提督もいるが、一旦提督としては離れてしまっているために強くは言えない。その辺りはわきまえていた。

 

ショートランド時代の玲司は自分が最年少と言うこと、同じ年代の提督がいなかったこと。そしてこの嫌な性格の人間が多かったので基本的には連携して組むということはしなかった。佐世保、呉、舞鶴とは組んだことはある。虎瀬は信用できるし、佐世保の豪傑親父も呉の何を考えているか読めないが実力はたしかにある提督だった。泊地でもかつての幌筵泊地のおっとりした老人提督や柱島の特に苛烈な猛将とは手を組んだ。単冠湾の老人提督は退役したと聞いた。柱島泊地の提督は大将になり、でも大本営には着かず、今も東方海域やブルネイ海域を攻め倒していると言う。

 

「あら、早かったわね。まだ会議室には入らなくていいわよ。そこで待っててもストレスが溜まるだけだしね」

 

声をかけてきたのは陸奥。そしてその後ろには高雄。

 

「姉ちゃん、高雄さん、久しぶり」

「お久しぶりですね。大淀さんもお久しぶりです」

 

「む、陸奥さん、高雄さん、お久しぶりです!」

「ふふ、そう固くならなくてよろしいですよ」

 

「未来視」の高雄。「刃の女王」陸奥。原初の艦娘はそもそもの佇まいがまるで違う。その凄まじいオーラにあてられて緊張してしまう。島風でさえ緊張するのだ。

 

「ちっ…こんなとこでなければ玲司君成分を補給できたのに…」

「陸奥姉さん?」

 

「はぁい。仕方ないわね」

 

何か寒気を感じる言葉を聞いた気がしたが大淀は無視した。それよりも、今、目の前には大本営。いや、艦娘最強の頭脳である高雄がいる。聞きたいことは山ほどある。

 

「大淀さん、何か私にお聞きしたいことがありそうですね。会議は長くなりそうです。私でよろしければ、お伺いいたしますわ」

「は、はい!ちょうどよかったです!お聞きしたいことは山ほどありまして!」

 

「うふふ、いいですわ。じっくりお話しましょう。貴女とは私もたくさんお話ししたいことがあったの。では、行きましょうか」

「はい!神通さん、提督をよろしくお願いします」

 

「はい。提督は私がお守りいたします」

 

玲司の横で一言も喋らず、陸奥達には深くお辞儀はしていたが以降は黙っていた神通が喋った。

 

(ふーん。この子が川内がうるさかった神通ね。一見何の変哲も無いけど…すごいわね。柱島のトンデモ艦隊くらいやばい雰囲気ね)

 

柱島泊地。提督もとんでもなければ艦娘も恐ろしく、演習でぶち当たった際には遺書を書け、と言われるくらい他の提督から恐れられている。実際、原初の艦娘総出で柱島の艦娘と対決した時が一番熾烈を極めた。あの時はつい楽しくて三日三晩、あそこの長門と殴り合っていたっけ。まあ自分が勝ったけど、と付け足しておく。赤城は矢を射尽くしたし、高雄は野生の勘のようなもので作戦を見破られそうになったし、島風に付いていこうとする駆逐艦がいたり。確か、空色の巡洋艦とか言う駆逐艦。

 

一度提督が「突撃じゃあ!」と言えば全滅するまで止まらない。曰く、西方海域の南方棲戦鬼が泣いて逃げ出すほどの暴走ぶり。「破壊し尽くす黒波」と呼ばれる柱島泊地の全艦突撃は敵も味方も戦慄させる。いや、まあ今回の北方海域には不参加ではある(会議には参加するが)。柱島の提督曰く「血湧き肉躍るほどの炎はない。東方海域や西方海域のほうがよっぽど滾るわい」とのこと。

 

会議の内容は北方海域の深海棲艦が集中していることによるこれの殲滅について。これは若手の提督3人。横須賀鎮守府の玲司。大湊警備府の一宮提督。そして幌筵泊地の九重と言う提督が合同で殲滅するよう命じられた。

ふん、と偉そうにふんぞり返り、見下すかのような目で玲司を見る提督達。その提督達をよそに勢いよく立ち上がり、ギラギラした目で玲司を見る目があった。ニィと笑うと声高らかに笑う白髪のごつい男。

 

「ワハハハ!!若い者こそ熱く炎を燃やすべきじゃあ!励め、大本営期待の若人よォ!長門ォ!」

「はっ!!!l

 

「帰るぞ!儂も燃えてきたわ!!出撃するぞ!!」

「はっ!!カスガダマに新たな艦隊が出没したと」

 

「ハッ!!長門!貴様が艦隊を組み、叩き潰せィ!!!」

「お任せをッ!!」

 

突然のことで唖然とする会議室の面々。暑苦しい…そういうのは帰ってやってほしい…。柱島泊地の提督「三好 薫(みよし かおる)」。名前は何やらかわいらしい、と最初は思ったがいざ顔を見ればイカつい、詐欺のような名前である。いつも大胆不敵に笑っているが、目は飢えた猛獣のようにギラギラとしており、戦果はトップレベル。階級は大将。虎瀬と同じく、超現場主義なので大本営に招かれるのを頑なに拒んでいる。

 

父も彼を大本営に縛り付けることはできない。彼がいるから西方海域と東方海域は安心して任せられる、と柱島から動かすことはない。虎瀬が冷静に、かつ理知的に戦局を動かしていく頭脳派ならば、三好提督は本能のままに攻める。舞鶴と柱島の戦果は他の提督達では追いつけないほどである。泊地に研修に行った者は皆口をそろえて魔境、と呼ぶ。しかし、ブラックと言う意味ではないらしい。実際、轟沈艦は彼が着任してからはずっとゼロである。一体どうなっているのか…。

 

「三条ォ…よう戻ってきたのォ」

「お久しぶりです、三好提督」

 

「2年前は弱い炎じゃったが、今は良いのォ。良いのォ。強い。ククク、熱き炎が燃え盛っておるわ。一宮に九重。彼奴らも良い炎を纏っておる。3人で切磋琢磨し、もっと燃え上がれィ!!貴様らの炎は心地良いわい。見せてみィ、貴様らの炎を!ワハハハハハ!!!」

 

バシィ!!と思い切り背中を叩かれ、咽せている。あれほどまでに上機嫌な三好提督は見たことがない。廊下でもずっと笑っていて、こっちにまで響いてくる。うるさい…。

 

「フォッフォッフォッ、えらい奴に絡まれたのう、三条君」

「ゲホッ…上郷提督…」

 

「三好がああも三条君や一宮君に興味を示すとはの。まあ、わしも興味がありありじゃがの。北方海域、頑張りなさい。期待しておるぞい」

「あ、ありがとうございます…」

 

「フォッフォッ。では矢矧。わしらも帰るかね」

「はい、おじいちゃ…提督」

 

上郷 願徳(かみごう がんとく)大将。佐世保鎮守府を守っている。通称「鉄壁」。重要拠点の防衛をやらせれば右に出る者はいない。1年前に行った第一次レイテ攻防戦では防御の要となり、本土方面へ漏れた深海艦隊は現れなかった。シブヤン海での見事な防衛戦が新しい。上郷提督が守り、三好提督がスリガオ海峡を攻めに攻めて深海艦隊は壊滅。しかもあえてかつての西村艦隊を結成させて突破させるという粋な計らいもやってのけた。

 

レイテではまた不穏な動きがあり、呉鎮守府の調査艦隊が張り付いている。今度はエンガノ岬沖に不穏な動きがあるらしい。呉の提督、堀内 京(ほりうち きょう)提督。「静寂の艦隊」と名付けられた彼の艦隊は、レイテにおいてはエンガノ岬沖の戦いがある。深海艦隊は強力な戦艦棲姫や空母水鬼などを先頭に、強力な艦隊を有し、シブヤン海、スリガオ海峡への増援を送り込もうとしたが、一週間もの間堀内提督率いる艦隊に足止めを食らい、最後には打ち負かされた。ひっそりと背後に回った艦隊に補給部隊をやられ続け、じわりじわりと補給と退路を断たれ、弱ったところを一気に叩かれた。また、痺れを切らした一部の艦隊が突撃をしてきたものの、多少の中破や小破を出したが撃退。次々と送り込まれてくる新たな練度の高い艦娘に、手も足も出なかった。

 

このレイテ攻防戦での功績が凄まじかった三好提督、上郷提督、堀内提督は大将に昇進。三大将と呼ばれている。攻撃、防衛、智謀。それぞれの分野でトップに立つ提督たちである。

 

「おお、三好。随分と若者に激しい発破をかけたのう」

「あれくらいが若い衆にはいいんじゃい。貴様も同じ発破をかけてやろうか?ガハハ」

 

「儂は結構じゃ。フォッ。儂らに代わって新たな名将の芽となるか、この北方海域攻略、実に楽しみじゃわい」

「フンッ、まずは肩慣らしに過ぎん。北方海域くらいでつまづいているようでは、この先ミッドウェーも。真珠湾も、レイテも。どこへ行こうが負けるだけじゃのォ」

 

「違いない。近頃はますます強力な姫や鬼が現れ、未知なる姫も出てきておるでの。まあ、まだ若い者じゃ。北方海域や南西海域。ひいては中部海域の攻略くらいは任せられるようになってほしいもんじゃ」

 

「それまでは儂ら老兵が気張るしかないのォ。見たか、上郷。彼奴らは良い炎を持っておるぞォ?儂はなァ、楽しみじゃア。彼奴らがこの先この海軍に炎の大嵐もたらすことなァ!」

「フォッフォッ。それは楽しみじゃのう。今のこの海軍では期待ができる提督がおらんかったでのう。外道ではあるが、実力があるのはリンガの奴くらいかのう。三条の信念と真逆じゃが、轟沈も出さず、合理的に敵を屠る点では実力は確かじゃな。あそこの艦娘達はもはや奴の忠実なキラーマシンじゃ。三条達が見れば、まず間違いなく反発しあうじゃろう」

 

「ぶつかればいい。提督はそれぞれのやり方がある。儂や三好のやり方、虎瀬のやり方。三条や一宮、九重にもやり方はある。互いに認め合い、成長することもあれば反発し合うことで成長もあるわい。反発するだけなら童でもできる。反発しつつも学ぶべきこともある。それを取り入れられるかどうか。これが成長の材料よ。いずれぶつけても良いと思うがのォ」

 

ニィィ…と三好が笑う。彼は彼なりに三条達の成長を促しているのだ。今はその時ではない。いずれは何かの形で大規模な作戦に参加した時、そういうことになる時もあるだろう。その時に彼らがどうぶつかり、受け止めるのか、目を背けて見ずに終わるのか。そこでその芽は伸びるか、摘まれるか、はっきりわかるだろう。三好と同じく、彼らには興味がある。できるなら退役するまで彼らの成長を見届けたい。

 

「艦娘は『家族』!『仲間』!否、『兵器』!!儂はんなモンどうでもいい。儂は戦場に燃ゆる炎!それを見、こちらの炎が消えるか。深海棲艦の炎を吹き消し、こちらの炎で燃やし尽くす様を見届けるのが楽しいから提督に着いたまでよ!狂人と呼ぼうが知らぬ!それに呼応した艦娘がたまたまおって、そして炎を纏い出撃し、敵の炎を打ち消す!儂は儂の炎が燃え尽きるまでこの長門らと戦うつもりよォ。ガハハハハ!どうじゃ長門!儂は何か間違っておるか!?」

「はっ!間違いはありません!我ら三好艦隊!我らも我らの炎が消ゆるまで、提督と共に熱く燃ゆる炎となりて海へ出る次第です!!!」

 

「そうじゃ!!それでええ…!!ゆくぞォ長門ォ!!新たな炎が儂を!貴様らを呼んでおるわァ!!!」

「はっ!!長門も提督について参ります!!!!!!」

 

3日は耳に残りそうなほどの声量で笑いを浮かべながら猛将、三好は帰って行った。隣では耳を塞いだ矢矧が迷惑そうな顔をしていた。三好と話すといつも矢矧は最後に耳が痛いと言う。

 

「はあ、やっと帰った…相変わらずうるさいわね…」

「まあそう言うでない。情熱的で実直なだけじゃ。奴の気合は本当に心に火を灯すようじゃな。うるそうて敵わんがのう」

 

フォッフォッとまた穏やかに笑っていた。ともあれ、三好が目をつけたと言うことは本当に期待が持てる。期待の芽が悪意に摘まれぬよう、そして枯れぬよう静観の構えを取るしかあるまい。

 

「と、言うわけじゃが、お前はどうかのう?堀内や」

 

真っ黒の髪をオールバックにし、威圧感のあるが感情に乏しい目。年は40代も後半に差し掛かろうかと言う精悍な顔。堀内 京が背後に立っていた。いつの間に…矢矧はいつからいたのかさえ察知できなかった。

 

「……興味がない…わけではありません。が、私には彼らに対して意見を述べるのは憚られます」

「興味はあるが薄いと言うことかのう?」

 

「いえ。そう言うわけでは。…一宮提督…彼には作戦の立案を多くやらせ、場数を踏ませるのが良いでしょう。北方海域での総司令は彼に任せるべきかと」

「…フォッ。古井君にはそう伝えておこう」

 

「三条提督は放っておいても成長の見込みはある。九重提督は…上郷提督の指南があったほうが良いのでは?」

「なるほどのう。わしの『鉄壁』をのう。では、攻撃の三条。守りの九重、智謀の一宮、か」

 

無言で頷く。感情のない爬虫類のような目は、矢矧にとっては不気味でしかない。しかし、現海軍三大将の1人。虎瀬中将も入れれば四天王とまで呼ばれる海軍の要。彼がそうと言うのなら、そうであると信じるしかない。

 

「九重提督を攻撃に出し、一宮提督は失敗するやもしれません。北方海域自体の攻略は、成功するでしょうがね。では、私も出撃を控えておりますので、これで」

 

小さく会釈をし、去っていく。空母「雲龍」も小さくお辞儀をしてついていく。なるほど、三大将全員が彼らの動きに興味を示している。これは彼らも大変な重圧じゃのう、と髭に触れる。

 

「フォッフォッ!面白くなってきたのう、矢矧や」

「は、はあ…」

 

「フォウ。ではわしらも帰るとするかの。ああ、博多で明太子を買って帰りたいのう」

「塩分が濃いのでダメです」

 

「おお…そりゃ残念じゃのう…せめて一箱くらい…」

「…小さいの一箱だけなら」

 

嬉しいのう!と子供のように喜ぶ提督に、少し呆れながらも許可し、ジープの運転席に乗り込む矢矧。世話の焼けるおじいちゃんだこと。「わしはもう年じゃて運転は怖いんじゃ、矢矧に任せた。若い頃はブイブイ言わせとったんじゃがのう」ともう何度聞いたか分からない言葉に「はいはい」と言いながら車を発進させた。

 

 

一方、大本営の会議室を借りることに成功した玲司。一宮提督の提案で、少しここで3人で作戦を練りたいと言うことだった。たしかに電話やFAXなどでは面倒だし、今はウェブカメラでのオンラインでのリアルタイムで執務室で作戦を練ることもできるが、やはりどこかで確認漏れが起きたり、抜けがあることもある。せっかく大本営に集まっているのだし、この際、一緒にやるなら顔合わせもしておきたい。

 

「すみません、三条提督。お時間を取らせてしまいまして」

「無駄にはならんでしょう。合同での作戦です。顔合わせをしたり、こうして集まった方が作戦も練りやすいでしょう」

 

「助かります。九重提督も連絡がつきまして、すぐ向かうそうです」

「この際です。年も近いし、堅苦しくいくのはやめにしませんか?気を遣いながらやるのもより疲れますからね」

 

「わかりました。普通にお話しください。私は…すみません、この喋り方が一番気楽です」

「そっか。じゃあ、よろしく頼む、一宮提督」

 

こちらこそ、と笑った。あの演習以来だったし、最後はろくなあいさつもできず、その時にはもう砕けた間柄でいたいと提案したかったが、安久野がまさかの登場で全部がフイになった。

 

「やあ、大淀に神通。先日はどうも」

「お久しぶりです、日向さん」

 

「日向さん、ご無沙汰しております」

「また会えて嬉しい。そして、此度はこうして合同での作戦になり、共に戦えるのも嬉しいな。1つお手柔らかに頼むよ」

 

大湊の総旗艦日向。前回会った時よりも更に逞しくなっているような気がする。それもそうか。少し前に日向は改二への改装が可能になったと発表があった。さっそく、さらなる強さを得るために改二になったようだ。

 

「あの時は君たちを侮辱するような真似をして申し訳なかった。今度はこちらも皆強くなった。全力で最初からお相手するよ」

「私たちも鹿島さん指導のもと、強くなってきております。機が熟した時には、是非とも」

 

神通が強い眼差しで日向を見る。そのまっすぐな瞳は、強さに自信がないなら目を背けてしまうような、そんな威圧感も含まれていた。が、日向はそれを笑いながら受け流した。

 

「ふふ、強い目だな。ぜひ手合わせ願おう」

 

日向もまた強い眼差しで大淀と神通を見た。大淀はたじろいだ。神通は一歩たりとも引かずに、火花でも散るのではないかと言うくらいに見つめあっていた。

 

「おーいそこ、今から決闘でも始めそうな雰囲気を作ってんじゃないよまったく」

「む?ああ、すまない。つい、な」

 

「も、申し訳ありません…」

 

ぽりぽりと頬をかく日向と恥ずかしそうにペコペコと謝る神通。決闘にはならないと思ったが、迸る闘気で室内が何かバチバチ言ってたくらいだったので玲司が止めた。

 

「いや、一宮提督。あんたもだよ。俺に対してえれえきつい気配だったよ」

「えっ、し、失礼しました…」

 

「ふふっ、意外に好戦的だねぇ。まあそうでもなきゃいきなり演習を申し込んできたりしねえか」

「む、むう…返す言葉もありません」

 

「そうだな。提督は意外に出撃の際は熱い男だよ。そこに惹かれたんだがね。最初は頼りない男だと思っていたんだが、武闘派だよ。ただし、頭は大湊の艦娘は誰も敵わん。私も、飛龍も」

 

「ひゅ、日向さん…惹かれたとは…」

「何だ、惚れた男のいい所は語りたくなるものだよ。もちろん、ダメなところもかわいいけどな。朝が弱いこと、酒にすぐ酔って寝てしまうところ、とかな」

 

唐突に惚気だし、きらきらと目を輝かせる日向。それとは正反対で困った顔を赤くしている一宮提督。しきりにメガネを上げている。大淀としてはその仕草は親近感を覚える。ふふ、良い男だろう、と日向は彼を気にもせずにドヤ顔を決めている。

 

一宮 涼介提督。シルバーの細いフレームレスのメガネ。鋭い切れ長の目。冷たさを感じるかと思えば温かみのある嫌味じゃない敬語の喋り方。控えめかと思えば時に大胆かつ繊細に作戦を進める智謀知略に優れた提督。まだ階級は中佐ではあるが、今後の活躍が期待されている若手の提督。大人しめな艦娘が好みそう、とも思ったが意外にも日向とお付き合いしている、と。大淀の脳内メモに記入される。

でも実際には利根や曙、飛龍などと言った快活な艦娘が横須賀には来ていたか。吹雪もどちらかと言えば活発だし。今後、横須賀との交流があれば、彼の知略はとても助けになるだろう。

 

一方で、まだ顔も知らない若手の一人、幌筵の九重提督。前提督のせいですっかり情報が封鎖されていたために、新しい提督はおろか古参の提督さえ知らない状態だった。古井司令長官くらいしか知らない。さて、もう一人、うちの提督と一宮提督と同じくらいの若手提督。どのような実力で、どのような容姿をしているのか。楽しみだ。

 

「お?いっけね、みんな揃ってんじゃねえか。すまねえ、もう来るからさ。オレは九重提督の秘書艦「天龍」だ。よろしくな。おーい、早くしろよ!みんな待ってるってば!」

 

そう言って小走りで入ってきたのは身長は三条提督より少し高いくらい。栗毛色の髪に…整ったお顔…。ああ、爽やかそうな好青年…。

 

「はいはいわかってるわよ。もーいちいち天龍ちゃんは口うるさいんだからぁ。あら!天龍ちゃん、イケメンよ!イケメンが2人もいるわ!!一宮君は知ってたけど!あらぁ、伝説の提督、三条提督がこんなイケメンだったなんて嬉しいわぁ!もう、脂ぎったピザファットデブや禿げ散らかしたおっさんとの会議じゃなくてよかったわ!あとババア!

あ、アタシ「九重 鏡二郎(ここのえ きょうじろう)」。幌筵泊地の今回イケメンのお二方と合同作戦に参加する提督よ!よろしくお願いねー!」

 

大淀は真っ白になって全思考を停止し、フリーズした。




艦娘ではなく、新しい人間がたくさん登場しました。いかがだったでしょうか?

次回も一宮提督と強烈なオ・ネ・エ(間違えると死刑)の九重提督との話になります。北方海域を攻略にとりかかる若手三人組。ぜひとも応援(主に大淀の)をよろしくお願いします。

それでは、また。
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