臓物ぶちまけて死にかけの侍を勇者として召喚してしまった件について 作:トロ
カリスのハンター三十人程度との戦闘が始まってものの数分、たったそれだけでクロナとナイルの周囲には無数の死体が積み重なるという結果に終わった。
戦場跡の如く、死体以外にも周囲には突き立った矢や魔術によって刻まれた破壊の跡が幾つも残っており、その戦闘の凄まじさを物語っていた。
「……ふぅ」
呼気を一つ吐きながら、辺りを警戒しつつクロナは腰の鞘に大剣を納めた。
その体に纏った鋼鉄の鎧には、ハンターの放った矢や鉈での斬撃によって幾つかの裂傷と窪みが出来ているものの、クロナ自身はほぼ無傷と言っていい。
だがクロナは決してこの勝利が己の手柄ではないことは分かっている。
「お疲れ様ですクロナさん。いやぁ、彼らはかなりの強敵でしたわね」
その勝利の要因となった協力者、ナイル・アジフは近くの木の根元に放っておいた荷物を背に担ぎ直すと、全く疲労した様子も見せずにクロナを労った。
クロナと違って見た目にも戦闘前と殆ど変化はない。
唯一戦闘前と違うのは、その両手がカリス達の血で真っ赤に染まっていることくらいか。
「……この、化け物が」
クロナの口が思わずついた悪態を咎める者はいないだろう。
何せナイルが行ったのは、宗司と同じくクロナの常識を崩壊させる異端の数々であった。
強化の魔術を使った人体は、使っていない時と比べてその能力は雲泥の差がある。小さな子どもですら、強化を使えれば強化を使わぬ同年代の子どもに密度のある固い木刀で殴られたとしても、かなり痛いだろうが、骨が折れることはないだろう。
初心者が使用してもそれほどの劇的な向上を見せる強化の魔術は、熟練者になればさらなる効果が望めるほどだ。クロナ程ならば、使用すれば大剣の一撃で地面にクレーターを作ることすら容易である。
そしてカリスの使用していた強化も、熟練者のそれに匹敵していた。少なくともクロナの知る優秀な兵士の水準を超える程の精度であり、その肉体は鋼鉄の強度に匹敵するだろう。
そんな鉄壁の肉体を、武器も使わぬ生身の人間の素手が貫き、潰し、引きちぎっていく光景は、宗司という前例を知らなければ目を疑ったことだろう。
彼女もまた、己が届かぬ超常の存在。生身で魔を凌ぐ異端の化け物。
狂気の者。
ナイルは警戒心剥き出しで睨んでくるクロナの視線を受けても、決して笑みを崩すことはなかった。
「酷い言われよう……と、返すのも芸がないというもの。そう目くじらを立てないでくださいな。私から見れば、魔術などという技こそ、それはそれは化け物染みていて恐ろしいのです。所詮、手癖が悪いだけのはしたない乙女ですので」
「……ソージと似たようなことを言うのだな」
「棒振りが得意だとでも?」
「聞いたのかい?」
「あの人ならそう言いそうだと思っただけです」
ナイルは指先から滴る血を軽く払うと、背負った荷物から取り出した刀の手入れようのボロ布で両手の血を拭い去った。
「さて、周囲には気配は無し……いい感じにソォジさんの方に彼らは集まっているようですね」
今も戦っている宗司達の居る方向に視線を向けると、微かに聞こえてくる闘争の地鳴りに気分よく目を細めて酔いしれた。
大いに暴れてくれているだろう。しかもメイルという、
幾ら宗司でも、枷が嵌った状態で一気に葬れる程、カリスというこの一帯を支配する先住民族の力は低くない。
「……しかし、冷徹に人を招き入れる狡猾さを持ちながら、やり方は随分と優しかったですね」
「どういうことだい?」
クロナの問いかけに、ナイルは周囲に着弾した魔術――宗司達が受けたのと同じく、巨大質量の泥団子が弾けた一角を指さした。
「私達を殺すならもっと違う魔術があったはずです。例えば周囲一帯を炎で取り囲み、延焼範囲を抑制することなど魔術であれば容易いことでしょう」
「炎の魔術を使えないというのは?」
「それも答えの一つかもしれません。ですが、魔術が生活に密着している以上、料理にしろ松明にしろ、何かしらで火を使うのは知恵のある人間が生活していれば当然のこと。少なくとも、彼らが話に聞いた通り他文化との交流を持たないのであれば、彼らが使う鉈は自前で作ったということ……ここでは、火を使わずに鉄を扱う方法があるのですか?」
「いや、魔法具等の一部の物品はともかく、普通の鉄ならば火を使って精錬するのが普通だ」
「でしたら、彼らが火を扱うのはほぼ確実でしょう。なのに、我々を殺すのに最適な火攻めという手段を使わなかった……あそこまでの矢を風の魔術で操れる者達です。このような樹海であれば火事の一つや二つ、彼らが生きてきた歴史で起きていても可笑しくない。ならば風の魔術で鎮火を促す方法や、それを応用した火攻めを使わないのは、やはり優しいと言わざるをえないでしょう」
ナイルの推論は納得が出来るものだ。クロナもその意見に反対するつもりはないが、それにしても何故そんなことを彼女は気にしているというのだろうか。
「言い換えれば不自然とでも言えるでしょう。あんな方法ではなくて、もっと適切な方法があったはず。ですが彼らはまるで我々がどのような対処をするのか見定めているようにも見えた。矢が通じなければ白兵戦、白兵戦も通じなければ魔術、魔術も通じなければ矢と白兵戦と魔術を全て使って襲い掛かる……それにしても、魔術に至っては最低限のものしか使用しなかった」
言われてみれば不思議である。
確かに戦闘の最中、クロナも言いようのない『もどかしさ』を感じてはいた。
「何よりも疑問なのは……クロナさんをぎりぎり殺せる戦力しかこちらに投入しなかったことでしょう」
カリス一人ひとりの戦力を実際に戦うことで把握したナイルは、気配を殺してクロナに合流した己が居なかった場合、勝敗はほぼ五分五分だっただろうと予測を立てていた。
「……それは、確かに疑問ではあるな」
クロナもそれは分かっていた。だがそれも、ナイルという圧倒的な化け物が気配を殺すでなく、周囲の自然に気配を溶け込ませてこちらに合流したおかげで、勝負の行方は一気にこちら側に傾いたのだが。
「あの数は流石に偶然とは言えないでしょう。ほぼ間違いなく、聖域の効果によってクロナさんの能力を把握した彼らは、貴女が一人になった隙を見計らって同等程度の戦力を投入した……普通、確実を求めるならこの倍は投入するのが普通です。実際、遠くの喧騒を聞く限り、彼らの戦力はまだまだ十分にあるはずですしね。先行するソォジさん達に感づかれずこちらに戦力を送れたのも、この森にある転移パスのおかげだと考えれば不自然ではない。故に余計、戦力配分を五分にした違和感が残るというもの」
「だが、奴らは君が私に合流してから姿を見せただろう? 君の予測が正しいなら、すぐにでも戦力の大本……拠点Aとでも呼ぼうか。そこに連絡を取って戦力追加を即座に送ってもいいものだ」
「それは私も思いました。ですがクロナさんとの勝敗が五分になる戦力が、私が介入することでどのように変動するかで……実力が未知数な私の能力を把握するつもりだったのかもしれない。まぁこの推測も、拠点Aが転移を使用した戦力の供給、および情報伝達を担っているのならば、という仮定の話ですが」
だがもしも事実だった場合、今周囲で骸を晒すカリスのハンターは、己が捨石になることを分かっていて戦いを挑んできたということになる。
まるで己の意志の無い蟻が群がってきているのだと考えたクロナの背筋を嫌な汗が流れた。
ならば彼らは一体なんだというのか。思考を巡らせるクロナだったが、パンっと手を鳴らす乾いた音が彼女の思考を強引に中断させた。
「まっ、私から言っておいてあれですが、悩んでも仕方ないことです。私達は既に敵陣深く突入した。敵の戦力は未知数、実力は上々、対して我らはメイルちゃんという足枷はあるものの、個の戦力は彼ら一人ひとりを遥かに上回っている。ですが、人数があまりにも少なく、居場所も既に知られています」
「……行くしかない、ということか」
「そういうことになります」
覚悟を決めて気を引き締めるクロナとは逆に、ナイルはリラックスした心地で弾むように一歩踏み出した。
「では、私はこれで失礼しますね」
「ナイル……?」
クロナが声の方向に視線を向けるが、最初から存在していなかったかのようにそこにはナイルの姿が消えていた。
出てきた時と同じで、消える時も唐突な奴だ。
文句の一言でも言いたい気分であったが、先程言ったように今は前に進んで宗司達と合流するのが先決だろう。
疑問は幾つもある。
その中でも特に疑問なのは、ナイルがわざわざ相手の奇妙な動きをこちらに教えたことなのだが、クロナは思考を振り払うように駆けだすのであった。
―
ナイル・アジフという人間は嘘つきである。
しかも只の嘘つきではなく、常日頃語る嘘の中に、相手が信じるようなさりげない嘘を混ぜることで、重要な真実を有耶無耶にするのが大好きであるという筋金入りの捻くれ者だ。
「さて、ある程度のヒントは与えましたが……ここからが見物ですね」
ヒントを与えすぎてクロナに若干違和感を持たれただろうが、胡散臭さは最初から見せつけた通り、違和感は違和感のままで終わるとナイルは結論した。
尤も、彼女にあんなにもあから様な助言をしたのは、クロナが気付くか気付かないか、そのスリルを味わい尽くすためだけだったというのが理由の大半を占めているのだが。
「しかしこうも上手くいくとは。やはりソォジさんはにゃるのもたらした使徒に違いないのでしょう」
出会う前は、『どうやってガイア大樹海に件の勇者を行かせるか悩んでいたものである』。あの手この手で進路を変更させ、最悪の場合は脳髄を直接弄ってガイア大樹海に赴かせることも視野に入れていたが、最初からガイア大樹海に行くと決めていたのは、ナイルが考えた中でも最高の展開だ。
「彼ら……ソォジさんならばカリスを狩りつくすのにそう時間はかからないでしょう。ふふ、まぁ私自ら手を下しても良かったのですが、余興を行うというのは人生を充実させるというものです。ねぇ? 族長さん」
「はい、仰る通りでございます。偉大なるにゃるの使徒ナイル様」
「ヒエラもそうでしたが、かしこまらずともよろしいものを」
困った素振りを見せつつ、ナイルは己の隣で片膝をつくカリスの族長の頭に洗礼を与えるように掌を乗せた。
同時、頭を鷲掴みにした指先が何の抵抗もなくその頭蓋骨へと沈みこんだ。
「お、お、お、お、お、ナイル様の御手が我が額を汚染していくのが分かります……!」
「気になさらず、私からのちょっとしたご褒美ですから。本来ならすぐにでも神の御許へ行く栄誉を与えられるはずだったのを、こうして手間を取らせているのです。神より授かりし我が御手で、少しでも神を感じていただくのは当然の権利ですわ」
愛撫するように族長の脳味噌を弄りながら、ナイルは視線の先に立っている巨大な石造りの門を見上げた。
全体に刻まれた術式は、現行の転移パスへと通じる道を繋げるもの。これこそ、ガイア大樹海に存在する廃棄されたとされる転移パスだ。
「まぁ私としては、ソォジ様という混沌に挑み、命を散らせる権利を得られるというのはそれだけでご褒美のようなものですが……ふむ、やはり彼の太刀筋は魅力的です」
転移パスの機能を使用した遠見の魔術によって、ナイルの周囲に、宗司、メイル、クロナが今何をしているのかが空間に転写されて今も映像を見せている。その中で一際目立つ宗司の動きに、ナイルは熱い吐息をついて酔いしれた。
「美しい。想像通りに、想像以上……まさにこの世界において、私と同じ神の代行者として誘われただけのことはありますね」
だが、まだだ。
ナイルは柔らかな脳の感触を楽しみながら喉を鳴らす。
「力を見せなさい。意を見せなさい。五臓六腑を吐き出して、あらゆる全てを晒すのです。その果てに、貴方が真の代行者ならば、きっと、神の試練を乗り越えられることでしょう」
全ては最初から、彼女が事前に計画をしていた通り運ばれている。
ナイルは初めから嘘を幾度もついて、自分が嘘つきであると彼らに意識させた。あるいは本気かどうか分からない冗談を言うような、本意の分からない女だと思われていることだろう。
だからこそ、彼女はすんなりと彼らを騙すことが出来た。
ガイア大樹海に戦闘民族カリス。
そんなこと、彼女は最初から『知っていた』。
それどころか、事前に族長を洗脳さえしていたのだ。
その理由は彼女を召喚した第十八課エンドの面々。『世界の裏側の歴史』を記録し続けた彼らから、ナイルは事前に最低限の知識としてメビウス王国の成り立ちから、現在までの全てを知ることが出来た。
そして、カリスがメビウス王国との盟約により、アポロン山脈より下りてくる魔獣と、国を滅ぼせる程の恐ろしい魔獣がアポロン山脈に生息しているという真実を民に教えないため、立ち入る侵入者を問答無用で狩りつくさせ、絶対に侵入させないようにしてきたことも、彼女は知っている。
だがそれは混沌を求める彼女からすれば目の上のたん瘤だった。魔獣という分かりやすい脅威があれば、容易く転覆しかけのメビウス王国に決定打を与えることが可能だろう。そしてそのうえで、エンドの面々を使って信者を増やし、善悪等しく入り乱れた完全なる混沌へ近づけていくのだ。
だから彼女は王都を葬った勇者に会うよりも早く、ジムを使ってカリスの本拠地へ秘密裏に転移を果たし、族長を洗脳して配下に治めた。
本来なら洗脳などはせず、一人ひとり殺戮しつくすことも考えたのだが、族長から聞いたカリスの人数はナイルが殺すには人数が多く、少々手間がかかると彼女は感じたからだ。
そこで思いついたのは、聖剣の勇者とカリスをぶつけ合うというもの。その時は未知数であった聖剣の勇者の実力を知り、真に代行者足りうるかカリスを使って試練を阿多会えることにしたのだ。
カリスという民族が、族長を頂点とした絶対なる縦社会になっていたのも功を成した。おかげで全員を洗脳する必要なく、試練に相応しく、族長を介して戦力を小分けに、宗司という男を味わい尽くすためにナイルは戦いを見守ることが出来ていた。
「私は嘘つきですが、知った分だけ知ってもらうというのは嘘ではないですわ。ですから、見せた分だけ、見せてください」
浮浪者を倒した時言った通り、自分は宗司にたっぷりと己の技を見せつけた。
だから次は自分の番だ。彼女の頭からはすっかり、宗司への質問の見返りとして己の技を見せたという事実は消え去っている。
そのうえで、自分が見せた以上にこちらが宗司の技を知ったとしても、それはカリスの実力が高かったための不可抗力になるだろうと、ナイルは勝手に納得していた。
あくまで利己的。
どこまでも自己中心的。
だからこそ、彼女は己の内心に気付いていないのだ。
その笑顔の裏の奥――宗司という恐るべき剣客を見た瞬間に感じた脅威を払拭するために、食い入るように彼の実力を見定めているのだという事実を。
狂信者という一面の、彼女の本質とはやはり離れている。
その真実は宗司と同じく、強者を葬るために全霊を注ぐ修羅のそれ。
敵を知り。
知り尽くし。
そしていつか、必ず殺す。絶対に殺す。死んでも、殺し尽くす。
「さて……では最終試験の準備に移るとしましょう」
ナイルは一端中継を止めて族長の頭から指を抜くと、族長が両手で恭しく持っていたボロボロの布を見下ろした。
道端の隅っこを探せばありそうな程汚らしいその布は、しかし隠し切れない膨大な魔力と、周囲の空気を浄化していく清浄な力を滲ませていた。
その雰囲気はまさに神が授けた神秘のオーラ。見た目の汚れとは裏腹に、聖なる物としての力を十二分に漲らせているそれこそ、カリスがこの大樹海で人間の侵入を拒んでいる本当の理由。
聖剣と聖槍と同じく、人の目より隠された究極の一。
「聖骸布ハック、か」
聖骸布ハック。クトゥアがその身に直接纏っていたとされる伝承がある、『世界改変能力』を持つ聖装系統が一つだった。
見るだけで人々の心を穏やかにするそれを見るナイルの目に浮かぶのは、隠し切れないまでの嫌悪と苛立ち。邪神の供物など見るに堪えぬと言った様子でありながら、それでも彼女がこれを手にしたのは、たった一つの目的のため。
「全く、チートと言いこのハックと言い……邪神のセンスにはほとほと呆れるほかありませんわ。その点、我が神のもたらした聖槍ジムの気の利いた皮肉よ。まさに下らぬ名前を嘲笑うにゃるの息吹が……っと、今は神を賛美する時間ではありませんでしたね」
エンドに伝わる伝承によれば、聖剣(それと聖槍もだったが、その記述はナイルもエンドの面々も意図的に削除した)が暴走した場合、世界を正しい形に戻すため、神の纏った衣によって世界を包み込むとされている。
「喜びなさい忌まわしき道具よ。我が手によって、真の神に仕える最後のチャンスを貴様にくれてやる」
そんな伝承などナイルにはどうでもよかった。
彼女がこの聖骸布に期待することはたった一つ。
「邪神が油断したため、その隙を逃すことなく、神は聖剣より代行者足りえる逸材をこの世界に寄越しました……ならば、このボロ布もまた、新たな逸材を呼ぶに違いない」
先見の目を持ち、暗躍を得意としながら、ナイルは彼女が信奉する神と同じく、全てをかき乱す喜びのためなら理路整然としていない論理すら振りかざし、それを成し遂げようとする。
それも当然だ。この女に、正気など最初から存在していないのだから。
「つまりぃ! 神はどちらが混沌の代行者に相応しいか試練を与えよと私に言っているのです! おぉ! ソォジさんという逸材ですら神にはまだ足りぬというのか! えぇ! でしたら呼びましょう! もう一人の代行候補を呼んでみせましょう!」
全ては混沌の使者の掌の上。血濡れの両手を夜空にかざし、ナイル・アジフは思う通りにことが運び、想像通りの狂気が生まれているこの場を自分がコントロールしている事実に打ち震えた。
「さぁ呼びなさい族長! 貴方の穢れたその血にて! 真の奇跡を起こすのです!」
「はぃぃぃぃ! 全ては混沌の導くままぁぁぁぁぁ!」
族長は焦点の合わぬ目で空を仰ぎ、唾液をまき散らしながら、血の滴る頭に聖骸布をあてがった。
その真下の大地に巨大な魔法陣が描かれる。一秒だって同じ形を維持せず、あらゆる術式と陣を刻み続けるそれこそ、世界の外に在る適格者を呼ぶ門。
「『世界の改変者! 敬虔なる神の使徒よ! 闇に染まる世界を光で染め上げよ!』」
そして魔力の込められた詠唱は、門を開く鍵である。夜へ叫ぶ宣誓と同時、族長を囲っていた魔法陣が昼の太陽如き閃光を周囲に放出した。
流石のナイルも思わず目を瞑り掌で光を遮る。目を開けることも出来ぬ光量は、数秒程してから徐々に収まっていき。
代わりにその場を満たしていくのは、芳醇なまでの血の香り。
収まっていく光の中、ようやく見られる程に収まってきた光の中を見たナイルは、感嘆の溜息をついた。
次回、第五修羅『虚無』血濡れの騎士。
例のアレ
聖骸布ハック
聖剣、聖槍に続いて三つ目の聖装シリーズの一つ。やはりクソみたいな名前。
これまでの聖装シリーズとは別格の存在であり、保有する力は『世界改変能力』。使い方によっては願うだけで世界が消滅する危険すらあるため、例え聖剣聖槍を失って人族滅亡が確定したとしても絶対に使用してはいけない代物だった。
洗脳した同胞からの情報でナイルが存在を把握。新たな勇者召喚の媒体として使われた。