臓物ぶちまけて死にかけの侍を勇者として召喚してしまった件について   作:トロ

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第十八話『戦場を走る』

「ここどこだ?」

 

 かつてアバド流通街と呼ばれていた廃墟を出てから数日。時折現れる魔獣を斬り捨てながら旅を続けていた宗司達は、先頭を歩くダンの一言によって動きを止めることとなった。

 

「はい? え、ちょっとダンさん……今、何て言いました?」

 

「何だオッパイチビ。胸に栄養吸われて耳が悪くなったのか? 何もじゃねぇよ、ここがどこだかわからねぇって言ってんだよ」

 

「いや、そんな堂々と言うことじゃないですよねぇ!? ってかこの状況で迷子とか本気で洒落になりませんよ!?」

 

 メイルの叫び声で周囲の木々がざわめき、遠くで鳥の群れが空目掛けて羽ばたいた。

 現在、宗司達が歩いているのは殆ど人の手が入っていない山の獣道だ。どうにか奥へと続く道があるものの、どう見ても人間が切り開いたとは思えない細い道である。

 山に入った辺りから薄々予感はあったものの、まさか本当に迷子となっているなど誰が考えるだろうか。数日前は「俺に任せりゃすぐにでもアイアス城塞に着くぜ?」とか「こっちの道が近道なんだよなぁ」とか「えっと、川沿いのが楽だわな」とか「お、こっち行きやすそう」とか自信満々にダンは言って――。

 

「気付けばよかった……! このクソヤロウを信用したのが馬鹿だった!」

 

 振り返れば危険なサインは至る所に存在した。しかし所詮は世間知らずの箱入り娘、特に気にせずダンの後を追いながら宗司と気楽に会話しているだけであった。

 

「まぁ仕方あるまい。俺としては別に、あいあす城塞とやらに行ければ僥倖であったしな。迷子と言うならばそれを楽しむのも一興よ」

 

 一方、宗司と言えばダンが道を外れていると知りながら特に指摘することなく彼の案内に従っていた。

 元が根無し草の旅人なため、当てのない旅には慣れている。むしろこれまでの旅路のほうが彼にしては珍しいとさえ言えた。

 

「だけどソウジさぁん」

 

「お主の言いたいことも分かるぞ、めいる。だん殿、迷子になったのはいいが、何処から道が分からなくなったのかくらいは見当がついているのか?」

 

 それでも不満げなメイルの意志を汲んで、代わりにダンへ問いかける。「ってもなぁ……」と本人も多少の罪悪感があるのだろう。気まずげに頬を掻いて記憶を探るが「駄目だな、さっぱりだ」と即座に思案を止める。

 所詮は鍛冶の腕と戦い以外は軒並み人間以下の屑老人だ。これ以上問い質したところで逆切れされるのがオチだろう。

 

「となると……まずは山を越えるとするか」

 

「超えたとしてもどうするんですか? 道を引き返したところで集落だって見つからなかったんですよ? こんな獣道を超えた先で集落があるとは思えませんけど……」

 

 メイルが言う通り、この数日の道程で集落はおろか他の人族と出会うことすらなかった。会うとしたら知性にも乏しい野性の魔獣、ゴブリンやオークばかり。

 言い換えれば、アポロン山脈を挟んだ魔族の最前線とはこれが当然なのだ。人族の滅亡が間近に迫った終末。人族の生存圏は殆どなく、メビウス王国に居たような商人なども、宗司達が問題を起こさなかったとしても十年もしない内に消えていただろう。

 だが彼らに滅びゆく種族のことなど眼中にない。まずは現状をどうにかするほうが大事であった。

 

「だん殿から聞いた話では、あいあす城塞は山と山の間を埋めるように作られたのだろう? ならばここはもしかしたら城塞に近い山の可能性もある。一旦山を越えたら、山を沿って歩くぞ」

 

「それで見つかりますかね?」

 

 運が良ければそれでアイアス城塞のある場所に着けるかもしれないが、メイルの言う通り見つからない可能性が高い。アイアス城塞の近い山ではない可能性、アイアス城塞のある場所とは逆に歩く可能性。その他、考えたら着かない可能性のほうが高い。

 

「案ずるな。もし誤っていたとしてもいざとなればこいつがある」

 

 宗司はメイルの背中に背負われた聖剣チートを指さした。

 

「薬箱や移動手段として考えると、ちぃとは素晴らしい」

 

「飲料水とかもすぐ出せますからね。おかげで毎日シャワー浴びれるから嬉しいです」

 

「なぁオッパイチビ、俺もそのシャワーに――」

 

「ダンさんは気持ち悪いから嫌です。ねぇソウジさん、私とシャワー――」

 

「嫌だ」

 

「えー」

 

「えー」

 

「お主ら……!」

 

 こみ上げる怒りをどうにか堪えながら、宗司達は獣道を進んでいく。ここ数日、口を開けば下劣なダンと、自然体で畜生なメイルの相手をしていて、宗司の心労はかつてない程に重なっていた。

 

 ――くろな殿。俺が悪かったから帰ってきてくれぬかのぉ。

 

 本人に言えば「私を馬鹿にするのも大概にしろ!」と激昂するとは微塵も思わずに、見当違いな謝罪を内心でする宗司。だがどんなに願ってもクロナはここには居らず、下劣な二人の会話は続く。

 いい加減、堪忍袋の緒が切れそうになりながら獣道を歩いていた宗司だったが、ふとその耳が木々のざわめきとは違う音色を感じ取った。

 

「めいる、だん殿」

 

 宗司に言われるまでもなく、二人も先程まで交わしていた汚い会話を止めて真剣な表情へと変わる。二人もまた宗司と同じく、遠くより伝わる剣戟の音と無数の怒号、そして微かに振動する大地を肌で感じていた。

 

「ソウジさん。これってもしかして……」

 

「お主の考えているとおりだろうよ。くくっ、これで厄介な馬鹿共の会話で胃を悼める心配も無くなったということだ」

 

「え、ソウジさん、共ってどういうことですか? ねぇソウジさん、それって私もダンさんと同列ってことですか? こんなド畜生のクソ老害と同列ってことなんですか!?」

 

「そうだぜ武器たらし! こんな胸に脳味噌まで吸われちまったようなビッチと一緒にすんじゃねぇよ! しかもビッチな見た目しときながら頼んでも一揉みすらさせてくれねぇドケチビッチだぞこいつ!」

 

「はぁぁぁぁ!? 何で貴方みたいな変態に触らせなきゃならないんですぅ? っていうかこの際言わせていただきますけど、いつもいつも私の胸見すぎなんですよ変態爺。しかもシャワーの度に覗きに来るし、爺なんだからもっと慎みとかないんですかぁ?」

 

「んだこらオイ文句あんのかお前。ちっとばかし腕が立つからってふざけた態度しやがってよぉ。年上は敬って胸の一つくらい触らせろって習わなかったのかよ。ったく、ケチなうえにまともな教育もされてねぇチビとかどうしようもねぇな」

 

「あ?」

 

「お?」

 

「先行くぞー」

 

「あ、こら! 抜け駆け禁止ですよソウジさん!」

 

「武器たらし! 俺より先に行くんじゃねぇ!」

 

 馬鹿共にいつまでも付き合ってはいられないとばかりに飛び出した宗司を追って、メイルとダンも走り出す。

 何であれ、目指す先は殺意が入り乱れる至福の戦地。待ち望んだ死地に赴ける歓喜に酔って、知らず宗司達は喜悦の笑みを湛えていた。

 そして音の方角へと疾駆すること僅か数分。木々の障害など意にも介さず駆け抜けた先、開けた視界に広がったのは、全長数十メートルに及ぶ巨大な城壁で覆われた城、人類の英知で作られた要塞であるアイアス城塞目掛けて、特攻を仕掛けて散っていく人族の兵士達という光景であった。

 

「うわぁ……授業で聞いてはいましたけど、アイアス城塞の魔術防御ってえげつないんですね」

 

 メイルが顔を顰めるのも無理はない。何せアイアス城塞へと突撃する兵士達は、城塞前で陣取っている魔獣どころか、その途中に存在する魔術地雷と呼ばれる地面に隠された魔術式によって次々にその命を散らせていた。

 しかも、それだけでなく絶え間なく降り注ぐ魔術砲撃が彼らの行く手を阻んでいる。単純な魔術の数だけならば、聖剣ですら再現は困難なほどの苛烈な魔術による殲滅。

 一方的に散っていく兵士達はそれでも前を目指して進んでいく。いつ弾けるか分からない地面に、降り注ぐ砲撃に、それらを越えたところで待ち受ける魔獣と魔族の群れに怯えながら。

 

「……まともではないな」

 

 宗司の感想は正しかった。

 誰も彼もが死に向けて走っている。絶望的な戦いに身を投じている。

 彼らは良く分かっていた。ここでアイアス城塞を奪還出来なければ、人族の未来は完全に断たれる。残された僅かな存命の道すらも失われれば、人族は完全にこの世界の生存競争に敗北する。

 だから彼らは奔っていた。

 だからと言い訳(・・・)して走り続けていた。

 まだ希望がある。

 まだ人族には明日がある。

 ここを越えれば。

 ここさえ耐えれば。

 

 もう未来はないと知っているくせに、希望で目を眩ませて走っていた。

 

 だからこそ宗司は言ったのだ。『まともではない』と。

 死への恐怖を、仮初の希望で覆った姿など滑稽以外の何者でもない。そこにはきっと戦う意志など存在していない。

 あれはもう人ではない。

 

 火に飛び込む虫だ。

 

「さて、俺達もやるとするか」

 

 だがそんな事情などはどうでもいい。ここに立つ三人は、種族の行く末など全く興味がなかった。

 いや、極端な言い方をすれば自分以外どうでもいい。

 希望へ疾走する兵士達をまともではないと言いながら、彼らこそが真にまともではない狂人の集い。

 

「めいる、だん殿」

 

 宗司が再び二人の名を呼ぶ。

 それに対する二人の答えも先程と同じ。

 

「生きてたならまた会おう」

 

 これより先は己が闘争。修羅の時。

 返事をすることなく戦場へと飛び込んだ二人の背中を追うようにして、宗司も舞うような心地で戦場へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 アイアス城塞が魔族の手に落ちた。これよりアイアス城塞奪還を行う。

 

 戦いより一週間ほど前、この報を受けた時の前線で戦っていた兵士達に走った動揺は、想像を絶するものだった。

 一向に終わらない戦い。それどころか徐々にイシスの大結界より離されていく日々。

 刻一刻と迫る大結界解除の時と、その後に現れるであろう魔王を筆頭とした魔族の主力部隊。

 これらだけでも、口にしないが誰もが種の滅亡を予感していたというのに、後方の要が魔族に奪われたとあれば戦意を失うのも当然だ。

 だがそれでも彼らがアイアス城塞奪還へと赴いたのは、宗司が予想した通り、兵士達が思考というものを放棄しているからであった。

 城塞さえ奪還出来れば人族の希望は繋がる。

 だから戦い、散っていく。そうやって希望を抱いて死んでいくほうがまし(・・)だ。

 無意識にだが彼らの殆どがそう思っていた。

 その考えを自覚しながら戦うことを選択したのは、兵士達を指揮する上層部の者や一部の兵士のみ。

 だがある意味で死を恐れない思考が幸いしたのだろう。本来ならば怯え竦むはずのアイアス城塞一帯に張り巡らされた地雷や砲撃に突撃した兵士達は、ついに城塞前で陣を敷いていた魔獣達の前へと到達した。

 

「進め! 進めぇ!」

 

 駆け巡る号令と言われずとも走る兵士の群れ。応じるように戦列を進めた魔獣達が数秒もせずに激突する。

 あっという間に人魔入り乱れる大混戦と化した戦場で、無数の血しぶきと絶叫が乱舞した。

 伊達に前線を生き抜いた兵士達ではなく、一対一ならば人族の兵士が魔獣達を凌駕している。複数相手でも魔獣と互角以上に戦えてさえいた。

 だがどうしても城塞近辺に敷き詰められた魔術によって疲弊した兵士では魔獣の群れを突破するまでには至らない。

 これまで以上の熾烈な争い。しかもこれはまだ前哨戦でしかなく、後には魔族が無数に控えているのだ。

 勝てるわけがない。

 どんなに兵士を投入したところで不可能だ。

 それでもと。

 ただ愚直に進み続けていた兵士達は――戦線を走る一筋の光を見た。

 

「シィィィィ……!」

 

 両手に持った鈍色を血潮で輝かせて魔獣達を斬り伏せていくのは、この場に似つかないドレス姿の少女。だが既存の術理を児戯に貶める技の冴えで、一秒の間に数十の魔獣を斬り捨てていく姿は、戦場で輝く希望の光。

 だがその実態は、闘争という悪夢に魅入られた珠玉の狂気。

 

「なんだ、あいつ……」

 

「わ、分からないが……おい! あの少女が切り開いた場所が薄くなっている! 一気に押し込めぇ!」

 

 兵士達の動揺は一瞬。少女によって手薄となった魔獣の群れへと殺到していきアイアス城塞へと迫っていく。

 状況は不明だが、魔獣のみを滅ぼしていることから、卓越した味方が居るというのは事実。

 思考を停止しているとはいえ、彼らも人族生存のために命を賭す兵士だ。新たに見出された希望へ向けて手を伸ばし――その手は空より落ちてきた一筋の流星によって砕け散った。

 魔獣と人族もろとも空より落ちた流星は大地を破砕する。数メートルにも及ぶ巨大なクレーターは、今も続いている魔術砲撃以上の衝撃と威力。

 そのクレーターを中心にした魔獣と人族が動きを止める。そして次の瞬間、クレーターより立ち込める煙幕を斬り裂いて巨大な鉄塊が姿を現した。

 

「……この瞬間を待ち望んでいた」

 

 砂煙を払って現れたのは、一糸も纏わない少女だった。強引に剣の形に成型しただけの鉄塊をその細い手で握り締め、見据える先はただ一つ。

 

「人間よ! 審判の時は来た!」

 

 剥き出しの野生が咆哮する。

 大気を弾いて荒れ狂う嵐。その嵐の中心で嵐を作り上げる大人の胴回り程の分厚さの鉄塊は、しかし見た目程の重量感などないかのように暴れ狂っていた。

 それを扱う者こそ、今や少女の身へと成り果てた、かつて人類と巨人のハーフとして人族の英雄であった魔人(・・)

 

「臆せよ人間!」

 

 暴風を突き抜けて響く声が、クロナ・クロルキスの本領。魔族としての本能を解放して、暴れ狂う力を一切躊躇することなく撒き散らす力こそ、魔人の本懐。

 

「かつて、貴様らの狂気を守ろうとした愚かなる私は死んだ! 今やこの身は悪性で築かれた貴様らを駆逐することのみを至上とする一騎なり!」

 

 宣誓は、同時に人類に対する新たな脅威の発生を意味する。遠くからその叫びを聞いた兵士達の誰もが、感じ取れる威圧感に臆し、腰が引けていた。

 

「我が怒り、我が絶望、この鉄塊の一振りに乗せて貴様ら全てに叩き込む!」

 

「じゃあ、クロナさんは敵ってことでいいんですね?」

 

 兵士達の列から、一人の少女が抜け出した。

 その姿を見た瞬間、鉄塊を振り回していたクロナの動きが止まる。だがその代わりに、鉄塊で巻き起こしていた嵐すら見劣りするほどの、恐るべき殺気が周辺一帯に放出された。

 その殺気に飲まれ、魔獣と兵士の幾人かが泡を吹いて気絶し、歴戦の勇士ですら気圧され、思わず一歩引いてしまう程。

 しかし、直接的な影響力を持つ殺気の中、少女は悠然とクロナに向かって歩みだす。

 荒地の上に在りながら、上体を一切揺らすことなく歩く少女は、戦場には不釣り合いなドレスを着こなしていた。今も尚、遠くでは魔法による爆音に兵士達や魔物の雄叫びが響き、重ね合う鉄火の熾烈が空気を揺らしている。そこにあって、まるで大道芸の一員の如き少女の服装は浮いており、故にそこに居た者の目を惹いた。

 その少女こそ、かつては穢れを知らぬ聖なる泉で守護者の任についていた者。

 そして今や、血潮と臓腑に身を染めた堕ちた聖女の名を。

 

「メイル・リンクキャット……!」

 

「久しぶりですねクロナさん」

 

 憤怒を乗せて語られた己の名を聞いても、少女、メイルは平静であった。

 その腰には兵士達の持つ剣と形状の違う、片刃で細い不可思議な刀剣。それこそ、切断という一点のみに特化した異世界の刃、日本刀が、大小一本ずつ差してある。

 日本刀と飄々とした立ち振る舞い。その全てがクロナの知る修羅、宗司と重なっていた。

 

(なり)まで奴に飲まれたか!」

 

 犬歯を剥き出しにして憤怒の形相を浮かべるクロナに対して、メイルは涼しげな表情で余裕たっぷりに歩を進めた。

 

「最適だと知っただけですよクロナさん」

 

 鞘走る刀を二つ両手に握り、メイルは刀身の波紋に濡れた視線を落とした。

 

「飾比翼、ソージさんの持っている刀の夫婦刀? っていうのでして……私と一緒に成長してくれる……刀と呼ばれる代物です」

 

 刻まれた銘の通り、手にした飾比翼を翼のように構えたメイル。その型は宗司の腰構えとは違う、彼女だけの型。

 妖艶さすら感じられるその構えは、まるでこれから舞い踊るのではないかとすら思える。一瞬だが周囲の兵士もここが戦場であることを忘れて惚けるが、次の瞬間、空を砕かん勢いで振り回された大剣の暴威に誰もが目を覚ました。

 

「抵抗しなければ楽に殺してやるぞ、メイル」

 

「楽に殺す? ふふ、じゃあしっかり抵抗すればいいんですね?」

 

 クロナの鬼気に気圧されて、蜘蛛の子が散るようにその場から消えて行く者等、二人はもう気にも留めていない。

 互いが互いだけを見つめる、たった二人だけの戦場。

 そこに在って笑みを浮かべるメイルの表情が、何よりも雄弁にクロナの問いへの返答となっていた。

 

「ならば、是非も無し!」

 

 天高く刃を掲げてクロナは宣誓する。或いはここに至っても未だ残っていた未練を振り払うための、決別の咆哮。

 メイルもまたクロナの覚悟を受けて表情を引き締めると、その身に強化の魔術を掛け直した。

 だがそれでも彼我の能力の差は圧倒的。肌が泡立つくらいの力がメイルを震わせて。

 

「いいなぁ、クロナさん」

 

 背中を押す衝動の赴くまま、メイルは小型の竜巻と化したクロナ目掛けて一歩を踏み出した。

 

「それが! その在り方が! 貴様という人間が生きているから!」

 

「そんなこと――どうだっていいわ」

 

 荒れ狂う台風の中に飛び込む。鉄塊の生み出す風圧だけで潰されそうになりながら、メイルは変わることのない喜びを湛えたまま、憤怒の形相で待つクロナに返答代わりの斬撃を放った。

 

「だって私、貴女を斬れるもの」

 

「メェェェェイル!」

 

 互いに譲れない信念の名の下に。

 メイルとクロナ、短くも濃厚な旅路を共にしたかつての仲間は、今ここに道を違えて激突を果たすのであった。

 

 

 

 

 




次回、戦地
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