なんてことはない。今までは食事で摂った
異形系個性に分類される私だが、通常の強化以上の力を発揮するときは、その強化率に合わせて馬鹿みたいに燃費が悪くなる。普段の食事から
……まぁ、だからこそ何の用意もしていなかった個性把握テストのときには、一瞬の強化しかできなくて満足する結果が出せなかったのだが。
常人の10倍以上の
20%なんて出した日には、たとえ
……だから、まぁ。私も馬鹿だったんだ。
トラウマになりかけたとはいえ、私は『吸血鬼』なのだから、血を飲まないと力が出ないのは当たり前だ。
実際に、
それだけじゃない。
傷が治った後も夢中で飲んでいたら、体に湧き上がる力を感じた。
普段の強化率を上げたときのような、でも
そう、私は『吸血鬼』。
五感を強化するのも、
身体能力を強化するのも、
回復能力を強化するのも、
普段以上にしようとするなら、血を飲むことが前提条件だったんだ。
他で代用するなんて、できるわけがない。
それは、血で渇きを癒した吸血鬼が、歓喜のあまりに暴走する準備なのだから。
だから、『血の暴走』
◇◇◇
「…………うそだろ?」
死柄木弔は、目の前の光景が信じられなかった。
殺したはずの子供が立ち上がってきたことも、
それどころか怪我すらないことも、
何よりも……、
「さっきまで、反応するのがやっとだったじゃないか……。なんで、なんで当たらない!!??」
正確には、脳無の攻撃を
(……さすがに100%は伊達じゃない。攻撃が見える、反応できる、体が追いつく)
「……残念だったな。私は何よりも、回避と受け流しに自信があるんだ」
それが彼女の、
一筋でも傷がつけば敗北という理不尽に抗い続けた、努力の結晶。
雄英高校の教師陣が思わず唸った技術が、ここで活きた。
「ッッこのクソガキが!! 脳無!そいつは無視してあっちの子供をやれ!!」
「
だから、受け流した力を、
脳無は、自分の力で死柄木の方に飛んで行き、
「!? 死柄木弔!!」
死柄木をかばった黒霧を吹き飛ばした。
「……
(ここのボスは死柄木に間違いない。切り札が脳無なのも間違いない。だけど、黒霧は違う。
「……どうする?次は庇うやつがいないぞ」
「…………。脳無」
ダメージなどないかのように、脳無が
(そう。こいつは幼稚な精神性だが、冷静な思考も持っている。今のやり取りで理解したはずだ。緑谷たちを攻撃しようとすれば、自分が攻撃されると)
彼女の役割は、足止め。時間稼ぎをすれば良い。
(それに、今の私でも、脳無は
それが彼女の結論だった。
(おそらく、回復系か物理無効、いや、吹き飛ばせるから打撃無効系の個性持ちだ)
先ほどから受け流した力でダメージは与えている。カウンターもできている。
それでも、脳無にはまるで効いてない。
(私より力があり、速度があり、防御力がある。なんだこいつは。あの
そう、今の均衡は、あくまで彼女が死力を尽くした結果。
文字通り、命懸けの足止め。
(私では、倒しきれない。それに……
一撃受ければ死にかねない攻撃を、ひたすら捌き続ける。
相手を倒すことはできない。
自分以外を攻撃させてはいけない。
いつまで続くのかわからない。
それを全てわかった上で、
「……ふふっ」
彼女は笑う。
さも、余裕だと言わんばかりに。
そう、辛い時こそ、苦しい時こそ、笑う。
そうすれば……。
「ッだぁ!!ままごとしてんじゃねえぞ、この金髪女!!」
爆豪が、脳無へと爆破を浴びせた。
「……悪ぃ、遅くなった」
轟が、脳無の足元を凍らせた。
「遅くなってごめん、赤黒さん!相澤先生はもう大丈夫!!」
緑谷が、救助を終えて駆け付けた。
援軍が現れた。
「……ほんとにどうなってんだよ、クソゲーが。脳無、戻ってこい」
黒煙に塗れ、足元の凍った脳無を、唐突に死柄木は自身の元へ呼んだ。
そのことに疑問を覚えるA組の面々だったが、次の瞬間目を疑った。
脳無は自分の足が壊れるのも構わず、凍結から抜け出したのだ。
「なんだあれは!?」
それだけではない。壊れた足が、元のように生えてきた。
(あの再生速度、尋常じゃない。あれが脳無の個性?)
「帰る。脳無、黒霧連れてこい」
「「「な!!??」」」
ここまで場を乱した上での唐突な死柄木の言葉に、一同は驚いた。
「……はぁ、この状況で、簡単に帰れると思ってるのか?」
「できるさ。お前、
「……はぁ、何を言ってるんだ、お前は」
「馬鹿にするな、クソガキ。そんな青い顔して、手足も微かに震えてる。立ってるのがやっとなんだろう?」
死柄木の言う通り、
いや、
「だから、俺は帰る。結局
それは確信。
脳無の相手ができる人間がいるはずないことを。
「だから……、
「「「!?」」」
だから、A組が最もされたくないことを考えつく。
「おい、起きろ黒霧」
「っぐ、申し訳ありません、死柄木弔」
「ほんとだよ。帰る、ゲート開け。ああ、脳無は置いていくから」
「!? それは……」
「うるさい、早くしろ。殺すぞ」
「……」
そして、渋々といった様子だが黒霧が個性を発動して、
「っ待てや!! 逃げんなコラ!!」
「脳無、俺がいなくなったら、暴れろ」
そのまま消えた。
「マズイ、あいつが暴れたら……って赤黒さん!?」
「……はぁ、はぁ。……私が、止めないと」
青い顔のまま、
「……はぁ、英雄に、英雄にならないと、いけないんだ」
ついに抑えきれなくなった、震える手足のまま、
「………英雄は、常に
すでに失いかけた意識のまま、
「…………もう、あんな思いは、したくないんだ」
英雄への憧れはある。
父の言葉もあったとはいえ、
父を祖父母の墓前で謝らせたいのもある。
そのためには、自分が本当の英雄にならないといけないと信じている。
でも、
「もう、目の前で誰かが死ぬのは、見たくないんだ!!」
何よりも、
その魂からの叫びに、A組の面々が気圧される中、ついに脳無が動き出そうとして、
USJの出入口が、
「……もう大丈夫」
そこには、本物の英雄が。
「私が来た」
オールマイトが来た。
ごめんなさい、終わりませんでした。