[凍結]私は真の英雄への道を歩む   作:りどれー

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第十一歩 USJ襲撃事件(後編)

 なんてことはない。今までは食事で摂ったエネルギー(カロリー)で無理矢理ごまかしていただけだったんだ。

 

 異形系個性に分類される私だが、通常の強化以上の力を発揮するときは、その強化率に合わせて馬鹿みたいに燃費が悪くなる。普段の食事からエネルギー(カロリー)を多くとっておかないと、発動すらままならないものだった。

 

 ……まぁ、だからこそ何の用意もしていなかった個性把握テストのときには、一瞬の強化しかできなくて満足する結果が出せなかったのだが。

 

 常人の10倍以上のエネルギー(カロリー)をとっていても、普段なんとか使えるのが10%程度。

 20%なんて出した日には、たとえ飲み物(超高カロリー飲料)でごまかしたとしても、3分も経てば動けなくなるほどに消耗してしまう。

 

 

 

 ……だから、まぁ。私も馬鹿だったんだ。

 

 トラウマになりかけたとはいえ、私は『吸血鬼』なのだから、血を飲まないと力が出ないのは当たり前だ。

 実際に、自分の血(・・・・)を少量舐めただけで多少は動けるようになり、そのまま飲み続けただけで、体中の傷が治ってしまったのだから。

 

 それだけじゃない。

 

 傷が治った後も夢中で飲んでいたら、体に湧き上がる力を感じた。

 普段の強化率を上げたときのような、でもそれ(10%)とは比較にならないほどの充足感。

 

 そう、私は『吸血鬼』。

 

 五感を強化するのも、

 身体能力を強化するのも、

 回復能力を強化するのも、

 

 普段以上にしようとするなら、血を飲むことが前提条件だったんだ。

 

 他で代用するなんて、できるわけがない。

 

 それは、血で渇きを癒した吸血鬼が、歓喜のあまりに暴走する準備なのだから。

 

 だから、『血の暴走』

 

 

◇◇◇

 

「…………うそだろ?」

 

 死柄木弔は、目の前の光景が信じられなかった。

 

 殺したはずの子供が立ち上がってきたことも、

 それどころか怪我すらないことも、

 何よりも……、

 

「さっきまで、反応するのがやっとだったじゃないか……。なんで、なんで当たらない!!??」

 

 少女(赤黒血尋)が、脳無相手に戦えていることが。

 正確には、脳無の攻撃を全て捌いていることが(・・・・・・・・・・)

 

(……さすがに100%は伊達じゃない。攻撃が見える、反応できる、体が追いつく)

 

「……残念だったな。私は何よりも、回避と受け流しに自信があるんだ」

 

 それが彼女の、身体に染み付いた(・・・・・・・・)戦い方。

 一筋でも傷がつけば敗北という理不尽に抗い続けた、努力の結晶。

 雄英高校の教師陣が思わず唸った技術が、ここで活きた。

 

「ッッこのクソガキが!! 脳無!そいつは無視してあっちの子供をやれ!!」

 

そうすると思ったよ(・・・・・・・・・)

 

 だから、受け流した力を、そのまま脳無に返した(・・・・・・・・・・)

 脳無は、自分の力で死柄木の方に飛んで行き、

 

「!? 死柄木弔!!」

 

 死柄木をかばった黒霧を吹き飛ばした。

 

「……そいつ(黒霧)が一番重要で、お前(死柄木弔)を庇うこともわかっていた」

 

(ここのボスは死柄木に間違いない。切り札が脳無なのも間違いない。だけど、黒霧は違う。死柄木を好きなやつの部下(・・・・・・・・・・・・)だ。だから庇う)

 

「……どうする?次は庇うやつがいないぞ」

 

「…………。脳無」

 

 ダメージなどないかのように、脳無が彼女(赤黒血尋)に突撃してきた。

 

(そう。こいつは幼稚な精神性だが、冷静な思考も持っている。今のやり取りで理解したはずだ。緑谷たちを攻撃しようとすれば、自分が攻撃されると)

 

 彼女の役割は、足止め。時間稼ぎをすれば良い。

 

(それに、今の私でも、脳無は倒せない(・・・・)

 

 それが彼女の結論だった。

 

(おそらく、回復系か物理無効、いや、吹き飛ばせるから打撃無効系の個性持ちだ)

 

 先ほどから受け流した力でダメージは与えている。カウンターもできている。

 それでも、脳無にはまるで効いてない。

 

(私より力があり、速度があり、防御力がある。なんだこいつは。あの訓練(地獄)を経験していなかったら、この状態でも対応しきれなかったぞ)

 

 そう、今の均衡は、あくまで彼女が死力を尽くした結果。

 文字通り、命懸けの足止め。

 

(私では、倒しきれない。それに……そろそろまずい(・・・・・・・)

 

 一撃受ければ死にかねない攻撃を、ひたすら捌き続ける。

 相手を倒すことはできない。

 自分以外を攻撃させてはいけない。

 いつまで続くのかわからない。

 それを全てわかった上で、

 

「……ふふっ」

 

 彼女は笑う。

 さも、余裕だと言わんばかりに。

 

 そう、辛い時こそ、苦しい時こそ、笑う。

 そうすれば……。

 

 

 

 

 

「ッだぁ!!ままごとしてんじゃねえぞ、この金髪女!!」

 爆豪が、脳無へと爆破を浴びせた。

 

「……悪ぃ、遅くなった」

 轟が、脳無の足元を凍らせた。

 

「遅くなってごめん、赤黒さん!相澤先生はもう大丈夫!!」

 緑谷が、救助を終えて駆け付けた。

 

 援軍が現れた。

 

 

 

「……ほんとにどうなってんだよ、クソゲーが。脳無、戻ってこい」

 

 黒煙に塗れ、足元の凍った脳無を、唐突に死柄木は自身の元へ呼んだ。

 

 そのことに疑問を覚えるA組の面々だったが、次の瞬間目を疑った。

 脳無は自分の足が壊れるのも構わず、凍結から抜け出したのだ。

 

「なんだあれは!?」

 

 それだけではない。壊れた足が、元のように生えてきた。

 

(あの再生速度、尋常じゃない。あれが脳無の個性?)

 

「帰る。脳無、黒霧連れてこい」

 

「「「な!!??」」」

 

 ここまで場を乱した上での唐突な死柄木の言葉に、一同は驚いた。

 

「……はぁ、この状況で、簡単に帰れると思ってるのか?」

「できるさ。お前、もう限界だろ(・・・・・・)?」

「……はぁ、何を言ってるんだ、お前は」

「馬鹿にするな、クソガキ。そんな青い顔して、手足も微かに震えてる。立ってるのがやっとなんだろう?」

 

 死柄木の言う通り、彼女(赤黒血尋)は限界だった。

 いや、限界を越えていた(・・・・・・・・)

 

「だから、俺は帰る。結局平和の象徴(オールマイト)は来なかったし、そろそろタイムリミットだ。お前が動けないなら、脳無の相手をできるやつはいないだろ」

 

 それは確信。

 脳無の相手ができる人間がいるはずないことを。

 彼女(赤黒血尋)が限界を迎えていることを確信した上での発言だった。

 

 

 

「だから……、俺が帰った後に(・・・・・・・)脳無を暴れさせればいい」

「「「!?」」」

 

 だから、A組が最もされたくないことを考えつく。

 

「おい、起きろ黒霧」

「っぐ、申し訳ありません、死柄木弔」

「ほんとだよ。帰る、ゲート開け。ああ、脳無は置いていくから」

「!? それは……」

「うるさい、早くしろ。殺すぞ」

「……」

 

 そして、渋々といった様子だが黒霧が個性を発動して、

 

「っ待てや!! 逃げんなコラ!!」

 

「脳無、俺がいなくなったら、暴れろ」

 

 そのまま消えた。

 

 

 

「マズイ、あいつが暴れたら……って赤黒さん!?」

 

「……はぁ、はぁ。……私が、止めないと」

 

 彼女(赤黒血尋)は、脳無に向かって歩いていた。

 

 青い顔のまま、

 

「……はぁ、英雄に、英雄にならないと、いけないんだ」

 

 ついに抑えきれなくなった、震える手足のまま、

 

「………英雄は、常に危機(ピンチ)の、最前線に立ち、人々を、脅威から守る、者だから」

 

 すでに失いかけた意識のまま、

 

「…………もう、あんな思いは、したくないんだ」

 

 それ(・・)が、彼女(赤黒血尋)英雄(ヒーロー)を目指す理由だから。

 

 英雄への憧れはある。

 父の言葉もあったとはいえ、本物の英雄(オールマイト)に憧れた気持ちは本物だ。

 

 父を祖父母の墓前で謝らせたいのもある。

 そのためには、自分が本当の英雄にならないといけないと信じている。

 

 でも、彼女(赤黒血尋)は何よりも、

 

「もう、目の前で誰かが死ぬのは、見たくないんだ!!」

 

 何よりも、無力な(守れなかった)自分が嫌だった。

 

 

 その魂からの叫びに、A組の面々が気圧される中、ついに脳無が動き出そうとして、

 

 USJの出入口が、吹き飛んだ(・・・・・)

 

「……もう大丈夫」

 

 そこには、本物の英雄が。

 

「私が来た」

 

 オールマイトが来た。

 

 

 




ごめんなさい、終わりませんでした。
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