[凍結]私は真の英雄への道を歩む   作:りどれー

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第二歩  準備期間

 オールマイトが自身の想いを緑谷に伝えた放課後、A組教室の前には人だかりができていた。

 

「大方敵情視察だろ。(ヴィラン)の襲撃に耐え抜いたって話を聞いて、のこのこやってきたんだろ。敵情視察とか意味ねぇからどけモブ共」

「バカ豪!? 知らない人のこととりあえずモブって言うのやめろよ!?」

 

 爆豪がいつものように煽り、たまたま近くにいた切島がツッコミを入れるもすでに遅かった。

 

「おいおい、ヒーロー科ってのはみんなこんななのか? だとしたら幻滅しちゃうなぁ」

 

 そう言いながら爆豪の前に出てきたのは、爆豪ほどではないが目つきの悪い人物。制服は普通科のものだ。

 

「体育祭の結果によっては、ヒーロー科への編入も検討してくれるんだってさ。で、逆もまた然り。俺は少なくとも、調子のってっと足元すくっちゃうぞっつー、宣戦布告にきたつもり」

 

 それに乗る人物も出てきそうな、あわやにらみ合いの勃発かと誰もが思った瞬間だった。

 

「……はぁ、それくらいにしておけ、爆豪。挑発するのは構わないが「「「良いの!!??」」」」、今ここでやる必要はない」

「あぁ!? うっせえぞ金髪!!」

「だから君もそうだろうに。……はぁ、すまなかったな。だが、ふむ。宣戦布告に来たと言うが、本当に良いのか?」

 

 血尋が間に入ったことで安心したA組の面々だったが、彼女の様子も普段と違うことに再び不安を覚えていた。そしてその予想はある意味正解だった。

 

「良いってのは、どういう意味だよ」

「……何、そのままの意味なのだが。そうだな、全て言うのは悪いから端的に伝えよう。宣戦布告はいいが、こんな所で油を売る余裕はあるのかい(・・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 ……予想は大正解だった。だが、血尋の意図は少し違う所にあった。

 

「な!?」

「少なくとも、私にそのような余裕はない(・・・・・・・・・・・・)。これから予約してある訓練施設に向かうんだ。だから──」

 

 そして血尋は一度目を閉じて、

 

「そこを通してくれ」

 紅い目を開きながら言い放った。

 

「「「っ!!??」」」

 

 気圧されたかのように人だかりが一歩下がり、そのまま血尋は教室を出て行った。

 

 

「……チッ、その通りだよ。上に上がる、それだけだろうが」

 

 

 

「はいよ、予約はグラウンドβの一画が良いってことだったが、1年のこの時期に使うようなやつは初めてだな」

 

 教室での騒動の直後、血尋は相澤の元を訪れて施設使用許可証を受け取っていた。

 1年の中には施設の予約の仕方もわからない者が多いこの時期、わざわざ屋外のその一画という珍しい場所を予約していた血尋に、相澤は呟いていた。

 

「……訓練自体は家でもできるのですが、いざという時、先生方や学校に頼れるというのは大きなメリットですので。それに、やろうとしている訓練のためにも立体的な建物がある方が良かったんです」

「それは……、それなりに危険だってことか?」

「……全く危険がないとは言えません。個性の制御訓練ですので」

「ふむ。お前なら大丈夫だとは思うが、いざというときはすぐに連絡入れろよ」

「はい、ありがとうございます。……では、失礼します」

 

 そう言って出て行こうとする血尋の背中に、相澤は言葉を投げかけた。

 

「何か、良いことでもあったみたいだな」

「……はい。あのUSJで、大切なことに気づかされましたので」

「そうか。悪い、邪魔したな」

 

 その言葉を背に、血尋は今度こそ訓練施設へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ、はぁ」

 

 グラウンドβの一画。

 そこには息を荒げ、いかにも疲労困憊といった様子の血尋が倒れていた。

 

「まだ……だ。まだ足りない」

 

 土埃に塗れ、今も倒れているほどに疲労困憊な血尋だったが、本人はまるで満足していない。

 しかし、それも当然だ。彼女はまだ、

 

「……はぁ、ふぅ。私の個性なんだ。多少はできると思っていたが、ここまでできないとは思わなかった」

 

 彼女はまだ、訓練の成果を出せていないのだから。

 

「……考えてみれば当然か。今まで訓練はしてきたが、ここまで個性にこだわってはしてこなかった。何より、自分の個性の真価に気づいたのが一昨日なんだ。いきなりできるようなら、雄英(ここ)に入った意味がないじゃないか」

 

 自分の個性が何かはわかっていたが、それでもまだ知らないことがあった。

 血尋自身のことだ。今まで不思議に思わなかったわけではないが、訓練できないことがあった。

 

「……いや、甘えだな。血を飲むこともできていなかったんだ。無意識にできないと錯覚していただけかもしれない。今より強くなるためには、個性を鍛える必要があるんだ。できそうなことは試していかないと」

 

 そしてよろめきながらも立ち上がり、

 

「……ふぅ。『血の暴走』──」

「おい、赤黒」

 

 訓練を再開しようとしたところで、相澤に呼び止められた。

 

「……はぁ。なんですか、相澤先生。まだ訓練の成果が出ていないんです。続けても良いでしょうか」

「お前な。熱心なのは良いが、時間を見ろ」

「……あ」

「もう下校時刻だ。USJでのことがあったばかりなんだから、おとなしく帰れ」

 

 気づけば暗くなっていたのだが、血尋はまるで気づいていなかった。

 それに、相澤は見ての通りの包帯男状態。緊急でもないのに居残るわけにもいかないだろう。

 ……やはり入院した方が良いのではないだろうか。

 

「……すみませんでした。すぐに帰ります」

「おう、そうしろ。……後な、個性を伸ばす訓練っていうのは授業でもちゃんとやる。気持ちはわかるが1人で焦りすぎるな」

「……はい。ありがとうございます。でも、時間は有限です。できることはできる内にやりたいんです」

「それはわかってる。ただ、今日は帰れって話だ。事件が落ち着くか、もしくは監督者がいる状態で無茶はしろ」

 

 相澤なりに血尋の焦りはわかるのだろう。雄英体育祭に向けて発破をかけたのは自分なのだから。

 それでも、USJでの襲撃から最初の登校日、あまり無茶はさせたくないのだろう。

 

「……頭ではわかっているのですが。いえ、すみません。ご迷惑おかけしました」

「まぁ、もやもやしたまま帰らせるわけにもいかねえし。とりあえず、何をしようとして悩んでるかだけ話していけ。こっちでも考えておくから」

「ありがとうございます。……実は──」

 

 そして相澤に自分の訓練について話した血尋は、なるべく急いで帰っていった。

 

 

「合理的だな。確かにできれば武器になる。……これはオールマイトさんが教える分野になりそうだ」

 

 

◇◇◇

 

 

 そして、各々が自分のできる準備をしていく2週間はあっという間に過ぎていき……。

 

『YEAAHH!! 群がれマスメディア!! 今年もお前らが大好きな、高校生たちの青春暴れ馬……。雄英体育祭が始まディエヴィバディアァユゥレディ!!??』

 

 雄英体育祭本番当日、プレゼント・マイクのアナウンスが響き渡った。

 

 

 

 A組の控室では、皆が思い思いに過ごしていた。

 今日は公平を期す為にコスチュームは着用不可なので、全員体操服姿だ。

 

「緑谷」

 そんな中、轟は緑谷を呼んだ。

 普段自分から話しかけることの少ない彼に呼ばれ、少し不思議に思いながらも反応する緑谷だったが、そのまま轟は話し始めた。

 

「緑谷、客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「へ!? う、うん」

「USJの時にも思ったけど、お前オールマイトに目ぇかけられてるよな。そこは別に聞いたりしない。でも……、お前には勝つぞ」

 

 それは宣戦布告だった。

 そして、今までの緑谷だったらおどおどと反応するだけで終わったかもしれない。

 だが、今の彼は違う。ネガティブなことは確かに言うだろう。自分への自信もまだ持てないのだろう。それでも

 

「でも! 皆本気でトップを狙っているんだ。僕だって、これ以上遅れをとるわけにはいかない。僕も……、本気で獲りに行く!!」

 

 彼もやはり何かが変わった。

 そのことに気づいた轟は納得するように頷き、もう1人の所へ向かった。

 

「赤黒」

「……なんだい、轟」

「戦闘訓練でお前に一瞬で敗けた悔しさは、今でもまるで薄れねぇ。だから、今度は俺が勝つ」

 

 名実共にクラス最強の座を得ている血尋への宣戦布告に、周囲は騒めいた。

 

「うん、良いね。そうしてくれないと困る。……今度は、最初から本気できてくれよ?」

 

 続く血尋の挑発的とも言える言葉に再び騒めくが、

 

「「「!?」」」

 

 轟の変化の方が顕著だった。

 部屋中に広がる、圧迫感さえ感じる気迫。

 唇を噛みしめ、普段のクールな表情とはまるで違う顔を見せた彼に、周囲は一瞬で静まり返った。

 

 そして、そのまま1年生の入場の時間となり……。

 

 

『どうせてめえらアレだろ!? こいつらだろ!! (ヴィラン)の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!! ヒーロー科!! 1年!! A組だろぉぉ!!??』

 

 

 雄英体育祭、ついに開幕。




次回から競技開始です。


現在原作が手元にあるため、数か月ぶりに読み直してます。
やはり11巻のアニメ化は素晴らしかった。
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