[凍結]私は真の英雄への道を歩む   作:りどれー

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気づいたら評価とかUAとかお気に入りとか増えてました。ありがとうございます。

評価1って見ると、そこまで不快な気分にさせちゃったかと申し訳ないですね。


第三歩  雄英体育祭第一種目

「選手宣誓!!」

 

 ついに始まる雄英体育祭。1年生の主審を務めるのは『18禁ヒーロー:ミッドナイト』だったが、18禁なのに高校にいて良いのだろうか。「いい」

 

「選手代表!! 1-A!! 赤黒血尋!!」

 

「はい」

 

 そして、選手代表として呼ばれた血尋が壇上に進むと、会場からどよめきが起きた。

 

「うわ、何あの子、綺麗」「選手宣誓って毎年ヒーロー科の入試1位がやるんじゃなかったか?」「じゃ、あの女の子可愛いのにすっごく強いんだ」

 

 そうした周りの雰囲気を一切気にすることなく、血尋は宣誓を始めた。

 

「……宣誓。我々選手一同は、スポーツマンシップに則り、正々堂々日頃の成果を競い合うことを誓います。また、会場及びテレビの前の皆様。雄英高校の、私たちそれぞれの強さをぜひご覧になってください。雄英高校1年、選手代表、赤黒血尋」

 

 模範解答のような選手宣誓を行った血尋に、会場や実況席にいたプレゼント・マイクも少し落ち着きを取り戻した。

 

『Phew、さすがというべきか。赤黒は優等生キャラだからこういう時すげー安心できるな、イレイザー』

『……さて、どうだかな』

 

 解説として無理矢理連れてこられた相澤だったが、プレゼント・マイクの言葉に肯定を返さなかった。

 そしてそれは正しい。

 

「……はぁ。ここまでが選手代表としての宣誓。せっかくの場ですので、私個人としても宣誓させていただきます」

 

 血尋の宣誓はまだ終わっていないのだから。

 

「私は、誰もが認める形で一位(トップ)になることをここに誓います」

 

「「「!!??」」」

 

 堂々と言ってのけた宣言に会場中の視線が否応なしに集まり、同時に1年からは敵意にも似た視線をぶつけられる。

 そんな中で血尋は、

 

「ふふっ、挑戦者は大歓迎だ。全力で相手しよう」

 

 柔らかい微笑みを浮かべた。

 

「きゃぁぁぁ!!」「うおおおおお!!」「ぐっはぁ!!」

 

 そんな血尋を見た会場中から悲鳴やら歓声やらが聞こえてくる。

 ……一部、A組の方からも聞こえた気がするがきっと気のせいだろう。

 

 

 会場全体が血尋の宣誓に盛り上がりを見せる中、血尋と入れ替わるようにミッドナイトが競技の説明を始めた。

 

「いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!! ……さて運命の第一種目!! 今年は、コレ!!」

 

 そしてディスプレイに表示されたのは『障害物競走』の文字。

 

 参加者は計11クラスの総当たり。

 コースはスタジアムの外周約4km。

 自由さが売りの雄英らしく、コースさえ守ればなんでもあり。

 

 そんなルールなどほとんどないような障害物競走が、

 

「スターーーーート!!」

 

 始まった。

 

 

 スタート地点のゲートが狭くほとんどの者がすし詰め状態になる中、轟は集団の先頭に出ることでそれを免れていた。

 そして、そんな状態の選手相手に何もしないわけがなく、

 

「最初のふるいだ」

 

 氷結を用いることで地面を一気に凍らせていった。

 多くの者が地面ごと凍らされ寒さに震えるが、当然避ける者もいるわけで──。

 

「そう上手くいかせねえよ!! 半分野郎!!」

 

 爆豪を筆頭に続々と氷結を避けた者がいる中、轟にはある疑念があった。

 

「赤黒のやつ、姿見えねぇがどこ行きやがった」

 

 

 

 大胆な宣誓をした血尋は、レースのスタート地点を最後方に決めていた。当然理由がある。

 

(……宣言したんだ。誰もが納得するような一位を獲りにいかないとな)

 

 普通に走り、普通に一位を獲ることもできたかもしれない。

 この競技は、身体能力を強化できる彼女にはかなり有利なものだ。

 しかし、普通の勝利では観客は納得しない。

 

(本物の英雄は、ただいるだけで安心させられる者。そのためには、普通に勝つだけじゃだめだ。圧倒的な(・・・・)勝利を。皆には悪いが、ここだけは譲れない。これが私の本気だ)

 

 スタートゲートが混乱に陥る中、彼女は未だ最後方で立ったまま。

 自分のこれが舐めていると思われるかもしれない。

 本気でないと思われるかもしれない。

 しかし、それは杞憂だ。

 今から行うのは正真正銘の本気であり、全力なのだから。

 ただ、集中に時間がかかるからこそ、誰にも邪魔されるわけにはいかなかっただけ。

 

 そして準備が終わり、彼女は宣言する。

 USJ事件以降、毎日のように行ってきた訓練の成果を。

 

脚部限定(・・・・)・強化率50%──『血の疾走』」

 

 その言葉の直後、血尋の姿は消えた。

 

 

『さぁ、トップ勢が第一関門に着いたぞ!! まずは手始め……ロボ・インフェルノ!!』

 

 入試の時の0P仮想(ヴィラン)が道を塞ぐが、轟に驚きはなかった。

 むしろもっと強敵を用意してほしかったと思いながら、氷結を発動しようとした時だった。

 

『って、はぁぁぁぁぁ!!??』

 

 実況のプレゼント・マイクが唐突に叫んだ。

 気にせず氷結を発動し仮想(ヴィラン)を凍結させたが、

 

「……轟、先に行くぞ」

「!?」

 

 聞き覚えのある声が頭上から聞こえ、思わず硬直した。その声の主は、

 

『あ、赤黒だあああ!! ってかなんでそんなとこにいるんだ!? あいつさっきまでスタート地点で突っ立ってたじゃねえか!!??』

『……うるせえ』

 

 ほとんどの観客には血尋が突然現れたように見えたのだろう。プレゼント・マイクだけでなく、観客席でも騒めきが起きている。

 しかし、彼女には関係ない。

 やることは変わらないのだから。

 

「……このまま仮想敵(こいつら)をすり抜けても良いが。せっかくだ、少し倒(アピール)していこう」

 

 そう言うや否や、地面を強く蹴り再び跳びあがり、

 

「相変わらずだな、巨体のくせに下半身が弱い」

 

 そのまま仮想敵の腰に当たる部分を蹴り抜いた(・・・・・)

 

『入試の時と一緒だ。デカいだけじゃ、赤黒の障害にならん』

 

 その相澤の言葉の直後、仮想敵の巨体は地面に吸い込まれるように落ちていった。

 それを唖然としたように見る者が多いが、当然彼らはそれで止まらない。

 

「あンの金髪!!」

 爆豪がいつものようにキレ、

 

「っ!? いかせるかよ」

 轟も一瞬の硬直から抜け出し、再び走り出した。

 

 ……しかし、もう遅い。

 

『第一関門あっさり突破ぁ!! ってかイレイザー!! マジで何が起きてたんだ今!?』

『マイク。んな暇ねえぞ』

『WHAT?ってはあああああ!? ちょっと待てマジで待て!! さっき第一関門やっただろうが、なんでもう第二関門にいやがる!!』

 

 第一関門の仮想敵を蹴り壊してからわずかな間に、血尋は第二関門に辿り着いていた。そして、

 

『第二関門はその名も……ザ・フォール!! 簡単に言や綱渡りだが、落ちたくなけりゃ這いずりな!!』

 

「……今の私に、その必要はない」

 

 そのまま走り幅跳びの要領で、思い切り跳んだ。

 

『って跳んだ!!?? 何してんだあいつ!! そのままじゃ落ちるぞ!?』

『……うるせえ、ちっとは落ち着け』

 

 相澤は知っている。

 だから、血尋が落ちることはないと確信していた。

 

『オイオイオイマジかよあいつ!! 今空中で跳んだぞ!?』

 

 血尋は個性把握テストの時に行った空中移動を実践することで、下に落ちることはなかった。

 それどころか、その推進力でそのまま第二関門を渡り切っていた。

 

『あいつは入学した時から今みたいな動きは試していた。なら、ここでできない道理はない』

 

 その相澤の言葉通り、血尋は空中での跳躍をほぼものにしていた。

 個性把握テストの時とは比べ物にならない強化率の現在、それを失敗することはない。

 

『かあああああ!! もうわけわかんねえことになってるが、ドンドン進むぜリスナー!! 最終関門は一面地雷原……怒りのアフガンだ!! 地雷はよく見りゃわかる仕様だから、目と脚酷使しろ!! っつーか素直に地雷原走ってけ!!』

 

 足元へ障害があるのなら、結果はまた同じだ。

 しかし、プレゼント・マイクの言いたいことも理解できる。

 

「……わかった、跳ばないよ。ただし、」

 

 血尋は今までの速度を維持しながら、一気に地雷原を駆け抜けた(・・・・・)

 

『シヴィイイイイイ!!?? 爆発連鎖してっぞ大丈夫か!? って、オイオイオイ!!』

『できるやつはほとんどいないだろうが、赤黒にとってはかなり合理的だな。地雷の爆発を受けて更に加速しやがった』

 

「……ゴールへの地雷を失くしてしまったのは許してほしいな。地雷を踏んでも、爆発する時にそこにいなければ良いだけだ」

 

 

 

 

 1年生の競技をトゥルーフォームで見ていたオールマイトは、観客席で周囲と同じように驚いていた。

 

「……すごいな赤黒少女は。あの程度のアドバイスだったのに、もうすっかりモノにしてる」

 

 10日前、オールマイトは血尋に相談を受けていた。

 OFAの使い方を教えるのと似たような形で教えただけだったのだが、彼女にはそれで充分だったようだ。

 緑谷と違い、長年自分を訓練してきたことが理由の1つではあるだろう。

 

「個性を全身ではなく、四肢等に限定して行うにはどうしたら良いか……か。普通は緑谷少年のように一部分からで始まるだろうにその逆を聞かれるとは。赤黒少女は異形型個性なのに、その使い方は発動型だ。それが枷になっていたのかな」

 

 それこそが、血尋が訓練していたもの。

 USJでも改めて気づかされたが、強化率を引き上げるのはかなり燃費が悪い。

 

 血を飲めなかった今までは、個性の一部しか使えていなかった。

 そのことを痛感した血尋は、自分の個性について改めて考えた。そして、答えを得た。

 

 

「燃費が悪いのは当たり前。五感に加え、全身の身体能力・回復能力をまとめて強化してるのだから」

 

 ならばどうするべきか。

 

「全てを強化する必要はない。必要な部分を必要なだけ強化すれば、使用するエネルギーはずっと少なくて済む」

 

 そのためには、強化率上昇をひたすら行い調整していくしかなかった。

 血液摂取をしなければ行えないような訓練だったから、今までは無意識に避けていたのだろう。

 最初は必ず全身を完全強化してしまい、そこから何も変えられなかった。

 

「それがたった2週間であそこまで制御する。才能はあるだろうし、何よりも努力の賜物だろうな」

 

 

 当然、まだまだ改良の余地はある。

 限定強化は腕か脚という大きな部位でしかできないし、強化率上限は50%だ。

 それ以上になると途端に全身強化してしまい、燃費が一気に悪くなる。

 他にも様々な課題があるが、必要だったのはいかに補給をせずに強化を維持できるかという問題。

 

 故に、今の彼女はできることが劇的に増えていた。

 

 

「……しかし、緑谷少年もとんでもない同級生を持ったなぁ」

 

 自分の後継者である少年を思い、オールマイトは苦笑いするのだった。

 

 

 

 

 血尋が最終関門を突破した。それはつまり、もう障害等はなく……。

 

『第一関門からおかしなことが起こったが、そのまま駆け抜けた納得の存在!! っつーかいつスタートしたのか今でもわからねえ!! スタジアムに最初に帰ってきたのは選手宣誓で大胆なこと言いやがった少女!! 有言実行!! ──赤黒血尋だあああ!!!!』

 

 

 

 赤黒血尋 第一種目 障害物競走 1位。

 




プレゼント・マイク、ツッコミ役にすごい便利、使いやすいです。

あ、念のため言っておきますが、タグにないようにGLを入れる気はありません。
それっぽい描写だーと思っても、ただのスパイス程度のつもりなので、どう転んでもガチっぽくはなりません。
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