緑谷少年の担任が『あの』相澤くんと知り、私はこっそりとA組のテストの様子を見ていた。結果はなんとかなったというのが正直な感想だが、相澤くんも緑谷少年に感じ入るものがあったのだと思えば、嬉しい結果でもある。
「合理的虚偽ね、本気で除籍するつもりだったくせに、相澤くんのウソつき」
「……見てたんですか、オールマイトさん。俺は嘘は言ってませんよ。見込みなしだったら除籍処分と言っただけです」
「つまり、君も可能性を感じたってことだろ、あの緑谷少年に」
「少なくとも、現状は様子見です。自分の力をほとんど扱い切れてない。あんな奴、初めてですよ。しかし、あなたがそこまで気にするとは、何かご存知なんですか?」
「いや、少し気にかけてるだけだよ。個性を使うと体を壊してしまうようだしね」
そうして少し確認する程度にするつもりだったのに、相澤くんから思わぬ反撃を受けてしまった。
「で、オールマイト先生。気になるというのなら、赤黒の方はどうなんですか。あいつは能力的にはかなり高くまとまっている。戦い方のスタイルも近接型で、自分を客観的に見ることにも優れている。あなたがアドバイスをすれば、それをすぐ自身の糧にするでしょう」
……赤黒少女のことを聞かれるとは。いや、彼女は入試1位、気にするなという方が無理な話か。
「そうだね。赤黒少女は確かに素晴らしい素質を持っていると思うよ。いや、素質というのは本人に失礼か。凄まじい努力の賜物だろうからね。もちろん私は今年から教師なのだから、彼女にも自分が教えられることは教えていくつもりだよ」
「そうですか。では、明日の準備がありますので、失礼します」
そう言い去っていく相澤くんを見送るが、先ほどの問いかけのことを考えてしまう。
おそらく、いや、間違いなく。
「それに今回のテスト、
入試の時と比べて明らかに動きの悪かった彼女を思い出し、そう呟いた時だった。
「……いいえ、あれは全力でしたよ、
私の後ろに
「……入試の時とは色々条件が違いましたから。私の全力は先ほどのテスト通りです」
「やぁ、赤黒少女! テストお疲れさん。盗み聞きとは感心しないぞ。それに、なぜこんな場所にいるんだい? クラスの皆とはぐれたのかい?」
「……はぁ、盗み聞きしたわけではなく、たまたま
「ふむ、何を聞きたいんだい?」
そうしてなんとか平静を装っていた私だが、次の彼女の言葉は予想外のものだった。
「……はぁ、近くだとよくわかる。
「……ッ!!??」
「……あなたの活躍した事件は全て知ってます。ですが、そのような傷を負った記録はどこにもない」
「あ、赤黒少女!? 私が重症とはなかなか笑えない冗談だよ!?」
「血の匂い」
「!?」
「内臓を傷つけた時に出る苦く重厚な匂い。それが喉元まで上がり、
「不自然な呼吸。無意識化での呼吸を上手くできていない。時折漏れる喘鳴音から予想するに呼吸器に重篤な損傷がある」
「そして何より……。あなたからは、
絶句するしかなかった。
「
「………………。完敗だよ、赤黒少女。確かに私は胃袋全摘、呼吸器官半壊、体に今でも残る大きな傷がある。その影響で全盛期の私と比べたら確実に弱くなっただろうね。だが、お願いがある、赤黒少女。このことは」
「
ここまでバレていては仕方がないと打ち明けようとしたが、なぜか遮られてしまった。何か気になることがあったかと思ったが。
「事実確認はけっこうだが、肝心なことに答えていない。どうしてそんな傷を負った? あぁ、いや違う。どんな
「……赤黒少女。ここで話したことは秘密にしてほしい。ヒーローとは常に命懸けの仕事だ。世間に発表できない事件も当然ある。そして、私のこの傷は、とある強大な
一番聞かれたくない、いや、話せないことだった。詳しく聞かれないためにも、はっきりと言い切るしかなかった。やつのことを伝えるわけにはいかない。
「……はぁ。わかりました、
「!そうか。すまない、そしてありがとう」
「……いえ、こちらこそ、話していただきありがとうございました」
「そうか。……よし! それでは、私は明日から始まる授業の準備があるから、ここらで失礼するよ!君もクラスにお戻り」
一応はなんとかなったと思った私は、肝心な言葉を聞き逃してしまっていた。
「あぁ、本当に良かった。あなたはやはり
血尋ちゃんは苗字が赤黒ですから、ね。
そして、書き始めたときにやりたかったことのひとつ、オールマイトの怪我バレ達成しました。
本当はこれをAパートにして、戦闘訓練に入ろうとしたのですが、思ったより文字数多くなり、キリが悪くなってしましましたので、今日はここまでで。
閲覧ありがとうございます。