[凍結]私は真の英雄への道を歩む   作:りどれー

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本日3話目

初めてのオリ主視点から始まります。

残酷タグが仕事しますので、一応注意。


第九歩  USJ襲撃事件(中編)

 黒い靄に包まれたと思ったら、すぐに景色が変わった。

 体中に吹き付ける雨風に、先ほどよりも暗い視界。だが、ドームの天井らしきものが見える。おそらく、USJ内の暴風・大雨ゾーンに飛ばされたのだろう。

 雄英敷地内というのは、不幸中の幸いとしか言いようがない。おそらく個性の制限に引っかかったのだろうが、いきなり深海等に飛ばされていたら対処が難しいところだった。

 

「くっ、どこだここは……!?」

「……君は、常闇か。おそらくUSJの中だが、まずは戦闘態勢に入れ、来るぞ」

 

 近くに黒い靄と同時に現れたクラスメイトに一応の声をかけるが、私の意識は周囲にいる(ヴィラン)に向いている。

 

「おーおー、たった2人でこんな所でどうしたんだ?」

「って、女の子の方めちゃくちゃ可愛いな、よーし、お兄さんがイイトコロに案内してやるよ!」

「ぎゃははは! お前の粗末なモンでナニしようってんだよ!」

 

 ……なんとも頭の悪い会話をしているが、これでは(ヴィラン)というより、ただのチンピラではないだろうか。

 

「……念のため確認する。あなた達はどうしてこんな所にいる? ここは雄英高校の敷地内だぞ?」

「あぁ? んなのオールマイトみたいなヒーローをぶっ殺せるって聞いたからに決まってんじゃねぇか! だが、俺達は大当たりだったな、ヒーローぶっ殺すのも楽しいが、嬢ちゃんみたいな子を泣かせるのも楽しいからよぉ」

「……そうか」

 

 ここが雄英高校敷地内という言葉を否定しなかった。会話の程度を考えても、十中八九正しい情報だろう。

 ……そして、どうしようもないクズだということもわかった。相澤先生も自己防衛なら許可している。遠慮はいらないな。

 

「常闇、周辺(ヴィラン)を最速で突破、まずは広場に戻るぞ」

「む……、了解した。いくぞ、黒影(ダークシャドウ)

 

 そう、遠慮はいらない。

 個性把握テストのように自身の課題を見つけるためでも、戦闘訓練のようにクラスメイト(守るべき人々)を相手にするわけでもない。

 入試の時のように(・・・・・・・・)(ヴィラン)を相手にするのだから。

 

 だから、私は戦闘服(コスチューム)に入れておいた飲み物を、超高カロリー飲料(・・・・・・・・)を一息に飲み干し、目を閉じた。

 

「……『吸血鬼』強化率10%」

 

 そして、紅い目(・・・)を見開き、(ヴィラン)へと突撃した。

 

◆◆◆

 

「凄まじいな……」

 思わずといった様子で、常闇踏影はつぶやいた。

 

 周囲には、いずれも意識を飛ばしている(ヴィラン)達。

 20人はいたと思われる集団が、ほんの10秒程度で1人の少女に倒されていた。

 

「常闇、周辺100mに(ヴィラン)の気配はない。位置情報を確認して広場に向かうぞ」

「100m? 疑うわけではないが……本当か?」

「あぁ。このエリアだといつもより範囲が狭いが、それは間違いない。それより場所がわかった。周辺警戒しながら最速で行くぞ、皆が心配だ」

「わ、わかった」

 

 最速で暴風・大雨ゾーンでの受難を乗り越えた2人は、広場へ向けて駆け出した。

 

 実のところ、彼女(赤黒血尋)は焦っていた。

 

 あの広場にいた脳が剥き出しの(ヴィラン)の強さが見えなかったこと。

 持ってきた飲み物(超高カロリー飲料)が、残り1本しかないこと。

 先ほど程度のチンピラに使う必要はなかったかもしれない。しかし、戦闘力と索敵能力を少しでも上げないと、少しでも時間を短縮しないと、また守れないかもしれない(・・・・・・・・・・・・)

 

 それら全てが彼女を焦らせ、必死にさせていた。

 

◆◆◆

 

「……っ相澤先生」

 

 少女(赤黒血尋)と常闇が広場に着いた時、担任の相澤は全身に手を付けた(ヴィラン)に肘を掴まれていた。

 

 未だ紅い目をしていた彼女は、(ほの)かに血の匂いを感じ取り思わずといった様子で呟いた。

 

 広場に来るまでにも散発的な(ヴィラン)の襲撃があり、また常闇が彼女ほど早く移動できなかったこともあり、ここに来るまでいくらか時間を使ってしまっていた。

 

「常闇、私は相澤先生を助けに行く。お前は……、あそこの水辺にいる緑谷達と合流してやってくれ」

「む、だが、赤黒。お前1人では」

「相澤先生と私の戦闘スタイルは相性が良い。それよりも、すぐに怪我をする緑谷に、直接的な戦闘能力が低い峰田がいるあのグループは危険だ。大勢の(ヴィラン)に襲い掛かられた時対処が難しい。お前の個性なら小集団を守るのに適している、頼む」

「……わかった。だが赤黒、決して無茶をするなよ。さっきからお前はどこか変だ」

「……はぁ、善処するよ」

 

 そして少女は相澤の元へと一気に跳躍した。

 

 

 

 

「相澤先生、助太刀します。いえ、させて下さい」

「赤黒、お前な……。ちっ、あくまでサポート。俺は(ヴィラン)共のボスと思われるやつとやる。お前は周辺のチンピラを片付けてから合流しろ」

「でも肘が……はぁ、わかりました。すぐに合流します」

 

 チンピラの相手自体は何の問題もないだろう。だが、ボスと思われる全身に手を付けた男と、強さのわからない脳みそ剥き出しの大男がただ立っている状況は、不気味以外の何物でもなかった。

 

(早く合流しないと。相澤先生は消耗が激しいし、何よりあの大男に勝てない(・・・・)

 

 彼女は焦りながらも、一応は現場に間に合ったおかげで、幾分か冷静さを取り戻していた。

 そして、冷静に見てみれば、大男の異常さに気づくのもすぐだった。

 

(あの大男、先ほどから微動だにしていない? 呼吸音はなんとか聞こえるが、瞬きする様子も体勢を変える気配もない。本当に人間か……?)

 

 今の紅い目をした状態でもわずかにしか感じ取れない。そんな人間を彼女は見たことがなかった。まるで、

 

「自分で考える脳が無いみたいだ……」

 

 奇しくも、その大男の正体を言い当てた。

 

◆◆◆

 

 相澤は激しく消耗していた。

 

 彼は本来、一対一の奇襲戦法を得意とするヒーロー『イレイザーヘッド』であり、多数を相手に長時間(・・・)戦うことは最も苦手だった。

 

「ったく、自分の生徒に心配されるとは情けない」

 

 だからこそ、少女(赤黒血尋)が本気で心配していたことも、自分の状態をわかっているであろうことにも気づいた。

 

 

 個性の長時間使用により、"抹消"できる時間はどんどん少なくなっている。

 数十人もの(ヴィラン)に正面から相対し続けたことで体力も落ちている。

 (ヴィラン)のボスには肘を崩され、右手がうまく使えなくなっている。

 

 

 それがどうした。

 

 

 個性を使用し続けたことも、

 正面から戦闘し続けたことも、

 右手が使えない状態のことも、

 

 

「ヒーローを名乗って、あいつら(1年A組)の先生をやってんだ」

 

 だから、気にすることは何もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「個性を消せる。素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではつまりただの無個性だ」

 

 気づけば、自分(相澤)の後ろにあの大男の(ヴィラン)がいた。

 

「ああ、そうだ。言い忘れていた。平和の象徴(オールマイト)を殺す、その本命は──俺じゃない」

 

 そして

 

 その太い腕で

 

 叩き潰された──。

 

◆◆◆

 

「っ相澤先生!」

 

 少女(赤黒血尋)はいつになく焦った声を上げた。

 

 今この時、彼女は激しく後悔していた。

 

 周辺にいるチンピラを片付けようと大男から目を離した瞬間だった。

 

 大男は、今の彼女でも目で追えない速度で移動し、相澤を地面に押し潰したのだ。

 

(こんなことなら先生の指示を無視してでも共闘していれば……。いや違う!今やるべきことを考えろ。今、一番助けないといけない(・・・・・・・・・)のは──)

 

 

 そして、ポケットから最後の1本(超高カロリー飲料)を取り出し、

 

「……制限時間は短くなるけど、あの大男を相手取るには、相澤先生を助けるためには、やるしかない」

 

 飲み干して、

 

「『吸血鬼』強化率20%(・・・)

 

 真紅の瞳を輝かせ、一気に駆け出した。

 

◆◆◆

 

「あーあ、痛そうだなぁイレイザーヘッド」

 

 全身に手を模したアクセサリーを付けた(ヴィラン)達のボス──死柄木弔──は、そう笑みを浮かべながら言い放った。

 

「せっかくのゴーグルが台無しじゃないか。思った通り目つき悪いなぁ、本当にヒーローか?」

 

「くっ、こいつ」

 

 相澤は個性を使うことで、なんとか拘束された状態から脱しようとしたが、

 

「あー、無駄無駄。脳無の腕力は個性じゃないよ。証拠を見せてやろう。脳無、右腕」

 

「ぐあっ」

 

 逆に右腕を折られてしまった。

 

「あーあ、かわいそうに。それじゃ不格好だろ? 脳無、左もだ」

 

 続けて、左腕。

 

「あぁ、これで両方ともきれいになったじゃないか。ヒーローらしい無様な姿だ。次はどこにするか、ッ!?」

 

 

 

「……指示を出しているのはお前だな。相澤先生から離れろ」

 

 死柄木弔を殴り飛ばしながら、彼女(赤黒血尋)がやってきた。

 

 

「っ痛いなぁ。腕が折れたかもしれない。暴力罪だ、警察を呼ぶぞ」

 

「……ふんっ、自首してくれるならそれが最適だな」

 

 少女(赤黒血尋)は話しながらも、一瞬たりとも『脳無』から意識を逸らしていなかった。

 今の彼女は、先ほどよりも上昇した能力であるが、それでも脳無相手には心もとなかった。

 

(なんとか私に注意を向けさせ、あの大男を私に仕向けさせないと。相澤先生の上に乗られたままではどうすることもできない。まずは動かす。そして救助は)

 

「……へぇ。生意気だな、お前。脳無、やれ」

 

「っ!?」

 

 少女(赤黒血尋)はぎりぎりで反応するも、脳無の拳をガードした左腕が折れた。

 

「っこの、馬鹿力め」

 

 同時にカウンターとなるキックを浴びせるも、硬い何かに当たったような感触があっただけで、脳無は微動だにしなかった。

 

「なっ、ぐぅっ!」

 

 そのまま再び殴られ、今度は右腕が折れた。

 

「はははっ、良かったじゃないか、これでイレイザーヘッドとおそろいだぞ」

 

(……痛みはある。だが、これで作戦通り(・・・・)。思った通りの幼稚な性格、そうしてくると思ったよ)

 

 そして少女(赤黒血尋)は自分の位置を確認する。

 なんとか脳無の動きが目に映ったため、ガードをしながら飛ばされる方向を調節していた。

 作戦通り、あとはもう一発殴られるだけ(・・・・・・・・・・)

 

「……ふっ、何がおそろいだ。両腕は折れたが、私の背中は綺麗なものだぞ。自分で見れないのが残念なくらいだ」

 

(あとは個性を集中させて、腕を動かせる程度に回復。飛ばされながら相澤先生を回収すれば……)

 

「──お前、なんか気持ち悪いな。……脳無、そいつは無視していい。さっきから目障りな、そいつの先にいる子供(・・・・・・・・・・)達をやれ」

 

「なっ!?」

 

 そして脳無は動き出す。

 

「どうせ、何かしようとしたんだろ? それなら、脳無を止めてみろ」

 

 わざわざ、少女(赤黒血尋)がぎりぎり追いつける速度で。

 

 

 

 

 

 だから、それは必然だった。

 

 緑谷達の目の前に突如現れた脳無が、

 

 同じく緑谷たちをかばうように現れた少女(赤黒血尋)を、

 

 

 

 殴り殺すのは(・・・・・・)……。




賛否両論あるかと思います。

明日か明後日にはUSJ編終わらせます。

軽いネタバレになりますが、次回とその次にいろいろ情報詰め込んでますので、疑問点や違和感はそのあとでお願いします。いやまぁ、ここで話切ったのは自分なのですが。

それでは、閲覧いただきありがとうございます。
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