鵜養貴也は勇者にあらず   作:多聞町

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おかげさまでついにUA5,000突破。お気に入り40以上の登録、新たに評価をつけてくださった方もいらっしゃり、大変感謝しています。

本編の執筆のみでいっぱいいっぱいですので、5,000突破記念など出来るわけでもないですが、タイミング良くゆゆゆ編の最終話を次回に控えています。
今後も、本作をよろしくお願いします。

ということで、本編です。





第二十三話 暗転

より巫女装束に近い神秘的な衣装を身に纏った夏凛。その肩付近から巨大な四本の腕が出現していた。四本の腕はすべて巨大な太刀を握っている。

 

「アンタら雑魚は、お呼びでないのよっ!」

 

まず、大太刀の二薙ぎで星屑を殲滅する。一薙ぎで数千体もの星屑を消し飛ばした。

 

続いて、全速力で蟹座型バーテックスに強襲を掛けた。

蟹座型が三枚の反射板を重ねて防御し、夏凛の特攻を止めたところへ、蠍座型が素早く尾針で巨大な右腕に一撃を掛ける。

 

「クッ! そんな攻撃っ!!」

 

夏凛はその攻撃を甘んじて受けるが、もう一方の右腕で蠍座型の尾を斬り飛ばすと同時に両足で反射板を蹴り割り、刹那の直後、二本の左腕で御魂ごと蟹座型を真っ二つに斬る。

満開が解けた。システムの補助ギミックが右腕に巻き付く。

 

「右手を持っていかれたか……。まだまだっ!!」

 

蠍座型に肉薄し、回転しながら自身の左手の長刀で斬り付け続ける。ゲージが溜まると同時に再び満開。

 

「お返しよっ!」

 

巨大な四本の腕で同時に袈裟懸け、逆袈裟懸けに斬り付け、蠍座型を御魂ごと撃破。

そこに射手座型の光の矢の嵐が襲う。巨大な腕には数十の矢が刺さったが、夏凛本人は精霊バリアで守られていたため、そのまま特攻を掛ける。射手座型を口の部分から両断。しかし、以前と御魂の位置が違ったのか、両断されながらも健在だ。

反転して二撃目を加えようとしたところで、魚座型の体当たりの直撃を受ける。

 

「くそっ! 連携が巧妙っ!!」

 

満開が再び解ける。システムの補助ギミックが右足に巻き付いた。

 

「右足……。クッ! 負けるかっ!!」

 

魚座型に左手の長刀で斬り付け続ける。そこに射手座型から数こそ減ってはいるが、光の矢の雨が降ってくる。

防御は精霊バリアに丸投げし、更に斬り付け続ける。ゲージが溜まった。三度(みたび)、満開。

一瞬で魚座型の頭部を切り刻み、撃破。そのまま射手座型の残骸に特攻。すれ違いざまに斬り捨て、撃破。

 

「まだ、いけるっ!!」

 

余勢を駆って、星屑の群れに大太刀の一閃を見舞う。更に数千の星屑が消し飛ばされた。

満開が三度(みたび)解ける。システムの補助ギミックが頭部を覆う。

 

体力を使い果たした夏凛は、そのまま落下していった。

 

 

 

 

「夏凛ちゃん!」

 

「三好さんは、僕が救出に行くっ! 友奈は東郷さんを止めてくれ! みよ……夏凛だって、そう願ってたんだ」

 

「でも、私じゃ止められないよ。無理だよ。あんなとーごーさん、初めて見た……」

 

夏凛の想いをより直截的に伝えようと名前呼びに変えてまで念を押したが、既に頑なな美森の態度を見ていた友奈には響かなかったようだ。

いつも元気な友奈が貴也の前で初めて見せた、消え入りそうに弱気な姿だった。

 

「そんなことはない! 君たちのことは少ししか見ていないけど、二人が一番の友達だっていうのは、僕にだって分かるよ。彼女を受け止めてあげてくれ。友奈なら出来る。僕を信じろっ! 夏凛の想いを無駄にするなっ!」

 

付き合いの浅い自分がするには少し強引だと思ったが、そう励ました。

すると、思った以上に友奈は元気づけられたようだ。少しの逡巡の後、夏凛を貴也に託した。

 

「……分かった。夏凛ちゃんをお願い」

 

目の輝きを取り戻した友奈と別れ、貴也は夏凛の救出に向かった。

 

 

 

 

樹海の奥深くに倒れていた夏凛を見つける。

 

「夏凛!」

 

「鵜養か……。右手と右足、それに両目とも持っていかれちゃった……。友奈は?」

 

疲れ切った体を横たえた夏凛は、少し気だるげに貴也に問いかけた。

 

「東郷さんの説得に向かったよ」

 

「フフッ……。やっぱりアンタ、意外に頼りになんのね。ドサクサ紛れの名前呼び、許してあげるわ」

 

「意外ってなんだよ……。フッ……」

 

思いがけない言葉に、くつくつ笑った。

二人は暫くそうやって笑い合ったあと、意を決して星屑の殲滅へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ! 斬れば斬るほど分裂するなんて……」

 

風は牡羊座型を三回にわたって斬り捨てることに成功したが、その度に牡羊座型は斬られた体をそれぞれベースにして増殖を繰り返した。既に四体にまで分裂している。

 

一方、樹は下半身をドリルのように回転させて攻撃してくる山羊座型に対し、躱してはワイヤーカッターで攻撃を繰り返すが、弾かれるだけだった。

 

「お姉ちゃん、交代!!」

 

ハッとして樹を見る。妹の力強い視線にうなずいた。

互いに走り寄るが、そのまますれ違う。樹に対して、絶対の信頼を置くことに決めた。

 

 

 

 

樹はワイヤーカッターで牽制しつつ、四体の牡羊座型の動きを見極める。

常に三体が一体を守るように動いているのに気付いた。

 

「もうバレてるよ! そこだっ!!」

 

他の三体を無視して、要の一体に攻撃を集中する。頭部を狙って、持てるすべてのワイヤーを伸ばした。

分裂体の一体が楯になろうとするところを、ワイヤーの軌道を立体的に制御して躱す。

他二体の分裂体は次々と樹に体当たりを掛ける。まるでバリアをこそげ取るように凄まじい衝撃が続くが、樹は踏ん張った。

と、伸ばしたワイヤーが要の一体の頭部を貫いた。ドウッと地面に倒れ落ちる牡羊座型バーテックス。すると分裂体も同様に地面に落ちていった。

 

姉の方を振り向く。

風は片膝を地面につきながらも、頭上に翳した大剣の腹で火花を散らしながら、山羊座型のドリル攻撃を受け止めていた。

 

「アタシの女子力、なめんなーーーっ! どっせーーーいっ!!!」

 

かがんだ状態から体全体を跳ね伸ばし、バーテックスを後方へ跳ね飛ばした。その勢いのまま体を反転しながらジャンプ。そのまま振りかぶって、横倒しになった山羊座型の頭部に大剣の一撃を叩き込む。頭部は真っ二つに割れた。

 

「お姉ちゃん……。もう、無茶苦茶だよ……」

 

姉の中の『女子力』が、さらに得体の知れないものに進化していくことに戦慄する樹。

 

「樹っ! 封印!」

 

姉の叫びに、ハッと気がつく。二人で二体のバーテックスに封印の儀を掛ける。

あとは、出てきた御魂を破壊するだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方の本音は、ゆーゆに忘れられたくないって、その一点に集約されているはずだよ。そうだよね?」

 

その言葉は、美森の心に衝撃を与えた。

 

「どうして、そんなこと……」

 

「二年前、伊達に友達をやっていた訳じゃないからね。わっしーが、規律に厳しい頑固者で、でも、とっさの判断に弱くて感情に流されやすい、一人で抱え込む子で、それでいて心の脆い寂しがり屋で、それでも誰にだって思いやりを持って接する子だってことはよく知ってるよ。命すら預け合った、本当の友達だもん!」

 

その手にあった短銃を取り落とす美森。その手は小刻みに震えている。

 

「私やミノさんを意識的に避けていたのも知ってるよ。事実確認以外、話しかけようとしてくれなかったもんね」

 

「私は……、私は……」

 

そうだ。忘れられたくなかった。

 

園子や銀の真実を知った時の衝撃は忘れない。

彼女たちを見ても、通り一遍の同情や憐憫しか(いだ)かなかった。(いだ)けなかった。

その事実が恐ろしかった。

かつて一緒にバーテックスと戦った、強い絆で結ばれた友達だったはずなのに。

当時の記憶が無いだけで、彼女たちの惨状を見ても、強い感情が、激情が生まれなかった。

 

もしも、立場が逆転したら?

もしも、園子たちの立場に立っているのが自分で、記憶を無くした自分の立場に立っているのが友奈だったら?

恐怖だった。絶望しかなかった。

友奈に忘れられることが、美森にとっての世界の終わりだった。

 

 

 

 

「そうよ! 私は、友奈ちゃんだけには忘れられたくないっ! そんなことにだけはなりたくないのっ!」

 

涙を流しながら、そう叫ぶ美森。

 

「でも、どうして貴方はそんなことまで分かるの? 友達だったから?」

 

「分かるよ~。だって、私もわっしーと同じで心が弱いんだから。」

 

その言葉に対し、美森の頭に疑問がよぎる。()()()()会ったことがないが、彼女は『心が弱い』という言葉とは最も遠い所にいる人間だと思っていたから。

 

「私もね、新しい勇者システムの真実に気づくまでは、戦いの中で死んでしまうかもしれない、って思ってたんだ~。だからね、大好きな人に忘れてもらいたくなくて、初めて出会った時の思い出の品を形見代わりに贈ったんだ。私が死んだ後でも、それを見れば私を思い出してもらえるように。でもね……、それは呪われた品だった。私は、私の大好きな人に、半端な力を与えてしまっただけで、危険に巻き込んでしまった」

 

園子の口調が徐々に高ぶっていく。

 

「だからね。私は、私のことが嫌いなんよ。大好きな人に守ってもらってばっかりのくせに、その人の足を引っ張ってばかりで……。挙げ句の果てに、身勝手な想いを押しつけて……、大好きな人を、こんな地獄みたいな戦いに巻き込んで、死んでもおかしくない目に遭わせて。だからっ……! 私は……、こんなに心が弱い私のことがっ! 世界で一番、嫌いだっ!!!」

 

園子の涙混じりの血を吐くような告白に、美森は一言も返せない。

 

「だからね、こうして身体のいろんな機能を失っていくのも……、とうとう、大好きな人の、たぁくんの姿を見れなくなっちゃったことも、全部っ! 私への罰なんだって……。納得できちゃうんよ」

 

「だから、決めたんだ。もう、たぁくんに忘れられることも恐れない。ううん……。むしろ、忘れて欲しい。――――――知ってる? この三百年、四国のほとんどの人は、世界のこんな真実を知らずに、それでも、それぞれの幸せを紡いできたんだよ……。だったら、たぁくんも、私のことを忘れたら幸せを掴めるかも知れない。この世界には、たぁくんが幸せになれる可能性が残ってるかも知れない」

 

「だったらっ! 私がそれを守るっ! この身体の機能を無くし尽くしてもいいっ! たとえこの身が消えてしまってもいいっ! たぁくんが幸せになれるかも知れない可能性が残ってる、この世界を壊そうとする奴は、全部、私の敵だっ! ――――――たとえ、わっしー、貴方でもそうだよ……。それでも、世界を壊すの? 私と戦うの?」

 

園子の問いかけに、美森は押し黙る。

園子の気持ちは理解できる。自分が同じ立場だったら……

 

しかし、美森の心は異なる結論に達する。感情が、それを許さなかったから。

 

「それでも私はっ! 友奈ちゃんに忘れられたくないのーーーっ!!!」

 

だが、そんな美森を抱きしめる影があった。

 

「大丈夫だよ、とーごーさん。私は、絶対、忘れたりしないから」

 

いつの間にか、そばに来ていた友奈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

園子は、あとを友奈に任せて、結界の穴が開いている場所へと向かった。

 

『ゆーゆが来たら、私の出番なんて無くなっちゃうよね。――――――でも、あの時、もしミノさんもたぁくんもいなくなってたら、今頃、わっしーの味方をしてたかもしれないな……。私だって、本当に大切な人は、その三人しかいないもん……』

 

詮無いことを考えながら、穴へと近づいていく。現状、バーテックスの動きは止まっていた。そのはずだった。

 

「……!」

 

二ヶ月前対峙した、合体バーテックス(レオ・スタークラスター)が無数の星屑を引き連れて、結界内に侵入してくるところであった。

 

 

 

 

「嘘よ! 信じられない!」

 

イヤイヤをするように頭を振り、体を捩らせて、友奈を振り解こうとする美森。

 

「本当だよ。嘘じゃない! 一緒にいれば、絶対忘れたりなんかしない! 忘れるもんか!!」

 

「私たちも……、乃木さんとも三ノ輪さんとも、きっと同じように思ってた! でも、もうあの子たちを見ても、友奈ちゃんたちと同じようには感じられないの! そのことが、とても恐ろしいの!」

 

悲しみと恐怖を叫び続ける美森の頭を強引に自らの胸に掻き抱いた。

 

「私のすべてを賭けてもいい。約束するよ。絶対、とーごーさんのこと、忘れたりしない」

 

「嘘……」

 

「嘘じゃないっ!!」

 

「本当なの? 信じていいの……? 私を一人にしない?」

 

「うん。約束だよ。ずっと一緒にいるよ」

 

「友奈ちゃん……、うっ、うああぁぁぁ……」

 

泣き崩れる美森。そんな美森を優しく抱きしめる友奈だった。

 

だが、すぐに爆発音に気付く。

結界の穴が開いている付近で、戦闘が始まっていた。

二人は顔を見合わせ、互いに頷くと、戦場へと向かった。

 

 

 

 

自動追尾してくる火球の群れ。合体バーテックスのリング部分を通過することで、炎を身に纏う星屑の群れ。

園子は大量の槍を召還しながら戦うが、手数が圧倒的に足りず防戦一方であった。

戦いが始まって、僅か二分。まだ撃墜されていないのが不思議なほどの状況だった。

 

「このままじゃ、ダメだ……。満開!」

 

数の暴力に押され諦観を持ってしまったことで、園子は満開を選んでしまった。

空中に大きな蓮の花が咲き誇る。

だが、方舟の槍を長大化させて切り刻むとともに、召還し続ける多種類の槍の投擲も織り交ぜて戦うも、それでも拮抗するに至らなかった。

至近距離での爆発が続き、精神が削られ、心が疲弊してゆく。

 

そこに友奈と美森が援軍に駆け付けた。二人は、既に満開している園子に絶句する。

 

「園ちゃん! どうして、満開までっ!?」

 

「乃木さん……」

 

しかし、そこに気を取られている状況ではなかった。

遥か頭上で、超巨大な火球が生成されていっていた。

 

三人の中で、誰よりも早く反応した園子が方舟を火球にぶち当てる。

だが、今回は状況が悪すぎた。あっという間に満開が解け、園子は落下していった。

 

「園ちゃん!? 満開!!」

 

「友奈ちゃん!?」

 

それを見た友奈が続けて満開。空中に大きな桜の花を咲かせると、火球を巨大な鋼鉄の腕で殴り飛ばす。

 

「勇者ぁーーパァーーーーンチッ!!!」

 

その一撃で、火球は霧散する。そのまま、合体バーテックスに向かいもう一度パンチを浴びせようとするが、自動追尾火球と燃えさかる星屑が数十も襲いかかってきた。

 

「友奈ちゃん!! 満開っ!!!」

 

美森が満開した。大きな朝顔の花が咲き誇ると、八門の触手状の砲を備えた巨大な浮遊砲台に乗った美森が現れる。

友奈を援護しようと全砲門を開くが時既に遅く、友奈は撃墜されていた。

友奈も満開が解け、落下していく。

 

「友奈ちゃん!?」

 

友奈を助けにいこうとしたが、まだ残っている自動追尾火球と燃えさかる星屑たちに阻まれた。

 

「お前たちっ! 邪魔だーーーっ!!」

 

全砲門をくねらせながら、撃ち落としていく。

 

 

 

 

違和感に美森が振り向くと、合体バーテックス(レオ・スタークラスター)は自身を太陽にも似た火球に変容させていた。太陽の如き火球はそのまま、神樹目がけて飛んでゆく。

全速力で火球の進行方向に回り込み、押しとどめようとした。が、止まらない。

 

「グッ……。止まれーーーーーっ!!」

 

その時、美森の両横で大きなオキザリスの花と鳴子百合の花が咲き誇った。

満開した犬吠埼姉妹だった。

 

「東郷! アタシたちも手を貸すわっ!」

 

「東郷先輩! 私もっ!」

 

「風先輩! 樹ちゃん!」

 

だが、三人掛かりでも太陽の如き火球を押しとどめることは出来なかった。

 

 

 

 

その光景を遠くから見ていた貴也は、自身の無力に絶望していた。

 

「クソッ……。僕には、みんなに貸せる力も無いのか……」

 

両手を地面につき、悔しがる貴也。

 

そんな彼の前方に、四匹の神性を帯びた獣が現れた。乃木神社の本殿で見かけた、青い烏、暗赤色の狐、橙色の蛇、白猫であった。

四匹は互いに顔を見合わせるような動作をすると、暗赤色の狐が一歩、貴也へと近づいた。

そのまま貴也へ向けて駆け出すと、その体目がけて飛び込んでくる。

 

「うわっ……!」

 

貴也へぶつかる寸前、狐は光と化し、彼の体に溶け込んでいった。

 

途端、今までに感じたことがなかったほど大きな力が体に満ちるのを感じた。

貴也の背中側、腰の辺りから大きな光の尾が九本も生える。ふさふさの光の毛で構成された太い尾が。

 

「お前たち……。力を貸してくれるのか?」

 

じっと貴也を見つめる、残り三匹の獣たち。是とも、非ともとれそうな態度ではあるが、肯定のサインであると解釈した。

 

「みんな、待ってろよ!!」

 

九本の尾で地面を叩き、ジャンプする。友奈たちをも越えるジャンプ力だった。

そのまま、戦場へと駆けつけていった。

 

 

 

 

『声が出ない……。声も持っていかれちゃったのか……』

 

園子は、自身の声すら供物にされたことを悟った。

だが、まだ休むわけにはいかない。勇者部の皆が戦っているのが分かる。

システムの補助ギミックでの感知能力で場所を特定すると、そこへ向かった。

 

 

 

 

「グッ……。足が……」

 

一方、友奈は両足が供物にされたことを知る。

が、そんなことで諦めるような友奈ではなかった。

 

 

 

 

「そこかーーーっ!!」

 

太陽の如き火球を止めようとする勇者たちに、夏凛が加わる。サツキの花を咲かせて満開する。

と、同時に蓮の花も咲き誇った。園子も援軍に加わったのだ。

 

だが、それでも火球は止まらない。

五人の心が同時に折れそうになる。

 

そこに、九本の光の尾をもった貴也が加わった。

 

「みんな、待たせたっ! 僕も加わるっ!!」

 

「「「「「押し返せーーーっ!!!」」」」」

 

貴也が加わった瞬間、ついに均衡が破られたのか、急激に火球のスピードが落ち、炎が小さくなっていく。

 

「うぉおおおーーーー!!!」

 

その時、後方から友奈が強引にゼロゲージから満開を掛け、突っ込んできた。

通常の満開ではない。樹海から供給される光ではなく、友奈自身の内から湧き出る光が満開を生じさせていた。

 

「私は!! 讃州中学勇者部!!」

 

「友奈!!」

 

「友奈さん!!」

 

「友奈!!」

 

「友奈ちゃん!!」

 

『ゆーゆ!!』

 

「友奈!!」

 

皆の友奈への叫びが轟く。

 

「勇者! 結城友奈!!!」

 

友奈はパンチを掛けながら、火球の内部に溶け込んでいった。

 

 

 

 

本当に目で見ている光景なのか、心で見ている心象風景なのか、貴也には判別がつかなかった。

 

だが、遙か遠く、制服姿の友奈がレオ・スタークラスターの御魂に素手で触れようとしているのが見えた。

それは、とても神々しい光景に思えた。

 

そして、友奈の手が御魂に触れた瞬間、すべてが白く溶けていった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

雨が降っている。強い雨ではない。霧雨だ。

夜明け前の一番闇が深くなる頃合いの街を、霧雨が更に深く闇に閉じ込めている。

 

 

 

 

街のど真ん中、八車線はあろうかという大通りのさらにその真ん中に、勇者装束をその身に纏ったまま貴也は倒れていた。

 

雨の感触に、混濁気味の意識で目覚める。

だが、身体がひどくだるい。強烈な睡魔に襲われる。

 

周りはビル街のようだ。

自分が、荒れたアスファルトの上に転がっているのが分かる。

 

雨を吸い込んだアスファルトの上で、もぞっと身体が動く。

左手がわずかに動き、アスファルトとは異なる感触に触れる。

ざらついていて、それでいて冷たい。錆びた鉄のようだ。

 

『レール? 路面電車? 道後市か……。 ――――――雨に濡れたままじゃ、ヤバいな……』

 

微かな疑問と危機意識が浮かんだが、睡魔には抗えず、貴也の意識は再び闇の中に沈んでいった。

 

 

 

 

闇に閉ざされた街に、霧雨が降る。

まだ曙光が差してくるには、暫くの猶予が必要だ……

 

 

 




過去最大ボリュームでお届けした、とーごーさん反逆編後編でした。

夏凛の大活躍は戦い前の口上や五箇条の叫び等格好いいですが、同じことをする訳にもいかないので、より生の感情に近い台詞回しとしています。なお、バーテックスの連携も原作よりちょびっとだけ向上させています。

そのっちvsわっしー。洞察力の高いそのっちが相手なので、原作のわっしーの叫びからより本音に近そうな所をチョイスして、他をそぎ落とし肉付けしてみました。作者的には、友奈とのやり取り部分を含めて満足度が高い部分です。
また、園子の血を吐くような告白は、わすゆ編からこうなりそうだなと温めてきた部分なので、やはりここも文章化できて満足です。

バーテックスはジェミニを皮切りに十二体すべて復活させました。抜けはないはず。

友奈の最後の満開は通常のものとは異なるそうです。確かにアニメでもそのように表現されていますね。この子って一体……

ところで、作中で松山市の名称はどのように変えられているんでしょうかね? 観音寺→「讃」岐「州」、高松→「玉藻」城、坂出→瀬戸「大橋」、宇多津→「大束」川。なので「道後」温泉から取ってみましたが、さて?

きりがいいので、今後のプロット整理とストックの増加を睨み、ゆゆゆ編最終回の投稿は勇者の章最終回一周年に合わせます。と、いうことで1月6日の投稿となります。


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