鵜養貴也は勇者にあらず   作:多聞町

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第四十話  根絶するのは

寮の裏手で倒れていた友奈を発見したのは千景だった。

すぐに保健室に担ぎ込まれたのだが、目を覚ました彼女はタハハと苦笑いを浮かべるだけだった。

 

「寮の裏手に落ちた洗濯物を拾いに行った時に、なんか、立ちくらみでも起こしたみたい。ご心配おかけしましたー」

 

「心配したのよ……。高嶋さんは二度も酒呑童子を下ろしているんだから、もう一度精密検査を受けた方が良いかもしれないわ」

 

その千景の言葉に、両手を合わせて拝み出す友奈。

 

「いやぁ、もう一度入院は勘弁してー」

 

「次、同じようなことがあったら、即入院ね」

 

「あはは……」

 

「友奈は休んでいろ。食べ物はとっておいてやるからな」

 

「よろしく、お願いしまーす」

 

とりあえず球子の歓迎会を催すために皆、ぞろぞろと保健室を出て行く。

その後ろで、ベッドに寝たままの友奈が小声で何やら呟きながら首を傾げる。

 

「ヤギさん、ヤギさん、四本角のヤギさん……?」

 

「どうしたの、高嶋さん……?」

 

「ん? 何でもないよ。ただ、誰かに何かを気をつけろって言われたような気がしただけだから……」

 

友奈の不思議な言動に唯一気付き、そう尋ねた千景も、それ以上は気にも留めずに皆に続いて保健室を出て行った。

だが、そのあとも友奈はぶつぶつと独り言を呟いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

球子の復帰祝いを行った数日後。

八月上旬でもあり通常の学校は夏休み期間だが、ここ丸亀城内にある勇者たちの小規模校はそんなものは関係ないとばかりに通常授業が行われていた。

二限目が終わった後の長めの休み時間。皆で駄弁っている時に、その警報音は鳴り響いた。樹海化である。

 

貴也たち六人は変身すると、すぐさま臨戦態勢に入った。貴也も多重召喚を掛けている。

樹海化した四国から瀬戸内海の向こう側を見る。八体の三十メートル級バーテックスが無数の星屑を引き連れて、結界の壁を越えようとしているところだった。そして、そのすぐ後方に身の丈百メートルに達する超大型バーテックスの姿もあった。

 

「いよいよ、決戦だね」

 

「ああ、友奈は精霊を使うなよ。私たちでなんとかする。その代わり、小型のバーテックスは任せることになるがな」

 

「心配するな。タマたちの新しい精霊が火を噴くのを見ていタマえ」

 

「私が皆さんのサポートをします。遊撃は任せてください」

 

バーテックスをキッと睨みつつも、感慨深げな発言をする友奈。その友奈を気遣う若葉。自信ありげに胸を叩く球子。そして、そんな彼女たちに微笑みかけながら自信を後押しする杏。

そうした中、千景は心配そうに貴也に声を掛ける。

 

「本当に、アレをするの? 貴也くん……」

 

「ああ、獅子座型(レオ)が出てきている以上、やらざるを得ないしな。でも、恐らく僕はアイツを相手取るだけで手一杯になるはずだ。悪いけど、他のヤツらは頼んだ。まぁ、どちらにせよ速攻で倒さないといけないから、すぐに援護に向かうつもりだけどね」

 

貴也は、そう言って皆に笑いかけた。

 

「よし! いつものアレをやるぞ!!」

 

若葉の掛け声に応じて、皆で肩を組み円陣を作る。

 

「恐らく、これが人類の命運を掛けた、私たちにとっての最大最後の戦いになるはずだ。ヤツらバーテックス、いや天の神は人類を根絶やしにするつもりなのだろう。でも、私たちはそれに抗う! 逆に大型バーテックスをすべて殲滅してやろうじゃないか! いくぞ! 勇者一同! ファイトーーッ!」

 

「「「「「「オーーッ!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くんだな? 貴也……?」

 

「ああ……」

 

皆、心配げな声を貴也に掛ける。だが、その表情は信頼に満ちていた。

貴也を取り囲むように五人で並ぶと、若葉たちは自らの体の内側に意識を集中させ、いつもの精霊を召喚する。

 

「「「「「来いっ! 義経(一目連)(七人御先)(輪入道)(雪女郎)!!」」」」」

 

「召喚!!」

 

若葉たちがその身に下ろした精霊たちを、若葉たちとの間に生成された霊的経路を通じて掠め取る。これが貴也の切り札だった。

いつも下ろしていた、指輪の石に込められた、若葉たちの二割弱の出力しかない精霊ではない。出力百パーセントの正真正銘の精霊。既に指輪の精霊を憑依させている貴也の体に、それらがさらに上書きされて憑依する。

 

体に凄まじい激痛が走る。それに耐えきると七人の貴也が出現した。両手に持つ輪刀。それには炎と冷気の双方が力強く宿っている。

 

「じゃあ、行ってくる!」

 

「残りは私たちに任せろ! 貴也が戻ってくる前にすべて片付けておいてやろう!」

 

「ああ、期待してる。じゃあ、またな!」

 

若葉たちと声を掛け合うと、皆の視線を背に七人の貴也は輪入道の空中走行で、全速で獅子座型の元へと向かった。

 

 

 

 

貴也が出撃したすぐ後、若葉たちはバーテックスの戦術に驚愕することになった。三十メートル級バーテックス八体それぞれが散開して別方向から神樹を目指し始めたのだ。

 

「まずいぞ。私たちの連携を分断するつもりか!?」

 

「あんず、どうすりゃいいっ!?」

 

「数でも負けているんです! 若葉さんと千景さんは強力な精霊を下ろせます。各個撃破に向かってください! 私とタマっち先輩で、数を稼ぎます! 友奈さんは小型の数を減らしてくださいっ!」

 

「でもっ……!」

 

逡巡している友奈に構っている暇さえなかった。若葉たちはそれぞれ散開して各個撃破に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、ありゃ? 両脇に水袋をぶら下げているみたいだな!」

 

「タマっち先輩、油断しないで! 最初から全力で行くよ!」

 

球子と杏は、一番手近にいた水瓶座型(アクエリアス)を相手取る。

 

「分かってる。タマに任せタマえ! 来いっ! 八岐(やまたの)大蛇(おろち)っ!!」

 

球子は古事記、日本書紀にも記されている日本神話最大の(かたき)役である龍神をその身に憑依させる。天津神の一柱でもある素戔嗚尊(すさのおのみこと)と敵対した大蛇だ。杏が噛み砕いてくれた資料の中で最もインパクトがあり球子のお気に入りとなった、その龍神が彼女の身に下りる。球子の勇者装束がみるみる鱗を模したものに変わっていく。

 

「喰らえ!」

 

水瓶座型に肉薄して殴りつける。凄まじい膂力で水瓶座型の一部を破壊した。

しかし、水瓶座型も強力な水流弾を放ち、球子を吹っ飛ばす。かろうじて腕をクロスしていなし、ダメージを軽減する。

万全でない足を無視して肉弾戦を挑もうとする球子を心配し、金弓箭で攪乱、援護しながら杏が叫ぶ。

 

「タマっち先輩! 八岐大蛇の真価を思いだして!」

 

「分かってるぞ、あんず! コイツは水害の象徴! だからコレだ!」

 

水瓶座型が大小数多くの水球を射出してきた。これに対し、球子は右腕を突き出す。どこからか召喚された八本の太く激しい水流が現出した。水瓶座型の水球を悉く破壊しながら、その激流は水瓶座型本体に襲いかかる。

だが、水瓶座型はその激流に耐えながら収束した水流を放つ。徐々に押されていく球子の水流。

 

「クソッ! でも、水害は水だけじゃないんだぞっ! 喰らえっ!!」

 

球子の水流が土石流に切り替わる。土石流は水瓶座型の水流を弾き飛ばしながら、水瓶座型本体に継続的にダメージを与え続ける。その威力は水瓶座型の周囲を飛び回る星屑をも屠り続けるのだ。

 

「来いっ! 猫又っ!!」

 

杏は、妖怪猫又をその身に下ろす。杏の体の大半を白い毛皮が覆い、二本の巨大な尾が腰から生える。

 

『みんながみんな、強大な力だけに割り振るのは避けた方がいい! 火炎を使う精霊が多い以上、私は機動力のあるサポート役をこの身に下ろすべきなんだっ!!』

 

「いっけーーっ!!」

 

杏が両手を突き出すと、そこから油の奔流が放たれ水瓶座型を巻き込む。

 

「タマっち先輩っ!!」

 

「分かってる! 喰らえ! これが草薙剣(くさなぎのつるぎ)を鍛えた灼熱だーーっ!!」

 

八岐大蛇はその死体の尾から天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)こと草薙剣が発見されたことから、製鉄を象徴するものとも捉えられるのだ。だからこその、鉄を鍛える灼熱の炎。

球子も両手を突き出す。そこから紅蓮の炎の奔流が湧き起こると、杏の油の奔流を巻き込み、炎の勢いを倍化させて水瓶座型に激突する。

途端、水瓶座型の内部の液体が沸き立ちでもしたのか、水瓶座型は周囲の星屑を巻き込んで木っ端微塵に爆発した。

そして、僅かに残った本体は砂のように崩れていくのだった。

 

しかし、ホッとしている暇はなかった。

 

「あんず! あれ!」

 

球子が指差す方向に比較的小型の人型バーテックスが神樹をめがけて走っていた。双子座型(ジェミニ)だ。

 

「速い! あれは私に任せて、タマっち先輩は別のをお願い!」

 

「分かった! 頼むぞ、あんず!」

 

杏は、返事を返すのももどかしく双子座型を追いかけていった。

 

「さあ、次はお前だ!」

 

球子の前に女性的フォルムを持ち、白く巨大な帯のようなものを垂らしているバーテックス、乙女座型(ヴァルゴ)が迫っていた。

 

 

 

 

友奈は星屑を相手に奮闘していた。だが、若葉たちが後回しにしている大型バーテックスの事が気になって仕方がない。

特に下向きに四本の角を生やしているバーテックス。山羊座型(カプリコーン)だ。こいつに対してだけは、何故か頭の中で警鐘が鳴らされる。

 

『迷っててもダメだ! 若葉ちゃん達の手が回りきらないのなら、私がやる!!』

 

友奈は山羊座型を目指して走り出した。だが、その前に割り込むように、周囲に無数の棒のようなものを浮かせた赤いバーテックス、蟹座型(キャンサー)が立ちはだかった。

 

 

 

 

若葉は、体の中央部が幾つもの節に分かれた体長の長いバーテックスを相手取っていた。牡羊座型(アリエス)だ。

 

「お前たちの好き勝手にはさせん! 来いっ! 大天狗っ!!」

 

若葉は日本三大悪妖怪の一つ、大天狗をその身に下ろす。背中から漆黒の巨大な翼が生え、山伏のような姿になる若葉。その胸元には嘴にも似た意匠が出現する。

 

「喰らえっ!」

 

生大刀による刹那の五回斬撃。それは牡羊座型のみならず、周囲の星屑をも巻き込み斬り飛ばす。五度の斬撃は百体近い星屑を殲滅すると同時に、牡羊座型も六つに切り分ける。

ところが、牡羊座型は六つに切り分けられた部位それぞれをベースにプラナリアのように体を再生させ、六体に増殖する。

 

「なんだとっ!?」

 

驚愕する若葉の後方に、凶悪な牡牛のような二本の角を持つバーテックス、牡牛座型(タウラス)が迫る。

と、凄まじい音響を浴びせてきた。牡牛座型が上部にある鐘状の器官を鳴らしたのだ。

 

「グッ……!」

 

牡牛座型の発する怪音波の影響で行動力を奪われる若葉。

七体の大型バーテックスを前に彼女は窮地に陥った。

 

 

 

 

千景はクラゲを思わせるフォルムを持ったバーテックスを追いかけていたはずだった。だが、僅かな隙を突かれて見失ってしまった。

 

『何処に行ったの?』

 

周囲を最大限に警戒しながら、周囲から襲い来る星屑を大葉刈で屠り続ける。

突如、樹海化した地面を割り裂くように地中から大型バーテックスが現れる。魚座型(ピスケス)だ。

 

「クッ!」

 

体当たりを掛けてくる、その攻撃を辛うじて躱した。

 

「出し惜しみしてる場合じゃないっ! 来いっ! 玉藻前(たまものまえ)!!」

 

千景は、白面金毛九尾の狐をその身に下ろした。千景の体の大半を金色の毛皮が覆い、腰からは九本の尾が生える。

仲間たちと新しい強力な精霊を探した際、若葉、友奈、千景の前衛三人は日本三大悪妖怪で揃えることとしたのだ。もちろん、それだけの力が無いと大型バーテックスに対抗し得ないからだが、友奈が既に酒呑童子を下ろしていたため、それぞれの適性を考え、若葉が大天狗、千景が玉藻前を担当することになったのだ。

 

地中に潜ってはトビウオのように飛び出し襲い来る魚座型を、空中で軽やかに躱しながら大葉刈に炎を纏わせ斬り付ける。確実にダメージを与えているようだ。

だが、そこに雨のように光の矢の束が降ってきた。この攻撃を瞬間移動で躱す。

千景は玉藻前の妖力を用いることで、短距離ならば一瞬で移動可能なのだ。伝えられる限り玉藻前は妖術を得意とする妖怪だ。だが、千景に制御可能なのは、どうやら火炎と空中浮遊、そしてこの瞬間移動のみのようだった。

 

「クッ! あれが攻撃してきたのね……」

 

やや離れた位置に、巨大な口に巨大な矢をつがえ、さらにその口の下にあるもう一つの口からまたもや光の矢を放ってくる大型バーテックスがいた。射手座型(サジタリウス)だ。

もう一度、その光の矢の束を瞬間移動で躱す。しかし、これに頼りすぎるのは下策のようだ。もう一人の自分が後ろから抱きつき、囁きかける。

 

「どうして、そんなに頑張るの……? どれだけ頑張っても、人々の賞賛は乃木さんに向かうのよ。貴也くんだって、振り向いてはくれないわ。あなたの頑張りはむなしく――――――」

 

「うるさいっ! 私は、もう自分に負けたりなんかしないっ!! 少なくとも、高嶋さんたち勇者の仲間は私を友達として愛してくれてるのっ! それだけあれば、今は十分! 天の神なんかに滅ぼされてたまるものですかっ……!!」

 

背後の地中から出現し黒色のガスを噴出しながら体当たりを掛けてきた魚座型に、逆に千景側も体当たりを掛けるように突っ込んでいく。

その時、飛んできた射手座型の光の矢が黒色ガスに引火し、千景の周囲を連鎖的に爆発が発生する。

 

「うぉぉおおおーーっ!!」

 

荒れ狂う爆風の嵐の中、千景が吠えた。爆発によるダメージを最小にするために、最大速度で魚座型に突っ込んでいく。

炎を纏った大葉刈の刃を立てて特攻してきた千景に、魚座型は縦に真っ二つになりながら砂のように崩れ去っていった。

 

 

 

 

貴也が獅子座型(レオ)の元へ辿り着いた時、既にその前面には大型の火球が半ば生成されつつあった。

 

「させるかっ!!」

 

七人の貴也は、輪入道の空中走行、義経の機動力、一目連の瞬発力を組み合わせ、獅子座型の周囲を青白き閃光となって斬撃を与え続ける。

百パーセントの精霊を五種類組み合わせたその力は確実に、一撃当たり酒呑童子を宿した友奈の七割方のダメージを獅子座型に与える。

大型の火球は霧散した。だが獅子座型は、今度は後部のリング部分を縦に裂くように分割すると、その間隙から炎を纏った星屑を繰り出して反撃を加えてくる。

一人、また一人と撃墜される貴也。だが、七人御先の特性が威力を発揮する。七人同時に撃墜されない限り、半ば無限に代わりの貴也が姿を現すのだ。

 

「くそっ! 差し違えて一人一殺が限界かっ!」

 

しかしその言葉どおり、炎を纏う星屑を倒すのは困難を極めた。斬撃一発で倒せるものの、その際に攻撃した貴也自身も炎に焼かれて消滅するのだ。しかも、周囲の樹海に被害を与えている。なんとしても、早めに倒す必要があった。それだけではない。

 

「頭を始め、体中に激痛が走っている。あまり長くは保たない。早く決着しないと!」

 

その時、気付いた。獅子座型のリング部分の前面、球体と牙を組み合わせたような部位に攻撃が当たると奇妙な音を発することに。

 

「ここが、弱点……いや、こいつの核に相当する部分なのか……?」

 

七人中三人をその部位への攻撃へ振り向ける。青白き閃光が、獅子座型を、周囲の星屑を斬り付け続ける。

だがそこに、諏訪での夜、響いた声がもう一度耳朶を打つ。

 

「この戦いに勝ったからって、なんになる……? ネットの噂を見ただろう。人々はお前たちを蔑むだけだ。それに、お前は三百年後に帰ることなど出来はしないのだ。乃木園子と再会することは不可能だ。お前は、この時代で孤独に野垂れ死ぬのだからな……」

 

「それが、どうしたっ!? 僕はこの戦いに勝って、そのちゃんが生まれてくる世界を守るんだっ!! この時代の仲間たちだって、守るんだ! 僕が挫けようとも、彼女たちはきっと僕を支えてくれる! なら、今すべきことは、この戦いに勝って、この世界を、彼女たちを守り抜くことなんだ!!!」

 

ザンッ!!

 

獅子座型前面の球体を斬り裂いた。

そこから、鈍く光る人間大の球体が出現する。

 

御魂(みたま)っ!? いや、形が違う。プロトタイプなのか……?」

 

その球体は、赤道部分から四枚の刃を展開すると、高速で回転しながら貴也にぶつかってくる。

瞬く間に三人の貴也が斬られ消滅する。だが、もう一人の貴也は空中で体を側転させ、上手く躱しながら斬撃を与えた。

 

ガギンッ!!

 

堅すぎて斬撃が通らない。

それが分かった瞬間、ノータイムで本当の最後の切り札を使う。

 

「多重召喚!!!」

 

七人の貴也が一瞬で一箇所に集まり重なり合う。次の瞬間には、たった一人となっていた。すべての力を重ね合わせたのだ。だが、その代償は大きい。体の至る所から血が噴出し始める。

迫り来る球体に、たった一つとなった輪刀で叩きつけるように斬り付けた。

 

バギンッ!!

 

胸を水平に斬り付けられたが、球体は縦に真っ二つとなり、次の瞬間爆発する。

球体は数百もの色とりどりの光の粒となって、天上へと帰って行った。

そして、獅子座型本体は砂となって崩れ去っていったのだった。

 

 

 

 

瀬戸大橋橋上に、全身血まみれの貴也が立っていた。

既に若葉たちから掠め取った精霊の力は解けていた。指輪に込められた義経一体のみの単独召還状態。十体の精霊を周囲に浮かばせていた。

 

「他にも……、プロトタイプの御魂を……宿している……個体がいるかもしれない……。早く、みんなの……援護に戻らないと……」

 

胸を手で押さえ、苦しげにそう呟くと、瀬戸大橋橋上を四国本土へ向けて、よろよろと重い体を引き摺るように歩いていった。

 

 

 




のわゆ編最終決戦前編でした。

精霊については千景は公式にありますし、球子は性格上、もうこれしかないかなと。
杏のものが少し妙な方向に捻ってありますかね。ただ、彼女ならこういうのもありかな、と。決して猫耳杏を愛でたいとかいう個人的欲望の発露ではないですからね。

これ以上、コメントすべきこともなく。
なお、のわゆ編はハッピーエンドにならない模様……

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