鵜養貴也は勇者にあらず   作:多聞町

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お久しぶりでございます。

はい、勇者部の章です。勇者の章ではございません。
原作勇者の章の前半に当たるはずです。当たっているつもりです。

では、本編をどうぞ。





勇者部の章
第四十六話 華やぐ日常


十一月も半ばを迎えた。

月曜日。美森は友奈と連れ立って登校していた。そもそも家がお隣さん同士なのだ。中学に上がってからの一年半、登下校だけでなく、生活のそのほとんどを友奈と過ごしているようなものだ。

 

『あ~、今日も友奈ちゃんの元気な笑顔を見ながら登校できて幸せだわ……。他人から見たら私たち二人、カップルに見えないかしら?』

 

もちろん、そんなことを考えているなど毛ほども感じさせずに、すまし顔で友奈の横を並んで歩く。頻繁に眼球の動きだけでチラッチラッと隣の友奈の笑顔を盗み見ているのが異常性を感じさせるのだが、そんな僅かな動きに気付く人もなく。

 

「おおーっ!? とーごーさん、校門の前に高級車が停まってるよ。なんだろー?」

 

友奈が急に歩くスピードを上げて黒塗りの車にトコトコと近寄り、後部座席を覗き込む。

だが、すぐに美森の下へ戻ってきた。

 

「誰も乗ってなかったよー」

 

えへへと笑いながら、頭を搔いている。

 

「もう! お行儀が悪いわよ、友奈ちゃん!」

 

口では(たしな)めながらも、そんな友奈も可愛らしくて素敵だと心の中を蕩けさせつつ、教室へと向かった。

 

 

 

 

二年一組には、美森、友奈、夏凛の勇者部二年生組三人が揃っている。

既に登校していた夏凛に友奈共々朝の挨拶をし、とりとめのないおしゃべりに興じていると、すぐに予鈴、そして始業のベルと時間が進んでいった。

 

担任の女性教師が教室に入ってくると、今日の日直が挨拶の号令を掛ける。

 

「起立! 礼! ――――――神樹様に拝」

 

教師への礼の後、号令に合わせて神樹様のある方向へクラス全員向き直り、両手を合わせて軽くお辞儀をする。

 

「着席!」

 

全員の着席を確認すると、なぜか担任が顔を僅かに引き攣らせながら話し始める。

 

「えー、今日は皆さんに新しい仲間を二名紹介します。編入生と転校生です。皆さん、仲良くしてあげてください」

 

美森は疑問に思った。この学級には六月に夏凛が転入してきている。この上同じ学級に、それも二名も転入生を受け入れるのは理に適ってない。何故、他の学級に入れないのか?

同じように思ったのだろう、学級内でも割と活発でかつ真面目な男子生徒が手を挙げて担任に疑問を投げかける。

 

「このクラスには六月に三好さんが転入してきてます。どうしてまた、それも二人もこのクラスに受け入れるんですか? 他のクラスは今年、まだ転入生はいないはずですけど……?」

 

「えー、色々と事情があるんです……。察して、とまでは言わないけど……、先生の権限ではどうにもならないから、我慢してね……」

 

困り切ったような顔でしどろもどろになりながら弁明する担任に、それ以上追及する生徒はいなかった。

気を取り直したように担任が教室の外へと声を掛ける。

 

「じゃあ、入っていらっしゃい。乃木さん、三ノ輪さん」

 

美森は、それこそ度肝を抜かれた。教室に入ってきたのが乃木園子と三ノ輪銀だったからだ。

 

『私、聞いてない……』

 

友奈と夏凛を見た。友奈は驚きに思考停止でもしたのか、口をぽかんと開けたままボケーッとしている。夏凛はと言うと、驚きに唾を飲み込み損ねでもしたのか、ゲホゴホと咽せている。

 

『あの二人はダメだ。私がしっかりしないと……』

 

だが、そう思う美森自身、頭の中が真っ白になり、まともな反応が返せそうになかったのだった。

 

 

 

 

教壇では、二人の自己紹介が始まっている。

 

「私は乃木園子って言います。小六の秋に体を壊して寝たきりになっちゃって、小学校中退のあと学校へ行けてなかったんだけど、すっかり良くなったので、また学校に通えることになりました。皆さん、仲良くしてね~」

 

自分の名前を黒板に大書し、ひどく重い事実をさらっと話すと、園子はにぱっと笑いながら右手を体の前で小さく振る。クラス全員、どう返していいのか分からず固まっていた。

 

「お? 重い事実をさらっと明かすな。じゃあ、次はあたしの番な。――――――あたしは三ノ輪銀。神樹館中学から来ました。見てのとおり、小六の夏に事故に遭って、右腕がありません! 左足も不自由になって、走ることもままなりません。でも、元気いっぱいのキャラなんでよろしく!」

 

銀も園子に対抗したのか、自分の名を板書した後、右腕の義手を見せびらかしつつことさら重い事実をにこやかに話すと、これまた満面の笑みで左拳を上に向けて突き出した。

既にクラス全員どん引きである。異常な状況の中で転入してきたこの子たちは、何故こんなにも重い事実をさらっと軽やかに話せるのか? しかもニコニコと笑いながら。

 

結局、微妙な空気のまま、転入生には恒例な筈の質問攻めもなく、朝の学活は終了するのであった。

 

 

 

 

一限目が終わった後の休み時間も、教室の一番後ろで二人仲良く隣同士座らされた園子や銀の下へ級友たちはやって来ず、皆遠巻きに見ているばかりだった。なお、一番後ろの席は窓側から順に夏凛、銀、園子の並びだ。

 

「ちょっと失敗したなー。掴みはオッケーと思ったんだけどなー」

 

苦笑気味にそう言っている銀。

美森は二人に近づきながら、内心突っ込む。

 

『なに考えているのかしら……? まともな思考の末に起こした行動とは、とても思えないわ。あれで、どん引きしない人なんていないわよ!』

 

「あー……、やっぱり私はこうなる運命なんよ……。これが人々を遠ざける乃木パワーっていうものなんよ」

 

園子は遠い目をしながら諦観たっぷりにボソボソと呟いている。

 

「銀! そのっち! どういうこと? 説明してちょうだい!!」

 

銀の机をバンと両手で叩いて追及する美森。友奈も美森に続いてやって来たのだが、美森の剣幕にちょっと引き気味である。夏凛も銀の隣の席で、やや口元を引き攣らせている。

 

「あー、あたしから説明してもいいんだけど、詳しいことは園子の方が知ってるからなー。でも、こんな感じだから、また昼休みか、放課後にでも……」

 

そう言って園子の方を見やる銀。園子は口から魂が抜け出ているような表情だ。とても説明ができそうな状態ではなかった。

 

「そのっち……」

 

そんな園子の様子に毒気を抜かれたのか、美森は深く深くため息をつくとすごすごと自分の席に戻るのであった。

 

 

 

 

昼休みも、とてもそんな話をする雰囲気にはならなかった。というのも園子が学校給食に目を輝かせ、それに没入したからだ。

 

「二年ぶりの給食は感慨深いんよ~」

 

その瞳を星の形にして満面の笑顔でパクつく園子。

その年齢不相応な無邪気な態度に、苦笑いを交わす美森、友奈、銀の三名。

ちなみに、四つの机を合わせて食事をとっている。美森と友奈は園子と銀の前の席の子に席を譲ってもらっているのだ。

夏凛はというと、机を合わせずに独りで食べている。どうも、少なくとも今だけは関わりたくないようだ。

 

『二年間、食事すら出来なかったっていうのは相当なものだったのね……。こんな、なんの変哲もない給食の献立に、これほど感激する人なんてそうはいないわ……』

 

献立の一品一品に、(はた)から見る分には『そこまで大げさに感動するものか?』という疑問を挟まざるを得ないほど大げさなリアクションで食事をする園子に対し、美森は半分同情しながらも呆れ返った。

もちろん、そんなリアクションを一々しながら食事をするのでは、あっという間に時間は経つものである。

結局、昼休みも問い詰める時間は無くなってしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

「勇者部入部希望の乃木園子だぜー!」

 

「同じく入部希望の三ノ輪の銀さまだぜー!」

 

二人、鏡合わせのポーズで腕を突き出し叫ぶ園子と銀。

昼休みの間に夏凛から報告を受けていた風は、にこやかに迎え入れる。

 

「ようこそ、勇者部へ。歓迎するわ。乃木、三ノ輪!」

 

放課後になり、家庭科準備室兼勇者部部室では、二人の入部希望者を迎え入れていた。

しかし、二年一組での事情をよく知らない風と樹はともかく、美森と夏凛はジト目で園子と銀を見ていた。なお、友奈はほわほわニコニコとしている。

 

「先代の勇者だったお二人を迎えられるなんて凄いね、お姉ちゃん!」

 

「そうね。これで我が勇者部にも箔が付くってもんよ」

 

そんなやり取りを交わし嬉しそうな犬吠埼姉妹を尻目に、美森は園子に詰問調で対する。

 

「で? どういうことなの、そのっち……? 連絡も無しに讃州中学に編入してくるだなんて!」

 

「須美さんや……。ここは、『また一緒に勉強が出来るのね』とか言いながら涙ながらに抱きつく場面ではなかろうか……?」

 

「銀!」

 

「ヒエッ……!」

 

やんわりと取りなそうとする銀をギロッと睨み付ける美森。銀は怯えた表情で一歩退く。

 

「あはははは……」

 

「笑ってごまかさない! 風先輩、聞いて下さい。この二人、どうも権力を振りかざして、私たちの学級に籍をねじ込んできたようなんです。しかも、訳の分からない、周りがどん引きすること間違い無しの自己紹介までして……。級友たちは今日一日、みんな困惑してたんです! 少しぐらいお灸を据えないと!!」

 

『『アンタがそれを言うか……!?』』

 

笑ってごまかそうとする園子を(たしな)めた後、風に事情を訴える美森。だが風と夏凛は、結界に大穴を開けたあの叛逆案件を起こしただけでなく、最近友奈に対する奇行が目立ちつつある美森を半目で眺めるのだった。

 

 

 

 

『これで判明したわね……。先代勇者はみんな奇人変人の集まりだっていうことが』

 

失礼極まりないことを思いつき、一人納得する風。そこで貴也のことを思い出す。

 

『あー、ゴメン、鵜養……。アンタはまともだったかしら? でも、三百年前にタイムスリップしただとか、乃木の彼氏という時点で同類よ!』

 

頭の中で貴也も同じカテゴリーにポイッと放り込むと、先代勇者三人に向き直る。

 

「で? 東郷の言うとおりなんでしょ? 讃州中学に編入してきた理由を聞かせなさい、乃木」

 

「あー、いい若いもんが暇してブラブラしてるのもなんだから学校へ復帰しようと思ったんだけど、どうせなら仲良くなった勇者部のみんなと一緒がいいな~って思ったんだ~」

 

『あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない』

 

「三ノ輪は? アンタ、神樹館でそれなりに上手くやってたんじゃないの?」

 

「須美と園子は、あたしの一生の親友(マブダチ)だからな。その二人が揃うっていうのに、あたしだけ仲間外れはイヤだし……。神樹館の友達も大切だけど、この二人は本当に一番大切な友達なんだ。あと、こんな体になってから家族が気を遣いすぎちゃってさー。まあ、その辺リセットする意味でもちょっと離れた方がいいのかなって思ってさ」

 

『へー、意外にしっかり考えてるんだ。ていうか、なんだか三人の仲が羨ましいかも……』

 

二人の語る理由にある程度納得しつつ、今回の核心を突く。

 

「それで? 東郷たちと同じクラスになりたいからって、乃木家の権力でねじ込んできた訳ね?」

 

「違うよ~。乃木の名前は前面に出してないよ~。ま~、乃木園子って名前はそのまま出しちゃってるから、全く影響が無いって訳でもないだろうけど……」

 

「じゃあ、どうやってねじ込んだの?」

 

「大赦の力を使ったんだ~。私、二年前に二十回も散華したでしょ? あれで大赦の原理主義者はみんな、私のことを神様扱いしてて、今でもそうなんだ~。だから、私の言うことなら大抵なんでも叶えてくれるよ。今回も、同じクラスにして、とまでは言ってないけど忖度(そんたく)されちゃったみたいなんだ~」

 

「原理主義者……?」

 

聞き慣れない言葉に、戸惑う風。すると園子は大赦の現状を説明してきた。

 

「神樹様教の原理主義者って言ったらいいのかな……? とにかく、神樹様からの神託は絶対だって言う人たち。今の大赦の大半はそういう人たちで占められてるんだ~。ま~、だから私のことも神様扱いしてくれるんだけどね~」

 

「他にはどんな連中がいるの? 私は大赦で知っている人はごく限られてるから、実体を知らないのよね。それと、乃木の見立てでは兄貴はどういうカテゴリーに入ってるの?」

 

その説明に興味を惹かれたのか、夏凛が身を乗り出して尋ねてくる。

 

「危険なのは過激派かな? 原理主義者は善意に基づいた行動をするからまだマシ……、いや、(かえ)って性質(たち)が悪いのかな……? でも、過激派は正しい意味で確信犯だからね。もっと酷いよ。自分たちの考え方こそ人類を正しく導くものだって考えてる上に、大赦の主要ポストを押さえてるようなんよ。原理主義者のみんなは過激派の人たちにいいように使われてるみたい……。後は、穏健派と日和見派かな? 穏健派は良い意味で神樹様のお恵みを人類のために利用しようとしている人たちで、日和見派は字面のとおり穏健派と原理主義の間で揺れ動いている人たちだよ。にぼっしーのお兄さんは……」

 

そこで、若干溜めを置いて夏凛を見つめる園子。

 

「私の兄貴は……?」

 

「過激派……」

 

「!?」

 

「にも顔が利く穏健派だね~。実際凄いんよ、あの人。実力若手ナンバーワンだね~。穏健派であることも()取られないようにしてるし、表向きは単なる原理主義者だよ~」

 

園子の悪戯に、力が抜ける夏凛だった。園子に恨みがましい視線を向ける。

 

「私の味方にもなってくれたしね~。ま~、穏健派の真の大ボスがバックについてくれているからこその活躍でもあるみたいだけど。あ、今の分類は穏健派から見たものだから、大っぴらにはしないでね」

 

 

 

 

「ところで、園ちゃん達はどこに住んでるの? ちょっと見てみたいな」

 

皆が園子の解説をなんとか理解しようと頭を捻っている中、唐突に友奈が話題を変えてきた。それに答えるのは銀。

 

「駅東の背の高いマンションの最上階だよ。園子とシェアハウスしてるんだ」

 

「えー!? あのやたら高額のマンション!? それも最上階なんて、セレブ()用達(ようたし)の最高額の部屋じゃない……!!」

 

驚愕の声を上げる風。その不動産(つう)っぽい発言に怪訝な顔をする美森。

 

「どうして、そんなことを知ってるんですか、風先輩……?」

 

「いやぁー、折り込みチラシで知ったんだけどね……。アタシらの住んでるマンションと比べて、やたら豪華だなーって印象に残ってたのよ」

 

『折り込みチラシって……、主婦か!? ああ、風は主婦だったわ……』

 

内心突っ込みを入れた夏凛だったが、すぐに思い直す。風が樹と姉妹二人暮らしだったのを思い出したのだ。

 

「でもさ、園子の奴、風呂が狭いってぶーぶー言うんだぜ」

 

「あれ? 間取り図を見た時は、そんなに狭いって印象は持たなかったんだけど……」

 

「いや、広いよ。少なくともあたしんちの実家よりはね」

 

だが、銀と風のそのやり取りに園子は不平を漏らす。

 

「だって、私の実家と比べるのはさすがにアレだけど~、たぁくんの家と比べても狭いんだよ……」

 

「ちょっと待て、園子。貴也さんの家と比べてたのか……!? そりゃダメだ。あの家、お前の為に完全バリアフリーで、風呂だってお前が横になったまま、お世話する人も一緒に入れる仕様だって聞いたぞ。そんなのと比べちゃ、ダメだろ……」

 

「それはダメね……。そのっちはもう少し庶民感覚というものを身に付けた方がいいわ……」

 

「え~!?」

 

銀と美森のダメ出しに頬を膨らませる園子。それを友奈が取りなす。

 

「まーまー。じゃあ、みんなで園ちゃんちへ確認しに行こうよ。私、園ちゃんちを見たいし」

 

「じゃあ、みんなで交代で一緒にお風呂に入ろう! 三人ずつなら、なんとか入れるぜー!!」

 

「待てよ、園子。まだ部屋の中、片付いてないだろ……。それに、みんなで一緒に風呂ってなんだよ?」

 

唐突な思いつきにテンションがいきなり振り切れる園子を銀が抑えに掛かる。

 

「だって、みんなと裸の付き合いがしたいんよ~!!」

 

「とにかく、明日にしましょう。乃木はちょっと落ち着きなさい。緊急の案件は入ってないわよね、東郷」

 

「ええ。じゃあ、明日はみんなでそのっちと銀の家を訪問しましょうか。そのっちと銀は今日中に家を片付けておくこと。いいわね……?」

 

「なんだか東郷先輩、二人のお母さんみたい……」

 

 

 

 

「はぁー……。文化祭の時にも片鱗を見せてたけど、今日はそれ以上だわ。アンタ、鵜養がいないとアクセル全開ね……」

 

夏凛がため息をつきつつそう漏らすと、園子はニコニコと頭を掻きながらも言い訳がましいことを返してくる。

 

「そりゃー私だって、好きな人の前では猫を被るよ~。たぁくんに引かれでもしたら、立ち直れないくらいのショックを受けるかも~」

 

『お前は、アレで猫を被ってるつもりだったのか!?』

 

園子の言葉に風、夏凛、銀は驚愕の表情で固まる。彼女たちの(いだ)く感想は全く同じだ。

 

『そりゃ、そうよね。私だって友奈ちゃんの前では、極力抑えてるわ……』

 

美森は一人同意する。もちろん本人の個人的感想であり、第三者の目から見てどうであるかはまた別の話だ。

樹は脳内コメントにすら困っているのか、困惑の表情だ。

 

「そんなもんだよね~、ミノさん……?」

 

「園子……、彼氏いない歴イコール年齢のあたしに振るんじゃない!!」

 

「え~? フーミン先輩は同意してくれるよね……?」

 

「え? ええ、そうね……」

 

『グッハー……。後輩に色恋沙汰で負けてるって、私の青春って一体……!?』

 

言葉の刃に斬り捨てられる銀と風。その様子を見て苦笑いをしているばかりの美森、樹、夏凛。

そして、友奈は……

 

「じゃあ、明日の園ちゃんち、楽しみだねー」

 

平常運転のままだった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

同日の夜。

貴也は自室で、その日の宿題を片付けていた。

 

「そういや、そのちゃんは今日から讃州中学に登校してるんだっけ……。連絡……、来てないな」

 

ふと思い出してメールとSNSをチェックする。初日ということもあり、色々と忙しいのだろう。園子からの連絡は来ていなかった。

その時、階下で家の固定電話が鳴る音がした。リビングには貴也以外の家族三人がいるはずなので無視をし、宿題の続きを再開した。

すると、階下から千歳が声を張り上げてきた。

 

「お兄ちゃーん! 女の人から電話―!!」

 

「今行くー!」

 

返事をして部屋を出ると、階段を駆け下りた。妹がニヤニヤしながら、電話の子機を持って立っている。

 

「はい。弥勒さんって人からだよ。誰かな~? そにょちゃんに告げ口しようかな?」

 

「弥勒さん? 小学生の時の同級生の?」

 

子機を受け取りながらも、疑問符が頭を占める。

 

「はい。もしもし……? 鵜養貴也ですが……?」

 

『ああ、鵜養くん? お久しぶり。小学生の時、同級生だった弥勒夕海子です。覚えています……?』

 

「ああ、覚えてるよ。久しぶり。どうしたの? 急に電話なんて……?」

 

『ええ。ちょっと鵜養くんに相談がありますの。明後日(みょうごにち)、お宅へ伺ってもよろしいかしら?』

 

「いいけど……。何時頃?」

 

『五時頃に女性三人で伺いますわ。わたくし以外の二人も中学生ですから、お気遣いは不要です。でも、相談の内容は少し深刻なものですの……』

 

「? どういった内容かな?」

 

『電話で話すのは、少し……。ですが有り体に言えば、神樹様のお役目に少し関わることですわ』

 

「どうして、そんな内容の相談事を僕に……?」

 

『だって、あなた……『勇者の(まも)り手』なんでしょ?』

 

その夕海子の言葉に衝撃を受けた。

そのように自分を呼ばれたことは、誰にも話していなかったことだ。園子にさえ……

あの時アバター友奈に言われた、そのどこか中二病めいた呼び方には、げんなりしていたからだ。

 

「どこで、その呼び方を……?」

 

『やはり、そうですのね……? 分かりました。全部、お会いした時にお話ししますわ……。では、明後日。よろしく』

 

夕海子からの電話は切れた。

貴也は、ツーッツーッと発信音を鳴らしたままの子機を見つめながら、呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 




原作と異なる登場の仕方をしたばっかりに、クラスに溶け込めなかった園子と銀でした。
なんか、色々と酷いことになっているような気がしないでもない。それもこれも余計なところまで忖度した大赦のせいなんや、ということで。

さて、勿体ぶって再登場したのは似非お嬢様でした。いえいえ、本作では一応名家の一角を占めたまま没落せずに踏ん張っているので、正真正銘のお嬢様の筈です。
ということで、夕海子ちゃんがさらに勿体ぶったところで次回へ続くです。


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