小人族が一族の再興を望むのは間違っているだろうか 作:ホロホロ242
二人の少年少女が走る。
今にも押し潰されそうな威圧感に耐えながら、少しでも後ろの驚異から逃れるために。
「ッ!ベル、こっちです!」
「は、はいっ!」
ダンジョン 5階層
現在この階層には、決しているはずのない圧倒的な驚異が駆け出しの冒険者たちに猛威を振るっていた。
『ヴモォォォォォォォォ!!』
ミノタウロス
本来このモンスターはダンジョンの中層から出現するモンスターであり、今起こっていることが
(このままじゃ追いつかれる…!)
徐々に焦りが募っていく少女。
そしてその焦りにより、少女は致命的なミスを犯した。
「ッ!」
「あっ!?」
二人が曲がった先は袋小路になっていた。
追いついたミノタウロスは引きった笑みを浮かべながらその大きな拳を振り下ろす。
「きゃああああああ!?」
「ほぁああああああ!?」
その一撃で地面は抉れ、二人は壁まで吹き飛ばされる。背中に激痛が走るが目の前に迫ってくるミノタウロスが次の攻撃を仕掛けようとするのをみて、咄嗟に少年の手を引く。
『ヴォゥ!』
「くっ!」
「うわぁ!」
間一髪避けたが、ついに逃げ道を塞がれる。絶体絶命の中、少年はその赤い瞳に涙を浮かべる。
そんな少年をみて少女は奮起する。
(ベルだけでもヘスティア様の元に返さないと…!)
自身の武器である160
せめてこの少年だけでも逃がそうと、勇気を振り絞りミノタウロスに向かおうとしたその時、突如ミノタウロスの胸から剣が生えた。
「えっ?」
『ヴモ?』
いきなりのことでミノタウロスにも何が起きているのか理解できていないようだが、次の瞬間、いくつもの線がミノタウロスにでき、その胴体がバラバラになった。
『ヴモォォォォォォ!?』
「きゃ!」
「うぶおぁ!」
咄嗟にミノタウロスの血を避けることによって、少女は血まみれになるのを免れたが、その後ろで尻餅をついていた少年はミノタウロスの血をモロに浴びることとなった。
「た、助かった…」
先ほどまで逃げていた若草色の髪を編み込んだ
「あの…」
その人物は金色の髪に人形のように整った顔つきの少女であり、少年を心配そうにみていた。
「大丈夫、ですか?」
少年から返事はない。返事がないことに困った少女は、もう一度少年に話しかける。
「立てますか?」
その少年の顔は赤く、熱っぽくみえたのでますます心配になって手を伸ばすと、瞬く間に少年の肌という肌が紅潮した。
「だっ…」
「だ?」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「べ、ベル!?」
逃げ去った白髪の少年の木霊と少年を呼ぶ小人族の少女の声が響き渡る。
金髪の少女はその光景をみてポカンとしていたが、「あの、」と小人族の少女に話しかけられたことによって意識を戻した。
「危ないところを助けていただいてありがとうございました」
「ううん、元はといえば、私たちのミスでこうなっちゃったから…」
「それでも助けて頂いたことには代わりありませんから、ちゃんとお礼は言いたくて…本当にありがとうございます」
それじゃあ、と言って
「小人族の女の子…か」
金髪の少女と別れたあと、小人族の少女─レイナ・フィアは、白髪の少年─ベル・クラネルを探していた。
「ベル、どこまで行ったんてしょう…そろそろダンジョンの出口なんですが…」
まだ別の階層でモンスターに襲われているのではと心配になっていると、少年の声が聞こえてきた。
「エイナさん大好きー!」
「…あの子は何を口走っているんですか」
少年の唐突な告白にレイナが呆れていると、ギルドで固まっている自分とベルのアドバイザーに声をかける。
「結婚おめでとうございます」
「いきなり気が早いよ…ってレイナちゃん!?何でここに!?ていうかベル君とはそうゆう関係じゃ…!」
「知ってますよ♪からかっただけです」
「もう!」
レイナにからかわれた人物、エイナ・チュール。彼女はエルフとヒューマンのハーフでありギルドの人気受付嬢でもある。
「ってそんなことより、ミノタウロスに襲われたって本当なの?」
「ええ、本当ですよ。でも危ないところをロキ・ファミリアの方に助けてもらったんです」
「ああなるほど。だからベル君、あんなにヴァレンシュタイン氏のことを気にしてたのね」
「そうなんですか?」
「うん。さっきいきなり血まみれの状態でここに来ていきなり、アイズ・ヴァレンシュタイン氏のことを教えてくれーって」
「まったくあの子は…血まみれのままでいたなんて」
「本当にびっくりしたよ。大怪我でもしたんじゃないかって」
「ご迷惑をおかけしました」
「ううん、いいの。無事だってわかったから。レイナちゃんも大丈夫?」
「はい、ちょっと擦りむいただけです」
「そう、ならよかった。それじゃあ私は仕事があるから」
「はい、頑張ってくださいね」
それじゃあと言ってエイナは仕事に戻った。ミノタウロスに無謀にも立ち向かおうとしたことはバレていないようだ。
エイナさんのお説教は恐ろしいからなぁ、と思っていると、
「そうそうレイナちゃん」
「なんですか?」
「ミノタウロスに立ち向かおうとした件については明日じっくり話し合おうね?」
…笑っているはずなのにとてつもない恐怖を与えてくる自分のアドバイザーに何も言い返せず、自分のホームへと向かった。
のんびり続ける予定です