小人族が一族の再興を望むのは間違っているだろうか 作:ホロホロ242
迷宮都市オラリオ
広大な面積を誇る円形状の都市は、堅牢な壁に取り囲まれている。
外界と隔てる壁の内側には、大小様々な建物が立ち並び、そして中央には、天を衝く白亜の塔がそびえていた。
地中に開く大穴、ダンジョンの入り口を塞ぐ蓋として建設された摩天楼施設『バベル』
このバベル、つまりダンジョンを中心にオラリオは今も栄えている。
そんな大都市の一角に古びた教会がある。
壁の所々に穴が空き、どこを見てもボロボロなのだが、どこか神々しさが残る教会の地下にある隠し部屋が我らが『ヘスティア・ファミリア』のホームだ。
「まったく、同じファミリアの仲間を置いて先に帰るなんて…後でお説教しなくちゃ」
自分を置いていき、いくつか問題を起こした少年に何から話そうか考えながらドアの前に立つと、それは起きた。
「ただい…」
「神様っ!僕ちょっと探して来ます…ってあれ?」
ドアを開け外に出ようとした少年は、いつもとドアを開けた時の感触が違うことに気づきそ~っとドアを引いてみる。
するとそこには、笑顔のまま鼻血を出して立っている少女がいた。
「…ベル?」
「す、すみませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!」
「まったく、まさか置いて行かれるなんて思いもしませんでしたよ」
「本当にすみません…」
あれから一時間、自分を置いて行った少年─ベル・クラネルは、額を床に擦り付けながら反省していた。極東での最上級の謝罪で『土下座』と言うらしい。
それをみて説教していたレイナは、明日は自分がこんな風になるのかと辟易し、その腹いせに軽く文句を言っていた。
「まあまあ、それくらいで許してあげておくれよレイナ君」
そんなベルに助け船を出した
「ベル君も悪気があったわけじゃなさそうだし、僕からも十分注意したしさ」
「…そうですね。どうせ明日もエイナさんに怒られますし、今日はこれくらいにしておきましょうか」
「か、神様…!」
「むむ、なんだいベル君!ついに僕に惚れてしまったのかい!」
「はい!いつも尊敬しています!」
「そ、尊敬か…まあうれしいんだけどね!もう少し違う感想を言ってくれてもいいんだぜ!」
「はいはい、のろけはそれくらいにしてステイタスを更新してくれませんか?」
「おっとそうだったね。それじゃあベル君、少し外にいてもらえるかい?」
わかりました、と言ってベルは地上に上がっていく。
「さて、ベル君もいなくなったし、さっそくステイタスの更新をしようか」
「はい、お願いします」
そういうとレイナは自分の服の上だけを脱ぎだす。すると自分の主張が激しくない胸があらわになり、ヘスティアの豊満な胸とを見比べる。
「…む~」
「?どうしたんだい」
「…いえ、なんでもないです」
(どうして身長はあまり変わらないのに胸だけこんなに差がでるのでしょうか…)
少しむくれながらヘスティアに背を向ける。するとヘスティアが背中を指でなぞりステイタスの更新を行っていく。
「終わったよ。少し待ってておくれ、今紙に書くから」
「ありがとうございます」
レイナ・フィア
LV:1
力:F385→E402
耐久:F364→F384
器用:D533→D580
敏捷:D534→C612
魔力:H105→G210
《スキル》
【
・早熟する
・小人族に対する希望の丈によって効力上昇
【
・魔法の効力の上昇
・魔法を付与した相手にも有効
《魔法》
【フィアナ・ティア】
・補助防御魔法
・自身と自身が視認できる者が対象
・物理属性、魔法属性の両方の攻撃に対する抵抗力上昇
・一定時間継続し、僅かだが傷も癒す
「相変わらずすごいステイタスの伸び方だね」
「自分でも毎度びっくりしますよ。まあ、早く強くなることに越したことはないんですが…」
「君の夢はかなり壮大だからね。いや、野望と言ったほうがいいのかな?」
レイナの野望、それは衰退した自分の種族─
かつて小人族は、数々の偉業を成した騎士団が擬神化した『フィアナ』と呼ばれる架空の女神を信仰していた。
しかし、実際に神々が地上に降りてきた時フィアナという神は存在しないということがわかり一気に衰退していったのだ。
もともと体が小さく身体能力が他の種族よりも劣る小人族は、『フィアナ』という光を失い、以前よりも他種族から軽視されることが多くなっていた。
そんな同胞たちの認識を変えるためにレイナはオラリオにやって来たのである。
「それにしても、レベル1でスキルが2つと魔法が1つあるなんて何度みてもびっくりするね。まあそれほど君の思いが強いってことなんだろうけどさ」
ステイタスに表れる『スキル』や『魔法』は、恩恵を授かった者の本質や望みなどに影響されることがある。
名称も同様で、それは恐らく本人の心を鏡に写す行為に等しい。
つまり、14、5歳の少年に『英雄願望』というスキルがあったら、それは本人がその歳にもなって「英雄になりたい!」と言っているようなものなのだが、それはまた別の話。
「私が聖女なんてことはないと思うんですけどね」
「まあ、スキルとして発現したってことは本質は聖女に近いってことなのかもしれないね」
ステイタスの確認が終わると、ヘスティアの雰囲気が少し真剣なものに変わった。
「さてレイナ君、君に話しておかなくちゃいけないことがある」
「どうしたんですか、急に改まって?」
「実は、ベル君のステイタスのことなんだけどね…」
「なるほど、レアスキルですか」
「うん、それもレイナ君のスキルと同じ早熟スキルだ」
「確かにこれは隠さないとダメですね」
レアスキルとは、その名のとおり珍しいスキルのことである。
多くの未知が存在し、それを求めて下界に降りてきた神々にとって未知とは格好の餌であり、それを知られると非常に面倒くさいことになるのだ。
「ベル君に教えるとうっかり誰かに話してしまう可能性があるから言ってないんだけど」
「話さなくてもいいと思います。神様たちに知られると厄介ですし」
「そうだね」
しかし、とヘスティアは難しい顔をする。
「どうしたんです?」
「ベル君め、僕という存在がありながら他の誰かに想いを寄せるなんて~!」
むむむ~、と唸るヘスティアをみて、これは前途多難だなぁと思うレイナであった。
魔法とかスキル考えるの大変ですねこれ