小人族が一族の再興を望むのは間違っているだろうか   作:ホロホロ242

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衝突(ロキ・ファミリア)

 

「─ぇぇぇぇぇぇえええええ!?」

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

 ダンジョンから帰還すると2人は一度ホームへ戻っていた。本当はエイナからのお説教があったはずだが、忙しそうだったので今日のところは見逃してもらった。

 

「見てくださいレイナさん!今日だけでステイタスがこんなに上がったんですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

ベル・クラネル

 LV1

 

力:I82→H120

耐久:I13→I42

器用:I96→H139

敏捷:H172→G225

魔力:I0

 

《スキル》

【】

 

《魔法》

【】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……予想以上に伸びましたね)

 

 ベルのステイタスを見てみると、熟練度上昇トータル160オーバーという異様な数値を叩き出していた。レイナも人の事を異様と言えるような立場ではないが……

 

「一気にこんな上がるなんて……!耐久なんか今日一回しか攻撃をもらってないんですよ?器用と敏捷もこんな……あ、あの、神様?」

 

 とそこでようやくヘスティアの機嫌が悪い事に気づく。聞かなくともわかるその機嫌の悪さぶりは、事情(リアリス・フレーゼ)を知るレイナからすれば納得の状態だった。

 

「えと、その、だから……」

 

「……」

 

「な、何で僕、こんなにいきなり成長したのかなー、なんて……」

 

「…知るもんかっ」

 

((あ、可愛い))

 

 ぷくっ、と頬を膨らませるヘスティアに場違いな感想を持っていると、ヘスティアは外出用のコートを羽織り2人の前を通り過ぎていく。

 

「か、神様?どこへ行くんですか?」

 

「……バイトの打ち上げだよ!ボクの事なんか放っておいて2人でおいしいものでも食べてくればいいさっ!」

 

 バタンッ、と強めにドアを閉めて隠し部屋を去っていく。先ほどまで上機嫌だったベルは、急に冷や水を浴びせられしゅんとしていた。というか、ジャガ丸くんの屋台の打ち上げって何をするんでしょう?

 

「僕、なんか怒らせちゃうようなことしましたかね……?」

 

「……自分の胸に聞いてみてください」

 

 ヘスティア様の態度に気づかないベルも悪いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気分を変えるため、2人は晩御飯を食べに行くことにした。ヘスティアのことも心配だったが、今は何を言ってもベルと顔を合わせたがらないだろうと思い、今はそっとしておくことにした。

 

「シルさん達の店ってこの辺でしたよね」

 

「ええ、名前は確か─」

 

「『豊穣の女主人』ですよ♪」

 

「うわぁ!?」

 

「し、シルさん!?」

 

 目的の店を探していると、朝自分達に弁当を渡してくれたウエイトレス─シル・フローヴァがベルの腕に抱きついていた。ヘスティアが見たらぶちギレそうな光景である。

 

「ふふ、お二人ともお待ちしていました。今日はたくさん食べていってくださいね」

 

「は、はい」

 

「そうさせてもらいます」

 

 お客様2名はいりまーす、と言って店の中へ案内される。何人かがこちらを見てくるが気にせず奥へ入っていく。

 

「……ところでベルさんはさっきからなぜそんなに挙動不審なんですか?」

 

「そ、そんなことはないですよ!ただ、店員が女の人ばかりで、その、僕には少しハードルが高いというか……」

 

「ベルは女の人に慣れてないですからね。夢はハーレムを作ることなのに」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなんですよ。なんでもベルのお祖父さんに『男ならハーレムを作るべきだ!』と言われたらしくて…」

 

「そ、その話はなしで!?」

 

「ふふふ、楽しそうなお祖父さんですね。今度また聞かせてください」

 

「ええっ、いや、まあいいですけど……」

 

 話していると、私達はカウンター席に案内された。店の角の席で、ここなら他の人を気にせず自分達のペースで食べられる。

 

(初めて来た私達に気を使ってくれたんですかね)

 

 すると、カウンター越しから店の女将が話しかけてきた。

 

「あんたらがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者のくせに随分可愛い顔してるねぇ!」

 

「ありがとうございます」

「……ほっといてください」

 

 可愛いと言われ、レイナはお礼を言い、ベルはぶすっとした顔になる。男の人は可愛いと言われるとやはり嫌なのだろうか。

 

「何でもアタシ達に悲鳴を上げさせるほどの大食漢なんだそうじゃないか!じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってってくれよぉ!」

 

「「!?」」

 

 それを聞いて2人はシルのほうを見る。しかしシルはこちらと目を合わせようとせず、そっぽを向いていた。

 

「いつから僕達大食漢になったんですか!?」

 

「自分達でも初耳ですよ!?」

 

「……えへへ」

 

「えへへ、じゃねー!?」

 

「だって、ベルさん達なら沢山食べて頂けると思って……」

 

「その謎の信頼はどこからは来てるんですか!?」

 

「只でさえうちのファミリアは貧乏なんですからそんなには食べられませんよ」

 

「ううっ、お弁当食べられなかったから力が入らないー」

 

「棒読みじゃないですか!」

 

「卑怯ですよ!?」

 

 自分で無理矢理押し付けておいて一飯の恩を返せとか、詐欺じゃないですか!?

 

「ふふ、冗談です。ちょっと奮発してくれるだけでいいんで、ごゆっくりしていってください」

 

 そう言ってシルは自分の仕事に戻り、ようやくメニューを見始める。酒場にしてはオシャレなメニューが多いが、それよりも値段の方に目が行ってしまう。

 

(少し高過ぎませんか?)

 

 いつもなら50ヴァリスもあれば十分にお腹を満たせるが、ここの料理は一番安くても300ヴァリスはする。

 今日の稼ぎは2人合わせて6400ヴァリス、ヘスティアファミリアは結成されて間もないのであまり貯金がない。貯金がないのは何かあった時に困るので、できるだけ多く貯金に回したい。それにポーションなどを買うお金も残しておかなければいけないので、2人は一番安いパスタを頼むことにした。

「酒は?」と女将に訪ねられ、少し悩んだ後断ることにした。飲めないことはないが、あまりお金を使わないようにするためだ。

 すると、2人の前に1つずつ果実酒が置かれた。聞いた意味ないじゃないですか。

 注文したパスタが置かれそれを食べていると、追加で大きな焼き魚が目の前に現れる。

 

「あの、これ頼んでないんですが……」

 

「育ち盛りだろう?今日のオススメだ!じゃんじゃん食べな!」

 

 なんて強引な、と思いながらその料理の値段を見る。800ヴァリスってポーションよりも高いんですが……

 

 

 

 

 

 

 

「どうですか?楽しんでます?」

 

「圧倒されています……」

 

 パスタを食べ終わり焼き魚に手をつけようとしたところでシルがやってきた。今は人手が足りているので休憩中らしい。

 シルからこの店のことを聞いていると、十数人規模の団体が店に入ってきた。種族がてんでバラバラなその集団を見て何の団体だろうと思っていると、知っている金髪の女性を見つけて何の団体か察する。

 

(ロキ・ファミリア……)

 

 入ってきたのはオラリオで1、2を争うファミリアだった。周りもその集団がロキ・ファミリアだと気づいたようで、ひそひそと話だし、それらの会話にはすべて畏怖が込められていた。

 席に着くと、朱色の髪をした女性が音頭をとり乾杯する。食事が始まり何人かの団員が酔ってきた頃、一人の狼人(ウェアウルフ)の青年が大声で話し始めた。

 

「そうだアイズ!お前あの話聞かせてやれよ!」

 

「あの話……?」

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?あんときにいたトマト野郎とパルゥムのことだよ!」

 

 瞬間、隣にいたベルの顔が一気に青くなった。

 

「ミノタウロスって、17階層で返り討ちにしたら逃げていったやつ?」

 

「それそれ!奇跡みたいにどんどん上層に上がっていきやがってよぉ、俺達が泡食って追いかけたやつ!」

 

 どうやら話を聞く限り、あのミノタウロスはロキ・ファミリアの人達が仕留め損ねたものだったらしい。自分達のミスで上層にいた人たちを危険な目に遭わせたというのに、よく酒の肴にできたものだ。

 

「そしたらいたんだよ、5階層に、いかにも初心者ですって格好をしたひょろくせぇガキどもがよ!」

 

─私達のことだ

 

「2人して必死に逃げててよぉ、壁際に追い込まれたとき、ヒューマンのガキが今にも泣きそうな顔して震え上がっちまってたんだよ!しかもパルゥムの雌に守られながら!情けねぇったらありゃしねぇ!」

 

「ちょいまちぃベート!?そのパルゥムの子女の子やったんか!?その子助かったん!?」

 

「ああ、間一髪の所でアイズがミノの野郎を細切れにしてやったんだよ、なっ?」

 

「……」

 

(……)

 

「それでよぉ、パルゥムのほうは避けちまったんだがヒューマンのガキがよ、あのくっせー牛の血を全身に浴びて……真っ赤なトマトになっちまったんだよ!くくくっ、ひーっ、腹痛てえぇ……!」

 

(誰のせいでそうなったと思ってるんですか……!)

 

 レイナは狼人の青年を睨むが、話は止まらない。

 

「それにだぜ?そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ……ぶふっ!うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんの!」

 

「……くっ」

 

「あっはは!それは傑作や!助けた相手に逃げられるアイズたんマジ萌えー!」

 

「ふ、ふふっ……ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない……!」

 

 どっとロキ・ファミリア内が笑い声で包まれる。そのなかで笑っていなかったのは、アイズと翡翠色の髪をしたエルフの女性だけだった。

 

「いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪こそすれ、酒の肴にする権利などはない。恥を知れ」

 

「おーおー流石はエルフの女王様、誇り高いこって。でもよ、そんな救えねえやつのことを擁護して何になる?そんなの自分の不手際を誤魔化すための自己満足だろうが。ゴミをゴミと言って何が悪い」

 

 レイナは怒りを抱いていた。自分たちはあんなに危険な目に遭ったというのに反省の色が見えない狼人の青年にもだか、何より、こんなことを言われても何も言い返すことができない弱い自分自身に。

 

「雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ」

 

 レイナの後ろを少年が通りすぎた。

 シルは少年の名前を呼びながら必死に追いかける。レイナは自分の首に水滴が付いていることに気づく。たぶんあの心優しい少年の涙だろう。

 ひどい目に遭って、バカにされて、悔しくて、そして何より、好きな人に見てもらうことすら出来ない弱い自分自身が許せなくて……レイナと同じだ。

 だが弱いからといって、散々バカにされ傷付いた少年を見て何もしないなんて、

 

(そんなの間違ってる!!)

 

「さっきの言葉、取り消してください」

 

「ああん?」

 

 レイナが狼人の青年の前に立つ。それを見て青年は怪訝な顔をするが、その少女の正体に気づき歪んだ笑みを浮かべる。

 

「お前、あの時のパルゥムか。雑魚を雑魚と言って何が悪いってんだよ」

 

「確かに私達はまだ弱いかもしれません。けれど、貴方にだって弱かった時期があったはずです。それに、あのミノタウロスはあなたたちが逃したそうじゃないですか。少しくらい悪いとは思わないんですか!」

 

「はっ、知るかよそんなこと。ミノの野郎が勝手に上に上がっていっただけだろうが。それに、弱いからってだけで吼えようともしねぇような腰抜け野郎に言うことなんざ何もねぇ」

 

「っ!」

 

(この人は反省する気が全くない、むしろ自分は正しいことをしてるとさえ思ってる!)

 

「……そうやって雑魚だの腰抜けだの、貴方は人を見下すことしか出来ないんですか?人を見下すことしか出来ないのは─人を見下していないとやっていられないほど自分が弱いからじゃないんですか?」

 

 瞬間、青年の足がレイナの肩を掠める。たったそれだけで、レイナはカウンターまで吹き飛ぶ。

 

「おいベート!」

 

「黙れ糞ババア……こいつは今、俺を雑魚扱いしたんだぞ……立場ってもんをわからせねぇと俺の気がすまねえ!」

 

(掠めただけでこの威力…私じゃどんな手を使ってもこの人には勝てない……けど!ここで退くわけにはいかない!)

 

「【小さき我らに女神の加護を 傷つく彼らに光の癒しを】」

 

「【フィアナ・ティア】!」 

 

 レイナが魔法を発動する。防御魔法だが、無いよりはマシだ。

 

(勝てなくてもいい……何がなんでも一矢報いる!)

 

「死ねや、クソ雑魚があぁぁぁ!」

 

「いい加減にしなぁ!」

 

「ぐべッ!?」

 

「……へっ?」

 

 狼人の青年がレイナに接近したその直後、青年が店の女将によって凄まじい音と共に店の外へとぶっ飛ばされた。第一級冒険者である彼が、だ。

 

「ここは飯を食う場所だよ!喧嘩なら外でやりな!」

 

 外を一瞥してそう言うと女将─ミア・グラントは、レイナのことを鬼の形相で睨み付ける。

 

「おい小娘」

 

「ひっ、ひゃい!?」

 

「アンタ、あの白髪のガキの連れだろう?ちゃんと金は払ってくれるんだろうねぇ?」

 

「そ、それが、その……お金はあの子が持ってて─」

 

「ふざけんじゃないよぉ!」

 

「~~ッ!?」

 

 ミアの威圧感に怯んでいたレイナは、第一級冒険者を吹き飛ばすほどの力を持つ彼女の拳骨をモロに食らう。電流が流れたような痛みが脳天から爪先にかけて突き抜ける。

 

(防御魔法……使ってるのに……)

 

 そこでレイナの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっ……離れに運びな!借金を返済するまで帰すんじゃないよ!」

 

「彼女をどうする気だい、ミア?」

 

「なんだいフィン、この小娘には借金を返すまでウチで働いてもらうだけだ。アンタの同胞だからって食い逃げ犯には容赦しないよ」

 

 レイナの処遇を尋ねる小人族(パルゥム)の男性、ロキ・ファミリアの団長でもあるフィン・ディムナは、彼女─レイナ・フィアのことを高く評価していた。

 他の種族に力で劣るパルゥムは、自分に危険が迫った時、基本逃げの選択を取るのだが、彼女は逃げなかった。

 それどころか、格上相手─それもミノタウロスや第一級冒険者に立ち向かってみせた。

 それは相当な『勇気』がないと出来ない芸当だ。そんな馬鹿げたことをする人物などほんの一握りしかいないだろう。

─レイナはフィンの野望にぴったりの人材だった。

 

「あの子が気になるんか、フィン?」

 

「ああ、僕のお嫁さん候補にぴったりの人材だよ」

 

「フィンももう四十やからなぁ、これまでいい出会いもなかったし、よかったんとちゃうか?」

 

「そうだね、今度暇な日に彼女と一度話を……」

 

「団長?」

 

「ッ!?やぁティオネ、そんな怖い顔をしてどうしたんだい?」

 

「いえ、団長から『お嫁さん』って言葉が聞こえたんですけど……気のせいですよね?」

 

「あ、ああ、気のせいだよ」

 

「ですよね♪」

 

 そういって彼女─ティオネ・ヒュリテは他の団員の元へ戻っていった。

 

「……フィンも大変やな」

 

「そうだね……」

 

 大規模ファミリアの団長のお嫁さん探しは前途多難だった。

 

 

 

 

 

 




ボツシーン 2

 朱色の髪をした女性が音頭をとり乾杯する。

「ほないくでぇ!『杯を乾すと書いて、『乾杯』と読む!!』」

『乾杯っ!!』

「「「飲みサーか」」」



ボツシーン 3

「死ねや、クソ雑魚があぁぁぁ!」

「いい加減にしなぁ!」

「ぐべッ!?」

「ベートが死んだ!」

「このひとでなし!」

「さっきから作品違くないですか!?」

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