小人族が一族の再興を望むのは間違っているだろうか   作:ホロホロ242

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豊穣の女主人(ミア・グラント)

 

『ハァ、ハァ!』

 

 村が燃えていた。

 少し前までは何の変哲もない只の村であったが、今は一匹のモンスターによって、無惨にもその景色を変えている。

 そんな中、少女(レイナ)は村の住人を逃がすために荒れ果てた村を奔走する。

 

『……この辺の人達は皆避難しましたね。あとは……』

 

『うわぁ!?』

 

『あれはっ……!何をしてるんですか!早く逃げてください!』

 

 レイナのすぐ近くで、いつも村で威張っている狼人の青年が、崩れ落ちてきた瓦礫に腰を抜かしているのを見つけ、すぐに避難を促すため青年に近づく。

 

『お前……っ!?』

 

『え……っ!?』

 

 

『グオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

 そこで運悪く、モンスターが現れる。モンスターは、レイナと青年を葬り去るため、その爪を2人に振り下ろす。

 

『ひっ!?』

 

(ダメッ……間に合わない!?)

 

 

 

 トンッ

 

 

 

(……えっ)

 

 突然体を押され、体制を崩す。モンスターの爪はレイナではなく、レイナを突き飛ばしたレイナの両親に突き刺さった。

 

『あッ!?』

 

 運悪く飛び散った瓦礫がレイナの頭に当たり、レイナは意識が朦朧とし始める。その直後、

 

『……ぱ、パルゥムごときが、俺様を庇ってんじゃねぇ!?』

 

 命の恩人に対して罵倒する青年の姿が見えた。

 

(ひどい……助けて、もらったのに……)

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

『ひいいっ!?や、やめ、こっちくんなぁ!あ……ぁぁぁああああああ!?』

 

 狼人の青年はモンスターによって踏み潰された。レイナは最後に、助けてくれた両親のほうを見る。

 

『……レイ、ナ……ごめん、ね……』

 

『おかあ……さん、おとう……さ………ん……』

 

 そこでレイナの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここ、は?」

 

 目が覚めると、知らない天井が見えた。寝ているベッドも教会にあるボロボロのベッドでなく、キレイなベッドだ。

 

(確か昨日、ロキ・ファミリアの人と揉めて、それから……)

 

 その後のことを思い出し震え上がる。あの鬼のような形相は当分忘れられそうにない。レイナは気分を変え周囲を確認するために体を起こそうとした。

 

 ガシャ

 

「ガシャ?」

 

 起き上がろうとすると、レイナの体は鎖でぐるぐる巻きにされ、起き上がれなくなっていた。

 

「な、何ですかこれ!?」

 

「あっ、レイナさん!目が覚めたんですね」

 

「シ、シルさん!?この鎖は何ですか!?」

 

「これは同僚のごうも……趣味で持っていたものです♪」

 

「今、拷問って言いかけましたよねっ!?というか趣味で持っててもおかしいですよ!?」

 

「……てへっ」

 

「てへっ、じゃなくて……!」

 

「小娘が目覚めたってぇ?」

 

 瞬間、レイナの背筋が凍った。何故だか頭も痛くなった気がする。

 

「ミ、ミアさん……」

 

「昨日はよくも食い逃げしようとしてくれたねぇ、ええ?この落とし前はどうつけてくれるんだい?」

 

「いえ、別に食い逃げをしようとしたわけでは……」

 

「ごちゃごちゃうるさいよ!金を払ってないんだ、食い逃げしたのと同じだよ!」

 

「ひっ!?」

 

 ミアに一喝され一瞬で竦み上がる。もう拳骨(あんなの)は貰いたくないのだ。

 

「で、では、私は何をすれば……?」

 

「ふんっ!そうさねぇ……アンタがアタシに支払わなくちゃいけないのは、料理の代金と店の修理代、それとウチへの迷惑料だ。全部で10万ヴァリス」

 

「じゅ、10万!?」

 

「それが払い終わるまでこの店で働いてもらうよ!言っとくが、拒否権はないからねぇ!」

 

(ここで断ったら確実に拳骨がくる(死ぬ)……!?)

 

「わ、わかりました、ミアさん」

 

「それと、ここで働くからにはアタシがルール、アタシが法律だ。アタシの言うことは絶対、それを厳守しな!あと、アタシのことは『母親』と呼ぶように!」

 

「ミ、ミアお母さん……」

 

「それでいい。さっさと準備しな!シル、そいつの制服持ってきてやりな」

 

「わかりました、お母さん。じゃあ着替え持ってくるね」

 

「その前に鎖を外してください」

 

 こうしてレイナは、借金を返済するまで『豊穣の女主人』で働くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、何でさっき泣いていたの?」

 

「な、泣いてました?」

 

「目元に涙の後があったから、そうなのかなぁって」

 

「ああ、それは……昨日狼人の方と言い争って、昔の事を思い出したからです」

 

「昔の事?」

 

「ええ、実は……」

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことがあったんだね……ごめんね、無理に聞いちゃって」

 

「いえ、もう気にしてないですから。確かに悲しかったですけど、亡くなった方をとやかく言うつもりはないですよ」

 

 そういいながら、レイナは顔をうつむける。いくら気にしてないとはいえ、両親が罵倒されながら亡くなったという悲しい過去はなくならないのだ。

 

「……ここで働いてる人達はね、みんな何かしら悲しい過去を持ってるんだ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。そんなみんなをミアお母さんが強引に雇って、働かせて、忙しくして、けど楽しくて、そのうちみんな悩み事なんて忘れちゃうの。だからきっと、レイナもそのうち忘れられるようになるよ」

 

「……そうだといいですね」

 

「うん」

 

 少しはマシになったレイナをみて、シルは笑顔で返事をする。

 制服に袖を通し支度を終えると、レイナはあることに気がついた。

 

「そういえば、昨日とはしゃべり方が違うんですね」

 

「だって数日とはいえ、一緒に働く仲間だもん。堅苦しいのはなしだよ、レイナ」

 

「……そうですね。じゃあ改めてよろしくお願いします、シル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『レイナ・フィア』です。今日から数日間お世話になります」

 

「貴方は昨日の……」

 

「食い逃げしようとして母ちゃんにぶん殴られたやつニャ!」

 

「うっ……」

 

 簡単に自己紹介を済ませると、案の定昨日の話題になった。やはり食い逃げ犯として認識されているらしい。

 

「昨日はご迷惑をお掛けしました。ですが、決して食い逃げしようとしたわけではなかったんです」

 

「その事はシルから聞いているので心配しなくていい。それに、仲間を罵られたからといってあの『凶狼(ヴァナルガンド)』に真っ向から向かっていくような仲間思いの人が、食い逃げしようとしていたとは思わない」

 

「あいつのほうが迷惑だったしね」

 

「ブッ飛ばされて清々したニャ、おミャーのお陰ニャ」

 

「というわけです。昨日の事は気にしなくていい」

 

「みなさん……!」

 

「話は終わったかい?ならさっさと働きな!言っとくが手加減はしないよ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お仕事その1 皮剥き

 

「レイナ皮剥き上手だね」

 

「料理は昔からやってますからね」

 

「「「リューより上手い(ニャ)」」」

 

「なっ!貴方達も大概でしょう!」

 

「なんだい、ウチのポンコツエルフよりも上手いじゃないか」

 

「くっ……!」

 

「あはは……」

 

 

 

 

 

 

 

 お仕事その2 買い出し

 

「買い物をする時はね、可愛く笑ってねだるといいよ」

 

「わ、わかりました。やってみます!」

 

「いらっしゃいいらっしゃい!」

 

「あの!」

 

「うん?なんだい嬢ちゃん」

 

「これ、まけてくれませんか?」

 

「おお、ちっちゃいのに偉いねぇ!おつかいかい?よし、おじちゃんがまけてやろう!」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「やったねレイナ♪」

 

「……私、これでも17なんですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 お仕事その3 店内の掃除

 

「レイナはよく働くニャア」

 

「そんなきびきび動けニャいニャ」

 

「掃除は遊びだと思えば楽しいですよ」

 

「「仕事は仕事ニャ」」

 

「あはは……」

 

『コラァ!サボってんじゃないよ馬鹿猫共ぉ!』

 

「「ひぃ!?」」

 

「私より早いじゃないですか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お仕事その4 接客

 

「いらっしゃいませ!こちらお品書きになります!」

 

「ありがとう。あら、新人さん?」

 

「はい!」

 

「とても可愛い娘ね。これからも頑張ってね」

 

「ありがとうございます!」

 

「……私の時とは客の反応が違いますね」

 

「あの頃のリューは無愛想だったからね」

 

「くっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

「なんだい、なかなか使えるじゃあないか。この調子で働いておくれよ」

 

「はい、ミアお母さん」

 

 初日はなんとか乗り切れそうと思っていると、ミアからありがたいお言葉を頂いた。

 

「夜はこの倍は忙しいからねぇ!覚悟しときな!」

 

「は、はい……」

 

 借金返済の道のりは、まだまだ先は長そうである。

 

「それとさっきあの坊主が来たよ」

 

「ベルが来たんですか!?無事でしたか!?」

 

「ああ、ピンピンしてたよ。それと、アンタによろしくだとさ」

 

「そうですか、無事で良かった」

 

「さて、そろそろ仕事に戻りな!借金はまだまだ残ってるよ!」

 

「はい!」

 

 ベルとヘスティアに迷惑を掛けないよう、一刻も早く借金を返そうと決意するレイナであった。

 




ボツシーン 4

「いらっしゃいま……!?」

「あら、新人さん?可愛い娘が入ったわね」

「あ、ありがとうございます。こちらお品書きになります……」


「どうしたのレイナ?」

「……今の神様、すごく胸が大きかったです」

「あはは……」








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