小人族が一族の再興を望むのは間違っているだろうか 作:ホロホロ242
学生の皆さん、浪人したらまず友達作ったほうがいいですよ。心が折れます(切実
まあそもそも浪人なんてしないほうがいいに決まってるんですけどネ!
これからもかなり更新遅くなると思いますが、何卒。
朝、まだ日も昇らない内にレイナは目を覚ます。
(……さて、やりましょうか)
『豊穣の女主人』で働くことになったレイナは、体を鈍らせないために、早朝に武器の素振りをすることにした。ミアからも昨日許可を貰い、中庭を使ってもいいと言われたので、存分に体を動かすことができる。
中庭へ向かっていると、何かを振るう音が聞こえてくる。その音は段々大きくなり、発生源が中庭であることに気がついた。
(誰かいるのでしょうか……)
中庭を覗いて見ると、そこには大きな木刀を振るうエルフ──リュー・リオンの姿があった。
自分の得物を縦横無尽に振るい洗練されたその動きは、まるで演舞を踊っているかのようだ。
(綺麗……それに速い。動きに無駄がなくて、何度も繰り返してきたような……)
「ッ!誰だ!」
かなり離れた所から見ていたにもかかわらず気付かれたことに驚いたが、別にやましいことをしていたわけではないので姿を現す。
覗いていた人物の正体が判ると、リューは驚いたようにこちらを見てきた。
「レイナでしたか……何故こんな時間に?」
「体を鈍らせないようにするために素振りをしに来たんです。リューさんこそ何故ここに?」
「昔からの習慣です。前は冒険者をやっていたので」
「そうだったんですか」
(それならあの動きも納得できますね。でも……)
「なぜ冒険者をやめてしまったんですか?」
「っ!それは……」
レイナが何気なく質問すると、途端にリューの顔色が悪くなる。まるで、触れてほしくない何かに触れられてしまったような……
「す、すみません!詮索するつもりはなかったんですけど……!」
「……いえ、構いません」
二人の間に気まずい空気が流れる。先程のリューの表情は気になるが、人に言いたくないことの一つや二つ誰にでもあるだろう。
しばらくの間お互い無言でいると、リューはまた自分の鍛練に戻ってしまった。何度見ても洗練されたその美しい姿を見て、レイナはある決意をする。
「……あの、一つお願いをしてもいいですか?」
「……何でしょう?」
「私に──戦い方を教えて欲しいんです」
「戦い方を?」
「はい、今まではずっと我流でやってきたのでちゃんとした戦い方を知らなくて……さっきのリューさんの動きをみて是非教えてもらいたいと思ったのですが……ダメでしょうか」
レイナがそう言うと、リューは少し悩んだ。
「ダメ、ではないですが……私は人に何かを教えられるほど器用ではない」
「それでも構いません」
私は──強くなりたいんです
真剣な眼差しを向けるレイナに、リューは言った。
「……私は、不器用です。怪我をすることは避けられないでしょう。それでも構わないなら教えてもいい」
「──覚悟は出来ています」
そう力強く言うと、かつて強くなろうと必死だった頃の
「わかりました。私でよければ」
そう言われると、満面の笑みでレイナは返した。
「はいっ!よろしくお願いします、リューさん!」
こうして二人の早朝訓練が始まった。
「やあッ!」
レイナがリューに向かって武器を突き出す。
「遅い」
「くっ!」
その攻撃はあっさり避けられ、反撃される。
「相手が居るところに攻撃するのではなく、相手の先を読んで攻撃するように」
「はい!」
レイナが攻撃し、リューが反撃する。悪い所を見つけては指摘し、それを修正していく。二人はそれをずっと繰り返していた。
お互い使う武器が異なるということもあり、レイナは『技の駆け引き』を教わることになった。
恩恵を授かったばかりの冒険者は、身体能力がいきなり向上することにより、自分が強くなったと錯覚しがちになる。
それにより、ステイタスに頼りきった戦い方になる者がほとんどで、その戦い方は下層に行けば行くほど通用しなくなると教わった。
なので、ステイタスに頼らず、たとえ恩恵が失われても戦える力を身につけることにした。
「ふぐっ!」
「あ……」
……たまにリューが力加減を間違えてレイナが吹き飛んでいくが、それ以外は特に問題なく二人の訓練は続いた。
日が昇り始め、辺りを照らしていく。そろそろ店の準備を始めないとミアにどやされそうな時間だ。
「今日はここまでにしましょう」
「は、はい……ありがとう、ございました……」
訓練が終わると、レイナはボロボロになっていた。全身泥だらけで所々アザができ、今にも倒れそうなくらい疲れ果てていた。
「……すみません、私はいつもやりすぎてしまう」
「い、いえ!頼んだのは私ですから気にしないでください!」
「ですが……」
「リュー?レイナー?そろそろ準備しないとミアお母さんに怒られるよー?」
「ほらリューさん、シルも呼んでますし行きましょう」
「ええ……」
こうして、一日目の訓練が終わった。
「やあレイナ君、様子を見に来たぜ……って、なんでそんなにボロボロなんだい!?」
「ヘスティア様!」
お昼時になり少し客が増えて来た頃、ヘスティアが来店した。しかしいきなり心配されてしまい、宥めるのに少し時間がかかった。
「すみません、ご迷惑おかけしました」
「いいさ気にしないでくれ。というか元はといえばロキの子どもたちが原因なんだろ?ならロキの管理ミスさ!まったく、自分の子どもくらいしっかり管理しておいて欲しいもんだよ!今度会ったら文句を言ってやる!」
「あはは……気持ちは嬉しいですけど本当にやらないでくださいね」
確かに先にベルを悪く言ったのはあの狼人だが、これ以上問題を起こしたくはない。それに、店の中で問題を起こしたレイナ達にも非はあるのだ。
「注文はどうしますか?」
「うーん、じゃあこのパスタにしようかな。一番安いし」
「かしこまりました。少し待っててくださいね」
そう言うとレイナは厨房に戻り、数分後、パスタを二つ持って戻って来た。
「お昼休みを貰えたのですが、ご一緒してもいいですか?」
「もちろんだよ!」
それから二人は、数日ぶりに話をしながらお昼を過ごした。
「さて、ご飯も食べ終わったしそろそろ行こうかな」
「はい!またのご来店をお待ちしています!」
パスタを食べ終えヘスティアが帰ろうとすると、何かを思いだしたらしくレイナに質問してきた。
「そういえば、レイナ君はあの棍棒以外に何か使っている武器はあるのかい?」
「え?一応ナイフも使っていますけど……それがどうかしたんですか?」
「い、いや何でもないよ!少し気になっただけさ!それじゃあ仕事がんばるんだよ!」
そう言うと、ヘスティアはそそくさと店を出て行ってしまった。
「何だったんでしょう?」
ヘスティアが来店してから一週間が過ぎた。
リューとの鍛練も店の方も順調であり、レイナは着々と借金返済の資金を集めていた。
「そろそろ夕方ですね」
「あ~、憂鬱にゃ……」
「今日も地獄の時間がやって来ちゃうのにゃ……」
夕方は夜の仕込みのために一旦店を閉め、準備時間になる。それが過ぎると、ダンジョンから帰って来た冒険者が大勢やって来て、一番忙しい時間になるのだ。
しかし、人と話すのが好きなレイナはむしろこの時間が楽しみだったりする。いろんな人と話して、いろんなことを知るのはレイナの好きなことの一つなのだ。
そんなことを思っていると、いきなり店の扉が勢い良く開かれた。
「レイナさん居ますか!」
「ベル!?」
誰かと思ったら、数日前から音沙汰がなかったベルがやって来た。
「どうかしたんですか、そんなに慌てて……」
「遅くなってすみませんレイナさん!借金のお金を稼ぐのに時間がかかっちゃって……これ!ミアさんに言われた分、きっちり稼いできました!」
そう言うとベルは、ぎっしりヴァリスが詰まった袋をレイナに渡してきた。
よく見ると、前見た時よりも防具がボロボロになっていた。かなり無茶したことが一目でわかる。
「ええっ!?でも、今回は私のせいで出来た借金ですし……」
「そんなことないです!元はといえば、僕がお金も払わず店を飛び出したからで……!」
私のせい、僕のせいと二人で言い合っていると、店の奥からミアがやって来てレイナに声をかけた。
「貰ってやんな」
「ミアお母さん!でも……」
「その坊主、店を飛び出していった日から二日後に店にやって来てねぇ、その日からずっとあんたのために金を稼いでたんだよ」
「でも、今回は私が原因で……」
「いいから貰ってやんな。男がカッコつけてるんだ、恥かかせるもんじゃないよ」
ニッ、と笑いながらミアがレイナを見る。そんなミアを見て、レイナは拒むのを諦めてベルに近づいた。
「……じゃあ有りがたくいただきますね」
そう言うとレイナは、しっかり感謝の念を込めながらベルのお金を受け取った。
「まあ、それを足してもまだ借金は残ってるけどねぇ」
「えっ、そうなんですか?」
「あたりまえだよ。レベル1の冒険者が一週間で十万も稼げる訳がないだろう」
まだまだ働いて貰うよ、と言いながらミアは厨房へと戻ってしまった。
……ホームに帰れるのはまだまだ先のようです。
ボツシーン 5
「ふっ!」
「ふぐっ!」
「はっ!」
「ぐっ!」
「はあっ!」
「ふぺっ!」
「……あの二人は何をやってるニャ?」
「……さぁ?リューが一方的にレイナをボコボコにしてるようにしか見えないけど……」