Fate/Angel of the Abyss 作:ヌラさん
いつからかは覚えていないけど
痛くて
苦しくて
怖くて
辛くて
切なくて
いつだって伸ばした手は誰も握ってくれない
今の私はお父さんとお母さんが殺した私
いつからかは覚えていないけど
嬉しくて
楽しくて
優しくて
私は世界一かっこ悪くて世界一かっこいいお父さんと、世界一強くて世界一優しいお母さんが生んだ私
間桐桜は生きている
正直なところ、あの時何が起きたかはあまり覚えていない。只々必死に足掻き縋っただけだった。
蟲爺の策略に自ら乗り、聖杯戦争で桜ちゃんを救うため、そして彼奴に勝つため、只それだけで良かったんだ。
「何ですか?人の顔をまじまじ見て。具合が悪くなったのですか?」
「いっ、いやいやいやッ!俺は頗る良好だッ!何も問題はないッッははっ…」
「何か不具合不都合不安などありましたらいつでも申して下さい。」
「私は貴方の命を【殺してでも】救います。」
−−−昨夜
身体が重い。身体が痛い。
蟲に身を差し出したときから既に俺の身体はもはや俺のモノではなくなっている。
何だってやるさ。聖杯があれば桜ちゃんを救えるんだ。
何にだって縋るさ。彼奴を、桜ちゃんを地獄の釜に叩き落とした彼奴をこの手で殺せるんだ。
泣き言なんて言っていられない。
そして、俺は最後の詠唱を唱えた。
「天秤の守り手よ―――!」
視界が歪む、倒れるわけには行かない。
意識が遠のく、まだ踏みとどまらなければ。
人としての機能を蟲に奪われ魔力に変換する。
魔法陣から閃光が迸る。
その光はとても温かかった。
なんて言うんだろうな、赤子が初めて母親に抱かれた時の様な感覚だったんだ。
ははっ、柄にもないことを言うもんじゃないか。
身体から力が抜けるのと同時に俺の目の前には、不動明王の形相をした悪魔の様な天使が舞い降りていた。
「私が来たからには、どうか安心なさい。すべての命を救いましょう。すべての命を奪ってでも、私は、必ずそうします。
ところで、貴方が私のマスターですか?」
もう喋る体力すらないので、左手の令呪を見せ意識を手放そうとする。
倒れようとしたところ、悪魔の様な天使は俺を抱きかかえた。
「何ですかこの劣悪極まりない環境は。
いつの日かのクリミアより酷い衛生管理ですよ。」
悪魔の様な天使が何か言っているが、勘弁してくれ。
もう聞くことすらキツいんだ。
蟲爺と何か話しているようだが、もはや俺には聞こえなかった。
いや、1つだけ最後に聞こえた
【我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ《ナイチンゲール・プレッジ》】
あと断末魔のようなモノかな。
−−−
そして、激痛。
「ッガァアアアァアアアアアァアアアアッッ!!!」
「生きていましたか。」
「俺にッ 俺の身体に何をしたッ!?」
「全身が害虫に侵されていたので”取り除き”ました。」
「は?」
おかしい、蟲を取り除いたら俺はそのまま絶命する筈。
何故こうして生きていられる?そんなことより、何故この蟲蔵がホテルの一室のように綺麗になっている?蟲爺はどこにいる?
桜ちゃんだ。彼女は無事なのか!?
「桜ちゃんはッ!?」
「あぁ、あの少女は桜という名前なのですね。
彼女なら別室で寝かしつけました。
貴方とは違い、そのまま害虫を除去したら戻る余地も無かったので、これ以上食い荒らされない様にはしておきましたが、時間が必要です。」
「私からも質問させて頂きますが、貴方は何の為に私を呼び、何を望みますか?」
そんなモノは決まっている。
「桜ちゃんを救い、桜ちゃんを地獄に落としたアイツを倒す為だッ。
その為なら俺はッ俺の身体なんてどうなったっていい。」
首が飛んだ様な錯覚を覚えた。
「ガッ。」
目から星が出るとはこのことか。
言い放ってから1秒も無く平手打ちを食らった。
「馬鹿ですか貴方は!!貴方の名前は聞いていませんが、私があの子の部屋に踏み込んだ時、あの子は!なんと言ったと思いますか!?」
?
「カリヤおじさん助けて。と!あの子を救うには貴方の命が必要ですよミスター・カリヤッ!」
彼女は悪魔の様な天使なんかじゃない。俺にとっては天使なのかもしれない。
自然と涙が溢れる。
人の優しさを感じたの何ていつ以来だろうか。そもそも優しさを感じたのなんて葵さん以外では無いのでは…?
考えたら余計悲しく自分がちっぽけに思えてきたんでもう思考は停止しておこう。それがいい。
「そんなに痛かったんですか?大丈夫です。頬を打たれたくらいでは死にません。むしろ殺してでも生かします。」
前言撤回だ。
彼女は悪魔の様な天使という表現でいい。
「俺が…この俺が必要とされているのか…?」
大手を奮ってみたはいいが、俺には何かを与えることは出来ない。
己の所業は奪う事しか出来ないとすら思っていた。
それでも桜ちゃんは俺を求めてくれた。
葵さん見ていてくれ。何があろうとも俺は桜ちゃんを救ってみせる。
あの子の笑顔を取り戻してみせる。
体力も無ければ魔力も無い。
が、気力だけは漲っている。その一言で全て救われた気がした。
「自己紹介がまだでしたね。
私は、バーサーカー ナイチンゲール。
フローレンス・ナイチンゲールです。よろしくお願いしますね。マスター。」
「俺は間桐雁夜。魔術師では無いので蟲を使って無理矢理魔術回路を開いていたんだが…。ん!?」
「どうかなさいました?」
「どうしてナイチンゲールがバーサーカーなんだ?
俺の知っているナイチンゲールは白衣の天使でとてもバーサーカーなんて…。」
「白衣の天使というのは広報によるイメージ操作です。私は只の人間であり、与えられた職務を自分の信じたままに全うしたに過ぎません。
バーサーカーというクラスは不服ですが、私は目の前の惨状に対し足掻いただけに過ぎません。
例え、座が私を狂っていると認識しようとも私は命を救う為なら何だってします。そう、何だって。」
英霊の座は間違っていないのかもしれない。
彼女の目はアレだ。本気と書いてマジと言うやつだ。
反論したものならば、平手どころでは済まない。ホルスターの中の銃を向けられるだろう。
「まぁ…、身体を巣食っていた蟲から救ってくれたのは感謝する。
でも、どうして俺は生きているんだ?あの蟲がなければ俺はもはや生きられない身体の筈だ。
それと蟲爺は。俺の隣に老人がいただろう?」
「貴方の身体については私の宝具を用いました。
害有るモノを消し、肉体を再構築します。命を繋ぎ止められるかどうかは賭けでしたが。貴方は見事生還しました。」
「それと、【アレ】は人間だったのですか?人のカタチをするナニカに巣食っていた害虫と判断したので宝具により消滅してしまいましたが。」
あの化物を消しただと…!?
これで魔術師間桐の血は潰えた訳か。
「ふふ…ふははははははっあはははははっ」
自然と笑いが出てしまう。こんなに嬉しい事は無い。
「ッ!?
まさか脳に障害を?
早速摘出を…」
「あ、いやいやいやいやっ!脳は至って問題ないから!むしろ冴え渡ってすらいるから!」
「そうですか。
貴方は今現在絶対安静の状態です。
例えるなら、傷口に無理矢理血肉を突っ込んだ様なものなのですから。
無理は構いませんが無茶はしないでください。何ならベッドに鎖で縛り付けましょうか。あぁ、四肢を失えば動くことも出来ませんね。」
道理で半身が痛いわけだ。
何より真顔で冗談じみた事を言うのはやめてくれ。冗談ではないのだろうが。
更新まちまちになるかもしれませんが、Fate/zeroの二次創作を書いていきたいと思います。
かりやんの口調が原作とかけ離れているかもですが、それについては誠にごめんなさい。
物書き歴ゼロなので手探りで頑張ります。