「ん・・・」
土の匂いが鼻を通る。目を開くと暗い何処かの中と分かる。
そして聞こえる寝息。レーヴァテインとマスターのものだとすぐ分かった。
しかし、ヤクモの気配は何処にも無い。
寝ていたベッドから立つと、自分の身体の調子が良くなったことを感じる。もう十分にエネルギーは確保出来たようだ。
よく見ると、暗闇の中に微かな光があった。それを見つけたティルフィングは、それに惹かれて寄っていく。
「天にまします我等の神よ。願わくば、我等に力をお貸しください・・・」
天井に開いた通気口から、月明かりが十字架に光差す。十字架はその光を浴びて、青白く輝いている。
その輝きはまるで氷のように、ヤクモの肉体を照らす。
「・・・」
静かに祈る彼女の姿は、まるであの日に凍りついた記憶を表しているようで。
声をかけるべきか迷ったが邪魔するのも悪いので、静かに待っている事にした彼女はゆっくりと腰を落とす。
「・・・ん?あっ、ティルフィングさん!?」
祈りを終えたヤクモは、彼女の存在に気付くと膝元に置いていた何かを咄嗟に隠すように手を後ろにした。
ティルフィングはそれを気にせず話しかける。
「えぇ。こうやって直接会うのは初めてでしたね、ヤクモさん」
「な、なんで私の名前を?」
「マスターと私は、不思議な力で繋がっていますから」
クスクスと笑うティルフィングを前に、ヤクモはある事を思い出していた。
「不思議な・・・力・・・。羨ましいです。私もその力が有れば、父親があんな事になっても・・・」
「自分の力不足を悔いる必要はありませんよ。・・・私が起きたとあれば、マスターは明日か明後日には教皇の元へ向かうでしょう。貴女の心を、戦う前に聞いておきたいんです」
「私はもう、決めたんです。もう一人で抱えないし、逃げない。父を止めます。必要ならば、戦ってでも」
「父を・・・そうですか・・・」
「・・・奴等の居所は掴めたか」
教皇は静かに尋ねた。まるでそれは機械の返答のような冷たさ。
「いえ」
「・・・そうか。まぁ、良い。いずれここにやってくる」
「何故、それを?」
「この身体は、あの娘の父親だ。理由はそれだけで十分だろう。・・・我は確かめたい。人の力を。心の繋がりを。・・・そして、我を産んだあの男の言っていた、マスターという存在を」
教皇は静かに目を瞑る。
実行の時が来た。ティルフィングが目を覚まし、ヤクモの心も決まった。
「よし。これより、教皇庁に向かう。目標は教皇の説得、もしくは撃破だ」
「どういうルートで行くんですか?」
「それはヤクモに任せている。行けるよな?」
「た、多分・・・」
「・・・アンタがそう言うと私たちどうしようもないんだけど」
「だ、だって・・・!これから行くルートは比較的安全とはいえ、騎士がいないとも限りません!」
「大丈夫だって。そもそも見つかったって何も問題ない、だろ?」
「・・・あー、その事なんだけどさ」
レーヴァテインが手を挙げた。
「・・・私、多分手配されてるかも」
「なにぃ!?」
「いや、あの蜘蛛と戦った後で追われたから」
「お前なぁ・・・そう言う事は早めに・・・」
「いや、それなら大丈夫です」
ヤクモが声を上げる。
「手配されているのなら、私達の通るルートに教皇の手下は居ません。間違いなく」
「何を根拠にそれを言えるんだ?さっきまであんなに心配そうにしてたのに」
「レーヴァテインさんが追われた、という事ならば話は別です。以前、教皇の元に侵入者が迫った時は誰も居ませんでしから」
「・・・じゃあ、結果オーライって奴か。けど、どうやってその道に出るんだ?」
「こっちです。ついてきてください」
彼女に言われるまま、十字架のあった場所にやってくる。すると彼女はその近くの地面に座り込む。
「・・・なんなの?」
「ちょっと待って下さいねー・・・ここかな?」
カチャ、と乾いた音が鳴った。
「なんの音ですか?」
「こっちです、こっちこっち」
呼ばれた方向へ向かうと、長く続く地下道がそこにあった。
「・・・すげぇな」
まさしく失われた技術(ロストテクノロジー)の結晶に心底驚く彼をよそに、ティルフィングが手を引きながら先へ進む。
「私とマスターで先行します。ヤクモは任せましたよ、レーヴァテイン」
「はぁ・・・おっけ。お守りね」
「こ、子供じゃありません!」
「ごめんごめん。でも、何かあったら頼りなよ」
「じゃあ、行くか」
四人は教皇の真意を問うべく、その地下道を歩き出す。
「マスター、ちょっとよろしいですか?」
ティルフィングが静かに囁く。どうやら後ろの二人に聞かれるのを躊躇っている様子だった。
「どうかしたか?」
だからこちらも、静かに返した。
「私、ある夢を見たんです。・・・そこに、ヤクモさんの父親が・・・」
「出てきたのか?」
「はい。禁断の果実も、彼の手に」
「・・・どういう事だ?」
「繋いだ方が、分かりやすいですね」
頭の中に情報が、濁流のように次々と流れ込んでくる。痣の真実、元の姿。そして、救えぬ命。
「・・・やっぱりか」
もし、彼女がその事実を、自らの目で確かめる前に知ったとしたら、どうするのだろうか。
遠い先に、梯子が見えた。
「あれは?」
「教皇の執務室付近の倉庫に繋がっている梯子です。あれを登ったら、教皇まであと少し・・・」
「そうか。・・・登ったら一気に行く。どう行けばいい?」
「倉庫の壁をぶっ壊していけば?」
「ダメです!そんな事したら・・・」
「多分ですが・・・もう、バレてますよ」
外から聞こえる足音が、だんだんと多くなっている。
「・・・ヤクモ、覚悟はいいか」
「は、はいっ!」
「よし、頼むぜ二人共!」
爆発音が鳴り響く。
粉塵の中より見える、二つの光。
「こっちの動きはもうバレてる!急いで教皇の所だ!」
『了解です!』
「た、高いっ!?」
『我慢して掴まって』
「伝令。ヤクモ様と侵入者三人がこちらに向かっています」
「・・・そうか。ならば手厚くもてなしてやらねばな」
「ここの兵力の増強を・・・「必要ない」・・・承知」
すると、壁から爆発音が聞こえてくる。そして、伝令に向かってきた兵を吹き飛ばして、二つの機体が辿り着いた。
「お父様!」
ヤクモが力一杯叫ぶ。
その声の行く先は、段の上に座る教皇。
「うるさいな、娘。礼儀も知らんと見える」
「なっ・・・い、いいえ!貴方は間違っている!私はそれを正しに来ました!。もう、こんな事やめてください!お父様は・・・」
「私はお前の父ではない。それはこの外なる者達も分かっているのだろう?」
その目はまるで、何もかもを見通しているようで。
「・・・もう、会話はいらねぇか?」
ティルフィングもレーヴァテインも臨戦態勢に入った所で、教皇がそれを制止する。
「いや、聞かせてもらう事がある」
立ち上がり、マスターに問う。
「お前達は、何故抗う?逃げていれば、破滅への道は免れように」
「・・・何かを失う哀しみをもう、繰り返したくないだけだ」
「そうか」
ゆっくりと段を降り、顔を彼に向けた。
「・・・それが今という時代で無ければ、当たり前だったのだろうがな。この世界で心を持って生まれた時点で、絶対的敗者という事は覆せない。それが理だ」
『なら、そんな理・・・!』
『私たちがぶち破るっ!』
二機が突っ込んだ。普通のファントムならば一撃で倒れる一振り。
しかし。
「教えてやろう。強き者を」
背中から出てきた蜘蛛の足がその剣戟をいなす。
そして肉体が変化を始めた。あの女性とは違う方法で。あれが孵化だとしたら、教皇は変態というべきなのだろう。
「これが我の姿。人という形を経て生まれた真の聖者となった者・・・」
背後のステンドグラスからの光が、その姿を照らす。
それは、機械仕掛けの白き大蜘蛛。
「さぁ、かかって来い。我は汝らの攻撃を全て受け止めよう。それこそが、ここまで辿り着いた貴様達への最大の返礼である」
ティルフィングとレーヴァテインが戦闘に入った。
火花を散らしながら戦う彼女達の背後で、マスターとヤクモが幾人もの騎士と戦っていた。いや、厳密にはヤクモを守る為にマスターが戦っていると言うべきか。
「くっそがッ!何でこいつらこんなに鬱陶しいんだよッ!」
倒した騎士の剣を拾って戦うが、そもそも数が違い過ぎる。
「ま、マスターさん、後ろ!」
「何だ・・・やべっ、しゃがめ!」
二人の上を薙ぎ払われたティルフィングの機体が飛んでいく。
『ぐぅ・・・っ!』
「ティルフィング!無事か!?」
『あんたは他人の心配してる場合じゃ・・・邪魔ッ!』
レーヴァテインがティルフィングを守る為、飛んでくる蜘蛛の糸を斬り払うと、次には鋭い脚が襲いかかる。
『が・・・はッ!?』
左脚を貫かれ、機体が解けていく。その身体はマスターのいる所に吹き飛ばされて落ちていく。
「ふむ、どうやら機体のダメージと肉体のダメージはリンクするようだな?」
「レーヴァテイン!?」
口から血を吐いた彼女を咄嗟に受け止める。
感じたのは、圧倒的な力量差。
「あの・・・」
「・・・心配すんな。まだ、戦えるから」
レーヴァテインが落とした剣を拾う。
その姿を、彼女はじっと見ていた。
「・・・」
本当は、逃げたかった。戦いなんて好きじゃない。だから、父を説得出来ればそれで終わると思ってた。
「ふむ、神機はもう出ないのか。ならば後はお前だけだな、人間の男」
「・・・まだ俺はピンピンしてるぜ。どうする?」
「その虚勢、いつまで持つ?」
このままでは、彼は死ぬ。ヤクモは、彼が気になっていた。不思議な何かを持つ彼に惹かれていた。
だから、死んで欲しくないと願った。祈った。
「かかって来いよ」
「減らず口を」
蜘蛛の脚が彼に伸びる。それは人間の反応速度を超えたスピードで彼に迫り・・・
殺す筈だった。
彼女の心の叫びが木霊する。
「ここは・・・」
そこは、一面の銀世界。ヤクモは困惑していた。ここは何処なのか。しかしそれは愚問である事をすぐに理解する。
「久し振りだね、ヤクモ」
「お父様!?」
それは、間違いなく父親の姿。そしてその中身も、彼の魂。
「・・・私は、死んだのですか?」
「あぁ。ヤクモ"は"死んだ。ヤクモとしての君は、これ限り」
「・・・?」
「分かってる筈だろう?今朝の事だからね。ヤクモがあの果実を食べたのは」
「・・・あの、黄金色の果実」
思い出す、ティルフィングが来る前の出来事を。あの十字架の近くに添えてあった、あの林檎。
「それは、力を与えるんだ。何かを失っても、この世界を守りたいという人間にね」
目の前に光が現れる。
「選ぶんだ、ヤクモ」
「・・・私は」
吹雪が父親の姿をかき消した。
気づくと、あの蜘蛛の脚が彼に向かって伸びている。
「させないっ!」
彼女の意思が、自身が持っていた力と呼応した。彼女はその力の使い方を一瞬にして理解した。
一瞬だけ、息が白くなる。時計の針が、凍りつく。
そして、気づくと彼女は、目の前に居た。
「・・・ヤクモ、お前っ!?」
「マスター!私に指示を下さい!私の、名前はっ・・・!」
大きく、叫ぶ。
「ロンギヌス!そう、呼んでくださいっ!!」
その声は、この街全てに響く。
彼女は聖者となった。この街に真にあるべき聖者へと。
「・・・貴様、我の力を・・・」
「父の力、返してもらいます」
「だが、丸腰で何ができる?」
「丸腰では、ありませんっ!」
その時だ。背後のステンドグラスが砕け散る。
「なっ、何だぁ!?」
「チッ・・・」
それを砕いたのは、シェルターの中にあった筈の十字架。
「十字架が、回転してここまで飛んできたってのか!?嘘だぁ!?」
ロンギヌスはそれを受け止める。するとその十字架は姿を変えて、槍というべき形となった。
「貴方が攻撃をいなせたのは、あのお二人が魔剣の名を持つ者だったから。けど!」
聖槍が、光を放つ。砕け散ったステンドグラスに反射して、まるで雪明かりのように彼女を照らす。
「私なら・・・聖なる槍の名前を持つ、私ならっ!」
槍を投擲。音速で飛び出した聖槍は、蜘蛛の脚を砕いた。
「ふん・・・」
「貴方を倒せます!」
「・・・いいだろう。ならば、この姿すらも過去にする」
蜘蛛の姿が消滅し、現れたのは、一体のファントム。
「本当に・・・意思を持った、ファントム・・・」
「集え、我が写し身達よ」
その言葉に、騎士たちが反応する。鎧が消え、中から現れたのもまた、ファントムだった。
「なっ・・・」
「あの騎士は、そもそも人間じゃなかったのか!?」
そしてそのファントムが教皇を名乗っていたファントムにまとわりつく。
「溶けろ」
その一言で、その場の温度が上がり始めた。
「なんという熱量・・・!?」
「安心しろ。貴様らを焦がすのではない」
現れたのは、15メートルの巨大なファントム。盾と剣を持った、聖騎士を名乗るような、そんなファントムだった。
「私は、ただ一つの機械に、ワンマシーンとなって・・・完膚なきまで叩くのみ」
「でかっ・・・!?」
「マスター!?」
巨体の脚の裏が見えた。・・・足がすくんで、動かなかった。
「・・・ったく、私の剣持ってって、死ぬなんて許さないから」
「え?」
「そうですよ。まだ、旅は始まったばかりです」
レーヴァテインがマスターをティルフィングの方へと投げる。受け止められたマスターは少し考えた後にこう言い放つ。
「・・・なぁ、俺の扱い雑じゃないか?」
「これくらいが、ちょうどいい距離感だと思いますよ?」
「マスター!大丈夫・・・あ・・・」
「さん付けは要りませんよ、ロンギヌス。さてマスター、この状況、どうします?」
「あんたの指示に従うから」
「・・・あぁ。ここからだ。全部ひっくり返してやる・・・!」
マスターと、三人のキル姫の心が繋がる。
「ふん、束になったところで何になるというのか」
『束になったのはあんたでしょうが』
剣を持ったファントムの腕を、レーヴァテインが神機の剣で受け止める。
『やっぱり、出力が上がってる?なんだかさっきよりも力が・・・』
『それはマスターの持つバイブスによるもの。信じ合える仲間が増えれば増えるほど、より強くなっていくんです』
「絆って奴か!まさかこんな時代で、絆が大事になるとはな!」
「笑わせるな。男」
レーヴァテインの神機を払いのけ、マスターに迫る。
「汝が潰えれば、全てが終わる!」
「あぁ、その通りだ。俺が死んだら、全部終わり。でもな、俺もそう簡単には、終われねぇ。・・・ロンギヌス!」
「止めますッ!」
ロンギヌスがその槍を地面に突き刺す。そこから周囲が凍りついていく。
また、世界が止まった。
「お前の敗因は、俺の力を理解していなかった事だ」
彼の手が、巨大な教皇の腕に触れる。
「騎士の姿のままならば、操縦桿を奪うことは出来なかった。意思のような何かを持っていたからな。だが、今のお前は群生だ」
まるで枯れた枝のように、その腕が落ちる。
「だから、一部分だけ奪うことが出来る。使え、ロンギヌス!」
「分かりましたッ!!」
彼女は槍を投擲する。狙う場所は、あの落ちた腕。
槍が触れるとそれは溶け、槍に浸透していく。
そして、元の持ち主の元へと戻った。
「私だって、戦えるんです!神機開放“クロース・オン”!!」
槍が凍りつく。そして、その凍てつきは彼女の肉体も包み込んだ。
彼女の身体の数倍にも膨れ上がっていった氷塊は、音を立てて崩れ落ちる。
漂う冷気が、それの神々しさを物語り、凍てつく槍が運命を導く。
「・・・なんとまぁ、ショッキングな登場だ。ヒヤヒヤしたぜ・・・」
『一撃です。それで決めます!援護を!』
『おっけ』
『了解です』
聖槍の左右に魔剣がつく。
「ぬぅ・・・片腕を失った所で!」
残った手で三体を纏めて掴もうとするが・・・。
『そんなのでっ!』
『止められると思わないでっ!』
二振りの魔剣が、その腕を斬りとばす。
そして、聖槍はついに教皇に至る。
「行けェ!ロンギヌス!」
『これで、終わりです!!!』
神機の槍は奥深くに到達。巨大な教皇の心臓部を貫く。
そこから、眩い光が溢れていく。
「なっ、なんだなんだ!?」
『爆発するっ!!』
「うわぁぁぁぁぁ!!!???」
肉体と共に、意識も飛ばされた。
「ありがとう、娘を頼むよ」
目を覚ます。そこは何も無い、平野だった。あれは夢?いやいや、体を打った痛みはある。
周囲には三人が倒れている。ティルフィングと、レーヴァテインと、ロンギヌス。
「おい、起きろ。起きろって」
その声で三人共目を覚ます。
「ここは・・・?」
三人共がよく分からない反応だった。
「わからね・・・ぇ・・・え?」
周囲を見回していると一つ、黒い物体があった。それは、自分がよく知った物で。
「俺のバイク!?なんでここに・・・」
「じゃあここは、あの街で間違いない・・・という事ですか?」
「・・・全部、あの教皇の幻影だった、という事でしょうか」
「・・・まぁ、なんでもいいんじゃない?取り敢えず、一人仲間が増えたんだし」
ロンギヌスにもバイブスが反応している。間違いなく、あれは夢ではない。
すると、遠くから車のエンジンのような音がする。
中には一人の女性が乗っている。
こちらに気づいたようで、こちらに向かって来ていた。
「ねぇ、あんた達。こんなとこで何してんの?」
「いや、ここに街が・・・」
「街?・・・爆発音がしたから来たんだけど、ここは廃墟だった筈よ?」
頭でも打ったのかと心配がる様子でこちらを見る。
「あの、すいません。乗って来たバイクが壊れてしまって・・・」
「・・・三人乗りなのに四人で乗ったの?どんな曲乗りよ、それ・・・。まぁ、良いわ。見せてみなさい」
数十分ほどバイクを見ると、立ち上がった。
「ここじゃ無理ね。私の工房まで車で引いて行けば直せるけど、どうする?」
「・・・あれは、教皇の幻影だったのか・・・?」
「・・・?どしたのポケーっとして」
「えっ?あぁ、何もない。頼むよ」
「よし、じゃあ乗った乗った!行くよー!」
車に乗り込む。が、一人、ロンギヌスだけはすぐに乗ろうとしなかった。
「どうした?」
「・・・私、ついていっても良いんですか?」
「・・・あたり「当たり前。ついて来なきゃ許さない」・・・だそうだ。来るよな?」
「・・・はいっ!」
車に乗り込む。
「ところで、あんたは何者?」
「ん?私?私の名前はねー」
ミラー越しにこちらを見る。
「ヴァリンって言うのよ」
煙のように消え去った街の跡地に現れた、"ヴァリン"と名乗る女性に助けられ、マスター達が辿り着いたのは、あの最後の作戦に使用された研究所だった。
「私は、悪の科学者よ」
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