「はじめまして、流浪の旅人さん達。僕の名前はラヴィーナ。ここにいるレジスタンスの副隊長だ。よろしくね」
レーヴァテインが連れてきた小麦色の肌の少女は軍隊のような敬礼をしながらそう言った。
「よろしくお願いします」
「君がティルフィングだね。そしてそこの子がロンギヌス」
「はひっ!?」
「何故、私達の名を?」
「簡単さ。監視カメラで見てたし聴いてたんだよ。君達の行動と発言をね」
「・・・此処じゃ筒抜けって事か」
「ま、そういう事だ、マスターさん。でも仕方がない事でさ。君達の力は、この世界を変えられるんだろう?」
その言葉を聞いたレーヴァテインはロンギヌスに駆け寄り、そっと耳打ちをした。
「ねぇ・・・まさかヴァリンとかいう女に神機見せてないよね?」
「・・・見せちゃいました・・・ティルフィングさんが・・・」
「・・・じゃ、やっぱりハッタリでも無いか・・・」
ラヴィーナと名乗った彼女はマスターの腕を掴み、そのまま拘束する。
「この男は私がしばらく預かるよ」
「はぁ!?」
「そう怒らないでよ。しばらくしたらすぐ返すからさ」
「そんなの許すわけ・・・っ!」
「じゃあ此処から君達が出る事は無い」
「レーヴァテイン。やめましょう」
ティルフィングは掴みかかろうとしたレーヴァテインを止める。
「良いんですか?もしもマスターに何かあったら・・・」
「・・・そんときは、私が全部ぶち壊すから」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら、彼女は怒りの刃を収める。
「と、いう事だ。いいね?マスターさん」
「ま、仕方がない。ただちょっとでも俺を殺しにかかってみろ。・・・容赦はしないぞ」
「分かってるよ。僕たちはそこまで愚かじゃない」
「そうか」
そういうと、マスターは大人しく彼女に手を引かれていく。
「あ、そうそう。君達はそこに居てくれ。しばらくしたらまた彼を連れてくるよ」
「監視されている部屋に居ろと、そう言うのですか?」
「・・・ロンギヌスだったかな。気弱そうなのに結構言うね。良いよ、カメラの場所を教えてあげる」
彼女は部屋にある全ての監視カメラの場所を伝えると、彼の手を引きながら何処かへ歩いていった。
二人が居なくなった後、レーヴァテインはため息を吐きながらヴァリンに話しかける。
「ねぇ、ちょっと」
「どうしたの?」
「・・・あんた、研究員なんでしょ?やりたい事があるんだけど」
「何処まで行くんだ?」
「もう少しだから、我慢してしてくれ」
「・・・いつまでこの腕は握られてるんだ?」
「んー、着くまでだね。逃げられても困るから」
「そうかよ」
彼はそれから黙って腕を引かれていく。何も言わずにただ進んでいくと、大きな扉が現れた。
「ここで待ってもらうよ」
「ようやく解放か?」
「僕も一緒に居る」
「・・・そか」
彼女は彼の腕を握ったまま扉を開く。
中にあったのは長い机といくつもの椅子。
「ここは?」
「僕たちレジスタンスは方針を議会制で決める。その会議室さ」
さ、座って。彼女は椅子を引いてマスターを座らせるとようやく腕を離した。
「さてと。多分そろそろ来るよ」
「誰がだ?」
「レジスタンスの隊長さ」
そう言うとすぐに扉を叩く音がした。
扉を開いて現れたのは、目つきの悪い、長身の男だった。
「・・・」
「・・・」
静かに口を開く。その言葉は聞こえなかったが、それに反応した彼女はあの男に近寄っていく。
「・・・ラヴィーナ」
「なんだい?」
「なぜ監視カメラの場所を教えた?」
「彼らへの礼儀だよ。礼を失った人間は、獣と何も変わらない。あの人が言ってた事を行動に移しただけさ」
「ふん・・・まぁいい」
そう言うと靴で床を鳴らしながら、彼の前方の席に座る。
「・・・紹介のとおり、ここのレジスタンスを統括しているものだ。名前は・・・」
「こっちは名乗るつもりは無い。だから、あんたも名乗らなくていい」
「そうか。本題に入ろう。・・・お前達はあの木に向かうのか」
「聞いてたのか?」
「あぁ。ティルフィングと名乗るあの少女の話だったな」
「・・・ハッタリじゃない、な。で、何が言いたい?」
「お前達をその場所に行かせる訳にはいかない」
「・・・あんたに決定権は無いだろ。決めるのは俺たちだ」
「そうか。・・・ならば仕方ない」
彼が右手を上げると、ドアを蹴り開ける音と共に人が銃を持ってなだれ込んできた。
「この男を捕えろ!」
「はぁッ!?」
ラヴィーナの姿はいない。
「てめぇら・・・ッ、それでも人間か!?」
確保された彼はもがきながらレジスタンスの隊長に向かって叫ぶ。
「・・・連れていけ」
しかし、男は静かに命令を下す。
彼女は走りながら考えを巡らせる。
まさか彼を捕まえるとまでは思わなかった。
そして、彼を捕まえたという事は、彼女たちにも確保の手が回ってくるだろう。
たどり着いた。扉を開く。
「僕の他に誰か来たかい!?」
「ど、どうしたんですか?」
息を切らしながら現れた彼女に驚く皆。そしてすぐに彼女達に頭を下げる。
「すまない、彼は捕まった・・・」
「・・・え?」
「僕のミスだ・・・まさか彼が捕まえるとは思わなくて・・・」
「・・・へぇ」
それを見たレーヴァテインは、赤い刃をその手にラヴィーナに近づいていく。
「この詫びだけで済むとは思ってない。おそらく隊長は君たちも捕まえるだろう。でも、必ず彼は僕の手で助ける!君たちの脱出の手引きもする!」
「うるさい」
「・・・ッ!」
彼女は思った。殺されると。しかし、これも定めなのかもしれない、とも。
だが違った。彼女の首元に触れたのは冷たく鋭利な刃ではなく、暖かく柔らかな、レーヴァテインの手のひらだった。
「・・・え?」
「あんたは、良い人だから。他の人間がやった事で頭を下げないで」
「・・・レーヴァテインさん、ラヴィーナさんとマスターが行った後、ヴァリンさんに頼んだんですよ。監視カメラやその類を見つけられる物は無いのかって」
ロンギヌスが微笑みながらそう話す。それに続いてティルフィングも言葉を続ける。
「結果としては、言われた場所以外には無くて。それで・・・あれ、どうしましたかレーヴァテイン?なんだか顔が赤いようですが」
「うっさい」
「まぁ、そういうわけで、ラヴィーナなら信じられると思ったみたいよ。よかったわね、ラヴィーナ」
「・・・そう、か。そうなんだ。・・・」
最後のヴァリンの言葉で、彼女の中にあった過去の記憶が蘇る。
それはいつしかあの人が、先代の隊長が言っていた言葉。
『礼儀と信頼を忘れるな。それがきっと、自分の本当の仲間を、友と呼べる存在を引き寄せてくれるだろう』
「・・・ありがとう。僕を信じてくれて」
「助けましょう、私たちのマスターを」
「大体の場所ならわかる。ついてきてくれ。彼を助けて、君たちをここから逃がす」
「で、でもあなたはここの人なんですよ?それをしたら居づらく・・・」
「気づいたのさ。僕の本当の仲間は、レジスタンスには居ないって」
元々、彼のやり方にはあまり乗り気ではなかった。
だから、ちょうどいい。