俺の小学校の時からの幼馴染が全国を何連覇もしているような商業高校のバレーボール部でベンチ入りした。
何でも来る日も来る日もサーブとレシーブの練習だけしたらしい。
「応援くらいしか出来ないけど、全力で応援してるからな!」俺は友人に言った。
その話を長男にすると「お前、無駄な努力してる友達に『頑張れ!』って言ったのかよ、残酷だな」と言った。
「結果より過程が大事なんじゃねーの?」俺は少しカチンときて兄貴に噛みついた。
「お前はアホか?
『過程』『道程』なんてのは途中経過なんだよ。
結果に向かってる経過なんだよ。
確かに努力して結果に向かってる経過は大事だわな。
ボクシングの世界チャンピオンになれるのは数人だ。
でもそこを目指すヤツはゴマンといる。
どんなに『狭き門』でもそれをバカにするほど俺は醒めた男じゃねー。
ただな、それは『どんなに細くても道があるなら』の話だ。
あの商業高校のバレーボール部な、俺があそこに通ってる高校生の時から全く同じ事してたんだよ。
一般入部の頑張ってるヤツを練習試合でベンチ入りさせるんだよ。
それで『どんなヤツでも頑張ればベンチ入りのチャンスがある』ってバレー部全体の発奮材料にするんだ。
それで全国大会予選が始まる前にその一般入部のヤツをベンチから外すんだ。
それは俺が高校生になる前から繰り返されてきた毎年の事なんだよ、道なんかどこにもねーんだ。
道が開けてる場合もある。
でもあの商業高校のバレー部だけは道は開けてないんだ。
お前の友達は行き止まりに向かって全力疾走してるようなもんだ。
推薦入学と一般入部の差があるのなんて当たり前だ。
サッカー元日本代表の岡野は推薦入学の選手の集まりである『オール日大』の選手じゃなかった。
一般入部の学部のサッカー部の選手だった。
道が閉ざされてて『このままサッカーを続けてても』って退学して浦和レッズの入団テストを受けたんだ。
お前の幼馴染が本気でバレーボールしてるなら『道は閉ざされてる』って教えてやるのが友情じゃねーか?
そうすりゃ岡野みたいに違う道を探す事が出来るかも知れない。
それがわかってても『このバレー部で頑張りたい』っていうんであれば言う事はねーよ。
ただベンチ入り目指して頑張ってるならあまりにも不敏すぎるだろ?
その事をバレーボール部監督に指摘すると『きっと本気でバレーボールに打ち込んだ三年間はベンチ入り出来なくても財産になる』とか綺麗事ぬかすんだよ。
ソイツらはその時、その瞬間にベンチ入りがしたくて青春の大事な一時をバレーボールの練習に費やしたんだ。
将来のためじゃねー!
それに挫折したヤツが将来大成するかなんてのはソイツ次第だろ?
ヤクザの用心棒が元格闘技選手なんてのはお決まりなんだよ。
挫折した経験を糧に大成するヤツなんてな、挫折した後坂道を転げ落ちるように堕落するヤツの半分もいないんだよ。
だいたい『挫折の経験どうこう』なんてのは騙して挫折させた本人が言う事じゃない。
そんな監督の自己正当化の弁が聞きたいんじゃねー。
現に利用されたヤツのほとんどがバレー部やめてるんだから。
監督はそういったヤツらの引き留めもしないんだぜ?」
きっと兄貴の友達が騙されて酷い目にあったのだろう。
俺には兄貴が過剰に感情移入しているようにみえた。
その時指摘出来なかった罪悪感を今ぶつけているのだろう。
俺は結局兄貴に言われた事を友人には言えなかった。
やはり友人は公式戦前にベンチから外された。
しばらく音沙汰はなかった友人だが偶然街中であった時「バレー部はどうしたの?」と聞いたら、蚊のなくような声で「やめた」と言っていた。
人は希望なくして生きられない。
指導者は下々の者に夢を見させる。
その実、本音は『生かさぬよう、殺さぬよう』だ。
そんなのは世の常だ。
専門学校でも99%は月謝運びで名前を上げようと本気で育てられるのは1%いるかいないかだ。
それが詐欺罪に問われないのは細々と道が続いているからだ。
俺が驚いたのはブラックバス釣りの専門学校があった事だ。
卒業生が一人バスフィッシングのプロとして生活していけているのでその専門学校は成立している。
テレビでコマーシャルしているデザインの専門学校は半年以内に95%が自主退学するそうだ。
学校が生徒から搾取して、利用して、生徒側も「利用されてたまるか!逆に利用してやる!」と思う。
道が閉ざされてても成り立つのは祭のくじ引きくらいの物だ。
村勇者は施政者達に利用されているのではなかろうか?
村長は村勇者と一緒に戦う気は0だ。
貧しい生活の中で年貢を納め、軍役に大事な息子を差し出すのは「それで家族の生活が成り立つなら」という気持ちだろう。
村長は村人の村勇者へのヘイトコントロールをしているのだろう。
村人の憎しみを村勇者に向ける事で村長本人は戦わず村政を好きなように動かし、甘い汁を吸う事が出来る。
他の村が同じなのかは知らない。
だが前任の村勇者が死んだ時村長は運命を共にするどころか、全ての罪を前任の村勇者に被せたのだろう。
俺に対する村人の怒りと憎しみの目はきっとそういう事なのだろう。
「村長以上に力をつけないとな、じゃねーと村長に利用されて命を落として終わりだ」俺は誰にも聞こえないように呟いた。
「見えました、あれが隣村の軍勢と先頭にいるのが隣村の村勇者でございます」と村長。