バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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最近忙しくて中々更新できませんでした。というわけで第九話でーす。


第九話 ムックルを探せ!

ハナノシティを抜けたアヤとヒナは、キウシティへむけ、3番道路を進んだ。この道は両脇を崖に挟まれた谷底を通る道であり、いたるところに『落石注意』と記された立て看板が設置されている。それに不安を覚え、アヤは足早にここを抜けようとした。が、ヒナの方は崖の上の方でぐらぐら揺れている岩を面白がって中々進もうとしない。

 

「ヒナちゃん早く!早く行こうよ!」

 

「ちょっと待ってよ、アヤちゃん!あと少しであの岩が落ちてきそうなんだよ~」

 

「落ちてきそうって!危ないからダメだよ!」

 

アヤはしびれを切らせヒナの袖をつかみ無理やり引っ張るが、少し進めばまたヒナが立ち止まってしまう。こうして半永久的に上記のやり取りがループするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな調子でアヤとヒナはゆっくりと3番道路を進む。すると徐々に崖と崖の幅が広まり、気が付けば今度はあたりを木々がうっそうと茂っていた。そう、アヤとヒナは3番道路の間に広がる『キウの森』へと足を踏み入れたのだ。

 

「うわ~、なんだかすごい道だね……」

 

「大丈夫だよ、アヤちゃん。ほら、そこに遊歩道の案内板があるじゃん。きっと遊歩道に沿って歩けば迷わないよ!」

 

ヒナが指さす方には確かに遊歩道の向きが示された看板が立ててある。それもツタが生い茂り、ずいぶんと年季の入ったものだ。はっきり言ってこれに従って歩くのはいささかの不安を覚えるが、ヒナはアヤを置いていくような勢いで歩いていく。アヤも慌てて追いかけるが、とてもとても追いつけそうもない。……かと思われたが、案外すぐに追いついた。ヒナは曲がり角を曲がったところすぐで立ち止まっていたのだ。

 

「どうしたのヒナちゃん……?」

 

アヤが声をかけると、ヒナの向こうからポケモンの鳴き声が聞こえてきた。彼女の後ろからのぞき込んでみると、そこには左目に古傷があるムックルが道のど真ん中でうずくまっている。

 

「大丈夫!?」

 

アヤが駆け寄り抱きかかえてよく見ると、そのムックルの左の翼の一部が赤くにじんでいる。翼をケガしてしまっているようだ。

 

「どうしよう……」

 

予想だにしない事態にアヤはあたふたと右往左往してばっかり。しかし、ヒナの方はいたって冷静だ。

 

「アヤちゃん、ムックル抱きかかえてて」

 

言われるがままにアヤはムックルを抱きかかえる。するとヒナは自分のバックから傷薬、さらにペットボトルに入った水を取り出した。

 

「えっと……、これをこうして……」

 

ヒナは傷口を水で洗い流した。その手早さにアヤは驚きだ。

 

「ヒナちゃん……、凄い慣れているね……」

 

「アハハ、傷口も浅いようだし、このくらい楽勝だよ。私もそれなりにトレーナー歴長いしね」

 

そう話しながらもヒナは傷薬をムックルに吹き付ける。それが終えるとムックルは痛みが和らいだのか顔をあげた。

 

「さぁ、もう大丈夫かな。元気でね」

 

アヤはムックルをそっと地面に置いた。しかしムックルは、もう傷も治ったはずなのに中々飛び立とうとしない。あっちに行ったりこっちに行ったりあたりをうろうろするばかりだ。

 

「そういえば前に聞いたことがある。ムックルって群れで行動するんだよ。もしかしてこのムックルは自分がいた群れとはぐれちゃったのかな?」

 

ヒナが思い出したことは、ムックルの様子を見ると正しいようだ。その証拠に、ムックルの鳴き声はどこか物悲しい。

 

「どうしようか……」

 

アヤは悩んだ。野生のポケモンだから、いっそのこと放っておくという選択もなくはない。はっきり言ってこの広い森の中でムックルの群れを見つけるのは至難の業だ。しかし、一人さみしく鳴き続けるムックルを放ったままでは良心が痛む。

 

 

 

 

 

 

 

悩んだ末、アヤ達は再びムックルを抱きかかえた。せめて森の中にいる間でもムックルが元居た群れを探すことにしたのだ。

 

「元居た群れが見つかるといいね」

 

「ムク!」

 

アヤが腕の中に微笑みかけると、ムックルも応える。実にほほえましい旅路であるが、肝心のムックルの群れは一向に見つからない。厳密にいえばムックルの群れ自体は時折見かけるのだが、アヤが保護した左目に傷があるムックルがいた群れがないのだ。こうして歩くこと2時間。そろそろ疲れてきたアヤとヒナは近くの木陰で腰を下ろすことにした。だが、キウの森には、そんなつもりはさらさらないようである。アヤが座ろうとした瞬間、待っていたかのように一匹のアリアドスが木の上から降ってきたのだ。

 

「キャァァァァ!」

 

悲鳴を上げ、ムックルを抱えたままアヤは走り出した。

 

「あ、アヤちゃん!?どこに行くの!?」

 

ヒナもおろしたばかりの荷物をまとめると、すぐさまアヤを追いかける。いつもとは立場が逆だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「追いついた~!」

 

アヤが火事場の馬鹿力を出したせいか、ヒナがアヤに追いつくのは予想以上に時間がかかった。しかもこの時二人は初めて気が付いた。走ることに夢中になるあまり、遊歩道から大きく外れてしまったのである。辺りにあるのは手つかずの大自然。整備された道はもちろん獣道すら全くなく、地面は倒木や岩で荒れ果てている。冷静になってみればよくこんなところ走ってこれたと思うレベルだ。さらに運が悪い事にすでに日も落ちかけている。

 

「う~ん、夜の森は危ないし、今日はここから動かないほうがいいね」

 

結局この日はヒナの判断でここで野宿することとなった。アヤとヒナは協力してテントを張り、自分達とポケモンのご飯を作りそれを食べたが、ムックルはずっと寂しそうな眼差しを空に向けていた。

 

「ムックル、もう寝ようよ」

 

寝る間際、アヤが声をかけてもムックルはその場を動こうとしない。見ればそばに置いたご飯にも手を付けてないようだ。しかし、その小さな体は夜の冷え込みに耐え切れず震えている。それを見たアヤはひょいっとムックルを抱え、テントの中に入った。

 

「そうだよね、仲間がいないと寂しいよね……。だから今日は私が仲間の代わりになってあげる。一緒に寝よ?」

 

アヤは寝袋の中に入ると手でムックルが入れるだけのスペースを作った。

 

「おいでよ」

 

優しい声をかけると、ムックルは恐る恐る寝袋に入る。しかし、その温かさに気が付くとすぐに穏やかな表情を見せ、そのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、アヤとヒナは遊歩道に戻るべく、道なき道を進んだ。もちろんムックルの群れを探すことも忘れなかったが、やはり中々見つからない。そしてとうとうアヤたちはキウの森の遊歩道に出てしまった。それも出口に極めて近い位置だ。本来なら喜ぶべきことなのだろうが、これはムックルとの別れを意味している。

 

「あ~あ……、結局ムックルを返してあげられなかったなぁ……」

 

アヤは落ち込み、近くの木陰に座ろうとした。だがここでまたアイツが現れた。

 

「リアー!」

なんと再びアリアドスが現れたのである。それも一匹ではない、三匹も振ってきた。

 

「ヒャッ……!」

 

恐怖のあまり言葉を失うアヤ。しかしアリアドスは敵意をむき出しにして一歩、また一歩とジワジワ攻めよってくる。

 

「あちゃ~、これじゃアヤちゃんは戦えないね。仕方ない、私が何とかしよっか」

 

見かねたヒナはテッカニンが入ったモンスターボールを手に取った。

 

「ムク!」

 

しかしその時、けたたましい鳴き声が森に響いた。見ればなんとムックルが、アヤの腕から飛び出しアリアドスに立ち向かおうとしているではないか。

 

「ムックル……」

 

確かにここでテッカニンを出してしまえば一瞬でアリアドスは撃退できる。しかし、それではムックルの気持ちを踏みにじってしまう。そう考えたヒナはそっとモンスタボールを下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ムク!」

 

一方のムックルはアリアドスに必死に翼を打ち付け果敢に挑むも多勢に無勢。ほとんどダメージも与えられずどんどん追い詰められていく。それを見たヒナは再びモンスタボールを構えた。だがその時、上空から幾多もの羽音と鳴き声が一つの塊となって現れた。ムックルの群れだ。

 

「リアー?」

 

アリアドスも異変に気が付く。だが、彼らが動き出す前に、その群れはアリアドスに押し掛けアリアドスを袋叩きにした。

 

「リアー!」

 

タイプ相性上不利なムックル、それも何十匹もの量に襲われたらひとたまりもない。アリアドスは反撃も許されぬまま、茂みの奥へ逃げていった。そこに残ったのはようやく落ち着きを取り戻したアヤとボールをしまうヒナ、左目に傷があるムックルとムックルの群れだけだ。

 

「ムク!」

 

「ムック!」

 

傷があるムックルはムックルの群れに覆われて嬉しそうな鳴き声を上げている。見たところこの群れが探していた群れのようだ。

 

「あーあ、あのムックル、なんだかるんって感じだからゲットしようと思ってたんだけどな~。群れが見つかっちゃったんなら仕方ないか」

 

「そうだねヒナちゃん。でもいいじゃん、ムックル嬉しそうだし。……じゃあね、ムックル」

 

アヤとヒナは僅かな間だがともに旅した仲間に手を振る。ムックルは元気よく鳴き声を上げると、仲間とともに飛びだっていった。

 

「さぁ、私たちも行こうかアヤちゃん」

 

それを見届けると、アヤとヒナもキウシティに向け歩き出した。しかしこの時アヤは全く気が付いてなかった。上空で頬を赤らめながら、熱い視線を送る例のムックルのことを。

 

「ムク……!」

 

どうやらアヤとともに過ごす中で、ムックルの中に恋心が生まれたようだ。だが、当のアヤはそれを知る由もないのであった。

 

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