バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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今回は展開の都合上長めです。すみません!


第十話 キウシティ解放戦

キウシティ側の3番道路は周りの山や地形が複雑に関係している気象条件により、常に雨が降り続いている。その為周囲のいたるところにはため池や湿地が形成されており、まさに水辺に生息するポケモンのパラダイスといえるだろう。アヤとヒナはキウの森から出るとレインコートを羽織り、この道を進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 3番道路を抜けた先にあるのは、いよいよ彼女たちの目的地であるキウシティだ。キウシティには科学技術の発展に力を入れるという方針があり、そのため画期的な優遇措置を講じて多種多様な研究施設を招いている。おかげでこの街は、民家を見つけるより研究所を見つける方が楽とまで言われるほど研究所が多い。またキウシティは、科学技術の発展とともに環境の保護にも力を入れており、その施策の第一歩として一昨年から街で使う電力をすべて水力や地熱、風力や太陽光といった自然エネルギーのみで賄うことにした。その先進性ゆえに全国的に注目を集めている街といっても過言ではなく、定期的にキウシティの中央ホールで行われる博覧会にはシンシューは勿論、カントーやジョウト、さらにはアローラやカロスからも人が集まるほどの賑わいを見せているほどだ。このようにシンシュー地方屈指の賑わいを見せるキウシティなのだが、アヤとヒナがこの街に着いたとき、この街の様子はどこかおかしかった。

 

「なんか……、ずいぶんと殺風景だね……」

 

アヤの目の前に広がる街は上記のような賑わいの欠片もない。人っ子一人見かけない風景はまるでゴーストタウンだ。と思った時である、近くの民家の窓がそっと空き、中からおじいちゃんが顔を覗かせた。

 

「そこの若いの、何をしている!今外に出るのは危ないぞ!」

 

小声ながらも厳しい口調である。何かが緊急な事態が起きていることだけは確かだ。

 

「おじいちゃん、この街で何が起きたの……?」

 

アヤが小声で聞き返す。すると彼は周りを伺いながらささやいた。

 

「今この街に大勢のリゲル団が来ている。標的はこの街で一番大きい、シラカバ博士の研究所らしいが、ガラの悪い下っ端や幹部に目をつけられたら何をされるかわからん。その上ジムリーダーもジョウト地方に帰省してしまっている。だからこうしてみんな隠れ——っておい!そこのお嬢ちゃん、どこへ行く!?」

 

おじいちゃんが不意に大声をあげた。驚いたアヤがふと見ると、隣にいたはずのヒナがいない。彼女はおじいちゃんの静止を無視して何処かへ走っていった。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!ヒナちゃん、どこ行くの!?」

 

気が付けばヒナの姿はずいぶんと小さい。このまま放っておくわけにもいかず、アヤも急いで追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アヤが追いついたとき、ヒナは植え込みの裏でしゃがんでいた。

 

「ヒナちゃ——」

 

だがアヤが声を掛けようとすると、ヒナは人差し指を鼻の前で立てた。アヤはそれを見てとっさに口を手で覆う。そしてヒナに手招きされ、植え込みの裏にしゃがみこんだ。

 

「そっと向こう側を見てみて」

 

ヒナに言われるままに、アヤは植え込みからゆっくりと顔を覗かせる。

 

「えっ!これって……」

 

そこには驚きの光景が広がっていた。正面に見えるシラカバ博士の研究所の前に、ハナノシティで出会った黒服の男たちと、同じ服を着た男や女が大勢たむろしているのだ。間違いない、リゲル団の下っ端である。

 

「ど、どうしよう……、ひ、ヒナちゃん……!」

 

背筋が凍るような光景のおかげで、思わずアヤの目に涙がたまる。だがヒナは不敵な笑身を浮かべながら呟いた。

 

「アヤちゃん、リゲル団を私たちで追い払おうよ」

 

「えっ!?今なんて……」

 

アヤは自分の耳を疑ったが、ヒナの顔は悪戯をたくらむ子供のようである。この様子からして聞き間違えではなさそうだ。

 

「やめようよヒナちゃん!ジムリーダーの人が来るまで私たちも隠れていようよ!ほら、前にマヤちゃんもリゲル団は危ないって言ってたじゃん!」

 

アヤは必死で首を横に振った。しかし、ヒナは全く聞く耳を持たない。それどころか、その目の輝きはまるでこの緊迫した場にそぐわないものである。

 

「悪い人から街を救うのって、なんだか正義のヒーローみたいできゅるるるるるるんってするじゃん!」

 

「えぇ……、そんな理由で……」

 

「とりあえず、今から私が裏口に回って、下っ端の注意を引き付けるからアヤちゃんはその間に正面から研究所に入って」

 

「げっ、わ、私も戦力なの!?」

 

「もちろんだよ。大丈夫大丈夫、見た感じ下っ端は大したことなさそうだからアヤちゃんでも勝てるよ。それじゃ、またあとでね。ばいば~い!」

 

ヒナはウインクを残し、ピクニックに行くかのような身軽さで何処かへ去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒナが去った後、アヤは植木の裏で震えていた。緊張のあまり体中に冷や汗が伝う。心臓もバクバクだ。一方そのころ、研究所の正面口からは一人の下っ端が走ってきて、正面口にいる下っ端たちに何やら騒いでいた。

 

「おい、お前ら!裏口の方へ急げ!テッカニンを連れた変な女が研究所に侵入してきたらしいぞ!」

 

「なんだいアンタ、女っていっても高々一人だろ?そのくらい適当に遊んでおけば泣いて帰るっしょ」

 

「そうだそうだ!俺たちリゲル団が恐れる相手ではないわ!」

 

「それがその女、ものすごく強いんだよ!むしろこっちが遊ばれている!」

 

「なんだよ、男のくせにだらしないなぁ~!仕方ない、加勢しに行くよ!」

 

暫くすると、急に目の前が静かになった。恐る恐る首を植木から出すと、そこにはもう人っ子一人いない。

 

「別に私はヒーローになんてならなくてもいいんだけどなぁ……」

 

だがここまで作戦が進んでしまえば後戻りはできない。渋々アヤもしっかりモンスタボールを握りしめ、植木から体を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お、お邪魔しまーす……」

 

様子を伺いながら、アヤは研究所の中に入った。研究所独特の空気と緊張した空気が混じり、内部は異質な雰囲気を醸し出している。アヤはそこを恐る恐る、物音を立てぬように進んだ。

 

「リゲル団と会いませんように、会いませんように……!」

 

しかし、その願いは儚くも散った。曲がり角を曲がったとき、彼女の目の前に男女のリゲル団員が現れたのだ!

 

「くそっ!こっちにも侵入者か!?」

 

「かまわない!やっちまいな!」

 

リゲル団の下っ端はアヤの姿を見るや否や、ポチエナとヤングースを繰り出す。藪から棒の事態にアヤの頭は真っ白だ。

 

「えっ……!ちょっと待ってよ!え、え~っと……、ナエトル、ラルトス!お願い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちくしょう!覚えていやがれ!」

 

数分後、アヤに負けたリゲル団員は捨て台詞を残して走り去っていった。この勢いに乗り、アヤはなんだかんだで、時折現れるリゲル団の下っ端に勝利し続けた。そして最上階に続く階段を守る下っ端を倒し、所長であるシラカバ博士の部屋にたどり着いたのだ。今まで倒した下っ端の話をまとめると、ここにシラカバ博士が監禁されているらしい。

 

「それっ!」

 

アヤは大きく深呼吸をし、一思いに扉を開く。同時に中にいるリゲル団の視線が一斉に突き刺さってきたとは言うまでもない。

 

「なんだお前は?」

 

すると下っ端とは異なり白い服を着た、一段と人相の悪いリゲル団員がアヤに詰め寄ってきた。

 

「俺たちはなぁ、大人同士の話し合いをしているんだよ!ガキは引っ込んでママのお手伝いでもしてな!」

 

彼は近くにあったゴミ箱はを蹴り飛ばし、アヤを威嚇。当然アヤは驚いたが、彼女は同時に見てしまった。奥の方でリゲル団員に囲まれて震えているシラカバ博士と思われる白衣の男を。それにあの様子はどう見ても話し合いをしているようには見えない。間違いなく恐喝やその類だ。これを目にしてしまってはアヤも引き下がるわけにはいかない。あふれ出そうな涙をこらえ必死に叫んだ。

 

「や、止めてよ!そんな乱暴なことどうしてするの!?その……、あのおじさん怖がっているじゃん!」

 

「あぁん?」

 

白い服を着たリゲル団員の顔に『怒り』の二文字が浮かぶ。アヤが涙をこらえるのもそろそろ限界だ。しかしリゲル団員はそれを知ってか知らずか、ポケットからモンスターボールを取り出していた。

 

「リゲル団幹部であるこの俺にケンカを売るとはいい度胸だ。そのケンカ、喜んで買ってやるよ!行け、ギギアル!」

 

「ギギギギ!」

 

彼が繰り出したのはギギアル。ギアのようなパーツが組み合わさったポケモンだ。

 

「行け、カブト!」

 

対するアヤが繰り出したのは最近仲間にしたばっかりのカブト。だがカブトを出した瞬間、アヤの視界は真っ暗になった。理由は簡単、ボールから出るや否やカブトがアヤの顔面に跳びついてきたからだ。

 

「んーっ!カブト、離れて、離れて!」

 

アヤは力づくにカブトを顔から引き離すと床に置く。しかしその時、すでに相手のギギアルは攻撃に移っている最中だった。

 

「ギギアル、電撃波!」

 

ギギアルから電撃が放たれる。アヤもカブトのマッドショットで迎え撃つが、電撃波の威力を相殺できただけだった。ギギギアルは鋼タイプ、対するマッドショットは鋼タイプに強い地面タイプ。辛うじて覚えつつあるタイプ相性をもとにして出した指示ではあるのだが、馬鹿みたいに正面から挑んでは無意味であった。ポケモンバトルとは一筋縄ではいかないとアヤ痛感せざるをえない。だがその間にリゲル団幹部は攻撃の手を弱めようとしなかった。

 

「ギギアル、ギアソーサー!」

 

ギギアルのギアの回転数が上がり、カブトに襲い掛かる。

 

「カブト、かわして岩石封じ!」

 

「カブ!」

 

アヤは次の作戦に移った。カブトは指示と同時に飛びのき、岩をギギアルの上に落とす。マヤから受け継いだこの技は見事ギギアルに命中。ダメージは大したことないが、そのスピードは僅かに落ちている。しかし興奮しているせいか、リゲル団幹部はそのことに気が付かない。

 

「へっ、そんなカスみたいな技効くかよ!ギギアル、電撃波!」

 

ギギアルから再び電撃が放たれる。しかし、その瞬間アヤは勝利を確信した。

 

「カブト、床にマッドショット!」

 

カブトが床にマッドショットを撃つと、その反動でカブトは壁の方へ飛ばされる。だが、これも作戦通りだ。

 

「壁を蹴ってギギアルの上に!そしたら連続でマッドショット!」

 

カブトは小さな足で壁を蹴る。マッドショットの勢いを活かし、天井すれすれまで飛び上がった。

 

「カーブーッ!」

 

そしてそこで繰り出されるマッドショット。岩石封じの効果で素早さが低下しているギギアルは回避することもままならず、死角からの一撃を前にあっけなく地面に落ちた。

 

「……よし、これで私たちの勝ちだね。ありがとうカブト」

 

アヤはカブトをボールに戻した。そして彼女のキャラに似合わぬ険しい表情を受かべながらリゲル団幹部に一歩ずつ詰め寄った。

 

「さぁ、私たちの勝ちだよ。シラカバ博士を解放して!」

 

ポケモンバトルに勝ったこともあり、アヤは強気だ。

 

「まっ……、待ってくれ。すまない……許してくれ……。俺はリーダーの言うとおりにしてきただけなんだ。俺もイヤだったのだがしかたなかったんだ。なっ……だから、たっ……助けてくれ……!何でも言うことを聞く!ほら……このとおりだ……」

 

対する幹部はさっきまでの勢いはどこへやら、顔が真っ青だ。両手を上げ、情けなく叫び続けた。そのみじめな姿に思わずアヤの勢いが弱まるほどである。だがその瞬間、幹部の顔に狡猾さが舞い戻ってきた。

 

「と……、油断させといて……。馬鹿め……死ね!」

 

一瞬のスキをつき、ポケットから第二のモンスターボールを取り出す。その不意打ちにアヤの動きが固まった。すかさず幹部はモンスターボールを投げようとする。だがその直前、入り口の方に強大な気配が現れた。

 

「こんなところで何をしているのかしら?」

 

それは落ち着いた少女の声だ。その声が発せられると同時に、幹部が硬直する。ただ者ではないそのオーラに釣られ、アヤも後ろを振り向いた。

 

「えっ、ヒ……」

 

その顔を見たとき、アヤは思わずヒナの名を口にしかける。だが、それはすぐに喉の奥へ押し戻された。確かに顔つきや髪色はヒナと瓜二つである。しかし、その少女の髪はヒナに比べ長く、なりよりその目つきは氷のように冷たい。

 

「私の部下が無礼を働いたこと、心からお詫びするわ」

 

彼女はアヤに一礼するとそのまま幹部に冷めた視線を突き刺す。そして彼のもとに、惚れ惚れしてしまうようなきれいな姿勢で歩み寄った。

 

「シラカバ博士の説得にずいぶんと時間がかかっているから様子を見に来てみれば、なんて様なのかしら?」

 

「ひっ……!お、お許しください!」

 

幹部がその場に崩れ落ちる。だがその少女はさらなる追い打ちをかけた。

 

「謝る必要なんてないわ。もう貴方はリゲル団ではありませんから」

 

「そ、そんな!どうして!?」

 

「負けを負けと潔く認めず、卑怯な真似をする無能な奴はリゲル団にはいらない。ただそれだけです」

 

いたって静且つ冷静な言葉遣いだ。傍らで聞いているアヤですら、その言葉からは怒り——、いや、怒りを通り越した失望が伝わってくる。だが気が付けば、その視線はアヤ自身に向かっているではないか。

 

「貴女、名前は?」

 

「あ、アヤです……!」

 

ふいに名前を聞かれ思わず声が裏返る。しかしその少女は全く意に介すことなく言葉をつづった。

 

「私の名前はサヨ。この世に完全なる平等な世界を造るために活動している『リゲル団』のリーダーよ」

 

「平等な世界……?」

 

平等な世界といわれてもさっぱりだ。アヤは無意識に首をかしげる。するとサヨが再び口を開いた。

 

「いいかしら、この世には『才能を持つ人間』と『才能を持たざる人間』——言い換えるのなら天才と凡人の二種類の人間がいる。でも皮肉なことに、この世で望むものを求め、幸福を手にする権利を持つのは一握りの天才だけ。対する凡人は決して天才に追いつけず、彼らに見下されることを強いられる……。だから私たちはこの不平等な世の中を変えなければならない、この腐りきった世界を、何もかもすべて!」

 

「……」

 

言葉を失うアヤ。と、その時サヨがアヤの方に手を差し伸べてきた。

 

「見たところ、あなたは希望には満ち溢れているのだけれども、所詮は多くの人間と同じく凡人と呼ばれる人間なんでしょう。どうでしょうか、私の新しい部下になる気はありませんか?私とあなたならきっと世界を変えられるは——」

 

「いやだよ!私は人を困らせるためにポケモントレーナーになったんじゃないもん!」

 

アヤの渾身の叫びだ。しかしサヨは相変わらず冷静である。

 

「……いいでしょう、貴女のその考えは尊重しましょう。ですが、くれぐれも私たちの邪魔だけはしないでくださいね。一瞬でも邪魔になるようなことをしたら、容赦はしないわよ」

 

それだけを言い残すとサヨは周りのリゲル団員を集め、何処かへ立ち去って行った。残されたのはシラカバ博士とアヤだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん!リゲル団員と遊んでいるのが楽しくて遅くなっちゃった!」

 

暫くすると、この重い空気を破るような明るい声が部屋に響いた。ヒナがようやくアヤの追いつてきたのである。

 

「なんとか大丈夫だけど……」

 

アヤは今度こそヒナの顔を見ると、どっとその場に座り込んだ。後ろ目でシラカバ博士を見ると、彼は白衣を払いながらもよろよろと起き上がっている。大したケガもなさそうで何よりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやぁ、すまなかった。まったくリゲル団ときたらやることなすことが無茶苦茶なんだから。ワシの科学技術は悪事のためにあるわけではないのに……。いやはや、二人には本当に助かったぞ」

 

数分後、元気を取り戻したシラカバ博士はアヤとヒナを前に笑顔を浮かべると、奥の小部屋に入り、二つの小さな箱を持ってきた。

 

「これはわしらの研究所が開発した最新式のポケモン図鑑。といってもただのポケモン図鑑ではないぞ。電話にメールに写真、その他多くの機能が付いた図鑑だ。図鑑のデータは過去の機種から引き継げるし、電話やメールも現行機種ならどれとでも通信できる優れモノだぞ。本当は来週販売する予定なんだが君たちは命の恩人だ。よかったらこれを持て行ってくれ」

 

アヤとヒナの手に最新式の図鑑が渡る。ぱっと見は黒い手のひらサイズのタッチパネルだが、ひとたびタップすると摩訶不思議。博士が言う通り、いやそれ以上の機能が備わっている。さらに図鑑を起動させれば登録したポケモンがホログラムとして浮き上がる仕組みにもなっている。もう感動の一言だ。

 

「ありがとうございます、シラカバ博士!」

 

「ありがとう!」

 

二人はシラカバ博士に笑顔を見せた。そしてしばらくお茶をごちそうになったあと、その部屋を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

博士の部屋から出口までは意外と遠い。その間研究所内にはアヤとヒナの楽しそうな声が響いたのであった。

 

「博士の話にはびっくりだよ。アヤちゃん、幹部の人どころかリーダーの人も追い払うなんて!」

 

「いや、確かに幹部の人は倒したけど、リーダーの人は自分で立ち去っただけだよ」

 

アヤは恥ずかしそうに笑う。

 

「ねぇ、アヤちゃんリーダーの人ってどんな人だったの?怖かった?」

 

「あれ、ヒナちゃん会わなかったの?」

 

「なんだか私、すれ違っちゃって会えなかったみたいなんだよね~」

 

だがヒナの質問は止まらない。輝く視線をどんどんアヤに送ってくる。

 

「えっとね……、リーダーの人はね……」

 

だがこの時アヤは確かな胸騒ぎを覚えた。ここでサヨのことをしゃべってはいけない。どこにも根拠はないが、直感的に感じたのだ。

 

「えっと…、結構普通の人だったよ」

 

アヤは言葉を濁した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩くとアヤとヒナはようやく研究所から出ることができた。しかし二人の足はそこで止まった。彼女たちの目の前に、物静かな少女が歩いてきていたのだ。

 

「あ……、貴女たちは……?リゲル団ではなさそうですけど……?」

 

彼女は二人の前に来ると首を傾げた。その声はたどたどしいが、聞いていて心地が良い優しい声だ。

 

「リゲル団?リゲル団ならさっき、アヤちゃんが倒したよ」

 

ヒナが威勢よく答えた。謎の少女の声を聴いた後であるのが原因なのか、その声はいつも以上に活きが良く聞こえる。

 

「そうだったんですか……。私の名前はリンコ……。ここの近くをたまたま通りかかった時……、この街でリゲル団が暴れていると聞いたから……駆け付けたんですけど……。その必要はなかったみたいですね……」

 

リンコがホッと胸をなでおろす、すると、突然アヤが叫んだ。

 

「あれっ……?リンコ……、リンコさんってもしかしてあの有名なピアニストの……!?」

 

「あ……、私のこと知っていたんですか……?」

 

「はい!お母さんが大ファンで、リンコさんのCDも家にありますよ!私もお母さんと一緒にテレビでよく見ます!」

 

「ふふふ……、ありがとうございます……」

 

リンコが穏やかな笑顔を見せる。そして彼女はカバンの中を探り、とあるディスクなようなものを取り出した。

 

「えっと……、アヤさんでしたっけ……?あの……、リゲル団を追い払ってくれたお礼と……、いつも応援してくれているお礼を兼ねて……この技マシンをあげます……。中に入っているのは……『シャドーボール』……。私のお気に入りの技なんですよ……」

 

「えっ、そんな大切なものをもらってもいいんですか……?」

 

「はい……。私はもう使う機会もすくないですから……。アヤさんが使った方が……有効に活用できるはずです……」

 

「そうですか。それじゃぁ、ありがたく使わせてもらいます」

 

アヤは技マシンを受け取るとバックにしまった。その間リンコはどういうわけか嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「あなたのその純粋な目……、きっとポケモンも……、大切にしているんでしょうね……。アヤさん、そしてもう一人の名前は……」

 

「ヒナだよ。よろしくね」

 

「ヒナさんというんですね……」

 

リンコはヒナと握手を交わすとカバンの中からボールをだし、サザンドラを出した。

 

「アヤさん……、ヒナさん……。あなた達ならきっと強くなれる……、そんな気がします……。またどこかで会いましょうね……」

 

リンコはサザンドラにまたがると、アヤとヒナに見送られ大空へと飛びだっていった。

 

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