バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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いろいろジタバタしてたり、寝落ちしたりしていて投稿が遅れてしまいました!というわけで13話目です。


第十三話 バシッてしてズガガーン!

突然だが、アヤは道端の大人のお姉さんにポケモンバトルを挑まれていた。相手が繰り出しているのはオドシシ。そしてアヤが繰り出したのはナエトル——ではなくハヤシガメ。そう、何を隠そうアヤのナエトルは4番道路でバトルを繰り返している間に見事進化を果たしたのである。が、これがトリガーとなってなにやらトラブルが起きているようだ。

 

「ハヤシガメ、攻撃をかわして!」

 

「ヤシー!」

 

バトルが始まって早々に、ハヤシガメはアヤの指示通り回避しようとする。が、体が上手く動かず、オドシシの攻撃をもろに浴びてしまった。

 

「まただ……!どうしよう……」

 

さっきから何度かバトルをこなしているが、ずっとこんなことの繰り返しだ。アヤはいつものように華麗にハヤシガメを動かし、相手を翻弄しようとするが一度として成功しない。結局このバトルはハヤシガメを引っ込め、カブトを繰り出して勝利したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……、私達どうしたんだろう……」

 

「ハヤ……」

 

バトルが終わった後、アヤとハヤシガメは道の端でため息をついた。目をつむれば、今までこなしてきた華々しいバトルが瞳に映る。そして皮肉なことに、その記憶は今のアヤとハヤシガメを苦しめるのだ。

 

「おかしいな……、ナエトルの時と全く同じ指示を出しているんだけどな……」

 

「ヤシ……」

 

二人は再びため息をつく。するとアヤを見かねたのか、彼女のそばにヒナがやってきた。

 

「アヤちゃん、ハヤシガメを抱えてみてよ」

 

「えっ、どうして……?」

 

「いいから早く」

 

「わかったよ……」

 

怪訝に思いながらも、アヤはヒナに言われた通りハヤシガメを持ち上げようとする。だが、ハヤシガメに手をかけた途端、彼女の手に鉛のような重量感が伝わってきた。どれだけ力を入れても持ち上がらない。たまらず手を放し、ヒナに助けを求めるが、ヒナはたった一言言っただけだ。

 

「ね。つまり、そういうことだよ」

 

「そういうことって……、どういうことなの!?」

 

「今アヤちゃんも感じたと思うけど、ハヤシガメはナエトルよりも何倍もズシンとくるんだよ。それなのに前と全く同じ戦法で戦おうっていうほうが無理があると思わない?」

 

「つまり、体重が重くなったんだから、それ用に戦い方を変えた方がいいってこと?」

 

「そういうこと」

 

ぐうの音も出ないほどの正論だ。しかし、急に今までとは違う戦いをしろと言われても無理がある。

 

「ヒナちゃんは体重が重いポケモンをどうやって戦わせるの?」

 

藁にも縋る想いでアヤはヒナに言葉を掛ける。

 

「私?私はその時ビビッてきた方法を試せば大体バシュンってなるから分かんないや」

 

だが答えとして返ってきたのは、いつも通りちんぷんかんぷんな単語の羅列だ。

 

「全然アドバイスになってないし、そもそも言っている意味もわかんないよ~!」

 

ついにアヤはハヤシガメの隣でしゃがみこんだ。あたりに暗い空気が広がりだす。すると、そんな彼女を覆いかぶさる影があらわれた。ヒナのラグラージだ。

 

「なに……?」

 

ラグラージは、何かを伝えたそうにじっとアヤの目を見つめている。

 

「ラーグ」

 

ラグラージは後ろを振り向き、手を招くようなそぶりを見せた。こっちにこいとでも言っているようだ。

 

「ラグラージ、どうしたんだろう?」

 

アヤはヒナとハヤシガメとともにラグラージを追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラグラージ連れていかれた場所は4番道路脇の鍾乳洞である。内部は水流や陸地、岩が複雑に組み合わせっており、まるで迷路。現在こそ観光地や、ポケモントレーナー修行の地としてある程度整備されているが、その昔はその複雑な地形に迷い、帰れなくなる人が続出したそうだ。このことに由来し、この鍾乳洞は帰らずの地下水脈という名前が付けられている。

 

「ラグ」

 

「ヤシ……?」

 

「ラーグ」

 

「ヤシ……?」

 

「ラグ!」

 

洞窟の奥に行くとラグラージはハヤシガメと何かを話し出した。と、次の瞬間思いもよらぬことが起きた。なんとラグラージは、いきなり近くの岩をハヤシガメに向かって投げつけたのだ。

 

「えっ、ちょっと!ケンカはだめだよ!」

 

まさかの事態にアヤは止めに入ろうとする。だがヒナはスッと手でそれを遮った。

 

「まってアヤちゃん。多分これはケンカじゃないよ。勘だけど、ラグラージはハヤシガメに訓練しているんじゃないかな」

 

「訓練……?」

 

「うん、ラグラージもどっちかというと、ハヤシガメと同じズシンって感じのポケモンじゃん。だからズシンって感じのポケモンならではの戦い方を知っているんじゃないかな」

 

「それじゃぁこれは何の訓練なの……?」

 

アヤが困惑している最中も、ラグラージはひっきりなしに岩を投げ続ける。ハヤシガメは顔を青くしながらそれから逃げ惑うだけ。しかも重い体が足かせになって、かなりぎこちないよけ方だ。アヤにはとてもとても訓練には見えない。

 

「もうだめ!見てられない!」

 

いてもたってもいられず、アヤは再び飛び出そうとする。だがその時、ヒナが手を打った。

 

「はは~ん、そういうことか。アヤちゃん、ラグラージはきっとハヤシガメに攻撃を受け止める訓練をさせているんだよ」

 

「えっ……」

 

「そう。これを見てたら、ラグラージでバトルするときは無理に攻撃をかわさないで、攻撃をバシって受け止めてから重い一撃をズガガーンって反撃することが多いなって思い出したんだ」

 

「受けてから反撃……?」

 

「そう、バシッてしてズガガーン!これが重いポケモンの戦い方かな」

 

相変わらず擬音が多いが何となく意味は分かった。あとはこれをどう料理するか……。それはアヤの腕にかかっている。

 

「ラグラージ、ちょっと待って!」

 

アヤが叫ぶとラグラージの動きが止まる。すると彼女はすかさずハヤシガメのそばに駆け寄った。

 

「ヤシ……」

 

ハヤシガメは目に涙を浮かべている。そんなハヤシガメの頭にアヤはそっと右手をのっけた。

 

「大丈夫だよ、ハヤシガメ。一人じゃないから。私と一緒にがんばろ」

 

アヤがほほ笑むと、ハヤシガメの目に再び闘志が宿る。二人はそろってラグラージの方を向いた。

 

「ラグラージ、もう一度お願い!」

 

アヤの言葉にラグラージは無言でうなずくと、訓練は再開された。怒涛の如く岩が飛び交い、何度も何度もハヤシガメは岩翻弄され続けた。だが、アヤもハヤシガメも決して諦めることはなかった。傷薬を利用しながらも何度でも立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は立ち、ラグラージの手から103発目の岩が投げられた。

 

「ハヤシガメ!」

 

「ヤシ……!」

 

アヤの応援を受け、ハヤシガメは岩をじっと睨み、足を踏ん張る。これはアヤとともに試行錯誤の末編み出した構えだ。そしてその直後、岩がハヤシガメを直撃。だがハヤシガメはその場に踏みとどまっていた。防御の構えの完成だ。

 

「やった!ハヤシガメ!」

 

その瞬間、アヤはハヤシガメに跳びついた。

 

「いや~、ここまで訓練が長引くとは思わなかったよ。新しい戦い方を覚えるって大変なんだね。ま、それはさておきお疲れ、ラグラージ」

 

「ラーグ」

 

その傍らでヒナもラグラージの頭をなでる。しかし、そんな平穏な光景を乱すかのように、彼女たちのもとに不穏な影が近寄ってきた。

 

「たっく、俺としたことがこんなところで迷うとは……!早くしないと作戦に遅れちまう!」

 

入り口の方から随分と苛立った男の声が近寄ってくる。それもかなり近い。

 

「そこにいるのは誰!?」

 

すかさずアヤが声がする方にライトを向ける。

 

「なんだ!まぶしいじゃねえか!」

 

明かりの中から怒鳴り声が聞こえ、荒々しい足ふみが水たまりをまき散らす。アヤの目の前に現れたのは、リゲル団の下っ端である。

 

「おめぇか?俺に向かって明かりを向けたのは!?」

 

「あの……、ごめんなさい……!」

 

今にも襲い掛かってきそうなリゲル団員に必死に謝るアヤ。ところがその言葉は逆にリゲル団員の神経を逆なでしてしまったようだ。

 

「ごめんで済めばジュンサーはいらねぇんだよ!あー、道に迷うし変な女にライトを当てられるし今日は散々な日だ!こうなったら腹いせに、お前らをボコボコにしてやる!まずはそこのピンク髪のヤツからだ!」

 

間髪入れずに彼はズルッグをボールから繰り出した。こうなったらアヤも退けない。

 

「ハヤシガメ、いける?」

 

「ヤシ!」

 

アヤもあらかじめ場に出ているハヤシガメで立ち向かった。

 

「ハヤシガメ、体当たり!」

 

「ズルッグ、頭突き!」

 

ハヤシガメとズルッグは中央地点で激突。衝撃はほぼ互角だ。

 

「ズルッグ、そのままけたぐり!」

 

「ズールッグ!」

 

だがズルッグはそれにもかかわらず、すぐに反撃に移る。

 

「ハヤシガメ、かわ……」

 

アヤの口から思わず回避の指示が出そうになる。だが、もう目の前にいるポケモンはナエトルではなくハヤシガメ。ポケモンの特徴によって戦い方を変えなければならないということは今日一日で嫌というほど学んだ。

 

「ハヤシガメ、その場で攻撃を受けて!」

 

「ヤシ!」

 

アヤの声とともにハヤシガメは足を踏ん張り、ズルッグのけたぐりを受け止める。その瞬間、攻撃の反動でズルッグにわずかなスキが生じた。

 

(よし……、バシッてうけとめたら次はズガガーン……!)

 

アヤはそのスキを逃さなかった。

 

「今だ、葉っぱカッター!」

 

次の瞬間、大量の葉っぱがハヤシガメから放たれ、ズルッグ宙に舞いあげる。

 

「続けて体当たり!」

 

さらに、ハヤシガメは地面に叩きつけられた直後のズルッグを体当たりで跳ね跳ば

した。回避もままならず、直撃を避けられなかったズルッグは再び地面に叩きつけられると目を回し倒れてしまった。

 

「チキショー!今日は最悪の日だ!」

 

それを見たリゲル団員はズルッグをボールに戻すと、色々とわめきながらまた入り口の方へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 こうして新たな戦法を身に着け、リゲル団員も撃退したアヤとヒナは帰らずの地下水脈から出て、4番道路をさらに北上。そしてようやくムラサメ湖のほとりにたどり着いたのである。

 

「うわー!すごい、すごいよアヤちゃん!この景色キラキラーってしてて、とってもるんってしちゃうね!」

 

ほとりに着いた瞬間、ヒナが子どものようにはしゃぎだした。しかし、これは無理もないだろう。二人の目の前ではムラサメ湖が夕日に照らされオレンジ色に染まり、幻想的な風景を編み出しているのだ。

 

「ほんとだ!きれい……」

 

アヤもその光景に見とれて、その場から動けないでいた。耳をすませば遠くから様々なポケモンの鳴き声が聞こえ、目を凝らせば遠くの方に島が湖というステージに浮いている。実はこの島こそ、彼女たちが目指している『ムラサメシティ』であるのだが、そこへ行くための遊覧船は今日はもう運航していないようだ。そこで二人は近くの民宿に一泊することにした。明日はいよいよ新しい街に上陸である。

 

 

 

 

 

 

 

 

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