バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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ムラサメシティのBGMのイメージはルネシティ。

あとこの世界のポケモン図鑑はスマホみたいなものだと思ってください。





第十四話 ムラサメシティ~水面に浮かぶ水上都市~

ムラサメシティはムラサメ湖の中央部の島を中心に栄える街だ。白を基調とした街並みは非常に湖や青空の青とマッチし、非常に美しい。おかげで街を一通り歩くだけでもちょっとした観光になる。だが、この街の目玉といえばやはり『ムラサメ水族館』だろう。ここではシンシュー地方に生息する水辺のポケモンは勿論、なんとシンシュー地方では珍しい海に生息するポケモンまで多種多様なポケモンが展示されているのだ。

 

「さぁて!とりあえずムラサメ水族館にしゅっぱーつ!」

 

遊覧船でこの街にきたヒナは、船から降りるや否や水族館に向けて走り出した。

 

「あっ、ちょっと待ってよ!おいてかないでよ!」

 

アヤはいつもどおりその後ろを、慌てて追いかけていく。ところが、その途中でアヤは妙なものを発見した。道端の台に小さな金属が山積みになっているのだ。彼女はヒナを呼び戻し、二人でそれを調べた。

 

「えっ、どういうことなの……?」

 

その金属をよく見たとき、アヤから変な声が漏れた。なんとその正体は、大量のジムバッジだったのだ。山積みのジムバッジに気をとられ、全く気が付かなかったがここはムラサメシティジムだったらしい。

 

「何これ、なんか書いてある」

 

その時、ヒナがジムバッジが大量に乗せられている台座に紙が貼ってあることに気が付いた。読んでみると、消えそうなほど弱々しい文字で『ご自由にお持ちください。ムラサメシティジムリーダーより』と書かれている。

 

「ご自由にお持ちくださいって、観光地のパンフレットじゃないんだし……。ねぇヒナちゃん、こういうジムって他にもあるの……?というよりか、こういう渡し方ってありなの……?」

 

「ジムバッジは基本的にジムリーダーに勝った人に渡されることが多いんだけど、ジムリーダーの規定では『ジムバッジを渡す基準はジムリーダーの裁量次第』っていうことになっているんだ。だからこういう渡し方も違反ではないんだけど……。こんな適当な渡し方は初めてだな。ジムリーダーに何かあったのかな?ちょっと中を見てみようよ」

 

ヒナはそう言うとアヤが止める間もなくジムの中に入っていく。それを見たアヤも、仕方なくジムの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじゃましまーす」

 

「しまーす……」

 

ヒナとアヤはジムの中に入った。中は無人だが、バトルフィールドに通ずる扉から音が聞こえる。今まさに、ジム戦の真っ最中のようだ。

 

「よーし、開いてみるよ」

 

ヒナは小声でささやき、僅かにその扉を開く。僅かな隙間からは、足場がまばらに浮いていおり、プールのように水が張られたフィールドが見える。そこではジムリーダーと思われる水色髪の少女が、ジム戦を行っていたが明らかに様子がおかしい。遠目から見てもわかるほど足が震えているし、指示も『ふぇぇ』とか『ひゃあっ!』とかまともなものがない。もはやただの悲鳴だ。その証拠に彼女が繰り出しているポッタイシは、チャレンジャーのヤトウモリ相手に一方的に押され続けあっという間に気絶してしまった。

 

「うそ……」

 

新人のアヤですら言葉を失ってしまう。しかし、そんなさなか扉の方にチャレンジャーが歩いてくるのが見えた。

 

「いけない!隠れないと!」

 

ジムリーダーに無許可でジムに立ち入っている時点でアヤとヒナはすでに不審者だ。二人は大慌てで近くのソファーの裏に転がり込んだ。

 

「……」

 

アヤがソファーの裏からそっと首を出すと、チャレンジャーの少年が複雑そうな表情でジムバッジを手にしてジムから出ていく光景が見え、さらに間もなく入り口の近くにジムリーダーと、金髪の少女が姿を現した。二人は完全にジムから脱出するタイミングを失った。

 

「ふえっくしょい!」

 

さらに追い打ちをかけるようにヒナのクシャミがさく裂。

 

「ん……、誰かそこにいるの!?」

 

金髪の少女がモンスターボールを手にし、こちらを睨んだ。こうなってはもはや隠れている意味はない。アヤとヒナは両手をあげながらソファーの裏から出たが、その瞬間から強い殺気が彼女たちを貫いた。そのせいでアヤは呂律がうまく回らない。おかげで彼女に対する疑いの目はより強くなるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり、ジムバッジが山積みになっていることが気になって様子を見に来たってこと?」

 

「その通りです……。ごめんなさい……」

 

その後、アヤはヒナの手を借りながらもなんとかその少女に謝った。すると金髪の少女が、先ほどまでの殺気が嘘と感じるほど穏やかな顔を見せた。

 

「そう、どうやら悪い人たちではなさそうね。疑ってごめんなさい。なにしろ最近、ムラサメシティで怪しい集団が相次いで目撃されているので……。あなた達、名前はなんていうの?」

 

「私はアヤです」

 

「ヒナだよ、よっろしく~!」

 

「アヤちゃんとヒナちゃんっていうのね。私の名前はチサト。3か月ほど前までこのムラサメシティでジムリーダーをしていた者よ。それでこっちにいるのが私の親友で——」

 

「か、カノンって言います……。一応今のムラサメシティジムのジムリーダーです……」

 

カノンと名乗る少女の声はうっかりしていると消えてなくなってしまいそうなほど弱々しいものだ。聞きたいことは山ほどあるが、とてもとてもそんな雰囲気ではない。

 

「へぇ、カノンちゃんっていうんだ!それじゃぁ聞きたいことがあるんだけど、どうしてジムバッジを山積みしてあるの?もしかして、自分が弱いからやる気をなくしちゃったの?」

 

ところが、ここでまるで止めを刺すかのようにヒナの言葉がカノンに突き刺さった。アヤの顔から血の気が引き、チサトが驚き、カノンの口からため息が漏れたのは言うまでもない。

 

「そうだよ……、二人ともさっき、私のバトル見てたよね……?バトルの途中から、フィールドの扉が少し空いていたこと、私知っているよ……。あれを見れば納得できるでしょ……?」

 

自暴自棄気味に、カノンは再びため息をついた。気のせいかどんどん場の空気が重くなっている。

 

「そ、そんなことないですよ!えっと……、ほら……、さっきのバトル……あんな凄いバトルできるの、カノンさんだけですよ……!私もああいうバトルできたらいいなぁ~!えへへ……」

 

アヤは必死にカノンをフォローしようとしたが、なんだかカノンに対する皮肉にしか聞こえない。

 

「そう……、いい反面教師なったんだったら嬉しいよ……。はぁ……」

 

カノンはさっきに増して肩を落としている。もうアヤの手に負える状況ではない。

 

「あ、あの……!とりあえず、頑張ってください!あと……、ご、ごめんなさい!」

 

アヤは慌ただしく頭を下げると、ヒナの手を引っ張り逃げるようにジムから飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後二人はお目当ての水族館を堪能し、近くにあった広く、ムラサメ湖沿いの公園に向かった。ここに来た目的はジム戦に向けたバトルの練習だ。

 

「アヤちゃんファイト~!」

 

「クマッシュン!」

 

ヒナがアヤに声援を送る。クマシュンもヒナに抱えられながら手を振る。今日はポリゴンZとテッカニンに吊るされた的を正確に当てる練習だ。

 

「カブト!出てきて!」

 

「カーブ!」

 

テッカニンとポリゴンZの準備が終わるとアヤはカブトを繰り出した。が、それと同時にアヤの視界が失われた。理由は簡単、カブトがアヤの顔面に跳びついてきたからだ。

 

「んー!カブト、離れて、お願い!」

 

アヤは力づくにカブトを引き離し、そっと地面に置いた。気を取り直し、練習開始である。

 

「いけ!カブト、連続でマッドショット!」

 

カブトから泥の塊がいくつか放たれ、テッカニンとポリゴンZに迫る。しかし二匹は寸のところでそれをよける。当然吊るされた的には当たらない。

 

「アヤちゃん、闇雲に撃っても当たらないよ!動きをよく見て!」

 

「わかった……!」

 

アヤは大きく深呼吸をし、ヒナに言われた通りポリゴンZとテッカニンの方をじっと見つめた。

 

(えっと、テッカニンとポリゴンZの動きは……。早くて分かんないよ~)

 

結局アヤは動きを見切れないまま、一か八かで再びマッドショットを発射させる。しかし、その攻撃はポリゴンZもテッカニンもあたらない。

 

「あー、やっぱり外れたか……。うーん、でも諦めたらここで終わりだよね……。よし、もう一回!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 この調子でアヤはカブトにマッドショットを放たせ続けた。それは、はたから見れば何の変哲もないトレーナーの練習風景である。しかし、遠巻きではあるものの、それをあえてじっと見ている者がいた。サングラスをかけ、帽子を深くかぶっているがその者の正体は明らかにチサトである。

 

「アヤちゃんとヒナちゃんって言ったかしら……?随分と表情豊かに練習するのね。なんだか昔のカノンを思い出すわ。いつか、あの()のバトルも見てみたいものね」

 

チサトはそう呟くと、カフェで買ったコーヒーを喉に流すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、チサトとカノンはムラサメシティの少しお高いレストランでディナーをとった。カノンはジムリーダーとムラサメ水族館の飼育員、チサトはシンシュー地方屈指の人気女優という顔を持つため二人とも忙しく、中々二人きりでゆっくりできる機会は少ない。その為、いつも二人で会うときにはとても和やかにそのひと時を楽しむのだが、今日は中々重い雰囲気が二人の周りに漂っていた。

 

「カノン、調子はどう?」

 

「全然ダメ。練習試合では上手くいくんだけど、ジムのフィールドに立つと頭が真っ白になっちゃって……」

 

「そう、まだジムリーダーのプレッシャーに勝てないのね」

 

「そうみたい……。ジム戦で一回も勝ったことないもん。私とジム戦をするだけ無駄だと思う。それなのに、どうしてみんな私にチャレンジしに来るんだろう……。ジムバッジは自由にとっていっていいって言っているのに……」

 

「それはみんな、ポケモントレーナーとしてのプライドがあるのよ。まともなトレーナーなら、その辺に山積みになっている、ジムバッジを手にしても喜ばないもの。ポケモンとトレーナーが力を合わせて手に入れるからこそ、ジムバッジは意味があるものだと私は思うわ」

 

「……少なくとも私のジムは例外だよ。今の私になんか誰にでも勝てるもん」

 

「カノン……、貴女本気でそう思っているの?」

 

チサトがフォークをカチャリと置いた。その目はカノンが今までに見たことないほど鋭い。

 

「いいかしら、世の中にはジムリーダーに勝つために死に物狂いで自分たちを鍛えている人やポケモンが沢山いるの。今のカノンの発言はそんな人たちの努力を踏みにじるようなものよ。もしも、本気でそう思っているならジムリーダーを辞めてもらえるかしら?」

 

「でも……、私がジムリーダーを辞めたらだれがジムリーダーを……」

 

「私がまたジムリーダーをやればいいだけよ」

 

「えっ……、でもチサトちゃんには新しい大プロジェクトがあるんでしょ……。それとジムリーダーと女優の仕事を全部こなすのは難しいから、私にジムリーダーを譲ったんじゃ……」

 

「それならプロジェクトの方を断るわ。それがダメなら……、あんまり頼りたくはないけど儚い儚いうるさいアイツを呼び戻したり、それもダメならムラサメシティジムを一時的に閉鎖するわ。……で、どうするのカノン?ジムリーダー続けるの?辞めるの?」

 

元々厳しい部分はあったが、チサトがカノンにここまで厳しい言葉を口にするのは初めてだ。しかし、これはチサトがジムリーダーに対して思い入れがあるということでもある。今のカノンにその想いに応えられる自身などどこにもなかった。

 

「そうだよね……。薄々気が付いてはいたよ。私がジムリーダーに向いていないことは……。わかったよ、私ジムリーダーを辞めるよ。チサトちゃん、あとはよろしくね……」

 

このようにジムリーダーを辞めるという選択をするのは自然な流れである。

 

「わかったわ……。それじゃあ私は明日プロジェクトを断る連絡を入れるわ。そのあとは——」

 

チサトがスケジュール帳を取り出し、今後の段取りを決めそうとした時だ、カノンのカバンの中から着信音が鳴った。しかもジム関連の連絡用の音である。

 

「なんだろう……?あっ、ジム戦の予約だ……。チャレンジャーはアヤ……。もしかして、昼間にジムであった人かな?でも、もう私はジムリーダーじゃないんだし……、断ろ……」

 

カノンの指先が、『予約拒否』と表示された図鑑のタッチパネルに触れようとする。しかしその直前にチサトの声がそれを遮った。

 

「待ってカノン、今、アヤって言ったかしら?」

 

「う、うん」

 

「そう、それならば明日ジム戦を受けてあげたらどう?」

 

「えっ……、でも……。私は……」

 

ついさっきとは全く違うチサトの態度にカノンは驚きを隠せない。あまりの豹変ぶりに一瞬、冗談化のように思えたほどである。だが、チサトはいたって大まじめだ。

 

「カノンいいかしら、今日ジムリーダーを辞める決意をしたからと言って、その瞬間からジムリーダーでなくなるわけではないの。ジムリーダーを辞める許可をポケモンリーグに出されて初めてその任を降りることができるのよ。だから、カノンはアヤちゃんのチャレンジを受ける義務があるの」

 

「そうなのかな……?まぁいいや、明日はどうせ暇だし、そこまでチサトちゃんが言うならチャレンジを受けるよ……」

 

カノンはため息交じりに指先を動かし、アヤの挑戦を受け付けた。チサトは、それを真剣なまなざしで見つめていた。

 

(もしかしたらアヤちゃんなら、カノンを変えてくれるかもしれない……。なんの根拠もないことは基本的には信じないけど、今日だけは……)

 

なにもチサトだって好きで親友であるカノンを辞めてもらおうってわけではない。できることならカノンにジムリーダーを続けてもらいたい、それが彼女の本音である。しかし皮肉なことに、今のチサトにカノンを変えるだけの力は持っていないようだ。今のカノンを変えることができるのは、かつてのカノンの面影を彷彿とさせるアヤだけ。チサトは心の中で確信していた。

 




最近忙しかったり疲れてたりして更新が遅いですが、次回の更新も気長に待ってくれると嬉しいです。
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