バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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第十五話 海好きのふわふわ系女子

 

 アヤとのジム戦当日、カノンは家でとあるトロフィーをボーっと眺めていた。これはかつて、ムラサメシティで行われたポケモンバトルのジュニア大会で優勝した時に勝ち取ったものだ。優勝候補筆頭であったチサトと、もう一人の古い友人を打ち破り、優勝したあの瞬間……、片時も忘れたことはない。だが、考えてみればそこがカノンの黄金時代だ。その優勝から、どういうわけか戦績は下がりっぱなし。負けを重ねるたびに、かつてのカノンの中に存在していた自信がみるみるうちに失われていく。さらにジムリーダーとなり、その重圧に圧迫される日々が続くようになってからはこの傾向がさらに強くなっている。おかげさまでもともと引っ込み思案な部分があったとはいえ、それすら言い訳にならないほど消極的な性格に彼女は変わり果ててしまっていた。

 

「……あ、もうこんな時間か」

 

そんなことを思いながら、ふと時計を見ればもうそろそろアヤとの約束の時間が迫って入いる。カノンは重い腰を上げ、ジムへと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその後、カノンはジムのフィールドに立った。ムラサメシティジムのフィールドは他のジムとは異なり、巨大な水槽に水が張られ、そこにいくつかの足場を浮かばせたものだ。まさに彼女の専門である水タイプのポケモンを戦わせるのにうってつけのフィールドといえるだろう。

「やっぱりアヤちゃん達は来たか……」

 

カノンはフィールドの向こうで戦いの時を待つアヤを少し恨んだ。アヤさえ来なければ、もうみじめな思いはせずに済むのにと。しかし当のアヤはそんなことつゆ知らず、やる気に満ちた表情でボールを握りしめている。ついでにヒナとチサトもフィールド脇のベンチに座っている。もうジム戦は避けることはできない。

 

「それじゃぁ始めようか、アヤちゃん……」

 

「うん、お願いします!」

 

「はぁ……、ポッタイシ、お願い」

 

カノンがボールを投げると、目の前の足場にはポッタイシが現れた。それを見たアヤが繰り出したのは相性有利なハヤシガメ——ではなくカブトだ。ハヤシガメをださなかった理由は『いくらタイプ相性上有利でも、このフィールドでは重量があり素早い身のこなしが苦手なハヤシガメでは戦いにくい』と事前にヒナからの口添えがあったからである。アヤはいつも通りボールから出た途端に顔にへばりつくカブトを引きはがし、水面に浮かぶ足場にカブトを置いた。実際足場はただ浮いているだけのようで、それだけでユラユラ揺れている。アヤ自身もその直前までハヤシガメかカブトか悩んだが、ヒナの言うことを聞いて正解だったようだ。

 

「いくよ、カブト。岩石封じ!」

 

「カーブ!」

 

試合早々、アヤは様子見がてら岩石封じを放たせる。が、ポッタイシの様子がおかしい。すぐ真上まで岩石が迫っているのにあたふたするだけでその場から動こうとしないのだ。なんだか嫌な予感がする。これも何かの策だろうか。アヤは直感的に感じ取った。だが、その予感はすべて外れた。結局ポッタイシはカブトの岩石封じをもろに喰らった。

 

「へっ……?」

 

あまりにあっさり技が決まり、アヤは驚いた。だがこれはジム戦。アヤが手加減する理由などどこにもない。

「カブト、水に潜って……!」

 

カブトは水に一度潜り身を隠すとポッタイシに急接近。そしてポッタイシの目の前で水中から飛び出し、ひっかく攻撃をお見舞いした。

 

「そのまま吸い取る攻撃!そのあともう一回岩石封じ」

 

これを起点にアヤは攻撃を畳みかけた。もはやポッタイシはただのサンドバッグだ。

 

「ふぇぇ……」

 

その間、カノンはポッタイシを前に目を回していた。頭が真っ白で何もわからないのである。そして、ついにポッタイシはカブトのマッドショットを受け、カノンのすぐ後ろの壁に叩きつけられてしまった。

 

「ポッタイシ!」

 

カノンは思わずポッタイシのそばに駆け寄った。もうポッタイシのHPは尽きる寸前だ。もはや立てるかどうかすら怪しい。それを見たカノンはさらに肩を落とした。

 

「やっぱり私じゃダメなんだ……。私じゃジムリーダーは……」

 

カノンは何げなくアヤとカブトの方を見た。どん底の闇が体中にまとわりついているカノンにとって、アヤの姿はシャンデリアのように輝いて見える。

 

「アヤちゃん……、とても楽しそうだな……。今までにあそこまで楽しそうにバトルするチャレンッジャーっていたっけ……」

 

カノンは疲れ切った表情で、何気なく呟く。だが、それと同時にカノンに電撃が走ったような感覚が襲い掛かってきた。

 

(楽しい……?……そうだ、思い出した!この感覚だよ!私、あの日に優勝してから、また優勝できるように勝つことにこだわりすぎて、バトルを楽しむことを忘れちゃっていたんだ!)

 

その瞬間、今まで彼女にのしかかってきたジムリーダーとしての重圧が消え、真っ白だった頭の中がスッと晴れた。

 

「ごめんねポッタイシ、いままで私のせいで迷惑かけちゃって。でも、もう大丈夫。一緒にこのバトルを楽しもうよ」

 

「ポタッ!」

 

久々に聞いたカノンの頼もしい言葉を聞き、ポッタイシは体に鞭を撃ち立ち上がる。

 

「勝てるかどうかはわからないけど、行けるところまで行くよ。ポッタイシ、雨ごい!」

 

ついに反撃ののろしが上がった。止めを刺そうととびかかろうとしていたカブトに、大粒の雨が打ち付ける。

 

「なにが起きたの……?」

 

急な雨に戸惑い、アヤはあたりを見渡す。そしてその時彼女カノンの変化に気が付いた。彼女から漂っていた弱々しさはもうどこにもない。あるのは気迫だけである。

 

「ポッタイシ、バブル光線!」

 

「ッタイシ!」

 

その気迫にアヤが圧倒されているとき、ポッタイシからは無数の泡が放たれていた。雨のせいか、その泡の一つ一つからは強い殺気を感じた。たまらずカブトは水の中に飛び込む。だが水中に飛び込んだカブトを最初に待ち受けていたのは、水上からのバブル光線だ。カブトはギリギリでそれを交わす。しかし次に正面を向くと、もうそこにはポッタイシが『アクアジェット』を駆使して迫ってきていた。

 

「カブッ!」

 

今度こそよけきれずアクアジェットはカブトに直撃。カブトは水上に突き上げられた。しかし、カノンの猛攻は止まらない。アクアジェットの勢いにのり、勢いよく飛び出したポッタイシにカノンは吹雪を放たせた。カブトは意地で身をかわしたが、カノンの狙いは攻撃ではない。水が張られたフィールドを凍らせ逃げ場を奪うこと、そして降り注ぐ雨を凍らせ『氷のまきびし』をフィールド中に撒くことが目的である。

 

「ブッ……!」

 

カブトが甲羅から地面に落ちると、カノンの狙い通り氷のまきびしがカブトに食い込んだ。それはあたりに散らばっているのでうかつに動けば逆にカブト自身の首を絞めることになる。ちなみにポッタイシは、氷のまきびしを避けて動く練習を重ねているので、全く問題はない。さらに水が凍っているため水中に逃げ込むこともできない。形勢は完全にカノンに傾いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、フィールド脇のベンチでバトルを見ているチサトはほのかに笑顔を浮かばせていた。

 

「どうやらカノンとアヤちゃんを戦わせたのは正解だったみたいね。ねぇヒナちゃん、あの二人似ていると思わない?」

 

「えっ、どういうこと?顔も髪も全然似てないよ?」

 

ヒナが不思議そうに目をぱちくりさせる。するとチサトの口から笑い声が漏れた。

 

「ふふふっ、見た目のことを私は言っているわけじゃないわ。ほら、見て。カノンはもちろん、追い込まれているはずのアヤちゃんですらバトルを心の底から楽しんでいる。見ているこっちまで心が躍るバトルだと思わない?」

 

「……本当だ。二人とも、とってもるんってするね!」

ヒナが目を輝かせ、高まる感情を抑えきれず立ち上がる。すると、彼女の真正面でカブトのひっかく攻撃と、ポッタイシのアクアジェットが交差した。

 

「カブッ……」

 

「ッタイシ……」

 

両者は氷の上に着地すると、互いにそのまま動かなくなった。実際は10秒にも満たない短い時間だが、カノンやアヤたちにとっては何時間にも思える時間が流れる。

 

「ポタ……」

 

その挙句、とうとうポッタイシが目を回しながら倒れた。前半で体力を消耗しすぎたせいで、一瞬反応が遅れてしまったのだ。

 

「あ……、また負けちゃった……。でも不思議だな、負けたのに全然悔しくない。こんなこといつ以来だろう?」

 

カノンはひん死になったポッタイシをボールに戻す。だが、その時の顔はなんの陰りもない、清々しいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、カノンはフィールドを回ってアヤのところに歩いて行った。

 

「はい、アヤちゃん。これが私にかった証、『ジェリーフィッシュバッジ』だよ」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

カノンの手からアヤの手に、ブルンゲルやドククラゲのシルエットを模したジムバッジ渡る。そしてカノンは優しく微笑んだ。

 

「アヤちゃん……、ありがとう。私にポケモンバトルの楽しさを教えてくれて。私、久しぶりに楽しいバトルができた。だからお礼にこの技マシンをあげるよ。この技マシンの中身は『熱湯』。相手に熱く煮えたぎる水を吹き付ける技で、時々相手をやけどにすることもできる技なんだ。大切に使ってくれると嬉しいな」」

 

「えっ、私が……?私は何もしてないけど……」

 

アヤは差し出される技マシンを前に首を横に振る。しかし、カノンは彼女の手を握り、そっと技マシンを握らせた。

 

「そんなことないよ。アヤちゃんが楽しそうにバトルをするのを見て、私は『楽しむ』ことを思い出せたんだ」

 

「あっ、もしかしてだからあの時……」

 

アヤはカノンの言葉を聞き、ふとバトル中のことを思い出す。バトル中は急激なカノンの変化を理解することができなかったが、今ならそのカラクリが何となくわかった気がする。多分『バトルを楽しみだしたから、あそこまで彼女を急激に変えたのだろう』とアヤは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それじゃぁねアヤちゃん、ヒナちゃん。これからも一緒にポケモンバトルを楽しもうね」

 

そしてジムバッジを無事手に入れた二人はムラサメシティジムを後にした。だが数歩もしないうちに、二人は背後からの呼び声に引き留められた。

 

「待って!アヤちゃん!」

 

ドタバタと走る音が響く。それにつられて後ろを振り向くと、そこにはチサトがいた。

 

「はぁ、間に合った……。ねぇ、アヤちゃん。明日って暇かしら?」

 

「へっ、えっ……?あっ、はい……!」

 

あまりにも唐突な登場にアヤは思わず二つ返事でうなずく。まぁ、実際明日は暇なのだが……。

 

「よかったわ。それじゃぁもしもよかったら、明日の朝9時に遊覧船乗り場に来てくれないかしら?二人に連れていきたいところがあるの」

 

「連れていきたいところ……?どこそこ?」

 

ヒナが首をかしげる。

 

「さぁ、どこでしょうか?答えは明日のお楽しみよ」

 

だがチサトはどこか不敵な笑みを浮かべるだけだ。ヒナがどれだけ聞いてもその表情は崩れることはない。結局チサトは真相を一言も話さず『台本覚えないといけないから、また明日ね』とだけ言い残してどこかに行ってしまった。

 




おまけ:花音ちゃんパーティー一覧(本気モード)

・多分殿堂入り後に何処かで戦えるであろう本気かのちゃん先輩の手持ちです。名前の横に★が付いているのがエース。花音ちゃんが好きなクラゲや、イベントで一緒に活躍したペンちゃん……もといペンギンなどを中心に組んだ雨パもどきです。ちなみに本文では書き忘れていますが、花音ちゃんのエキスパートは『水タイプ』です。(気が付いている人も多いと思うけど……)



★エンペルト@ミズZ
特性:激流
性格:控えめ
努力値:CS252

・ハイドロポンプ
・アクアジェット
・冷凍ビーム
・ラスターカノン

☆ドククラゲ@黒いヘドロ
特性:ヘドロ液
性格:穏やか
努力値:HD252

・アシッドボム
・熱湯
・凍える風
・毒毒

☆ブルンゲル@オボンの実
特性:呪われボディ
性格:図太い
努力値:HB252

・波乗り
・鬼火
・自己再生
・祟り目

☆ハンテール@気合のたすき
特性:すいすい
性格:無邪気
努力値:AS252

・不意打ち
・アクアテール
・冷凍ビーム
・殻を破る

☆ラグラージ@ラグラージナイト
特性:激流
性格:意地っ張り
努力値:AS252

・滝登り
・冷凍パンチ
・地震
・アームハンマー

☆ペリッパー@湿った岩
特性:あめふらし
性格:冷静
努力値:HC252

・ハイドロポンプ
・暴風
・冷凍ビーム
・とんぼ返り


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