バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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第十六話 きめろ!ゼンリョクの技!

次の日の朝、チサトは目深く帽子をかぶり、ムラサメシティの遊覧船乗り場でアヤたちを待っていた。

 

「遅いわね、あの二人……」

 

現在の時刻は朝の9時半。約束の時間はもうとっくに過ぎている。と、その時、向こうの方から見覚えがある影が疾走してきた。アヤとヒナである。

 

「ごめん!二人してうっかり寝過ごしちゃって……!」

 

「ちょっと昨日は夜更かししすぎたかもね」

 

アヤとヒナは笑ってごまかそうとする。だがその直後、二人は確かにみたのだ、見下すような目つきでこっちを見てくるチサトの姿を。一言も発してないが、言いたいことは彼女の顔にはっきりと書いてある。それもおびただしい分量だ。

 

「ふーん、寝坊ねぇ……。ま、誰でも失敗はあるわよね。気にせず目的の場所に行きましょうか?」

 

アヤたちがおびえていると、チサトの顔が豹変した。今度はついさっきまでとは打って変わり天使のような笑顔だ。そしてチサトはその顔のままボールを投げ、ムラサメ湖の水面にギャラドスを出し、それにまたがった。

 

「えっ、遊覧船を使わないの!?」

 

それを目にしたアヤは悲鳴と叫びの中間のような声をあげた。てっきり遊覧船を使うのかと思っていたのでびっくり仰天だ。

 

「当たり前よ、アヤちゃん。今から行く場所は遊覧船は通ってないもの。二人は自分たちで私についてきて。もちろん泳ぎに自身があるならば、泳いで追いかけてもいいわよ」

 

それだけ二人に言い残すとチサトはギャラドスに乗って沖の方へ行ってしまった。

 

「ラグラージ、お願い!」

 

「カブト、出てきて!」

 

すかさず二人もラグラージとカブトを繰り出す。しかし、アヤはカブトを顔から引き離し水面に浮かべたところで気が付いた。ヒナに釣られてカブトをだしたが、この小さい甲羅に自分が乗れるのだろうかと。

 

「ブッ……!」

 

だが、カブトの目はやる気に満ち溢れている。頼もしい姿だ。

 

「これもチャレンジだよね……」

 

アヤは恐る恐るカブトの甲羅に右足を置いた。

 

「よし、少し揺れているけどこれなら……!」

 

そして彼女は次に左足を甲羅に乗せ、その上で立ち上がった。見事、チャレンジ成功だ。

 

「やった……!立てた!よーし、カブト!前へすす——」

 

ところが気をよくしたアヤが前の方にビシッと指をさした時だ、カブトがアヤの重みに耐えきれず水の中に沈んだ。そのせいでアヤはバランスを大きく崩した。

 

「ヒャッ!?」

 

アヤは頭からムラサメ湖にダイブした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局アヤは、ヒナと一緒にラグラージに乗りながらチサトを追いかけた。湖にダイブしたせいでアヤは全身ずぶぬれだ。後ろからテッカニンが羽ばたいて乾かしてはくれているが、あんまり効き目はない。

 

「ハックション!うー、今日はついてないなぁ……」

 

そんなことを愚痴りながらチサトのシルエットを追いかけ、しばらくムラサメ湖の波に揺られていくと遠くの方に大きな(やしろ)が見えてきた。あそこが目的地のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的地に着くとチサトはギャラドスをしまい、二人を待っていた。

 

「二人ともお疲れ様、なんとかここまでこれたようね。まぁ、一名無事じゃない人がいるけど……」

 

無事じゃない人とはアヤのことである。だが、アヤに反論する元気は残ってなかった。

 

「で、チサトちゃん。ここはどこなの?」

 

そのそばでヒナは辺りをキョロキョロ見回していた。あたりはうっそうとした大自然。その中に建つ社は中々目立つ。

 

「ここは『ミカゲの社』と呼ばれる聖地よ。昔からここにお参りにきたトレーナーとポケモンは、より思いを一つにすることができる……、そんな言い伝えがあるの。でも最近は、時代の流れのせいか人々の記憶からは忘れられようとしている。だからミカゲの社を永遠のものにするために、私はこの神聖な地であることを行うことにしたの」

 

「あること?」

 

ヒナはチサトの言葉に首を傾げた。するとチサトは腕の袖をまくり、結晶が埋め込まれた腕輪を見せつけた。

 

「これよ、『Z技の伝授』よ」

 

「Z技……?」

 

「そうよ、アヤちゃん。Z技はトレーナーとポケモンの想いを一つにして放つ技。シンシューから遠く離れたアローラ地方に伝わる、伝統の究極奥義よ。どうかしら?貴女、このZ技を私の試練をこなして、このZ技を使えるようになる気はない?きっと使いこなせるようになるはずよ」

 

「し、試練!?」

 

試練という言葉にアヤは思わずおびえる。だが、その前でチサトは不敵に笑っていた。

 

「そんなにおびえる必要はないわ。私の試練は簡単だもの。貴女と貴女のポケモンの絆、そして思いをポケモンバトルで私に教えてくれるだけでいいわよ」

 

「バトルで……?」

 

「えぇ。もしも私に認められたのであれば、アローラの守り神『カプ』から預かった、『Zパワーリング』、そして『Zクリスタル』をアヤちゃんにあげる。安心してちょうだい、私はZ技の伝授の許しをちゃんともらっているから。名実ともにカプ神のお墨付きよ。ほら、前にテレビでもやっていたでしょ」

 

「テレビ……?」

 

「チサトちゃん、テレビに出たことあるの?」

 

アヤとヒナは互いに顔を見合わせた。それを見たチサトは驚きを隠せない。そう、何を隠そうチサトの本職は、シンシュー屈指の人気女優。シンシューでは知らない人の方が少ないくらいの知名度はあるのだ。

 

「えっ、二人とも、私のこと気が付いてなかったの?てっきりもう気がついているかと……。ほら、自分で言うのもあれだけど私の顔テレビでよく見ない?えーっと、元子役のシラサギチサトっていえばわかるかしら?」

 

アヤはそれを聞くと目を上に向け、ぶつぶつと呟きだした。

 

「元子役のシラサギチサト?チサト……、チサト……、元子役のシラサギチサト……。えっ、チサトちゃんって、あの超人気女優の!?」

 

「……ようやく気がついたのね、アヤちゃん」

 

「確かに言われてみれば、テレビで見るチサトちゃんにそっくりだね!」

 

「そっくりもなにも、それ私本人だから……。ま、そのことはとりあえず置いておきましょう。それで話は戻るけどアヤちゃん、私の試練は受けるの?受けないの?」

 

人気女優のチサトに出会えて浮かれていたアヤのもとに、再び現実が戻ってきた。確かに逃げてしまえば楽になる。だが、ここでチャレンジしなければ成長はできない。その思いがアヤを突き動かした。

 

「私、チサトちゃんの試練受けるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてしばらくたつと、チサトとアヤは一定の距離を置いて向かい合った。

 

「ふふ、あなた達はどんな戦いを見せてくれるのかしら?一人のポケモントレーナーとして楽しみだわ。さぁ、天空を舞いなさい!カイリュー!」

 

「グワァ!」

 

全てを恐怖に陥れる叫びが大地を、そしてアヤを震わす。

 

「か、カイリュー!?たしか凄―く珍しくて強いポケモンって聞いたことが……」

 

「そうだよアヤちゃん。頑張ってね」

 

怖気づくアヤに対してヒナはさらっと一言添えた。

 

「ありがとうヒナちゃん。えっと……、図鑑によればカイリューはドラゴンと飛行タイプ。だからタイプ相性的には……」

 

「キルルルー」

 

アヤはキルリアを繰り出した。カイリュウと比べると、その姿は赤子のようだ。しかし、ここまで来たら退くという選択肢はない。

 

「いくよ、まだ負けと決まったわけじゃないから!キルリア、念力!」

 

「キル!」

 

開幕早々、キルリアの念力がカイリュウを包む。しかし、カイリューは少し腕に力を入れ、あっけなくそれを振りほどいた。

 

「ふふふ、元とはいえ私もジムリーダーだったのよ。甘く見てもらっては困るわね。カイリュー、炎のパンチ!」

 

「グワァイ!」

 

その様にあっけにとられていると、もうカイリュウの炎のこぶしはキルリアに迫っている。とっさにキルリアはリフレクターを張り威力を抑えた。だが、その甲斐なく後方に吹っ飛ばされる。そして宙を舞っている間にカイリューは神速で追撃をかましてきた。

 

「キルリア!」

 

アヤの前の転がってきたキルリアの体はボロボロだ。しかしカイリューに目を移すと、もう追撃態勢に入っている。

 

「カイリュー、破壊光線!」

 

「キルリア、テレポート!」

 

破壊光線に飲み込まれる寸前で、キルリアは別の場所にテレポート。しかし、息をつく間もなくどんどん破壊光線を打ち込んでくる。何度テレポートしても同じ結果だ。このままではらちが明かない。アヤは攻めに出た。

 

「キルリア、カイリューの上にテレポート!」

 

キルリアはアヤの声とともに、カイリューの真上にテレポートした。普段こんなことしたら、一瞬で叩き落されるだろうが、今のカイリューは破壊光線を打ち終わった直後で動きが遅れている。アヤはこれを狙っていたのだ。

 

「攻撃直後は隙が生まれる!今なら私達だけでも!キルリア、マジカルシャイン!」

 

「キールー!」

 

キルリアから放たれた閃光がカイリューを一瞬にしてつつんだ。

 

「よし!」

 

効果抜群の技が完全にきまった。ラルトスとアヤの諦めない心が生み出した会心の一撃だ。思わずガッツポーズをとるアヤ。しかし、マジカルシャインの光が消えたとき、そこにいるはずのカイリューは、びくともせずキルリアを睨みつけていた。

 

「なるほど、中々いい筋をしているわ。でも、相手が悪かったわね。——カイリュー、行くわよ!」

 

チサトは胸の前で水平に腕を組み、そのままうでを羽ばたくように動かし、左手を天高くつき上げた。それと同時にカイリューの咆哮がとどろく。

 

「これが私たちのゼンリョクの技、『ファイナルダイブクラッシュ』!」

 

「グワッ!」

 

チサトのゼットリングが光り、カイリューは空高く飛び上がった。そしてその姿が見えなくなるほどの高さまで飛ぶと、今度はキルリアに向かって急降下し、キルリアに突っ込んだ。

 

「えっ……」

 

アヤもキルリアも想像を絶する威力を前に、何もできなかった。当然バトルの結果は、アヤとラルトスの完敗である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あーあ、負けちゃったか……。ごめんね、キルリア……」

 

バトルが終わるとアヤはため息交じりにキルリアをボールを戻した。するとそこへチサトがやってきた。

 

「いいバトルだったわよ、アヤちゃん。おめでとう、試練達成よ」

 

「そう……、やっぱり試練達成——えっ!?試練達成したの!?負けたのに!?」

 

落ち込んだ表情から一変、アヤはグワっとチサトに迫った。そして、チサトは微笑だ。

 

「あら、私はいつバトルに勝利しろって言ったかしら?そもそもアヤちゃんが私に勝てるなんてちっとも思ってなかったわ。私は言ったわよね、私が知りたいのは『貴女と貴女のポケモンの絆、そして思い』だって。アヤちゃんとキルリアの絆、そして強大な敵を前にしても飽きらめずに立ち向かう2つの心……。Z技を使うトレーナーに相応しいわ」

 

チサトはアヤの手に、Zリング、各タイプのZクリスタルが入ったケース、そして一冊の小さい本を手渡した。

 

「この本は……?」

 

アヤがパラパラとページをめくると、中にはチサトが様々なポーズをとった写真が沢山乗せられている。チサトが言うには、これが各種Z技を放つときのキメポーズだそうだ。アローラ地方に伝わる神聖であり、ポケモンとの絆を高める伝統の舞らしい。

 

「へぇ、伝統的な舞か……。こんな感じかな?いけ、『ウルトラダッシュアタック』!」

 

アヤは技名を叫び、本に書いてある通りに、『Z』の字の形になるように胸の前で腕を組みわせた。彼女の心の中に『決まった!』という感情があふれでる。だが、彼女を待っていたのは非情な現実だった。

 

「アハハハハハハ!何そのヘンテコなポーズ!面白~い!」

 

「ふふふ、どうしてかしら?ポーズは間違ってないのに、アヤちゃんがやると変——じゃなくて独特なポーズに見えるわね」

 

ヒナは爆笑し、チサトからも思わず笑いが漏れる。

 

「えっ、なに!?何が変なの!?ねぇ2人とも、笑ってないで教えてよ~!」

 

アヤは涙目になりながら戸惑うばかりだった。

 

 




おまけ:千聖ちゃんパーティー一覧(本気モード)

元ジムリーダーということで殿堂入り後に何処かでたたかえるであろう千聖ちゃんの手持ちを一挙公開。いつも通り★が付いているポケモンがエース。どこぞの改造厨、もといカントーチャンピオンに手持ちが似ているけど気にしない。エースも同じだけど関係ない。改造、ダメ、絶対!


★カイリュー@ゴツゴツメット
特性:マルチスケイル
性格:図太い
努力値:HB252

・バリアー
・毒毒
・羽休め
・大文字

☆ギャラドス@ゴツゴツメット
特性:威嚇
性格:腕白
努力値:HB252

・滝登り
・挑発
・地震
・電磁波

☆プテラ@ヒコウZ
特性:プレッシャー
性格:陽気
努力値:AS252

・ゴッドバード
・岩雪崩
・炎の牙
・地震

☆リザードン@リザードンナイトY
特性:猛火
性格:臆病
努力値:CS252

・大文字
・ソーラービーム
・気合玉
・エアスラッシュ

☆グライオン@どくどく玉
特性:ポイズンヒール
性格:慎重
努力値:HD252

・地震
・ハサミギロチン
・守る
・身代わり

☆ドンカラス@ピントレンズ
特性:強運
性格:意地っ張り
努力値:AS252

・不意打ち
・ブレイブバード
・辻斬り
・馬鹿力

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