バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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第十九話 夕陽に映えるドラゴン使い

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

ランとフライゴン、アヤとムクホークは互いにらみ合った。峠に漂う沈黙。聞こえるのは風が吹く音のみ。

 

「フライゴン!ドラゴンクロー!」

 

「フリャァ!」

 

そんな中、ついにランとフライゴンが動いた。鋭い爪が、あらゆるものを引き裂く勢いでムクホークに迫る。

 

「ムクホーク!えっと……、その……」

 

アヤもそれに立ち向かおうとするが、覚えている技も知らないせいか上手く指示が出せない。喉まで言葉の素材は出ているが、うまくそれを言葉にできないのだ。しかし、ムクホークはアヤの気持ちを見通したかのようにドラゴンクローを回避。そして目にもとまらぬ速さでフライゴンの背後に回り込み、打撃を与えた。

 

「あの動きは……、電光石火だね」

 

ヒナはそれを見てアヤの隣で呟いた。と、その時ムクホークの頭上に大量の岩があられた。フライゴンの岩雪崩だ。

 

「ムクホーク、電光石火!」

 

「ホーク!」

 

ムクホークは寸のところで降り注ぐ岩の間をすり抜ける。だが、その先にフライゴンの姿はなかった。

 

「えっと……」

 

アヤがあたりを見渡すと、案外すぐにその姿は見つかった。だが、日の光がまぶしくてアヤの位置からはフライゴンの姿はよく見えない。完全に逆光だ。フライゴンがウネウネしているのは分かるが、それ以上は分からない。すると、ヒナが不意に叫んだ。

 

「あれは……、竜の舞だ!」

 

「りゅ、竜の舞?」

 

「神秘的で力強い踊りをすることで、一時的に使用ポケモンの攻撃と素早さをあげる技だよ。だから気を付けてね」

 

「気を付けてって言われても……」

 

だがその矢先、竜の舞を使ったフライゴンが、ムクホークに襲いかかってきた。ムクホークは反射的に身をかわす。だが、素早さが上がったフライゴンのスピードには反応しきれず、無残にもドラゴンクローがその身を切り裂く。

 

「ここで畳みかけるよ。フライゴン、もう一度ドラゴンクロー!」

 

攻撃をうけ、墜落しつつあるその体に再びフライゴンの凶刃がせまる。

 

「ホーク!」

 

だがムクホークはその場で持ち直した。そしてフライゴンのドラゴンクローに、屈強な足を高速で叩きこんだ。守りを捨てた荒技、インファイトである。

 

「フリャァ……」

 

「ホーク……」

 

二匹のポケモンはそれぞれ相手の攻撃に耐え切れず墜落。これは相打ちか。ヒナとアヤは直感的に思った。しかしその直後、フライゴンは再び空に舞い戻ってきたのだ。流石はジムリーダーのポケモンなだけある。だが、一方のムクホークは地面にうずくまったまま動かない。

 

「これは勝負あったね。野生のポケモンを使った割には頑張っていたとは思うけど、あたしに勝とうだなんて100年早いんだよ」

 

ランはアヤとフライゴンを鼻で笑い、フライゴンが入っていたモンスターボールに手をかける。だがその時、アヤがムクホークに駆け寄った。

 

「ムクホーク!しっかりしてよ、ねぇ!」

 

半泣き状態で彼女はムクホークを揺さぶる。すると、その思いが通じたのか奇跡が起きた。ムクホークが再び立ち上がったのだ。

 

「ホーーーーク!」

 

『まだまだ俺はやれるぞ!』そう言わんばかりの鳴き声が峠に響く。そしてムクホークは空高く飛び上がり、そのままフライゴンに向けて突っ込んだ。ムクホークが宙を切り裂き、その体が青い閃光に包まれる。ムクホークが大好きなアヤを守るために、血がにじむような努力を重ねて習得した飛行タイプ最強の技、『ブレイブバード』だ。

 

「嘘だ、この私が負けるなんて……!フライゴン、ドラゴンク——」

 

ランも慌てて立ち向かおうとするが、もう手遅れだ。青い閃光はフライゴンをまっすぐ貫いた。

 

「フリャァ……」

 

フライゴンは力なく地面に堕ちた。今度こそ戦闘不能である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やった……!勝った!私たちの勝ちだよ……!」

 

勝敗が決まるとアヤは、地上に降り立ったばかりのムクホークに抱き着いた。ムクホークも顔を赤らめ、なんだか嬉しそうだ。

 

「ね、アヤちゃん凄いでしょ?さぁ、アヤちゃんにジムバッジを渡してよ」

 

その傍らでヒナはランに笑顔を見せた。だが、ふくれっ面のランが放った言葉は衝劇的だった。

 

「……こんな勝負、あたしは認めない!大体自分のポケモン使ってないし、途中でトレーナーがポケモンに接触してたし……。と、とにかくジムバッジなんて渡さないよ!」

 

「そんな!」

 

「それはないよ!」

 

アヤとヒナから思わず眼玉が飛び出しかける。

 

「ジムバッジはジムリーダーが認めたトレーナーにのみ渡されるもの。だから、例え勝ってもジムリーダーであるこのあたしに認められなければバッジは手に入らないんだよ」

 

ランは勝ち誇ったように表情である。しかしそんな滅茶苦茶なことが許されるわけもなく、ついに彼女に雷が落ちた。

 

「この愚か者めが!」

 

山で木っ端みじんに砕きそうなほどの怒号が轟く。アヤとヒナが反射的に背後を振り向くと、そこにはジムにいた和服の男、すなわちランの父親が腕を組んでいた。ランはもうびっくり仰天だ。

 

「と、父さん……!どうしてここに……!」

 

「ジムの外に出たら偶然、フライゴンに乗って飛んでいくお前の姿を見たから、トロピウスに乗ってこっそり後をつけてきたんだ。どうせロクなことをしていないとは思っていたが、今回ばかりは予想のはるか上を言っていたよ。お前の根性はどうなっている!なぜ彼女にバッジを渡さない!?」

 

「だ、だって……、野生のポケモン使ってたし……、トレーナーが途中でポケモンに接触を……」

 

「だからなんだっていうんだ?むしろ野生のポケモンと心を通い合わせ、見事勝利を勝ち取ったチャレンジャーの方を称えるべきではないのか?それに、負けを認めなければその先には行けない。お前はそんなこともわからなくなってしまったのか!?」

 

「そういうわけじゃ!」

 

「じゃぁなんだっていうんだ?」

 

ランの父親の目がギロリと動く。ランの完敗だ。

 

「……わかったよ、バッジを渡すよ」

 

ようやくランはぎこちない動きで、ポケットからバッジを取り出した

 

「あの……、いろいろゴメン……。これが『ワイバーンバッジ』だから、受け取って……」

 

ランはそっぽを向いたままそう言うと、照れ隠しなのか何なのかアヤの手に無理やりバッジを握らせた。

 

「今回はうちのバカ娘が迷惑をおかけして申し訳ありません。これでお詫びになるとは微塵も思っていませんが、せめてこれを受け取ってください。私の家系に代々伝わる技『エナジーボール』が入った技マシンです」

 

さらにランの父親は、アヤに丁寧に頭を下げると技マシンをアヤに手渡す。そして、先ほどとは打って変わって落ち着いた様子で、さっきからずっとうつむいているランに声をかけた。

 

「ラン……、はっきり言って私はお前に失望した。これからはジムリーダーとして相応しいトレーナーになるために、お前にはもう一度トレーナーとしての基礎を学んでもらう。それからは——」

 

「どうせミタケ流の人間として、ドラゴンタイプを捨てて草タイプを極めろとか言い出すんでしょ」

 

ランは思わずため息をついた。しかし、どうやらランとランの父親の思っていることは違っていたようだ。

 

「いや。別にもうミタケ流にこだわる必要はない。今までは、お前がドラゴンタイプを極めるといっても所詮ままごと程度の熱意だと思っていたが、今日のバトルを見てそれが誤りであることを知った。トレーナーとしての態度は褒められたもんじゃないが、ドラゴンタイプへの熱意だけは本物だったようだな。そのことについては私に非があったと素直に謝ろう」

 

ランの父親は、ランに頭を下げた。だが、当のランはいまいち状況が呑み込めてない。

 

「父さん!どうして頭を下げるの!?どういうことなの!?えっ……、もしかして私がドラゴンタイプのジムリーダーになることを認めてくれるの!?」

 

「そういうことだ。私はミタケ流の家元である前に、お前の父親だ。父親として、娘が本気で情熱をかけていることを応援するのは当然のことだ。ミタケ流にとらわれず、ドラゴンタイプを極めてみろ。……頑張れよ」

 

この時アヤとヒナは初めて、この和服の男がほほ笑むのを見た。

 

「父さん……、ありがとう……。でも、父さんの言うことをすべて聞くわけにはいかないね。父さん、あたしもミタケ流を継ぐよ。それでミタケ流の人間として、草タイプもドラゴンタイプと同じくらい極めて見せるよ。だって、そうじゃないと不平等でしょ。父さんが私の願いを聞いてくれたんだから、私も父さんの願いを叶えるよ」

 

「……知っているとは思うが、ミタケ流の教えは厳しいぞ。それでも両立できるのか?」

 

ランは無言だが、力強くうなずく。ランの父親も再び微かな笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後ランは、夕焼けに照らされながら父親とともにトロピウスに乗って去っていった。

 

「ランさん、負けず嫌いなだけで本当はいい人なのかもね」

 

アヤはその姿を見て呟く。と、それと同時にムクホークが目の前で羽ばたきだした。それも地面の上でだ。

 

「へ、へっ?」

 

アヤには何が起きているかさっぱりだ。しかし、隣にいたヒナは不敵な笑みを浮かべていた。

 

(確か、ムクホーク系統は求愛行動の時に地面で翼をばたつかせるんだっけ。となるとこのムクホークは、キウの森からアヤちゃんを追いかけてきたのかな?ふふ~ん、るんって感じになってきたー!)

 

ヒナは自分が持っている空のモンスターボールをアヤの前に差し出した。

 

「ア~ヤちゃん!提案なんだけどさ、このムクホークも一緒に連れて行ってあげれば?」

 

「えっ、それってゲットするってこと……?」

 

「うん!今日のバトルで、アヤちゃんとムクホークの息がバッチリあってたからさ、これからもうまくやっていけると思うんだよね」

 

と、もっともらしいことをヒナは言ってみたが、他意があるのは言うまでもない。というか顔にそれがもろに出て、彼女はさっきからずっとにやけている。

 

「ヒナちゃん、何なのその顔?」

 

「別に、なんでもないよ~」

 

「うぅ、なんか嫌な予感がする……」

 

だが、アヤはそう言いながらもムクホークと目を合わせた。というのも、なんだかんだでアヤ自身もこのムクホークのことが気になっていたのだ。もちろん異性としてではなく、ポケモンとしてだが……。

 

「ねぇ、ムクホーク。よかったら、私と一緒に旅をしてみない?」

 

ムクホークは待ってましたといわんばかりに、翼がちぎれそうな勢いでばたつかせる。そしてその体は間もなく、モンスターボールへと吸い込まれたのである。

 

「えへへ、よろしくね。ムクホーク」

 

アヤは新しいボールが入った仲間に微笑んだ。

 




おまけ:蘭ちゃんパーティー一覧(本気モード)
・多分殿堂入り後に何処かで戦えるであろう本気蘭ちゃんの手持ちです。名前の横に★が付いているのがエース。落ち着いてみると、手持ちがORASのゲンジの強化後パーティーと被りまくっている。ま、ドラゴンタイプは数が少ないし仕方ないね!



★フライゴン@気合のたすき
特性:浮遊
性格:陽気
努力値AS252

・地震
・竜の舞
・逆鱗
・ストーンエッジ

☆チルタリス@チルタリスナイト
特性:自然回復
性格:図太い
努力値:HB252

・羽休め
・ハイパーボイス
・コットンガード
・大文字

☆ボーマンダ@命の玉
特性:威嚇
性格:無邪気
努力値:AS252

・逆鱗
・地震
・大文字
・竜星群

☆オノノクス@こだわりスカーフ
特性:型破り
性格:陽気
努力値:AS252

・逆鱗
・地震
・ハサミギロチン
・アイアンテール

☆ナッシー(アローラの姿)@弱点保険
特性:お見通し
性格:冷静
努力値:HC252

・ヘドロ爆弾
・リーフストーム
・竜星群
・火炎放射

☆バクガメス@ドラゴンZ
特性:シェルアーマー
性格:臆病
努力値:CS252

・竜の波動
・殻を破る
・大文字
・気合玉
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