バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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というわけでこのお話も20話目。これからも感想や高評価、お気に入り登録などで応援してくれると泣いて喜びます!


第二十話 ハッピー、ラッキー、スマイル、イエィ!

4つ目のバッジを手に入れたアヤは一度ユウダチシティに戻り、次の日に改めてユウダチ峠に向かった。前回も少し触れたが、ここの峠道は悪路というのも生易しいほどの道だ。倒木や岩が道をふさいでいたり、道がへこんでいたりするのはザラであるうえ、酷いときには道の大半が崩れ落ちていたり、崖と崖を結ぶ橋が半壊していたりする。ここを通る最中に、アヤの悲鳴が峠にこだましっぱなしだったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

ちなみに余談だが、そんな悪路のせいでユウダチシティとホマチシティは距離が近いのにもかかわらず、あんまりかかわっていなかったりする。無論、街を行き来するたびに命を懸けなければならないのだから無理はないだろうが。流石にこの現状には、ユウダチシティやホマチシティの住人もほとほと困り果てていたようで、最近になってようやく二つの街を結びつつ、ユウダチ峠を迂回するサイクリングロードが作られだしたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして命がけの峠道をなんとかどうにか乗り越えたアヤとヒナはホマチシティにたどり着いた。ホマチシティは、近代的なビルと昔ながらの民家が混ざった独特の街だ。ついでにポケモンセンターに温泉が併設されている珍しい場所でもある。さて、アヤとヒナがこの街に来た理由だが、それは勿論この街にある『ホマチシティジム』に挑むためだ。ここのジムは、これまた珍しくジムリーダーが二人いる。噂によれば仲良し姉妹がジムリーダーらしい。

 

「ジムリーダーが二人か……」

 

アヤはこの街にきてからずっとそのことを考えていた。初めての事態に不安もある。だが、それと同じくらいのやる気もあった。

 

「大丈夫、大丈夫!いっぱい頑張ってきたもんね!」

 

しかし、そのやる気は一瞬にして打ち砕かれた。ホマチシティのポケモンセンターに向かう途中に偶然ジムの前を通ったのだが、ジムの扉に一枚の張り紙が張ってあるのを、アヤは見てしまったのだ。

 

「えっと、なになに……、『商店街の福引で、アローラ地方旅行券が当たったのでアローラに行ってきます。ジムはしばらく休業です。世界一カッコいいジムリーダーと、その妹の聖堕天使より』。……うそ、ジム戦できないの!?」

 

ショッキングな通告である。だがこの時彼女は、ジムの休業よりもヒナの様子の方が気になっていた。ヒナはジムの前で、柄にも合わず口をぽかんと開けボケーっとしているのだ。

 

「ひ、ヒナちゃん……?」

 

違和感を覚えたアヤは彼女の肩をたたく。するとヒナの体がブルっと震えた。

 

「うわっ……!な、なに、アヤちゃん?」

 

「ヒナちゃんどうしたの……?具合悪いの……?ぼーっとしてるなんてヒナちゃんらしくないよ」

 

「そ、そんなことないよ!なんでもないよ。さ、ポケモンセンターに行こ!あそこには温泉があるんだって!」

 

ヒナの言葉はそこか歯切れが悪かったが、この時のアヤがそのわけを知る由はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を取り直した二人は、ホマチの街中を進みポケモンセンターへと向かった。ところが、もう少しでつきそうなところで謎の人だかりが二人を妨げた。

 

「なんなのこの人だかりは……」

 

「ちょっと見てみようよアヤちゃん!」

 

いてもたってもいられなくなったアヤとヒナは人だかりに飛び込む。すると同時に、人だかりの中心から鈴が鳴るような声が街に響くと、金髪の少女の声が聞こえてきた。

 

「みんな~、いっくわよ~!ハッピー、ラッキー、スマイル、イェイ!」

 

どこからともなく軽快な音楽が鳴りだし、その声は音楽に合わせて心躍るリズムを編み出す。さらにその少女はただ歌うだけでなく、マイクを片手に跳ねたり側転したり、バク宙してみたりと、とにかくアクロバティックなのだ。もはや、ふつうの人ではまねできない神業と飛べる域だろう。そのクオリティの高さにアヤは思わず言葉を失った。

 

「凄い……」

 

ところがアヤはハッと我を取り戻した。というのも不思議なことに、いつ間にか歌声が一人分増えているのだ。それは、間違いなくヒナの声である。しかもその少女と同様にアクロバティックな動きで歌っている上、怖いくらい息があっているのだから驚きだ。

 

「ヒナちゃん!」

 

そうと分かった瞬間、アヤは人をかき分けて中心で叫んだ。

 

「ヒナちゃん、辞めなって!ねぇヒナちゃん!」

 

しかし歌声や周囲の歓声にかき消され、その叫びがヒナに届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

謎の路上ライブが終わった後、アヤはヒナに向かって説教をしていた。

 

「ヒナちゃん!どうして他人のライブに乱入したの!?」

 

「だって~、ワクワクしてソワソワしてるんってきて、ドーーーンってしたかったんだもん!」

 

「うっ……、やっぱり意味が分からない……!と、とにかく他人のライブに乱入して邪魔しちゃ!駄目だよ!」

 

「どうしてどうしてダメなの?あの人、私が乱入してもすごい楽しそうだったよ。ハイタッチもしたしさ」

 

「そういう問題じゃなくて~!」

 

このままでは話は平行線のままだ。ところがアヤがほとほと困りかけたときだ、彼女の視界に例の金髪少女の姿が映った。

 

「あ~、さっきのこと怒りに来たんだな……」

 

アヤも観念し、肩を落としその時を待つ。だが、彼女からかけられた言葉は予想外の言葉であった。

 

「探したわよさっきの人!楽しいライブを手伝ってくれてありがとう!」

 

そう、その少女は怒るどころか滅茶苦茶嬉しそうにヒナに駆け寄ってきたのだ。

 

「あっ……、怒りに来たんじゃないんだ……」

 

アヤは肩透かしを食らった。が、その一方でヒナとその少女はアヤをそっちのけで楽し気に話している。そしてその直後、ヒナはアヤの想像の域を超えた発言をしてきたのだ。

 

「アーヤちゃん!この人、ライブのお礼にランチをご馳走してくれるって!」

 

「お礼……?ランチ……?だってヒナちゃんはライブを邪魔したんじゃ……」

 

全く話が読めない。ライブに乱入してなぜお礼になるのか。どうしてそれがランチになるのか。話が全くつながらない。すると、彼女の目の前に天使のような笑みを浮かべた例の金髪少女が姿を現した。

 

「邪魔なんてとんでもないわ。この人はライブを盛り上げてくれたじゃない!」

 

「盛り上げる……?」

 

「だってライブは一人より二人の方が楽しいじゃない!あっ、そうそう。話は変わるけどあなた達の名前は何なのかしら?」

 

「私は……、アヤだけど……」

 

「私はヒナ!よっろしくね~」

 

「アヤとヒナね。私の名前はココロ。世界を笑顔にするのが夢なのよ!」

 

「世界を笑顔に……?」

 

「そうよ。笑顔になって悲しい人なんていないもの!世界を笑顔にするためなら何でもするわ!というわけで、私と一緒にランチに行きましょ!私、もっと二人と楽しみたいの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで飲み込めない部分も多いが、アヤはヒナと一緒にココロと名乗る少女に連れていかれ、彼女お勧めのカロス料理屋に連れていかれたのだが……。

 

「なんだか落ち着かないな……」

 

席に座ったアヤはあたりを見渡した。床には高級感漂う赤じゅうたん。天井には豪華なシャンデリア。壁には巨大な絵画。極めつけはメニューの中身。料理は見たことも聞いたこともない物ばかり。値段に至っては、いつもアヤたちが食べているものよりも0が1つか2つ多い。その上量はいつも彼女たちが食べているものの半分くらいだ。完全にアヤが住んでいる世界とは別世界である。

 

「さぁ、何でも好きなものを頼んでちょうだい!私がご馳走するわ!」

 

ココロは笑顔でそういうが、こんな高額なものをおごってもらうなんて申し訳ない。アヤは心の底からそう思った。だが、その隣でヒナは目を輝かせていた。

 

「うわ~、どれでも頼んでいいの!?じゃぁ私、コレとコレとコレ!あとは~コレとコレ!デザートはこれにしよ!」

 

彼女は目にもとまらぬスピードでメニューを指さしていく。遠慮を知らないとはまさにこのことだ。対するアヤは恐る恐る一番安いメニューをっ注文していたのであった。安いとはいえ一般人の価値からすれば非常に高額ではあるが。例えるなら、1つ200円のモンスターボールに20000円払う感じである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランチの後もアヤとヒナはココロに連れていかれ、ホマチシティの様々なところを回ってディナーまでご馳走してもらい、二人がココロと別れたのはもう1~2時間で日付がかわるころであった。

 

「ココロちゃんか……。」

 

桁違いの大金持ちで、とにかく人を笑顔にすることが大好きな少女ココロ。これ以外のことは分からない不思議な少女であるが、なぜだかまた会いたくなる魅力を彼女は持っている。アヤはポケモンセンターに向かう夜道で静かにそんなことを思った。だがその時である、ポケモンセンターへ通ずる大通りを歩く二人の前に、路地からヌッと一人の少女の影が現れたのだ。

 

「キャッ!」

 

「ワッ!」

 

「ヒャッ……!」

 

不意の出来事に三人は思わず悲鳴を上げる。だが、それは予想外の再会であった。

 

「あれ……?そこにいるのは……、アヤさんと……、ヒナさん……ですか……?」

 

路地から出てきた少女の正体は、キウシティで出会った物静かな少女リンコであった。彼女の隣にはゲンガーが控えており、闇夜の中で不気味に笑っている。

 

「あー、なんだ……、リンコさんか……、良かったぁ」

 

とりあえず怪しい人ではないとわかり、アヤはほっと胸をなでおろす。その傍らでヒナは、リンコにグイグイ迫っていた。

 

「わぁ~リンコさんだ!久しぶり~!」

 

前も思ったが随分と性格が対照的な二人である。しかし、リンコはそんなヒナにも物怖じせず、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「ひ、久しぶりです……。ヒナさん……、アヤさん……。調子はどうですか……?」

 

「うん、私もアヤちゃんも絶好調!そうそう、アヤちゃん凄いんだよ!ジムバッジを4つも手に入れたんだよ!」

 

「4つもですか……!?凄いです……」

 

「ゲーッ!」

 

リンコと彼女のゲンガーに褒められ、アヤは照れて頬を赤らめた。

 

「えへへ、ありがとうございます」

 

なんだかんだでヒナ以外の人にバッジの数を褒められたのは初めてだ。だが、その余韻に浸る間もなく、ヒナが話の流れを変えてきた。

 

「で、さっきから気になっていたんだけど、リンコさんはこんな遅くに何やっているの?」

 

「あっ……、私は……、その……。少し……探し物を……」

 

「探し物?何を探しているの?」

 

ヒナがリンコの言葉に食いつく。するとリンコは少し目を上にそらし、考え事をするそぶりを見せた。

 

「あんまりこういうことは……言わないほうがいいんですけど……、アヤさんとヒナさんなら大丈夫かな……?ここだけの話ですけど……、ホマチシティにリゲル団の研究所があるっていう情報があるんです……」

 

「リゲル団の!」

 

「研究所!?」

 

アヤとヒナは思わず大声で叫んだ。今日一日ココロと一緒に楽しく回ったこの街にそんな物騒な施設があるなんて誰が予想しただろうか。

 

「驚くのも無理はないですよね……。でも、前から私服姿ではありますが……リゲル団員らしき人がこの街でよく目撃されているので……ほぼ間違いないかと……。私もこの事態を見過ごすわけにもいかないので……、研究所を探して……研究所に襲い掛かって……、リゲル団を血祭りに……してあげようと思ったんですけど……………中々研究所の入り口が見つからないんです……。リゲル団のバカの割には上手く隠れてますね……。ねぇ、ゲンガー……?」

 

「ゲーッ!」

 

リンコはゲンガーとともにほほ笑んだ。すると、それを見たヒナが声をあげた。

 

「そうだ!だったら私たちも明日、一緒に探すよ!」

 

 

「ありがとうございます……、ヒナさん……。気持ちはうれしいです……。でも……、明日は私……別の街でピアノのコンサートがあるので……研究所は探せないんです……。これは個人的にやっていること……、言ってしまえば……趣味の延長みたいなものですから……。それじゃぁ……、私はこれで失礼します……。アヤさんもヒナさんも……、気を付けてくださいね……」

 

それだけ言い残すと、リンコはゲンガーと一緒に何処かへ去っていった。そして、リンコの姿が見えなくなったとき、ヒナはアヤにキラキラ輝く目を向けてきた。

 

「ねぇ、アヤちゃん!明日、私達でリゲル団の研究所を探そうよ!」

 

やっぱりそう来たか。アヤは内心そう思った。ヒナがこうなっては、もはや彼女に断るという選択肢はない。

 

「わかったよ……。私も行くよ……」

 

アヤは複雑な心境でうなずいたのであった。

 

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