バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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今回は話の都合上かなり長めです。上手く区切れるところが見つからなかった。


第二十一話 禁断の再会

次の日の朝早くからアヤとヒナはホマチシテを回り、リゲル団の研究所を探した。しかし、

リンコが言う通り、中々それは見当たらない。そしいぇ何の手掛かりも得られないまま、時刻は正午を回ってしまった。

 

「本当にリゲル団の研究所ってこの街にあるのかな?」

 

店で買ったフライドポテトを片手に路地を進むヒナの後ろで、アヤはぼやいた。確かにこの薄暗い場所にリゲル団がいても違和感はない。だが朝から似たような路地を十本以上歩いたがいたって平和であった。

 

「これだけ探してもないってことは、ひょっとしてリンコさんの早とちりとか……。うん、きっとそうだよ。だからヒナちゃん、もう研究所を探すのは止めようよ!というかこんな危ない真似はもうやめようよ!こんな不気味なところも私は嫌だよ!」

 

アヤは必死にヒナに訴える。だが当の本人は聞く耳を持たない。

 

「なんで研究所探しを辞めなきゃいけないの?なんかこういうことって映画のスパイや探偵みたいでるんってするじゃん!」

 

「うぅ……、なんでそうなるの……。私は全然るんってこないよ」

 

「もしかしてアヤちゃん、リゲル団が怖いの?そういうことなら大丈夫だって。今までリゲル団なんて大したことなかったじゃん!あ、そんなに不安なら元気になれるもの見せてあげる。ほら、この『フライドポテト』!他のポテトより長いよ!」

 

不安で押しつぶされそうなアヤに、ヒナはその長いフライドポテトを見せつける。彼女なりの傷会なのだろうか。だがその時、アヤの目の前からヒナの姿が一瞬にして消えた。

 

「えっ……!ヒナちゃん!?」

 

慌ててアヤは上を下を、右を左を見渡すが彼女の影も形もない。あたりにはヒナが食べていたフライドポテトが目の前のマンホールの周りに散乱しているだけだ。

 

「そんな、ヒナちゃんがいなくなっちゃった!『フライドポテト』を食べながら歩いていただけなのに!」

 

そのマンホールの上に駆け寄り、困り果てているとアヤ。すると足元にあったはずのマンホールが開き、地の底に続くかのような真っ黒い大きな口を開けた。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

アヤは吸い込まれるように、その口の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ひゃっ!」

 

アヤは腰から派手に落下した。ケガはしてないことがせめてもの救いか。だが急すぎる展開に追いつけず、あらゆる情報が彼女の中に入ってこない。

 

「アヤちゃん大丈夫!?」

 

と、そこにヒナが駆け寄ってきた。すると彼女の姿を見て落ち着いたのか、アヤにようやく周囲の情報が入ってきた。二人がいるのは地下とは思えないほど明るく広い空間だ。そして二人の正面にある廊下の入り口の両脇には、もはや見慣れたリゲル団のエンブレムが掲げられている。

 

「もしかして……、ここがリゲル団の研究所?」

 

アヤが呟くと、ヒナも頷く。

 

「そうだね、ここが研究所みたいだね。あのマンホールがヒミツの入り口になっていたんだよ。多分、合言葉か相性番号で開く仕組みだったのかな。大体この手の映画や小説だとそうだし」

 

「合言葉……?そんな合言葉になりそうな単語言った覚えが……」

 

「まぁそんなのどうでもいいじゃん。とりあえず進んでみよ」

 

ヒナはそう言うと廊下に足を踏み入れる。だが、それと同時に彼女は直立のまま廊下のはるか彼方へ吹っ飛ばされた。

 

「何が起こったの!?」

 

アヤが足元を見ると、今さっきまでヒナがいた地点には正面に向かう矢印が書かれたパネルが埋め込んである。

 

「これに乗ったのかな……?」

 

彼女も恐る恐るそこに足をのせてみる。まずは右足、乗せても問題はない。次は左足、こちらも問題がない——と思いきや、アヤの体は直立のまま高速でスライドしだした。まるで磁石で吸い寄せられる感覚だ。

 

「うわっ!」

 

さらに廊下の突き当りで彼女は急旋回し、また別のところへ飛ばされた。たどり着いた先は、これまた広い空間。それも床には例の矢印が書かれたパネルがいくつも設置されている。

 

「あーあ、ヒナちゃんと離れちゃった……」

 

わけのわからないトラップに加え、いつ襲われるかわからない不安感。アヤが途方に暮れていると、遠くの方からラグラージの咆哮が飛び込んできた。

 

「あわわ!もう戦いが始まっている!?」

 

こうなったらアヤもここに棒立ちしているわけにもいかない。とにかく前に進まなければ……。と、その矢先、彼女のところに黒ずくめの女性が二人歩いてきた。リゲル団の下っ端だ。

 

「あらあら、ここは観光客の来るところじゃないわよ」

 

「でも来てしまったからには仕方がないね。リゲル団流の歓迎をしてあげる!」

 

リゲル団の下っ端は、ポチエナとチョロネコを繰り出した。

 

「仕方ない、一人で何とかしなきゃ!お願い、ハヤシガメ!葉っぱカッター!」

 

「ヤーッシ!」

 

ハヤシガメは出ると同時に無数の葉っぱを放ち、ポチエナとチョロネコを蹴散らす。二匹ともひん死になっていないが、アヤはすかさずハヤシガメをボールに戻し、下っ端と下っ端の間にあるパネルに飛び乗った。彼女は度重なるリゲル団との戦いで、下っ端をいちいちまともに相手にしていたらきりがないということを学んだのである。

 

「こらー!」

 

「逃げるってどういうことなの!?」

 

アヤは下っ端たちの叫びを聞きながら、パネルに書いてあった矢印の方向へ飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く研究所を進むにつれ、矢印が書かれたトラップの仕組みが分かってきた。どうやらこれは、矢印の向きに高速で飛ばされるトラップのようだ。この仕組みや下へと続く階段を駆使しながら、アヤは進みどんどん研究室の奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 「ぎえぇーーー!」

 

「許してくれぇ!」

 

「バトルは苦手なんだよぉ!」

 

暫くたった後、アヤはひときわ大きな部屋にたどり着き、どうにかこうにかしてそこにいるリゲル団員とリゲル団の研究員を追い払うことに成功した。

 

「はぁ……、部屋に入った途端に5人以上も敵がいたときはびっくりしたけど、全員そこまで強くなくて助かった……。お疲れ、キルリア、ムクホーク」

 

アヤはリゲル団を追い払ために出した二匹を戻し、ひとまず息をつくことにした。彼女はここにいる敵以外にも、道中で何人ものリゲル団員と戦ってきている。疲れるなっていうほうが無理であろう。そして、戦いのほとぼりが冷めると同時に、彼女の前にこの部屋の異質な光景が飛び込んできた。周りには見たこともないような怪しい実験器具。棚には何かの液体に漬けられた、何かのポケモンの標本。机には無駄にカラフルな不気味な液体や散らばった資料。戦いで興奮していたせいであまり気に留めなかったが、冷静に見れば身の毛がよだつ光景だ。

 

「もしかしてここが研究室なのかな……?」

 

そんなことを思いながら、アヤは机に散らばっている資料のうちの一枚を手に取った。

 

「えっと……、『伝説ポケモンの再生:通常ポケモンの遺伝子構造を解析、分解、そして多種のポケモン遺伝子との合成。基本的には上記の手順で人工的に伝説のポケモンを生み出す…………。キュレム……、ホウオウ……、レジギガス……、ラティアス……』。……全体的に難しくてわからないや」

 

伝説ポケモンの再生。話が壮大すぎていまいちピント来ないが、何か嫌な予感がする。それだけは確かだった。とりあえずアヤはこの資料を、あとで伝説ポケモンの研究者であるマリナ博士に送るためにポケットに詰め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後もアヤは、例のパネルや階段を駆使しながら奥へ奥へと進んでいった。そして、ついに彼女は最下層に行きついた。階段を下りた先にはパネルも何もない、シンプルな廊下がまっすぐ奥の部屋へと続いている。アヤは意を決すると、その廊下を進み奥の部屋の扉を開いた。

 

「あれ?そこにいる人って……」

 

扉の向こうには、部屋の奥に掲げられた巨大なリゲル団のエンブレムを見ている少女がいた。アヤはその人物に見覚えがある。その少女はまさしく、キウシティで出会ったリゲル団のリーダー『サヨ』であった。

 

「……私はあの時警告しましたよね。それにもかかわらず、ノコノコここまで来るとはいい度胸です」

 

彼女は黒と紫を基調としたドレスのような服をはためかせながら振り返り、アヤに凍てつくような鋭い視線をつきさしてきた。

 

「ひっ……」

 

それは、一瞬にしてアヤの覚悟を粉砕するほどだ。それを見たサヨは落胆と嘲笑が混じったため息をついた。

 

「そんな大した覚悟もなく計画を阻止されようとするとは、私も随分と侮られたものですね。無論、それ相応の覚悟を持ってこられても、リゲル団の計画は止めませんが。前にも言いましたよね?幸福を得て、願いを叶なえるということは本来すべての人に平等に与えられた権利よ。でも、今の世の中でその権利を行使できるのは一握りの天才と呼ばれる人だけ。つまり、リゲル団は変わり果てた秩序を本来あるべき秩序へと戻そうとしているだけなのよ。恐らく、ここに来るまでの間、貴女は色々なものを見てきたでしょう。それが正義ではないことは私も理解しているつもりだわ。でも、平等な世界を築くためにはやむを得ないのです」

 

「正義でないとわかってて、こんなことをするなんて……」

 

「なんとでも言いなさい。私たちの計画が成功した時、天才と平等の埋められない格差は消える。それはまさしく真実の平等。それが実現した時、きっと世界は笑顔になるわ」

 

サヨの声は落ち着きがありながらも力強い。このカリスマ性ともいえるオーラに魅せられて、リゲル団が結成されたというのも頷ける。だが、アヤは決して屈せず食いかかった。

 

「確かに天才はいるかもしれない。でも、どんな人でも一生懸命努力すればきっと天才な人と同じくらい輝けるはずなんだよ。実際私だって前はなにをやってもダメダメだったけど、今はバッジを4つも持っているし、それに——」

 

「努力?一生懸命?つけあがるんじゃないわよ!」

 

突如、サヨが大声をあげた。

 

「へっ……?」

 

サヨの放つオーラはもはや殺意といっても過言ではないレベルだ。先ほどまでの冷静さの影も形もない、どう猛で、荒々しいさまである。

 

「私は天才に追いつくために、血がにじむような努力を重ねてきたわ。でも、天才はそれを才能で軽々超えていった。貴女にこの気持ちのなにがわかるの!?努力を踏みにじられる苦しみを!プライドをズタズタにされる痛みを!大した努力もせずに、努力を語らないでちょうだい!バッジ4つとるための努力なんて、私に言わせてみれば努力のうちにはいんないわ!」

 

「そんな……」

 

その勢いに思わずアヤがひるむ。すると、追い打ちをかけるかのようにサヨは懐からボールを取り出した。

 

「どうやら私と貴女は、互いに分かり合えない存在のようね。残念ですが、私の目障りになるような人には消えてもらうしかありません。行きなさい、オニゴーリ!」

 

「ゴーリ」

 

オニゴーリの低い唸りがアヤの鼓膜を震わす。ここまで来たら戦いは避けられない。

 

「お願い、キルリア!」

 

「キルー」

 

キルリアは降り立つと同時に、サヨとオニゴーリを睨みつけた。

 

「なるほど、なかなか強そうなキルリアね。ですが、私達には勝てませんよ。オニゴーリ、氷のつぶて!」

 

「キルリア、シャドーボール!」

 

氷のつぶてとシャドーボールが両者の中央でぶつかり合い、相殺される。だがアヤはひるまず攻撃を畳みかけた。

 

「キルリア、煙の中に向かって!マジカルシャイン」

 

オニゴーリをまばゆい光が包んだ。

 

「やった!当たった!」

 

アヤは思わず小さくガッツポーズ。だが、その喜びもつかの間。次の瞬間、オニゴーリの姿は、デフォルメされた小さな緑の怪獣のようなぬいぐるみへと姿を変えたのだ。

 

「かかりましたね。オニゴーリ、フリーズドライ!」

 

「ゴーリッ!」

 

声は背後からだ。慌ててアヤが振り向くと、オニゴーリは強烈な冷気を放っていた。

 

「キルッ!」

 

その冷風はキルリアに直撃。ひん死にこそなっていないが、かなり厳しいダメージだ。オニゴーリはサヨの前に戻り、それをあざ笑っている。

 

「キルリア!お願い、頑張って!!念力」

 

「絶対零度!」

 

オニゴーリがキルリアの攻撃をかわすと、途端に部屋の温度がガクッと下がった。そして次の瞬間、キルリアの斜め右後ろから、何かを閉じ込めるような感じで氷の塊が出現したのだ。

 

「運がいいやつね。あの氷に閉じ込められれば一撃で倒せたというのに!」

 

「一撃で……」

 

見たこともない技に戸惑うアヤ。さらにこの時、アヤは衝撃的なことを発見していた。それはオニゴーリの動きだ。よくよく見れば、動きが遅くなったり速くなったりと、全く安定していないのだ。

 

「気が付いたようね。私のオニゴーリの特性はムラっけ。その瞬間ごとに、能力がランダムで上下する特性よ」

 

サヨは不敵な笑みを浮かべた。

 

「どうしよう……。このままじゃ……」

 

動きが読めないのでは、攻撃を当てることは困難。だがこの時、アヤはとある技のことを考えていた。その技はマジカルリーフ。実は以前にキルリアはこの技を習得しいたのだが、覚えたときに使ったきり、その後は全くと言っていいほど使ってないのだ。

 

「確かヒナちゃんは『マジカルリーフはモワモワな力の葉っぱがグイーンってなって必ずバーンってする技』だって言ってたっけ」

 

要は、不思議な力を帯びた葉っぱで相手を追跡させて、必ず敵に当てるという技だ。長らく使っていないこの技が成功するかどうかはわからない。しかし、今はこれに頼るしかない。

 

「キルリア!マジカルリーフ!」

 

「……!キルッ!」

 

キルリアは少し驚いたそぶりをみせたが、アヤの期待に応え、不思議な力が込められた無数の葉っぱを放った。

 

「ゴリッ!?」

 

追跡できるなら、動きが不規則でも関係ない。マジカルリーフはオニゴーリを切り裂いた。

 

「ゴーッリ!」

 

攻撃を受け、一瞬オニゴーリの動きが止まる。だが一瞬あれば十分すぎる時間だ。次の瞬間、キルリアのマジカルシャインがオニゴーリを再び包んだ。オニゴーリはその光から解放されると、ボトっと床に落ちた。

 

「手加減していたとはいえ、負けるとは思っていなかったわ。敗因は、身代わりによるダメージと、ムラっけの影響で特防が下がりに下がっていたことかしらね」

 

サヨは冷静に分析しながらオニゴーリをボールに戻した。

 

「そんな……、今ので手加減だなんて……!」

 

サヨのセリフにアヤは震えあがった。全力を出されたのならばどうなっていたことだか。考えるだけでもぞっとする。と、それを知ってか知らぬか、そこへサヨが歩み寄ってきた。

 

「敵ながらなかなかいい腕前ね。その腕前を称えて、この研究所からは立ち退きましょう。どのみち場所がわかってしまっては意味がいないですからね。あとは好きにしなさい」

 

サヨはそれだけ言いうと、部屋から出ようと足を踏み出した。だがその時、部屋の扉が勢いよく開いた。

 

「ごっめーんアヤちゃん!あのパネルが面白くて遊んでいたら遅れちゃった!ここからは——」

 

遅れて、ようやくヒナがやってきたのである。だがアヤは違和感を覚えた。妙に歯切れが悪いところで言葉が止まっているし、ヒナの様子がおかしい。彼女は目を見開いたまま、その場でフリーズしているのだ。

 

「おねーちゃん……!?」

 

消えそうなほどかすれた声でヒナは呟いた。

 

「お姉ちゃん!?」

 

それを聞いたアヤは思わず声を裏返してしまった。なるほど、確かに言われてみれば二人の姿はそっくりだ。短髪のヒナと長髪のサヨと、ぱっと見で見極められる要素はそこぐらいしかない。仮に髪型までそろえられたら、どっちがどっちか見当もつかないだろう。だが、今はそれを気にしている場合ではなさそうだ。いつの間にかアヤの周囲には険悪な雰囲気が漂っている。喜ばしい再会ではないということだけは確かだ。

 

「それはこっちのセリフよ。どうして貴女は、いつもいつも私の邪魔をするの?それも今回は仲間を連れてくるなんて。さすが、『天才』が考えることは違うわね」

 

サヨは吐き捨てるように言い放った。

 

「違うよ!私はリゲル団と戦いに来ただけだよ!おねーちゃんがここにいるなんて思いもしなかったよ!どうしておねーちゃんがここにいるの……?」

 

「そんなのきまっているじゃない。この私が、リゲル団のリーダーだからよ」

 

「リゲル団のリーダー?嘘だよね、おねーちゃん!嘘って言ってよ!おねーちゃん!」

 

涙交じりに叫ぶヒナ。だが現実は非情である。サヨは大声でヒナを怒鳴りつけた。

 

「『おねーちゃん』だなんて軽々しく呼ばないで!あの日(・・・)からもう私はヒナの姉ではなくなったのよ!今ここにいるのはリゲル団のリーダーとしてのサヨであり、貴女を憎む一人の女としてのサヨなのよ!」

 

「……!」

 

ついにヒナから言葉が失われた。だが、言いたいことや彼女の感情はすべて涙となって滴り落ちている。

 

「……いいかしらヒナ、貴女に姉として最後の言葉を掛けてあげるわ。もう二度と、リゲル団にも私にも関わらないでくれないかしら?私には私の生き方がある。双子といえど、ヒナにそれを指図される権限はない。それにも関わらず、私やリゲル団に関わろうというのであれば、命の保証はしないわよ」

 

サヨはあまりにも冷たい言葉を残し、アヤとヒナの横をすり抜け部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ヒナはずっとボケっとしていた。ポケモンセンターに戻ってもずっと宿泊している部屋に閉じこもり、全く変わらずご飯も手に漬けようとしない。まるで魂が抜けた抜け殻のようである。

 

「ヒナちゃん……。サヨさんのことが相当ショックだったみたいだね」

 

アヤはヒナのことを心配しながらも、その日の夜、ポケモンセンターの前に設置されているポストに茶封筒を入れた。中身は勿論、研究所で手に入れた謎の資料である。そして、その後アヤはマリナ博士に電話を入れた。

 

「もしもしマリナ博士ですか?あっ、久しぶりです。……あっ、はい、それでかくかくしかじかで……。はい、よろしくお願いします」

 

アヤはマリナ博士への電話を切ると部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいま……」

 

アヤが宿泊している部屋に戻ると、電気はついておらずそこは真っ暗闇であった。そして、その中でヒナはベッドに腰かけ、ベッドに腰かけて何かを見ていた。

 

「ヒナちゃん……?何見ているの……?」

 

ヒナはアヤに声を掛けられると、慌てて何かが入った布袋をバッグに押し込んだ。

 

「ハッ!アヤちゃん!な、何でもないよ!さぁ、今日は色々あったし、もう寝よっか!」

 

その顔は笑顔であるが、空っぽな、無理やり作られたもののように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、アヤはふと目が覚めた。今日は色々とありすぎて、なかなか深い眠りに漬けない。

 

「はぁ……、ヒナちゃん大丈夫かなぁ」

 

アヤの頭はリゲル団のことなどどうでもよくなるくらい、ヒナのことで一杯だ。

 

「元気になってくれるといいけど……」

 

何気なくヒナの寝顔を見ると、心なしか悲しげな表情をしている。と、その時アヤの目にヒナのバッグが飛び込んできた。

 

「そういえば私が部屋に戻ってきたとき、ヒナちゃん慌てて何かを隠していたよね。何が入っているんだろ……?」

 

アヤは悩んだ。気になることは気になるが慌てて隠したということはアヤには見せたくないものということだろう。普段なら気になるのを我慢できたのだろうが、アヤも疲れていたせいか正常な判断ができなかった。好奇心が勝ってしまったのだ。

 

「ちょっとだけなら……いいよね……」

 

アヤはヒナを起こさないようにそっとバッグを手繰り寄せ、その中からヒナが隠した布袋を取り出した。触った感触だと、中には小さな金属片がびっしり詰まっているようだ。

 

「なんなのかな……?」

 

アヤはその中から一つの金属片を取り出し、それを図鑑のライトで照らした。すると明かりの中にはジムバッジが浮かび上がってきたのだ

 

「嘘でしょ……。もしかしてこれって……」

 

アヤは次から次へと中にあるものを取り出してはライトで照らした。驚くべきことに袋の中は、すべて他の地方のジムバッジだったのである。

 

「ヒナちゃん、こんなにジムバッジを持っていたなんて……」

 

彼女はヒナの寝顔を見ながら呟く。するとその時、手に今までとは違った感触が当たった。

 

「何これ……?」

 

袋からとりだすと、それは一枚の紙であった。さらに、そこには何か文字が書かれている。アヤはそこに明かりを照らし、それを読んだ。

 

「えっと……、『ヒカワヒナをジムリーダーとして認める:ポケモンリーグ協会』……。うっそ、ヒナちゃんてジムリ——」

 

「何見ているの……、アヤちゃん……」

 

と、その時間が悪くヒナが起きてしまった。

 

「ヒナちゃん……!」

 

アヤとヒナの目が合う。すると、ヒナはハッとした表情でアヤから彼女が手にしていた紙と袋を奪い取った。

 

「何見ているの、アヤちゃん!」

 

その表情は怒りと涙が混ざったものだ。こんな悲痛なヒナの表情は見たことない。

 

「どうしたの……、ヒナちゃん……?ジムバッジをこんなに持っている上、ジムリーダーにも選ばれていたなんて凄い事なのに……」

 

「アヤちゃん……、本気でそう思っているの?」

 

ヒナは震える声でアヤに迫る。

 

「へっ……。どういうこと……?」

 

「アヤちゃんのバカ……。アヤちゃんのバカァァァァァァ!」

 

暗闇に、ヒナの叫びが響く。そして彼女は荷物をかき集めるとそれを抱え、部屋の外に飛び出してしまった。

 

「ヒナちゃん!」

 

わけもわからぬまま取り残されたアヤ。ヒナは、朝になっても戻ってこなかった。

 




紗夜さんのBGMのイメージはマグマ団アクア団のリーダー戦。

後、研究所の合言葉も何か暇だったら考えてみてください。本文中に割と強調してあるけど
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