バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。 作:なるぞう
数日待ってみたが、ヒナが戻ってくる様子はない。
「勝手にバッグ漁ったのは私だし、嫌われちゃっても仕方ないか……」
ついにヒナとの再会を諦めたアヤ。さらに運の悪いことに、ホマチシティのジムリーダーも当分戻ってこないという。こうなってはもうここにとどまる意味はない。結局彼女は、一人でホマチシティを発った。
数日後、シンシュー地方唯一の水道をムクホークの低空飛行で通過したアヤは、次のジムがある街ハルサメシティへとたどり着いた。ハルサメシティは古くより町北部に位置する『レックウ寺』を中心にして栄えてきた門前町。ここは昔ながらの街並みがほとんど当時のまま保存されていることでも有名であり、その景観を損なわないようにポケモンセンターやポケモンジム、その他の施設やお店、さらには民家に至るまで、すべての建物が昔ながらの街並みにマッチするようなデザインになっているのだ。またハルサメシティはシンシュー最大の都市という側面も持っているため、常に賑わっている。しかし、今のアヤにとってそれはただの雑音に過ぎない。
「はぁ……、ヒナちゃんがいれば『あそこに行こう!』とか『るんってきたー!』とかってなっていたんだろうな……」
今のアヤが望むものは周囲のにぎやかさではない。すぐ隣の賑やかさが何よりも欲しかった。だが、それはもう叶わない願いである。アヤはトボトボとハルサメシティーのポケモンセンターに歩いて行った。
次の日の午後、アヤはハルサメシティジムのフィールドに立っていた。ここのジムリーダーはハグミという格闘タイプを好んで使う少女。聞くところによれば地元のソフトボールチームのキャプテンでもあり、実家はハルサメシティでも人気のコロッケ屋だという。
「さぁ!ハグミといっしょにメラメラ燃え上がるバトルをしよっ!」
ハグミはガッツポーズをとり、フィールドに響く明るい声で叫んだ。しかし、対するアヤはノーリアクション。うつろな目で宙を眺め、戦いの前にもかかわらずボケっとしていた。
「だ、大丈夫!?具合悪いの?」
ハグミも何か異変を感じて、慌ててアヤに駆け寄り方をたたく。
「はっ……!ごめん、考え事しいてつい!」
ようやく我を取り戻したアヤは無理やり笑顔を見せた。
「そっか。それならよかった!でも、あんまり無理しないでね」
ハグミはほっと胸をなでおろすとフィールドの向こうに戻り、ポケットからモンスターボールを取り出す。しかしその矢先に、アヤの意識はまた明後日の方向に行ってしまった。
(はぁ……、今日はヒナちゃんはいないのか……)
アヤはフィールド脇のベンチを見ながらため息をつく。だが、その時一匹のポケモンの叫びが響き渡った。ハグミの方を見れば、彼女はすでにポケモンを出している。そのポケモンの名前はゴウカザル。スピードとパワーを兼ね備えた強敵だ。
「いけない!私もポケモントレーナーなんだから、一人でも頑張れるようにしなくちゃ!お願い、ムクホーク!」
「ホーーーク!」
アヤがボールを投げるとムクホークの勇ましい鳴き声が響いた。それは他者を威圧するかのような迫力である。
「ムクホークか、相性は不利だけど負けないよ!ゴウカザル、火炎放射!」
先手をとったのはハグミ。ゴウカザルの口から灼熱の炎が放たれる。しかし、それにかかわらずアヤの頭はヒナのことで一杯で、まったく状況がわからずボケーっと見ているだけ。ムクホークへの指示なんてみじんも考えていない。
「ホークッ!」
こんなのまともに食らったらただじゃすまない。ムクホークは自分の判断で素早く回避し、その勢いで電光石火の勢いでゴウカザルに突っ込んだ。
「考えなしに突っ込んでも無駄だよ!ゴウカザル、連続で真空波!」
「カァーッ!」
だが、それと同時にゴウカザルの拳から無数の真空の波が放たれ、ムクホークに襲い掛かる。ムクホークも巧みにそれをかわす。だが、3発ほどかわしたところでついに被弾。それを皮切りにムクホークは次々と真空波に当たってしまった。
「ムクホーク!」
ここでアヤはようやく状況を掴んだ。気が付いてみればかなり押されている。
「ゴウカザル、もう一度火炎放射!」
ここで無慈悲にもハグミが追撃を仕掛けてきた。
「どうしよう、このままじゃ……!えっと……」
アヤは慌てて胸の前で腕を交差させ、片腕を空高くつき上げた。何も考えずに、苦し紛れに放つZワザだ。
「いくよムクホーク!私たちのゼンリョクの技!ファイナルダイブクラッシュ!」
アヤのZリングとムクホークが持つヒコウZが共鳴し大いなる力を生む。ムクホークはその力を身にまとい、火炎放射もふりきりゴウカザルに突撃。これで勝負あった、アヤはそう思った。だが次の瞬間、彼女は驚くべき光景を目にしたのだ。
「インファイトで受け止めて!」
なんとゴウカザルは両足で地面にふんばり拳を高速で打ち付け、あろうことかムクホークを弾き返したのだ。
「うっそ!Zワザが……」
Zワザを破られたムクホークは吸い寄せられるように地面に堕ちた。
「ホーク……」
火炎放射の中に無理やり突っ込ませたり、真空派を何発も受けたりしたせいかムクホークの体力は底をつきかけている。この瞬間、アヤの頭に『敗北』の2文字が浮かんだ。
「私って一人だと何もできないんだな……」
彼女の目の前がにわかに真っ暗になる。すると、どこからか声がした。
「……ちゃん!……ヤちゃん!ねぇアヤちゃんってば!」
「えっ……!」
アヤは耳を疑った。この声には聞き覚えがある。ずっと待ち望んだあの声だ。これは決して幻聴ではない。確かにその声はアヤのそばにあるのだ。
「なんでもう勝負を諦めているの?まだムクホークはひん死じゃないよ」
その声でアヤの視界が一気に晴れる。するとその先にヒナの顔が姿を現した。
「ヒナちゃん!どうしてここに!?」
決して幻ではない。今、確かにアヤの目の前にヒナの姿があるのだ。もう二度と見ることができないと思われた、あの無邪気な顔が確かにあるのだ。
「私さ、ここ数日ずっとアヤちゃんを探していたんだよね。アヤちゃんの写真をみせながらいろんな人に、アヤちゃんの姿を見なかったかって聞いて回ったんだ。そしたらさ、さっきジムの近くで日向ぼっこしていたおじいちゃんが、アヤちゃんがジムに行ったってこと教えてくれたの。私もまさかまたアヤちゃんと会えると思ってなかったよ。奇跡って、本当に起きるもんだね」
「私を探してたの……?なんで……?ヒナちゃん……、わたしのところ怒ってないの……?」
「あぁ、バッグの中を見られたこと?アレはもういいよ。私もさ、あの時は頭の中がモヤモヤしたものがグルグルしてて、なんかこうグチャグチャって感じで、何をどうすればいいかわからなかったんだ。ごめんね、アヤちゃん」
「うぅ……!ヒナちゃん……!」
アヤはヒナに顔をうずめワンワン泣いた。その涙の量はジムを海に買えてしまう勢いだ。
「アハハハ!くすぐったいよ!アヤちゃん、今はジム戦の途中でしょ!」
そしてヒナからも光のような笑顔がこぼれた。ここにようやく二人はまた出会うことができたのである。
「なるほど……、アヤさんは友達とケンカしていたから元気がなかったんだね。くわしくはよく分からないけど仲直りできてよかったよ!」
「ゴウ」
それを見たハグミとゴウカザルも、フィールドの端で笑みを浮かべた。
「よし、気を取り直していくよ!」
涙をすべて流し切り、完全復活を遂げたアヤ。もはや先ほどまでの暗い雰囲気はない。
「うんうん、元気が出てよかったよ!ハグミも嬉しい!バトルはやっぱりお互いに元気いっぱいにやらないと楽しくないからね!さぁ、ゴウカザルもう一回いくよ!」
ハグミのゴウカザルとアヤのムクホークが再び対峙する。するとヒナはアヤのそばに寄った。
「いい、アヤちゃん。分かっていると思うけど、ムクホークの体力は少ないから気を付けてね」
「うん。だからブレイブバードをきめて一気に決着をつけたいと思う」
「それはダメだよ。ブレイブバードはすごく強い代わりに、ダメージの反動で技を使ったポケモンにもダメージを与える技だから、今のムクホークじゃ反動に耐え切れないよ」
「そ、そうだったの!?全然知らなかった……。やっぱりヒナちゃんってすごいな、なんでもしっていてさ」
「まぁ、アヤちゃんより私の方が強いからね」
ヒナはそれだけ言い残すと、フィールド脇のベンチに座った。最後の言葉だけは妙にとげとげしいが、これも彼女なりの応援だと思えば大して気にならない。これで舞台は整った。バトル再開だ。
(もうムクホークの体力も少ない。こうなったら徹底的に攻めて短期決戦だ!)
守りを捨てた戦いなどアヤにとって初めてのこと。ある意味賭けといっても過言ではない。だが、今のアヤに思いつく勝ち筋はこれだけ。あとはムクホークを信じるしかない。
「ムクホーク、インファイト!」
「ゴウカザル、ストーンエッジ!」
ムクホークが前足をゴウカザルに向け迫ると、地面からその動きを遮るように何本もの鋭い岩が突き出す。ストーンエッジはゴウカザルの盾となり、ムクホークのインファイトを防いだ。
「もう一回、ストーンエッジ!」
そしてさらなる追撃。ムクホークの真下に亀裂が走る。
「電光石火で突っ込んで!」
ストーンエッジはムクホークの真後ろを掠った。回避成功。ムクホークはそのまま、目にもとまらぬ速度でゴウカザルに突っ込んだ。
「ホーク!」
ムクホークはゴウカザルをとらえると、自身の翼や体、足やくちばしを一心不乱にぶつけまくる。
「あの技は間違いない、『がむしゃら』だ!いけ、アヤちゃん!ムクホーク!」
ムクホークの猛攻を見て思わずヒナは叫んだ。がむしゃらは自分のダメージが減っているほどダメージが上がる技。ボロボロの体から放たれるその威力は想像を絶する。
「ゴウカザル、真く——」
「ムクホーク!電光石火!」
ゴウカザルの真空波が放たれる直前、ムクホークの体がゴウカザルを突き飛ばした。
「カーッ!」
ゴウカザルは空き缶のように吹き飛ばされると、ハグミのすぐそばを通り過ぎ、背後の壁に叩きつけられた。そして、目を回しながらズルズルと床に落ちた。
「あぁ……、ゴウカザル……」
ハグミは肩を落としながらゴウカザルをボールに戻す。つまり、アヤの逆転勝ちである。
「やった!やったよヒナちゃん、ムクホーク!」
「うん!やっぱりアヤちゃんはるんってするね!」
「ホークッ!」
勝利が決まった瞬間、二人と一匹は互いに抱きしめあって勝利を分かち合った。すると、そこへ笑顔のハグミがやってきた。
「対戦ありがとうアヤさん。ハグミ、負けちゃったけどすごい楽しかった!だからそのお礼に、この『ガッツバッジ』をあげる!」
人の腕と力こぶを模した、元気あふれるデザインのバッジがアヤの手に渡る。
「それから、二人の仲直りの記念に……。じゃじゃーん!この技マシンもあげるよ!この技マシンの中身は『ビルドアップ』。体を一時的に鍛えて攻撃と防御を同時にパワーアップさせる技なんだ。要するに根性ってことだね!」
さらにハグミの手からアヤに、新たな技マシンも渡った。もうアヤの喜びは最高潮だ。
「やったー!ガッツバッジ、ゲットだよ!」
彼女は空高くバッジを掲げ、感情を爆発させた。
ジムからポケモンセンターに戻るとき、二人は仲良く歩いて帰った。ようやくアヤの願いが再び現実のものになったのである。
「よかった……、ヒナちゃんがまた戻ってきてくれて……」
「私もまた会えてうれしいな。やっぱ、アヤちゃんを見ているとすっごいるんって感じなんだもん!」
「私もね、ヒナちゃんを見ているとすっごっく、るんって感じるよ!」
時刻は夕方。二人の笑顔は夕日に映え、とてもキラキラしている。この時の道中は、アヤにとって他のどんな時よりも色鮮やかなものだった。楽しい時間ほどあっという間に過ぎるとはよくできた言葉で、ポケモンセンターへの道もずっと短かく感じる。その証拠に二人はあっという間にポケモンセンターにたどり着いたのだ。
「よーし、ポケモンセンターに到着!さ、中に入ってゆっくり休も」
だがヒナは入ろうとはしなかった。
「ねぇ、アヤちゃん。今から公園に行かない?」
「えっ、今から!?」
もう日もほとんど落ちている。一瞬アヤは、またヒナの無茶苦茶が始まったと思った。しかし、ヒナは真剣な表情だ。
「……私の昔話、してあげるよ。もちろんこの前アヤちゃんがみたやつのこともね。知りたいんでしょ、私の過去」
意外な言葉だ。前々から気にはなっていたが、まさか本人の口からそのことが利けるとは思いもしなかった。
「ヒナちゃん……、いいの……?」
「うん、アヤちゃんにならいいよ。それに、もう隠しても意味ないしね」
アヤはヒナに連れて行かれるまま、夜の公園に連れていかれた。今日はちょうど新月で月が見えないず、代わりに無数の星が彼女たちを照らしている。ヒナは自動販売機で二人用の飲み物を買い、一つをアヤに渡した。
「ありがとう、ヒナちゃん……」
アヤはそれを受け取ると近くのベンチに座る。そして寄り添うように、ヒナも座った。
「さーって、お話を始めますか」
ヒナは飲み物の封を切ると、ゆっくりと語りだした。ヒナとサヨの物語を……。
おまけ:はぐみのパーティー一覧(本気モード)
・多分殿堂入り後に何処かで戦えるであろう本気はぐみの手持ちです。名前の横に★が付いているのがエース。ちなみにハグミのキャッチコピーは『メラメラ!熱血バトル!』です。キャッチコピーに相応しい、アツい戦いをご堪能ください。
★ゴウカザル@命の玉
特性:猛火
性格:無邪気
努力値AS252
技
・インファイト
・ストーンエッジ
・マッハパンチ
・オーバーヒート
☆ジャラランガ@ジャラランガZ
特性:防弾
性格:無邪気
努力値:CS252
技
・スケイルノイズ
・インファイト
・火炎放射
・ラスターカノン
☆ゴロンダ@こだわりスカーフ
特性:肝っ玉
性格:陽気
努力値:AS252
技
・捨て台詞
・かみ砕く
・アームハンマー
・地震
☆ルカリオ@ルカリオナイト
特性:不屈の心
性格:臆病
努力値:CS252
技
・ラスターカノン
・波動弾
・悪だくみ
・真空波
☆ローブシン@火炎玉
特性:根性
性格:意地っ張り
努力値:HA252
技
・マッハパンチ
・ドレインパンチ
・冷凍パンチ
・はたき落とす
☆ドクロック@気合のたすき
特性:乾燥肌
性格:意地っ張り
努力値:AS252
技
・不意打ち
・毒突き
・クロスチョップ
・カウンター