バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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今更ながらあけおめでとうございます。年末年始を挟んだり、展開を悩んだりしていたらこんなに遅くなってしまいました。今年も感想や高評価、お気に入り登録などで応援よろしくお願いします!


第二十七話 進化を超えたシンカ

アヤとヒナは、月の楽園でリンコと互いに連絡先を交換して、彼女と別れた。そして2人はレックウ寺があるハルサメシティに再び訪れた。前回ここを訪れた時は2人別々だったため、何気に2人でこの街に行くのは初めでである。

 

 

 

 

 

 

レックウ寺は1000年もの昔にできた、ホウエン地方から伝わったレックウザの石像を祀る由緒正しい寺だ。古くよりこの寺では、レックウザの勇ましさに魅せられた人々がポケモンと共に修行を重ねていた。そして、その修行を終えた人は寺の中で一番偉い老僧から、レックウザの石像を削って作った宝玉を渡されたそうだ。というのも、石像はただの石で作られたものではなく、メガシンカに必要なキーストーンの原石で作られたものなのだ。つまり、老僧が渡した宝玉はキーストーンそのものなのである。長い歴史の中で何個もの宝玉が削り取られたせいで、石像が原型をとどめないほどボロボロになってしまったため、残念ながら現在ではこの風習は無くなってしまった。しかし今でも、他所で作られた物ではあるが、修行を終えた人にキーストーンを渡すという伝統は残っている。また修行の内容も時代の流れの中で変化し、かつてはキーストーンを手に入れるために何年も修行をしなければならなかったものも、ある程度の実力があるトレーナーであるならば1日の修行でキーストーンを手に入れることができるようになっている。そのため、ポケモンジムのように、毎日修行を行う人を募集しているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけでアヤとヒナはハルサメシティに着いた次の日、早速レックウ寺に行った。

 

「うわぁ……」

 

アヤの目の前にあるのはレックウ寺の門だ。しかし、それはアヤが知っている門ではなかった。レックウ寺の門には立派な装飾が施されており、見上げるほど大きい。ハガネールのような巨大なポケモンでも楽々入れるほどだ。

 

「大きなお寺…」

 

「うん…」

 

アヤとヒナは、そこから放たれる厳かな雰囲気に圧倒された。すると、そこに若い僧が話しかけてきた。

 

「お主たち、レックウ寺での修行を望む者か?」

 

「ヒャッ、ヒャイ!」

 

不意に声をかけられ、アヤの声が裏返る。

 

「修行を望む者か?」

 

再び若い僧がアヤに声をかけた。その僧はアヤとあまり歳に違いはないが、どこか大人びた印象を受ける。それに怯えて、彼女は頷くことしかできない。

 

「……そうか。では、強さを示すものを私に見せよ」

 

この寺に入る条件はいくつかあるが、最も簡単な条件はジムバッジを6つ以上入手していることだ。つまり、アヤはギリギリではあるが条件を満たしていることになる。

 

「これでどうですか……?」

 

アヤがバッジが入ったケースを見せると、若い僧は静かに頷いた。

 

「いいだろう……。良いか、挑戦者よ。この寺でお主にやってもらうことはただひとつ。事前に選んだ一体のポケモンとともに、入り組んだ通路の中にいる修行僧を破りながら、一番奥の部屋に行くことだ。さぁ、入りたまえ」

 

「わかりました」

「よーし!張り切っていこー!」

 

こうしてアヤとヒナはレックウ寺の本堂にいよいよ入っていこうとした。だが、ヒナがアヤに続いて寺に入ろうとした時、若い僧が彼女の前に立ちふさがった。

 

「申し訳ないが、挑戦者は1日に1人までと決まっている。無論、付き添いなどもってのほかだ」

 

「そんな〜!どうして〜!アヤちゃんの修行、絶対るんってするのに〜」

 

後ろでは、ヒナが駄々をこねている。そんな騒ぎ声を聞きながら、アヤはサーナイトをボールからだし、一緒にレックウ寺の本堂に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ここで改めて修行の内容をおさらいしよう。若い僧からアヤが言われたことは要するに『1匹のポケモンだけで、寺に作られた迷路を攻略し、道中のトレーナーを倒し、最奥部の部屋に行くこと』だ。

 

(なんだ……。結構簡単じゃん)

 

アヤは内心レックウ寺を侮っていた。しかし、間もなくその考えは覆されることになった。

 

「なに……この人たち……。ちょっと強すぎない……?」

 

1人目の修行僧とバトルに勝った時、アヤは冷や汗が止まらなかった。まさかサーナイトが有利なはずのゴーリキーに追い詰められるとは思いもよらなかったからだ。しかし、こんなのレックウ寺の修行の序の口に過ぎない。道中で出会うトレーナーは今の人以上に強い人ばかり。さらに寺の内部の迷路も想像以上に複雑で、行きつく先は大体行き止まり。そのため、アヤの精神や集中力もどんどんすり減っていく。それでも、傷薬をサーナイトに何度も使いながら進んでいくが、もう帰りたくて帰りたくてしょうがなかった。

 

「いつになったら終わるのこれ……?ヒナちゃ~ん、助けてよ~!」

 

迷路のど真ん中で、アヤの情けない悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、最奥部に着くまでにアヤは半日以上かかった。

 

「何とか……、着いた……」

 

寺の中で最も広いここで、疲れた顔のアヤが目にしたものは部屋の両脇で綺麗な姿勢で控える十人以上の修行僧。そして、部屋の一番奥で気の杖を片手に、アヤを待ち構える老僧であった。

 

「よく来たな、若き者よ。私はホウセン。このレックウ寺の長だ。」

 

ホウセンは見た目こそ年老いているが、彼の穏やかであり鋭い目はまだ若いころの活気を残している。そして、その目でアヤをじっと見ながらホウセンは低い声を発した。

 

「挑戦者よ、ポケモンバトルに最も大切なものは何かわかるか?」

 

「大切なもの……?それは……えっと……」

 

「まぁ、急に言われてもわからないだろう。だが、これだけは確実に言える。この私に勝てるトレーナーは、それを心得ている者だけだと。さぁ、戦いを始めよう」

 

ホウセンがスッとボールを出すと、アヤも覚悟を決めるとボールを取り出した。

 

「いけっ!サーナイト!」

 

「……ギャラドス」

 

アヤのサーナイトが場に現れると、ホウセンのギャラドスも現わした。『きょうぼうポケモン』と分類されるだけあり、見ているだけで背筋が凍る恐ろしい風貌である。しかし、怯えていては勝負にはならない。アヤは、震える声を抑えながら必死に叫んだ。

 

「サーナイト!サイコキネシス!」

 

「ギャラドス、アクアテール」

 

サーナイトの細い腕から年動力が発せられる。しかしギャラドスは強靭な尾でそれを殺した。威力は互角だ。すると、それを見たホウセンが呟いた。

 

「ほう……、まだまだ未熟だが、大切なことは心得ているようだな。いいだろう、ここからは少し本気を出すことにしよう」

 

その時、急に彼が持っている杖の一番上に埋め込まれた石とギャラドスが光り輝いた。

 

「えっ……、なに?何が起こるの!?」

 

「サーッ!?」

 

見たこともない現象を前に戸惑うアヤとサーナイト。すると、ホウセンの口角がわずかに上がった。

 

「これがレックウ寺に代々伝わる奥義『メガシンカ』。そして、これがギャラドスがメガシンカした姿、『メガギャラドス』だ」

 

「ギャオーーー!」

 

己の強さを誇示するかのようにギャラドスは咆哮を轟かせる。そして、間髪入れずに怯むアヤとサーナイトに氷の牙で襲い掛かった。

 

「わ、わ、わ、わ!サーナイト、避けて!」

 

「サッ!」

 

寸のところでサーナイトはそれを避ける。だが、次の瞬間にはもうアクアテールが目の前まで迫っていた。もはや、アヤの指示を待っている暇はない。サーナイトは自分の判断でサイコキネシスを放つ。しかし、今度は威力を抑えきれず、サーナイトの頭にアクアテールが直撃。サーナイトは床に頭から叩きつけられた。

 

「サーナイト!」

 

アヤの悲痛な声が響く。どうにかサーナイトはまだ立っているが、相当なダメージであったことは間違いない。次には間違いなくないだろう。

 

「これがメガシンカの力……」

 

初めて目にする圧倒的な力を前に、アヤの額に冷や汗が伝う。だが、ギャラドスはそんな彼女をあざ笑うかのように猛攻を加える。サーナイトも必死に避けながら攻撃の機会をうかがうが、ギャラドスはその暇を与えてくれない。しかし、そう思った矢先ギャラドスの動きが一瞬止まった。

 

「今だ!マジカルシャイン!」

 

一瞬の判断で、サーナイトは強力な光を放つ。だがアヤは見た。その光の中で、ギャラドスが力強く舞っているのを。アヤはこの瞬間ハッとした。

 

「あの動き……、ランさんのフライゴンと戦った時見たことある。まさかこれは、竜の舞!?」

 

アヤの予想は的中であった。ホウセンは、メガシンカで上昇した耐久を活かし、攻撃を受ける覚悟で竜の舞を指示したのだ。

 

「ここまで素早さをあげれば、もうサーナイトは逃げられないだろう。さぁギャラドス、終らせるぞ」

 

「ギャォォォ!」

再びギャラドスの氷の牙がサーナイトに襲い掛かかる。速度も最初の攻撃とはけた違いだ。しかし、『ひん死』の『ひ』の字が見えた瞬間、アヤは閃いた。もはやこれにかけるしかない。

 

「サーナイト、電磁波!」

 

氷の牙の先端が当たる直前で、サーナイトから微弱な電流が発せられた。

 

「ギャッ……!」

 

ギャラドスがマヒになり、動きが鈍った。その隙にサーナイトはテレポートで大きく距離をとる。勿論、テレポートが終わったときにはギャラドスは迫ってきていた。だが、アヤもそのことは想定済みだ。というかむしろそれを狙ったうえでの指示である。

 

「サーナイト、落ち着いてギャラドスを引き寄せて……」

 

「サー……」

 

一見すると自殺行為にも見える采配だ。しかし、サーナイトはアヤを信じ、じっとその場で待機する。そして距離がギリギリまで詰まった時、ついにアヤが動いた。

 

「いくよサーナイト……、私たちのゼンリョクのワザ……『ラブリースターインパクト』!」

 

アクアテールが当たる寸前、渾身のZワザがゼロ距離で直撃。その瞬間、ギャラドスのメガシンカが解け、その巨体は呻きをあげながら地面に横たわった。

 

「……やはり私の目に狂いはなかった。そう、ポケモンバトルにおいて最も大切なのはポケモンとトレーナーの絆。先ほどの戦いも、深い絆が無ければ決してできない大胆な采配であった。お見事だ。」

 

倒れたギャラドスをボールに戻しながら、ホウセンは呟いた。そして、彼はアヤの前に歩み寄ると、懐から美しく輝く石を取り出した。

 

「さぁ、レックウ寺における修行を終えた証としてこのキーストーンを持っていくといい。お主とサーナイトほどの深い絆の持ち主なら必ず使いこなせるはずだ」

 

 

「これがキーストーンか……」

 

「サー」

 

アヤとサーナイトはホウセンから一緒にキーストーンを受け取ると互いに代わる代わる見せ合った。その姿はさながら親友や仲のいい姉妹のようである。

 

「人とポケモンの絆はいつ見てもいいものだ……。お主たちも、その絆をずっと大切にな」

 

その光景を、ホウセンは穏やかな表情で見つめた。

 

「はい」

 

「サー」

 

そしてアヤとサーナイトは彼の言葉に対して、互いに力強く頷いたのであった。

 




本当はここでイヴちゃん出す予定だったんだけど上手く話に組み込めなかったので没になりました。イヴちゃん……、いつかはストーリーに出すから許してね……。
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