バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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第二十九話 カヤユキ山脈の戦い

 ほぼ垂直の断崖絶壁を登ったり、人ひとりが歩くのが精いっぱいの尾根を歩いたりと、カヤユキ山脈は想像の100倍は過酷な道のりであった。しかし、アヤが一番驚いたのはこんなに過酷であるのにもかかわらずかなり多くの人がこの山を登っているということだ。さらにただ一緒に上るだけならともかく、割と頻繁にトレーナーと思われる人に勝負を挑まれるんだからもっと驚きだ。こんな感じでアヤとヒナは、道中にある山小屋に泊まりながら、数日かけてカヤユキ山脈を越えた。そして、彼女たちはようやく厳しい自然から解放されようとしているのだ。

 

「あー、なんか懐かしい風景だな……」

 

アヤは周囲にポツポツと現れ始めた電灯や錆びた立て看板を見て安堵の表情を見せた。アヤたちが今いる場所は『カヤユキダム』というシンシュー最大の水力発電所があるあたりだ。この辺までくれば道も歩きやすいように舗装されており、人の文明を感じさせるものがいくつか姿を見せている。ついでに、遠くの方には明らかに登山客ではないような人影も見えている。これを見たとき、2人は改めて登山の終わりを実感した。が、その人影はどうも怪しい。よくよく見て見ればその人影は、リゲル団の男幹部のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方のリゲル団幹部は、ダムにつながる道のど真ん中でブツブツ呟きながら右往左往していた。

 

 「あー、作戦失敗だ。リンコとかいう女さえ来なければ作戦が成功したのに!作戦が成功したことを手土産にサヨ様に告白するという俺の計画が台無しだ!」

 

実は彼、別の場所で作戦をしようしていたのだが、リンコに邪魔をされて大失敗したためここで憂さ晴らしをしていたのだ。彼にとって一世一代の大勝負がかかった作戦だっただけにあって、そのいら立ちは半端ない。と、その時、リゲル団の男幹部の視界にアヤとヒナが入り込んだ。

 

「おい!お前ら何の用だ!?」

 

虫の居所が悪いせいか、彼女たちと目が合うや否や思いっきり怒鳴りつける。しかし、すぐにその表情は一変。彼は気味の悪い笑みを浮かべた。

 

「おや……?その顔どこかで……?あっ、前にサヨ様に写真を見せてもらったぞ!確リゲル団の要注意人物ヒナとアヤ!そういえばこの2人を倒せば、『なんでも願いを叶える』ってサヨ様が前に言っていたような……。シメシメ、まだ俺の恋は終わってないぜ!さぁ、お前ら!俺とバトルしろ!まずはその弱そうなピンク髪からだ!」

 

弱そうなピンク髪とはアヤのことだ。男幹部はアヤにターゲットを定めると、彼女に拒否権を与えず、ボールを頭上に投げてボーマンダを繰り出した。

 

「いけ、カブト!」

 

それに対してアヤが繰り出したのはカブトだ。

 

「カブーッ!」

 

が、カブトはボールから出るや否やまたアヤの顔面にへばりついた。

 

「んー!離れて、離れて!カブト!」

 

アヤはいつも通り顔から引き離すと、カブトをそっと地面に置いた。戦いの始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バトルが始まって数分がたった。カブトとボーマンダの戦いは激しさを増すばかり——と思いきや、形勢は完全にアヤに傾いている。なにしろ敵の幹部が猛烈に弱すぎるのだ。技を出すタイミングは適当だし、動きは単調。今のアヤが負ける要素はどこにもない。だが、リゲル団幹部はここで思いもよらぬ手段に打って出た。

 

「クソッ!ただここで負けるなんて気に入らねぇ!こうなったらお前らも道連れにしてやる!ボーマンダ、あの崖に竜の波動!」

 

「ンダーッ!」

 

次の瞬間、竜の波動は崖に直撃。そして、その衝撃で砕けた1つの岩がアヤとヒナの真上に降りかかってきた。

 

「うそ!待って待って待って!ヒャァァァァァ!」

 

「わ、わ、わーーーーーーー!」

 

アヤとヒナは絶叫をあげ、思わず目をつむった。だが、彼女たちに落ちてきたのは巨大な岩ではなく、小さな破片だけ。不思議に思い、彼女たちが顔をあげると目の前には見覚えがない、砂埃で汚れた巨大な鎌を両手に携えたポケモンが悠々と立っていた。

 

「あれ……、私のカブトは?それに、何このポケモン……?」

 

アヤはすかさずそのポケモンのことを図鑑で調べた。図鑑によればこのポケモンは、カブトの進化系で、カブトプスというらしい。

 

「もしかして、カブト進化したの?あと、私たちを落石から守ってくれたのも——」

 

と、アヤが言いかけるとカブトプスは思いっきりアヤを抱きしめてきた。彼女の答えは正解だったようだ。

 

「苦じい……!カブトプス、離れて!」

 

アヤが呻きをあげるとカブトプスは、彼女を解放し再びボーマンダとにらみ合った。

 

「なに、進化だと!?ふざけんなぁぁぁぁ!」

 

対する幹部はやけくそになってボーマンダを突っ込ませてくる。だが、カブトプスは当然のごとくそれをかわし、シザークロスを叩き込んだ。あっけなく墜落するボーマンダ。アヤの完勝である。

 

「そんな……、俺の恋が……!サヨ様が……!ちくしょー!覚えておけよ!」

 

リゲル団の幹部はさらにいら立ちを募らせながら、何処かへと走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後2人はカヤユキダムの上を通りながら山を下り、カヤユキ山脈のふもとにある『ユキゲタウン』にたどり着いた。ユキゲタウンは無数の花が咲き誇っている街だ。赤や青や黄色……、その他様々な色の花で彩られた町はまるで一種の芸術である。ちなみにこの街にはシグレタウンと同様にポケモンセンターもフレンドリーショップもない。そのかわりに民宿がポケモンセンターの代わりを、そして『リュウセイ堂』という質屋がフレンドリーショップの代わりとして旅人をサポートしている。

 

 

 

 

 

 

というわけで、アヤたち過酷な山道で消耗した道具を買い足しに、リュウセイ堂にやってきた。木の香りが漂う店の内部には、本職が質屋なだけあって珍しいものが所狭しと並べられている。

 

「うわ~、これが初期のモンスターボールか……。それでこれが、私が生まれたころのシンシューのジムバッジ……。今と形が全然違うや。それでこれが……」

 

こんな調子でアヤは、必要な道具を買った後もあれこれ店の商品をあれこれ見て回っていた。その時、なんとなく彼女が顔をあげると、目の前の棚で黄金に輝くトロフィーやメダルの数々を見つけた。これも何かの商品なのかと思えば、すぐそこに『非売品』とかかれた紙が貼ってある。

 

「それじゃぁこれは誰のトロフィーなんだろう……」

 

アヤがそう呟く。すると急に、店主の白髪のおばあさんがアヤの後ろに現れた。

 

「これはな、私の孫が昔取ったトロフィーやメダルなんだよ。孫はポケモンバトルが強くてな、出た大会はすべて優勝。勿論今でも負けなしの実力を持っている。私の孫にかなうトレーナーは世界のどこを探してもいないだろうね」

 

店主のおばあさんは声高らかに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アヤとヒナはリュウセイ堂の商品に見とれてしまい、結局店の外へ出たのは1時間後であった。

 

「あー、面白かった!」

 

「うん!るんって感じのものがいっぱいだったよ!」

 

リュウセイ堂の感想を仲良く語り合うアヤとヒナ。ところが2人は話に夢中になるあまり、前をよく見てなかった。そして、店を出てから3分も立たずに、木陰に立っていた少女と正面衝突してしまったのだ。

 

「うわっ!ごめんなさい!」

 

「ケガはない?」

 

2人は大慌てで頭を下げた。

 

「大丈夫よ!そっちこそケガはない?」

 

すると木陰で休んでいた少女の元気のいい声が聞こえた。幸いケガはなさそうだ。しかし、この声には聞き覚えがある。そう、ホマチシティで出会ったお金持ちの少女ココロである。まさかの再会だ。特にヒナは目を輝かせて、これでもかというくらい騒いでいる。

 

「うわ~、久しぶり~!ココロちゃんはなんでここにいるの!?」

 

「久しぶりね、ヒナ。私はこの街に少し用事があってきたの」

 

「用事?なになに?どんな用事!?」

 

「それはヒミツよ!でも、世界を笑顔にするためにとっても大事な用事なのよ!」

 

「えー、きになる~!」

 

「そんなに焦らなくても、ヒナにもそのうちわかるときが来るわ。そんなことよりもヒナとアヤはフラワーロードには行った?」

 

「フラワーロード?」

 

「そうよ、ヒナ!フラワーロードはユウダチシティとユキゲタウンの間にあるお花畑よ。いろんな色のお花が地平線の向こうまで咲いているし、そこを流れる小川やそのせせらぎの音もとってもステキなの!」

 

「ホント!?もっと話を聞かせてよ!」

 

「いいわよ!それじゃぁね……」

 

この後も、ヒナとココロのマシンガントークは続いた。アヤに起きた珍事件や、ココロの旅行先での思い出話、アヤとヒナの手持ちの話。話すネタは尽きない。この間、アヤは完全に蚊帳の外であった。話に入り込む隙はもちろん、相槌を打つ隙すらない。彼女は、2人の話が終わるのを待つしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ヒナとココロのマシンガントークはゆうに3時間を超えた。リュウセイ堂を出たときにはまだ太陽が高いところにあったのに、今やもう半分沈んでいる。

 

「あ~、一杯お話しできて楽しかった~!またね、ココロちゃん!」

 

「また会いましょ、ヒナ、アヤ!」

 

なんだかんだで連絡先をココロと交換したアヤとヒナは、夕焼けに照らされながら民宿に向かおうとした。だが数メートル進んだ時、ココロが2人を呼び止めた。

 

「あっ、そういえば言い忘れてたわ!先週、ホマチシティのジムリーダーがアローラ地方から帰ってきたらしいわよ!アヤはホマチシティのジムバッジを持っていたかしら?もしも持ってなかったらチャレンジしてみればいいんじゃないかしら?」

 

「えっ!それ本当!?」

 

アヤにとってこの上ない朗報だ。なにしろ前回はタッチの差で挑み損ねたのだから、ホマチシティのジムリーダーの帰還は願ってもないことだ。

 

「ありがとう、ココロちゃん!早速挑んでみるよ!」

 

あの日、ジムに貼られていた張り紙のせいで削がれた闘志が再びアヤの中で燃え上がる。次の日、アヤはその闘志を胸に秘めながらヒナとともにホマチシティへの道を再び歩みだしたのであった。

 

 

 




おまけ:彩の手持ちまとめ

長らくサボってきたアヤの手持ちのまとめ。特性と性別、主な技、性格(キャラ的な方)をまとめました。


☆ドダイトス(♂)
特性:新緑
主な技
・ウッドハンマー
・地震
・ロッククライム
・葉っぱカッターなど……
性格
・ナエトル時代はおっちょこちょいでドジだったが、アヤとの旅でたくましく成長した。ただし、1番道路の一件からコラッタだけはいまだに苦手。(第二話参照)

☆サーナイト(♀)
特性:トレース
主な技
・サイコキネシス
・マジカルシャイン
・テレポート
・電磁波など……
性格
・アヤやヒナとは真逆で落ち着いており常に冷静な性格。オボンの実が大好物。

☆カブトプス(♂)
特性:カブトアーマー
主な技
・シザークロス
・アクアジェット
・岩石封じ
・マッドショットなど……
性格
・ボールから出てくるたびにアヤに抱き着く癖がある。当初はエサと勘違いして抱き着いていたが、今では彼なりの愛情表現。

☆ムクホーク(♂)
特性:威嚇
主な技
・ブレイブバード
・電光石火
・インファイト
・がむしゃらなど……
性格
・彩ちゃんにガチ恋している。彩ちゃんが喜ぶ顔を見るのが趣味。夜寝る前に、彩ちゃんとの結婚式を妄想するのが日課。

☆ハガネール(♂)
特性:頑丈
主な技
・岩雪崩
・アイアンテール
・炎の牙
・ギガインパクトなど……
性格
・見かけに反して人懐っこい。れっきとしたオスだがメスっぽい行動をとることも多く、いわゆるオネェ。姉御肌で面倒見はいい。






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