バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

33 / 66
第三十二話 古代の巨神

 リンコの獅子奮迅の暴れっぷりもあり、リゲル団のアジトに簡単に侵入することができた。ところが、アヤとヒナはリンコの暴走について行くことができず、あっという間に置いてきぼりにされてしまった。

 

「リンコさんどこ~?」

 

「リンコさーん!」

 

2人はリンコの名前をしきりに呼びながら、迷宮のようなアジト内を行ったり来たり。当然、途中で鉢合わせたリゲル団員を倒しながらの捜索なので、だんだん2人も面倒になってきてしまった。しかし、ここでヒナが戦わずにアジトを歩く妙案を思いついた。

 

「アヤちゃんと別行動していた時に、ビビッて来たからコレ買ってみたんだよね~」

 

と、言いながら彼女がバッグからとりだしたのは、ヒナの髪色と同じカラーのウィッグだ。ヒナは物陰に隠れると、ササっとそれを頭につけ、ちょちょいと髪をいじり、再びリゲル団の服を着た。

 

「——どうかな、アヤちゃん?」

 

「ヒナちゃん……、だよね……?」

 

この時、アヤは腰を抜かした。彼女の目の前にいるのはヒナではない。まさしくサヨの姿そのものだ。双子だからできる、完ぺきな変装である。唯一の欠点は、服装が本物のサヨと異なることだが、それに対してヒナは『リゲル団員は頭が悪そうだから平気だよ!』といって気にもしない。

 

「よし、それじゃあアヤちゃん行こう!」

 

そして、威勢よくまたアジト内を歩き出した。しかし、生真面目そうなサヨの顔で無邪気なヒナの声を聴くとものすごい違和感である。

 

「大丈夫かなー」

 

アヤは内心不安だ。何となくだがどこかでぽろっと正体がばれてしまいそうがする。だが、そんな彼女の不安をよぎるように目の前では五人の男性リゲル団員が道をふさいでいた。

 

「アヤちゃん、ショボ~ンってなって」

 

ここでヒナはアヤの耳にそっと口添え。アヤは何のことだかわからぬまま、とりあえず顔を伏せた。すると、ほぼ同時にリゲル団員とヒナの会話が彼女の耳に飛び込んだ。

 

「サヨ様!いつの間にここへ……!?奥の自室で、あの連れてきた博士と最終兵器の調整をしているのでは?」

 

「えぇ、私もその予定だったのだけれど、あなた達があまりのも役立たずだったので、私自ら侵入者を確保することにしました。ほら、私はもう1人侵入者を捕まえましたよ」

 

ヒナはちらりとアヤにアイコンタクトを送った。どうやらヒナの中でアヤは、サヨに捕まったという設定になっているらしい。

 

「うぅ……」

 

とりあえず、アヤはうめき声をあげてみた。そして、一方のヒナは巧みな口車でリゲル団員を惑わし続けた。

 

「あなた達はどうしてそんなに大人数いるのにもかかわらず、侵入者を1人も捕まえられないの?」

 

「すみません、サヨ様」

 

ヒナの演技は実に見事である。口調も声もそのまんまサヨだ。リゲル団員は目の前にいるサヨの正体を疑おうともしない。それどころか、彼女に頭を下げて必死に謝っている。

 

「——良いですか、謝るのは誰でもできます。本当に謝る気があるのならば残った2人の侵入者を捕まえてきなさい。もしも、捕まえることができたら、その時は私がるんっとすることをしてあげますから」

 

さらに、ヒナは止めに絶妙な角度の上目遣いでリゲル団員を見つめた。そのせいで浮かれまくったリゲル団員は、鼻の下を伸ばしながら侵入者を捜しに明後日の方角に走っていったのであった。これがヒナの罠とも知らずに……。

 

「よーし、作戦成功!アヤちゃん、次もこの調子でよろしく~!」

 

その後も、アヤとヒナは今と全く同じ戦法で鉢合わせするリゲル団員を華麗にかわしながら、どうにかこうにかしてリンコと合流したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンコと合流した時、ヒナは変装を解いた。そしてアヤとヒナは今度こそリンコとともに、サヨがいる部屋に向かった。しかし、あと一歩でサヨの部屋にたどり着こうというところで、3人は再び重厚な扉に道を遮られてしまったのだ。

 

「……」

 

リンコはすかさモンスターボールを手に取った。もはや破壊する気満々だ。しかし、その時どういうわけか扉が開いた。3人は恐る恐る中に入る。入った先はサヨの部屋であった。

 

「ここまでよく来たわね。本来は招かざる客ですが、特別に客人として歓迎してあげましょう」

 

サヨは大画面をバックに3人の方を見ながら腕を組み、真顔で立っている。そして、そのすぐ隣にはマリナ博士もいた。

 

「マリナ博士!」

 

「おねーちゃん……」

 

「抵抗ができない人を……自分の都合がいいように利用するとは……、許せません……。この……人間のクズめ……!早く博士を……解放してください……!さもなければ……貴女の首を引っこ抜いてやる……!」

 

それを見るが否やアヤ、ヒナ、そしてリンコは、マリナ博士を救出すべくモンスターボールを取り出す。しかし、サヨは一切動じず僅かな嘲笑をみせた。

 

「そんなに早まることはありません。私はマリナ博士を傷つけて従わせるような野蛮な真似はしていません。すべての計画が終わった時、無傷で彼女をお返しすると誓いましょう」

 

「それならどうして、マリナ博士はサヨさんの言うことを聞いているの!?」

 

アヤが叫ぶとマリナ博士が何かを言おうとした。だが、寸前でサヨがそれを遮る。

 

「そうですね、マリナ博士が自分の意志に反してリゲル団に従っている理由は、私が『従わなかったらシグレタウンの住人を見せしめに始末する』といったからかもしれませんね」

 

「そんな……」

 

「アヤさん、私は何か嘘を言いましたか?私はマリナ博士を従わせるのに、かすり傷すら負わせていませんよ」

 

「うっ……」

 

サヨの手痛い反撃に、アヤは黙ることしかできなかった。すると彼女はリモコンをポケットから取り出し、そのスイッチを押す。と、画面に何やら難解そうな設計図が映し出された。

 

「マリナ博士」

 

そうサヨがいうと、マリナ博士は渋々ながら設計図のことについて話し出した。

 

「これは『TRMK996』という兵器。知識を司る神ユクシー、意思を司る神アグノム、感情を司る神エムリット……、そのクローンを特殊なケースに入れそれぞれの力を抽出。そして3匹の力の配分を調節し、それを脳に直接作用する電波として飛ばすことで広い範囲の人間を一度に、自分が望むような能力と人格を持つ人間に作り替えられる兵器だよ」

 

「マリナ博士の説明でこの兵器のことが分かったかしら。私たちはこの兵器を使って、この世界のすべての人間の能力・人格を、『ある一つの秩序』にのっとり、工場で作られたロボットのように等しい能力・人格を持つ人間に創り変える。そして我々リゲル団が、その新しい世界をコントロールする。これこそ、究極の『平等な世界』!妬みも憎しみも消える唯一の方法なのよ!」

 

サヨはヒナの方を鋭い目で突き刺すようににらんだ。彩にはそれが、まるでヒナに『もう貴女には負けない。負けたくないの!』と言っているように見える。

 

「……」

 

一方のヒナは言葉では言い表せない複雑な表情をしている。その心境はアヤには決してわからないだろう。と、ここで姉妹の無言のやり取りを終えたサヨが口を開いた。

 

「フンッ、まぁいいでしょう。世界は間もなく新しい政界に生まれ変わる運命にあることには、変わりがありませんから。ただ、もしも愚かにも運命にあらがおうというのであれば『リュウコの石塔』の頂上に来なさい。そこに兵器はあるわ」

 

サヨはマリナ博士にアイコンタクトを送り、2つあるワープ装置のうちの奥の装置まで歩かせ、ともにどこかにワープしてしまった。

 

「おねーちゃん!」

 

「マリナ博士!」

 

アヤとヒナも慌てて2人を追いかける。だがアヤはこの時慌てるあまり、奥ではなく手前のワープ装置に乗ってしまったのだ。

 

「アヤちゃん、そっちじゃない!」

 

慌ててヒナはアヤを引き戻そうと、彼女の腕をつかんだがもう手遅れ。ワープ装置は起動し、何処かへと2人をワープさせてしまった。

 

「アヤさん……、ヒナさん……!」

 

リンコも後を追おうとワープ装置に乗ろうとする。しかし、途端に部屋の入口の方が騒がしくなった。リゲル団員たちが追いかけてきたのだ。

 

「こんな時に限って……」

 

リンコは追いかけてきたリゲル団員たちとバトルを繰り広げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、アヤとヒナはリゲル団アジト内のとある巨大な空間にワープされていた。

 

「ここは何だろう……」

 

そこは水色のライトが点々とあるだけで気味が悪いぐらい薄暗く、その中で怪しい機械が規則正しく動いている。そして、何より目立つのは正面の巨大な冷凍室だ。そこは彼女たちがいる空間とはガラスのような透明な物質で遮られており、中では白い巨人のようなポケモンが石像のように氷で固められている。

 

「これってもしかして……、レジギガス……?」

 

「レジギガス?なんか聞いたことあるような無いような……」

 

アヤが冷凍室を見て何気なく呟くとヒナは首をかしげた。

 

「前にマリナ博士の本で読んだことがある。確か、大昔に大陸を縄で引っ張って動かしたっていう伝説が残っている、シンオウの伝説ポケモンだよ」

 

「へぇ、アヤちゃんるるんってくらい物知りだね!」

 

「そんな、私は全然物知りじゃないよ~。えへへ」

 

なんだかちょっと嬉しそうにアヤはヒナの言葉を否定する。だがアヤが自覚してないだけで、彼女が持つ伝説のポケモンの知識は幼い頃よりマリナ博士の影響を受けているおかげでその辺の一般人よりはずっと豊富だ。少なくとも現時点では、ヒナよりも伝説ポケモンに関しては詳しいだろう。アヤの意外な特技である。

 

「あっ、レジギガスで思い出した。レジギガスは確か3体のポケモンを創っているんだよ。その名前は——」

 

その後、ヒナに求められるがままにアヤは得意げにレジギガスのうんちくを披露——しようとしたが、ここで彼女たちは背後に敵の気配を察した。2人がとっさに振り替えると、そこにはリゲル団の研究員たちが立っていた。

 

「ケッケッケ、ようこそ我々の地下研究室へ。どうだい、私たち達が創ったレジギガスのクローンは?素晴らしい芸術だと思わないかい?」

 

顔色が悪い研究員は気味の悪い笑みを浮かべた。ドクロのように痩せこけているせいで、その不気味さは百倍増しである。

 

「芸術……?レジギガスのクローン?何を言っているか全然わからないよ!」

 

突然の来襲にアヤの頭は回らない。すると、先ほどとはまた別の研究員が数人、頬が裂けるように笑った。

 

「我々の使命はこの研究室で、平等な世界の創造のために必要なユクシー、アグノム、エムリットのクローンを創ること。その為に、我々は多くのポケモンを犠牲にしながら、その遺伝子の解析を行ってきた」

 

「だが、遺伝子の解析を進めるうちに我々はポケモンのクローンの無限の可能性に気が付いてしまった。ゆえに私たちは、本来創るべき3匹のポケモン以外にも、そこで凍っているレジギガスのような伝説ポケモンのクローンを数多く創り上げたのだよ。リゲル団の軍事力を強化するため、そして研究者としての知的好奇心を満たすためにね」

 

研究員たちの顔は誰もが狂気に満ち溢れている。その姿はまさに欲望に狂った者の成れの果てといえるだろう。

 

「酷いよ……。意味が分からないよ!自分のわがままのために、ポケモンの命を玩具にするなんて許せない!」

 

ここで、研究員の言葉を聞いた日菜の怒りが爆発した。しかし、研究員たちはそれに一切怯む様子もない。それどころか、ポケットからモンスターボールを取り出したのだ。

 

「ふっふっふ、理解されなくても結構だ。自分が狂っていることは、自分が一番よくわかっている。それゆえに、自分の知的好奇心はブレーキが利かないんだよ。今、我々が知りたいのは人間とポケモンの遺伝子の融合。お前らには、その実験のための尊い犠牲になってもらおうか」

 

研究者たちは一斉にモンスターボールを投げる。出てきたポケモンはジバコイルやマタドガス、ルカリオやファイアローなどをはじめとする10体ほどのポケモンだ。対するアヤとヒナはそれぞれムクホークとポリゴンZを繰り出した。

 

「ルカリオ、波動弾」

 

「ポリゴンZ、目覚めるパワー!」

 

「ムクホーク、燕返し!」

 

「ファイアロー、ブレイブバード!」

 

アヤとヒナは、圧倒的な数の差をひっくり返すように奮闘した。しかし、バトルが始まってしばらくたった時に放たれた、敵のジバコイルのラスターカノンで流れは変わった。そのラスターカノンはポリゴンZに向けて放たれたものだが、ポリゴンZはそれを回避。さらにほぼ真後ろにいたムクホークも回避、ラスターカノンはアヤめがけて一直線に飛んできたのだ。

 

「アヤちゃん危ない!」

 

足がすくみ、動けなくなったアヤをヒナはとっさに突き飛ばす。おかげでラスターカノンはアヤからは外れた。だが、そのかわりに背後にあった冷凍室のコントロールパネルに直撃してしまったのだ。コントロールパネルは煙を噴き上げながらストップ。冷凍室のレジギガスを覆っている氷はみるみるうちに薄く、脆くなっていった。

 

「これはまずいぞ、レジギガスが動き出す!」

 

けたたましくなるサイレンと不穏な赤色灯に照らされながら、リゲル団の研究員たちはポケモンをボールに戻し、顔色を変え研究室の奥にあるワープ装置に次々に飛び乗った。

 

「ヒナちゃん!逃げよう!」

 

「言われなくても!」

 

アヤとヒナもポケモンを引っ込め、それに続くようにそれに飛び乗る。だが、2人の体はいつまでたってもワープされない。実はリゲル団員の研究員たちは彼女達が追いかけてこられないように、研究員全員がワープしたらすかさずワープ装置を破壊したのだ。

 

「どうしよう……!?」

 

慌てふためくアヤ。それに対してヒナはあたりを見渡し、出口になれそうなところを探す。だがその時、2人の耳にガラスが割れるような爆音が飛び込んだ。とうとうレジギガスが氷から解放され、動き出したのである。

 

「レレレ……ジギガガガ……」

 

無機質な鳴き声を上げ、レジギガスは邪魔なものを破壊しながら、ゆっくりとアヤとヒナの方に向かってくる。

 

「いけ、ラグラージ!」

 

「ドダイトス、ハガネール!レジギガスを止めて!」

 

ヒナとアヤは対抗すべく大柄な3匹のポケモンを繰り出した。

 

「ラーグ!」

 

「ダーッ!」

 

「ネール!」

 

3匹のポケモンは、勇猛果敢にレジギガスに立ち向かう。が、レジギガスはそれを赤子の手をひねるように一蹴。ラグラージもドダイトスもハガネールもいともたやすく、ボールのように吹っ飛ばされてしまった。3匹そろって一撃で戦闘不能である。

 

「ギガギガ……ガガガガガ……!」

 

さらにそれに怒ったのかレジギガスは怪光線を放ち、周囲を薙ぎ払った。アヤもヒナもその爆風に飲み込まれ宙を舞う。

 

「うっ……!」

 

そして、アヤはバックの中身をまき散らしながらがれきに覆われた地面に叩きつけられた。しかし、バックの中身を回収している場合ではない。濛々と立ち込める硝煙の中で光が不規則に点滅しているのだ。それも彼女の目の前で。間違い、レジギガスはアヤの方をじっと見ている。

 

「嘘だよね……、嘘だよね!」

 

アヤはすっかり腰が抜けてしまい、体に力が入らない。しかし、レジギガスはゆっくりとその巨体をアヤに近づけてくる。

 

「レレレレ……」

 

ついにレジギガスは大きくその腕を振り上げた。だが、この瞬間アヤの視界に、先ほどの衝撃でバックから飛び出て、すぐそこで転がっているマスターボールが飛び込んだ。

 

「そうだ!これを使えば……!」

 

その瞬間、アヤは閃いた。気が付けばレジギガスの拳は目と鼻の先にまで迫ってきている。もう迷っている暇はない。アヤはマスターボールを掴むとすかさずレジギガスに向かって投げつけた。

 

「レレレ!レージー!?」

 

無機質な音がまた響く。だが、マスターボールはあっさりとその巨体を自身の中に吸い込んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、時が泊まったかのような無音の空間が広がる。先ほどまでの騒ぎが嘘のようだ。しかし、レジギガスの恐怖が抜けきらないアヤはまだ腰を抜かして震えている。そして、レジギガスが入ったマスターボールはそんな彼女の前に砂埃をかぶって転がっていた。

 

「あれ、アヤちゃん?レジギガスはどこに行ったの?」

 

そこにヒナがやってきた。あれだけ恐ろしい目にあっておきながら、もう平常運転でいられるのが信じられない。

 

「あ……あれ……」

 

アヤはそう思いながら、震える指をマスターボールの方に向けた。

 

「もしかしてアヤちゃん、マスターボールでレジギガスをゲットしたの?」

 

「そ、そうみたい……」

 

アヤはヒナに支えてもらいながら何とか立ち上がると、マスターボールを拾い上げた。

 

「よろしくね、レジギガス」

 

彼女はそう呟くと砂埃を払い、マスターボールをバックにしまい込んだ。そして、2人は何とかこの地下研究室から地上に出られる階段を見つけると、それを使って地上へと出たのであった。

 




これでようやく彩ちゃんの手持ちが全員揃いました。これからも彩ちゃんの冒険と戦いを応援してくれる方は、お気に入りと登録や高評価、感想をくれると嬉しいです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。