バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。 作:なるぞう
「マンムー、氷の牙!」
開幕早々、サヨのマンムーは情け容赦なく突っ込んできた。しかし、アヤは動じない。レジギガスの反則ともいえる破壊力をアヤは信じているからである。
「レジギガス、冷凍パンチ!」
ところが彼女の見込みは大きく外れた。マンムーとレジギガスの拳が激突した瞬間、レジギガスは力負けし、バランスを大きく崩したのだ。
「あれ?どうして……?」
リゲル団のアジトであれだけの恐怖を2人に植え付けたレジギガスがこうも簡単に負けるなんて信じられなかった。
「そういえば……。アヤちゃん!レジギガスはボールから出た後や永い眠りから覚めた後はしばらく本調子が出ないんだよ!メカニズムはまだ不明だけど、そういう研究結果が出ているから気を付けて!」
ここで後ろにいたマリナ博士から衝撃の事実がアヤに伝えられた。
「ど、どうしよう……!」
アヤは悩んだ。要はレジギガスのあの破壊力を見せつけるまで、しばらくの間攻撃を耐え続けなければならないということである。しかし、サヨの様子を見るにそんな暇は全くなさそうだ。
「マンムー、もう一度氷の牙!」
体勢を崩したままのレジギガスに、再度氷の牙が突き刺さる。そして、つづけさまに今度はストーンエッジがレジギガスを襲い掛かった。
「レレレレレレ……」
壊れた機械のような音が響く。それと同時にマンムーはまた氷の牙で突っ込んできた。
「レレ……ジジジ……」
レジギガスの中央部にある目のような部分が怪しく点滅し、ついにレジギガスは倒れた。ほぼ無傷のマンムーを前に、無念の退場である。
「お疲れ、レジギガス」
アヤは、レジギガスをボールに戻した。そして、すかさず次のポケモンを繰り出した。
「いけ、カブトプス!」
「トーップス!」
カブトプスは勢いよく現れる。だが、カブトプスはボールから飛び出すと案の定アヤに抱き着き、頬ずりを始めた。
「んー!ガブドブズ!苦じい!離して……!」
「ブトーッ!」
アヤがうめき声をあげるとようやくカブトプスは鋭い目をマンムーに向けた。
「カブトプス、アクアジェット!」
「マンムー、ストーンエッジ」
刃のごとく鋭い岩が地面からせり出し、次々にカブトプスを襲う。しかし、カブトプスは水をまとった体で素早く岩と岩の間をすり抜け、マンムーの額に突っ込んだ。そして、間髪入れずその頭をジャンプ台に飛び上がり、熱湯を発射した。
「マンムー、地震」
だが、サヨは顔色一つ変えずに次の指示を出す。彼女は、カブトプスが着地した瞬間を『地震』で狩るつもりのようだ。
「ムーッ!ムーッ!」
しかし、マンムーはサヨの指示を無視し、自分の牙をひたすら地面に叩きつけていた。マンムーは混乱状態に陥っていたのだ。原因はレジギガスがひん死になる直前に『怪しい光』を苦し紛れに発動したからである。これはレジギガスが勝手に発動させたので、アヤはこのことを知る由もなかった。しかし、この好機を逃すという選択肢はない。
「カブトプス、マンムーの目の前に岩石封じ!」
マンムーの前に岩石が降ってきた。混乱し、いらだっているマンムーは岩に向かって突進。その隙に、カブトプスはマンムーの下に潜り込んだ。岩石封じは、マンムーの気をそらすためのおとりである・。
「いっけー!アクアジェット!」
「トーップス!」
アヤが叫ぶと、カブトプスはその巨体を突き上げた。そしてカブトプスが華麗に着地を決めた後も倒れたまま、追撃撃は仕掛けてこなかった。
「戻りなさい、マンムー」
サヨはマンムーを引っ込め、次なるポケモンを繰り出した。ルナトーンである。
「トーン……」
三日月型の胴体の真ん中で、深い闇を湛えた赤い瞳がじっとこっちを見てくる。うっかりしていると思わずその中に飲み込まれてしまいそうだ。その感覚を振り払うように、アヤはカブトプスをシザークロスで突っ込ませた。しかし、飛び掛かろうとした瞬間、カブトプスはルナトーンを目前にしてサイコキネシスで受け止められ、動きを封じられた。
「ルナトーン、催眠術」
サヨの声とともに、ルナトーンの目が赤く光る。カブトプスは動きを封じられたまま、深い眠りに落ちてしまった。
「カブトプス、起きて!カブトプス!」
アヤがどんなに呼びかけ続けても全く起きる気配もない。
「ルナトーン、パワージェム」
しかし、サヨはそこに容赦なく攻撃を叩き込んだ。パワージェムの直撃を受け、カブトプスの体は宙を舞う。さらにルナトーンは宙のカブトプスにサイコキネシスを撃ち、地面やあたりのがれきに叩きつけまくった。
「これで止めです。ルナトーン、サイコキネシス」
「トーン……」
止めの一撃がカブトプスに襲い掛かり、その体は高く、高く持ち上げられる。だがその瞬間、カブトプスの目が再び開いた。
「トーップス!」
目が覚めるや否やカブトプスは自身にかけられたサイコキネシスをシザークロスで振りほどこうともがく。しかし、ルナトーンのサイコキネシス予想以上に強力であった。どれだけもがいても一向に突破口は見えない。それどころかどんどんパワーが強くなっているかのようだ。
「こうなったら仕方がない……」
アヤは腕に装着されたZリングを掲げた。彼女はZワザでこの超能力を強引に振りほどこうというのだ。
「いくよ、カブトプス!私たちのゼンリョク!スーパーアクアトルネード!」
Zクリスタルが輝き、カブトプスを中心に巨大な渦潮が発生。それは彼女のねらい通り、超能力を振りほどき、さらにはルナトーンをも飲み込んだ。しかし、渾身の一撃を受けてもなおルナトーンは倒れなかった。それどころか、攻撃を受け、バランスを崩れた状態でパワージェムを放ってきたのだ。それも苦し紛れの一撃ではなく、カブトプスを狙った正確な一撃だ。
「熱湯!」
アヤはすかさず熱湯を指示。カブトプスとルナトーンの攻撃は、ちょうど両者の中間地点で激突し、硝煙を上げた。
「もう一度パワージェム!」
ここでサヨはつづけさまにパワージェムを放たせた。攻撃直後に生じる僅かな反動を狙ったのだ。しかしカブトプスはアクアジェットを使いながらその中に突っ込んだ。
「そんな!?」
大胆不敵な行動に一瞬サヨがひるむ。その隙にカブトプスはルナトーンにシザークロスをお見舞いした。アクアジェットの勢いも乗り、その威力は絶大だ。
「トーン……」
ルナトーンはコテっとあっけなく地面に落ちた。しかし、自らが受けるダメージを無視した捨て身の特攻をしてカブトプスも無事で済むわけがない。ルナトーンが倒れたのを見届けると、カブトプスも膝をつき、前のめりに倒れてしまった。アヤとサヨは、ほぼ同時に自分のポケモンをボールに戻す。と、ここでとうとうにサヨの口が開いた。
「アヤ……、貴女という人は中々面白い戦い方をする人ですね。この私を一度ならず、二度も苦戦させるだけのことはあります。ヒナの言葉を借りて表現するのなら、『るんって』くるとでもいうことなのでしょうか?」
「そうだよ。もしも、個性がなくなったら今みたいにるんってくることもなくなっちゃうんだよ。人には誰しも、必ずその人が輝ける場所がある。サヨさんだって、必ず自分らしく輝ける場所があるんだよ!たとえ輝き方が違っても、並んで輝くことはできるんだよ!」
アヤは、必死にサヨに訴えかける。ところが、サヨはそれを一蹴し、アヤの想いを踏みにじるかのように、オニゴーリを繰り出した。
「くだらない。違った輝きで並んで輝くなんて、きれいごとに過ぎないのよ。こうなったら二度とこじゃれた幻想を抱けないように、徹底的に叩き潰してあげましょう。絶望という闇の中で、凍てつきなさい」
サヨは髪につけていたヘアピンを外し、空に掲げた。するとヘアピンについていた宝石のような結晶が輝き、それに共鳴するかのようにオニゴーリも輝いた。メガシンカである。
「ゴーリ」
低く、唸るような声が、顎が外れるほど開いた口から響く。さらに、メガオニゴーリから放たれる冷気の影響で周囲の気温は極寒の真冬のように低下。その寒さは0度を下回るほどだ。しか余りの寒さにアヤは体の震えが止まらない。
「アヤちゃん!これ使って!」
すると、ここでヒナがバックから取り出した毛布を目の前に投げてくれた。
「あ……、ありがとう……」
アヤは急いで毛布を羽織り暖を確保すると、モンスターボールを投げる。彼女が選んだのはサーナイトだ。
「相手がメガシンカを使ってきたのならこっちも……!進化を超えろ!メガシンカ!」
そして、アヤは腕に装着したメガリングを掲げ、サーナイトをメガシンカさせた。目には目を、歯には歯を、メガシンカにはメガシンカをというわけである。
「あら、貴女もメガシンカを使えるのね」
サヨは、極寒の中で不敵な笑みを浮かべる。そして、同時にオニゴーリから氷のつぶてが放たれた。
「サーナイト、かわしてサイコキネシス!」
「サーナ!」
メガサーナイトの強化された超能力は非常に強力だ。たとえ鍛え抜かれたサヨのオニゴーリですら、この一撃をまともに浴びればひとたまりもないだろう。だが、このことはサヨも想定内。オニゴーリはサヨの声とともにサイコキネシスを回避。そしてその勢いに任せ、今度は冷凍ビームを放ってきた。
「サナッ!」
その速度はまるで光のよう。アヤの声も間に合わず、冷凍ビームはサーナイトの中心を貫いた。
「オニゴーリ、かみ砕く!」
さらに怯んだサーナイトの腰に、オニゴーリの牙が食い込む。サーナイトは必死にもがくも、むしろその牙は深く食い込んでいくばかり。
「サーナイト、気合玉!」
ここでアヤはサーナイトに気合玉を指示した。サーナイトにさらなるダメージを与える代わりに至近距離で効果抜群の一撃をもらうか、サーナイトから一度退くかの二択をサヨに迫るのが狙いだ。
「オニゴーリ、退きなさい!」
気合玉はオニゴーリを外れた。しかし、オニゴーリとの距離をとることには成功した。
「サー……」
サーナイトはこの隙に瞑想をした。彼女の精神が研ぎ澄まされ、力が増す。反撃の準備は整った。
「サイコキネシス!」
強力な念動力が今度こそオニゴーリをとらえた。サーナイトはそこに気合玉を思いっきりぶつけようとする。だが、その直前、オニゴーリが放った氷のつぶてが襲い掛かった。
「サナッ……」
サーナイトの表情が歪む。いくらメガシンカしたとはいえ、強力な攻撃を何度も食らって無事でいられるわけがない。その表情から察するに、サーナイトの残りHPはあと一発攻撃を耐えられるかどうかすら怪しい。
「これで終わりにしましょう。オニゴーリ、冷凍ビーム!」
そしてついに、サヨはオニゴーリから止めになるであろう一撃を放たせる。だが、アヤは諦めなかった。というか、一か八かの賭けに出た。
「サーナイト、破壊光線!」
メガサーナイトが放つ破壊光線は、特性の『フェアリースキン』の効果も相まって計り知れない威力を誇る。さらに今のサーナイトは瞑想して精神が極限まで研ぎ澄まされた状態だ。その威力は想像を絶する。アヤはこの状況を一瞬にしてひっくり返すには、この破壊的な威力にかけるしかないと判断したのである。
「ゴーリ!」
「サーナーッ!」
冷凍ビームと破壊光線が、両者の中央で交わる。そして破壊光線は冷凍ビームを飲み込み、オニゴーリに襲い掛かった。
「ゴーリッ……」
オニゴーリのメガシンカが解かれた。激戦の末、とうとうオニゴーリは倒れたのであった。
「そんな……、この私が……!」
オニゴーリが倒れた瞬間、今まで何事にも動じなかったサヨの表情がついに崩れた。彼女は歯を砕けそうなほど食いしばりながらオニゴーリをボールに戻した。そしてアヤの方を睨んだ。
「どうして邪魔をするの!?この私に逆らららららららららら……!」
怒りと憎しみと悔しさが、サヨの体を小刻みに震わす。すると、その時サヨにとってさらに最悪なことが起きた。石塔の内部で足止めをしていたリンコも戦いを終え、塔の頂上にまでやってきたのだ。
「この様子を見るに……どうやら……、この勝負……アヤさんの勝ちのようですね……。さぁ、大人しく降参してください……。そうすれば……、命だけは……助けますよ……」
リンコはサヨに穏やかな笑みを見せる。しかし、それは同時に一切の隙が無い笑みでもあった。万が一、このタイミングでサヨが下手な抵抗をしたのならば、すぐさまリンコの手によって叩きのめされることだろう。もはやサヨの勝算はゼロに等しい。
「クッ……、まだよ……。リゲル団の野望をここで終わらせるわけには……」
だがサヨは八方塞がりの中でもまだ、抜け道を見つけようとしている。しかし、その時、彼女の通信機がなった。
「こんな時に何なのよ!」
彼女は苛立ちながら、その通信に出た。
「こちらサヨよ、今は取り込み中だから後に……!あ、貴女……は……!はい、はい……、えっ!?作戦の中止……!?そんな、まだ私は負けたわけでは……!はい……。分かりました……」
この時、アヤたちは違和感を覚えた。サヨの口調から察するに通信機の向こうにいる人物は部下ではない雰囲気だ。最低でもサヨと同等の地位はある人物、あるいはサヨよりも格上の人物である可能性が非常に高い。
「クッ……」
通信を終えると、サヨは兵器の前に歩いて行った。
「……いいわ、アヤの腕に免じて今日のところは退いてあげましょう。でも、地祇はないですからね。私は必ず世界を変えてみせます。必ず、リゲル団の手で世界を笑顔に……!」
サヨはそう言い残すと、兵器のタッチパネルを操作し、アヤとリンコの間をすり抜けていき、石塔内部の階段に向かった。しかし、階段に入る直前、彼女の腕をヒナがつかんだ。
「待ってよ、おねーちゃん!誰と話していたの!?もしかして、誰かの命令で無理やりリゲル団のリーダーをやらされていたの?ねぇ、おねーちゃん!?」
「貴女には、関係ないわ……。もう私は、引き返せないのよ……」
しかし、サヨはヒナの手を振りほどくと階段を降り、姿をくらませた。
「おねーちゃん!」
すかさずヒナもサヨを追いかけようと階段に足を踏み入れようとした。ところがその時、ヒナは背後で妙な気配を感じた。
「なに!?」
後ろを振り向くと、空中に3匹のポケモンが浮いていた。アグノム、エムリット、そしてユクシー。どうやら、先ほどサヨが兵器を操作したせいで動力源にされていた3匹のポケモンが解放されたようである。というか、この展開を引き起こすためにサヨは兵器を操作したのだろう。
「きょううん」
「きゃううん」
「きゅううん」
気が付けば、3匹の周囲には大小さまざまながれきが漂っている。
「まさかだよね……、まさかこっちに投げてきたりは……」
しかし、アヤの嫌な予感は当たってしまった。大小さまざまながれきが4人を絶え間なく襲う。兵器の動力源にしたことで、3匹の逆鱗に触れてしまったようである。