バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。 作:なるぞう
ちなみに、なんだか最終回みたいな雰囲気がありますが、ストーリーはまだ続きます。今回は最終回ではないです。
「いっけー!ドダイトス、ストーンエッジ!」
「ダーッ!」
にらみ合いの末、ついにアヤとドダイトスが動いた。しかし、ゲンガーは動かない——と、思いきや岩の先端が当たる寸前、華麗にそれを交わす。表情から察するに余裕そうだ。
「正確で鋭い……いいストーンエッジです……。私のゲンガーでなければ……、致命傷を与えられたでしょうね……。やっぱり……、アヤさんは強くて素敵なトレーナーです……。貴女になら……私の本気をぶつけられる……」
リンコが服の袖をめくる。すると、彼女の腕に装着された『メガリング』が姿を見せた。
「えっ……」
この瞬間、アヤは言葉を失った。彼女の言葉のすべてを理解したのだ。
「メガシンカを使えるのは……、アヤさんだけではないんですよ……。冥府の魂よ……、この絆に力を……!」
リンコの声とともに、ゲンガーが美しくもあり、不気味でもある光に包まれる。今、ゲンガーの真の力が解放されているのだ。
「ゲーッゲッッゲッゲッ!」
光から解放されたゲンガーの姿は、実におどろおどろしい姿であった。下半身は影の世界にすっぽり飲み込まれ、地上に見せている上半身は狡猾な笑みをたたえている。また、眉間に生まれた第三の眼は見ているだけで、異次元に吸い込まれてしまいそうだ。
「ここからが本番ですよ……。ゲンガー……、凍える風……!」
その瞬間、ゲンガーの手から猛烈な冷気が放たれる。ドダイトスはとっさにストーンエッジで即席の壁を築く。が、冷機は僅かな隙間をすり抜け、ドダイトスの周りを吹き抜けた。
「ダーッ!」
僅かな冷気とはいえ、氷タイプが苦手なドダイトスにとっては痛い一撃だ。しかし、ゲンガーは攻撃の手を緩めない。今度は、ムクホークをも葬ったヘドロ爆弾を撃ってきたのだ。
「ウッドハンマー!」
アヤの叫びを聞き、ドダイトスはそれを打ち返す。だが、その矢先、ドダイトスめがけて無数のシャドーボールが襲い掛かってきた。
「ドダッ……!」
余りにも急な展開にアヤもドダイトスもついて行くことができない。ドダイトスはシャドーボールのほとんどを浴びる羽目になった。
「ドダイトス、大丈夫!?」
「ドダー!」
攻撃の直後、アヤが声をかけるとドダイトスは元気な声を返した。あれだけ攻撃を食らったが、まだ何とかなりそうだ。
「よし、ここから反撃するよ!」
ドダイトスの無事が分かった彼女は、そう気合を入れなおす。が、困ったことにゲンガーの姿は見当たらなかった。
「えっ……、どうして……?」
アヤは必死に辺りを見渡す。だが、ゲンガーの『ゲ』の字すら見つからない。どんどんアヤの焦りが増す。
「ゲンガー……」
ここで、見計らったかのようにリンコがゲンガーの名前を呟いた。同時に、ドダイトスの影が揺れる。すると、それを合図に、ドダイトスの影からゲンガーが飛び出した。
「ドダイ——」
アヤは慌てて指示を出そうとするも、時すでに遅し。ドダイトスのバランスが突然崩れた。影から飛び出ると同時に、ゲンガーはドダイトスに催眠術を掛けたのだ。
「ダー……」
グーグーと、ドダイトスは眠る。その傍らでリンコとゲンガーは不気味に笑っていた。
「私のゲンガーは……陰の中に潜りこんで隠れることができるんです……。今みたいに奇襲にも使えるので……便利ですよ……」
「ゲーッ!」
だが、アヤにリンコの声は届いてなかった。彼女は今、ドダイトスを起こそうとすることで精いっぱいなのだ。しかし、当のドダイトスは起きる気配もない。
「無駄ですよ……アヤさん……。ドダイトスの意識は……すでに闇に飲み込まれています……。どんな手を使っても……、戻ることはないですよ……。安心してください……。闇の世界も……案外悪くないものですから……。どうやら……結局私が一番強くて凄いみたいですね……」
ついに、リンコが止めを刺そうと動き出した。もはや、ドダイトスは崖っぷちに追い詰められた。いや、もう奈落の底に落ちている最中といった方が正しいかもしれない。だが、アヤはまだ諦めなかった。何度も、何度も叫び続けた。
「起きて、ドダイトス!」
アヤの一生懸命さが伝わったのだろうか。ついにヒナもアヤに加勢した。が、ゲンガーはそれをあざ笑うかのようにシャドーボールを放つ。その影の球は猛スピードでドダイトスに迫る。仮にこの状況を他人が見れば、ドダイトスの敗北を確信するだろう。しかし、それでも二人は叫び続けた。喉が壊れるほど、何度も何度も。そして、その想いはドダイトスに届いた。
「ダーッ!」
シャドーボールが当たる直前。ドダイトスの鋭い目が開いたのだ。ドダイトスは起きると同時にシャドーボールを強靭な尾でゲンガーに返す。不意の一撃にゲンガーは回避できない。皮肉なことに、自分が撃った技を、自分で受けることになったのだ。
「やった……!ドダイトス……!」
起き上がったドダイトスを見てアヤは一安心。そして、それと同時にストーンエッジを指示した。反撃の狼煙が上がったのだ。
「まさか……!ゲンガーの催眠術が……やぶられるなんて……!」
リンコは焦りながらも、冷静に指示を出した。ゲンガーは彼女の指示通りストーンエッジをかわし、影の中に再び飛び込んだ。しかし、同じ手が二度も通じるほど、アヤもドダイトスも甘くはない。
「影は床にできている。それならば、床全体を攻撃すればいいんだ!ドダイトス、地震!」
「ドダーッ!」
ドダイトスは前足を床に打ち付け、強烈な振動を引き起こす。すると、彼女の読み通り、その威力にたまりかねたゲンガーが影の中から飛び出してきた。その姿は完全な無防備。絶好のタイミングだ。
「ドダイトス、リーフストーム!」
アヤは自らの中に眠っているすべてをその言葉に込めた。そして、それはドダイトスに伝わる。やがて、彼女たちの想いは全て、葉の嵐となってゲンガーに襲い掛かった。
「まだまだ……!ゲンガー……、シャドーボール……!」
対するゲンガーも、最後の意地といわんばかりに無数のシャドーボールをドダイトスに向け放つ。しかし、ドダイトスが放つ葉は、それを無ごとに打ち砕き、一直線にゲンガーに向かう。
「ゲーッ!」
葉の嵐がゲンガーを巻き込むまで時間はかからなかった。ゲンガーは渾身の一撃になすすべもなかったのだ。そして、葉の嵐がやむと、ゲンガーのメガシンカが解けた。
「ゲッ……ゲェ……」
同時に、ゲンガーは目を回しながら力なく倒れた。戦闘不能である。
「とっても悔しいけど……、今……私はとっても楽しい……。バトルの興奮が収まらない……。素敵なバトルを……ありがとうございます……。そして……、おめでとうございます……!アヤさん……、あなたがシンシューの新しいチャンピオンです……!」
リンコは満足そうに、ゲンガーをボールに戻した。
リンコがゲンガーをボールに戻してもなお、アヤは呆然とフィールドに立っている。
「アヤちゃん!やったよ!アヤちゃーん!」
と、ヒナがアヤを押し倒しそうな勢いで抱き着いてきた。この瞬間、アヤはようやく我を取り戻した。
「私が……、勝ったの……!?リンコさんに……?」
「うん!アヤちゃんが新しいチャンピオンだよ!もう、るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるんって感じだよ!」
「そうなんだ……。勝ったんだ……。私……、勝ったんだ!」
ヒナから解放されると、アヤは震える足でドダイトスのところに歩く。そして、ドダイトス望場に寄るや否や、ドダイトスに顔をうずめワンワン泣き出した。
「ドダイトス!勝ったんだよ!私達、チャンピオンになれたんだよ!」
この後も彼女はいろいろ言っていたが、泣きながら言っているせいでほとんど聞き取れない。
「ドダァ……」
しかし、ドダイトスはそれを聞くと安心したのか、プツンと糸が切れたように崩れ落ちた。そして、ほぼ同時に部屋の扉がバタンと開いた。リーグ挑戦の前に応援に来てくれるといったマリナ博士だ。
「ごめん!アヤちゃん、ヒナちゃん!仕事が長引いて遅れちゃった!」
しかし、ドダイトスに顔をうずめ、涙を流すアヤであった。その瞬間、マリナ博士は何かを悟ったのかそっと彼女のところに歩み寄った。
「ほ、ほら……、アヤちゃん……。その……、うまく言えないけど。ここまで来られただけ凄いことだよ。それに、まだまだトレーナー人生は長いんだしさ!」
どうも、マリナ博士は泣くアヤを見て彼女が大敗したものだと勘違いしてしまったようだ。しかし、そこへリンコがやってきた。
「マリナ博士……、何を言っているのですか……?そこにいるのは……、シンシューの新しいチャンピオンですよ……」
「新しいチャンピオン……?ってことはもしかして……!アヤちゃん……!」
「そうですよ~!私でも、チャンピオンになれたんですよ~!これはうれし涙ですよ~!」
アヤはマリナ博士の姿を見つけると、今度は博士に抱き着いて泣き出した。もう、一生分の涙を流すような勢いだ。
数分後、ようやくアヤは泣き止んだ。すると、リンコは改めて彼女に優しい笑みを向けた。
「キウシティで初めて会った時から……、アヤさんから他のトレーナーとは違う何かを感じてはいました……。それは、こういうことだったんですね……。私……、あなたのような素敵なトレーナーと出会えて、とっても嬉しいです……。そして、あなたのような素晴らしいトレーナーがチャンピオンになる瞬間に立ち会えて……、光栄に思います……。それでは……アヤさん……。私についてきてください……。あなたを連れていきたいところがあるんです……。あっ……、もしもよかったら……、ヒナさんとマリナ博士も一緒に来てください……」
アヤはドダイトスをボールに戻すと、言われるがままに彼女について行った。もちろん、ヒナとマリナ博士も一緒だ。三人は、リンコに導かれ、チャンピオンの部屋のさらに奥に連れていかれた。
「なんだか……。ズズーンて感じだけどるんっな感じでキラーンって感じな部屋だね……」
ヒナが言いたいことは『チャンピオンの間の奥は、なんともいえぬ荘厳さで満ちているね』ってことだ。部屋の周囲には威厳ある銅像が並び、その空間の一番奥には何やら黄金のマシンが置いてある。アヤも状況をいまいち呑み込みきれていないが、凄い場所であるということだけは分かった。
「ここは殿堂入りの間……。厳しい戦いを潜り抜けたトレーナーとポケモンを永遠に称えるための部屋です……。さぁ……、アヤさん……。あのマシンにボールをセットしてください。ポケモンとトレーナーの絆……、ともに流した汗と涙……、そして思い出……、アヤさんとポケモンのすべてをこのマシンで記録しましょう……」
アヤはボールを取り出し、リンコに言われた通り、マシンにある6つのくぼみにボールをセットした。まずは、古代の巨人レジギガス。次に、鋼鉄の鎧を誇るハガネール。3番目に、アヤ大好きなムクホーク。4番目には、太古の昔から蘇ったカブトプス。そして、メガシンカというゆるぎない絆を持つサーナイト。最後には、彼女とずっと一緒にここまで歩んでくれた相棒ドダイトス。そんな6体のポケモンたちは、アヤの名前とともに、歴史に刻まれた。今ここに、名実ともにチャンピオン『アヤ』が誕生したのである。
殿堂入りの部屋から出た新チャンピオンたちを待っていてくれたのは、彼女と激戦を繰り広げたモカ、カオル、ユキナ、そしてアリサであった。
「いや~、さすがこのモカちゃんに勝つだけのことはありますね~。お祝いに、このパンをあげますね」
そういいながら、モカは大量のパンをアヤに渡してくれた。その量といったら、一人では持ち切れるかどうか怪しいほどである。と、アヤが大量のパンに驚いていると、カオルが現れた。
「儚い……。なんて儚い日なんだ……!今日は帰ったら子猫ちゃんの栄光を称える儚い詩を書くことにしよう!」
相変わらず言葉の意味は分からないし、ヒナは目を輝かせている。そうアヤが思っていると、今度はユキナがやってきた。
「あなた、チャンピオンになったのね……。おめでとう。でも、これで油断しないことね。次に戦うときは、私が必ず勝つわ!」
ユキナの口調は厳しいが、その表情はどこか穏やかだ。しかし、いきなり彼女には猛烈なプレッシャーがのしかかってきたのである。と、今度はアリサが彼女のそばに寄ってきた。
「——あの……、おめでとう……。私だけ言わないのも感じ悪いから一応言っておくぞ……!勘違いすんなよ!仕方なく言うだけだからな!」
そういうと、アリサはプイっと後ろを振り向いてしまった。しかし、その顔はやっぱりオクタンのように——いや、オクタン以上に真っ赤だ。
四天王とリンコに見送られながら、アヤたちは外に出た。外はもう真っ暗だ。しかし、夜空には新しいチャンピオンを祝う打ち上げ花火が大きく上がっている。アヤとヒナは花火に照らされながら二人だけで帰路についた。本当はマリナ博士と一緒にまっすぐシグレタウンに戻ってもよかったのだが、それでは味気ないので彼女たちは今まで激闘を繰り広げたジムリーダーたちにあってから帰ることにしたのだ。
ウセイシティに着いたときには、ちょうどお祭りの最中だった。もちろん、ミサキもミッシェルの中に入り、風船配りやら記念撮影会やらであたりを駆け回り、大忙しだ。アヤとヒナはそのお祭りに参加し、ミッシェルと記念撮影をした後、あたりの屋台を回った。
ホマチシティでは、アコとトモエが二人を歓迎してくれた。アヤとヒナは、仲良し姉妹に連れられホマチシティや周辺の名所で観光を楽しんだ。そして、最後はポケモンセンターに併設されている温泉に4人で入った。
ウノトキシティにも彼女たちは足を延ばした。しかし、どうやらこの街のジムリーダーであったタエは何を思ったのか、ジムリーダーを辞めてしまったらしい。原因は不明だ。しかし、間もなく新しいジムリーダーが来てくれるらしい。
ハルサメシティでは、ハグミが大量のコロッケをごちそうしてくれた。ハグミがご馳走してくれたコロッケの味は文句なしである。しかし、アヤはその量の多さに途中でギブアップ。その傍らで、休みなくコロッケをほおばるハグミとヒナを見て戦慄したのであった。
ユウダチシティでは、ランに出会った。アヤと初めて出会った時には色々とあったが、今の彼女は立派にジムリーダーを務め、ミタケ流の後継者として修業を積んでいるようだ。ちなみ、彼女とつるんでいた不良たちは紆余曲折あって全員ランの弟子になったらしい。
ムラサメシティでは、カノンがムラサメ水族館をいろいろ案内してくれた。ジムリーダーとしての腕前も、アヤと勝負した時よりも数段あがり、今やシンシュー最強のジムリーダーとして名をはせている。
キウシティでは、リミが待っていてくれた。アヤとヒナは、彼女に連れられリミがお勧めのパン屋に行き、これまた彼女のおすすめのチョココロネを買った。そして、近くのベンチに座り、パンを食べながらガールズトークに花を咲かせた。
ハナノシティでは、マヤがハイテンションで待っていた。話を聞くに、どうやら新しい化石発掘スポットを見つけたらしい。アヤとヒナはそこに連れていかれ、マヤとともに化石発掘をすることになったのは言うまでもない。
ハナノシティを出て数日後の夜、アヤはついに懐かしい故郷『シグレタウン』にたどり着いた。見慣れた街をヒナとともに歩くアヤ。間もなく、自分の家の前に到着した。彼女はそこで大きく深呼吸。そして、家のドアを開いた。
「ただいまー」
ここに、アヤの旅はひとまず終わりを迎えたのである。
おまけ:燐子のパーティー一覧(本気モード)
・多分リーグ二週目以降に戦える本気りんりんのパーティー。一応『ゴーストタイプの使い手』ですが、割とほかのタイプも使ってきます。
★ゲンガー@ゲンガナイト
特性:呪われボディ
性格:臆病
努力値:CS252
技
・シャドーボール
・ヘドロ爆弾
・催眠術
・気合玉
☆メタグロス@突撃チョッキ
特性:クリアボディ
性格:意地っ張り
努力値:HA252
技
・バレットパンチ
・冷凍パンチ
・思念の頭突き
・地震
☆シャンデラ@ゴーストZ
特性:すり抜け
性格:控えめ
努力値:CS252
技
・シャドーボール
・エナジーボール
・大文字
・目覚めるパワー(氷)
☆サザンドラ@拘りスカーフ
特性:浮遊
性格:控えめ
努力値:CS252
技
・悪の波動
・大文字
・竜星群
・大地の力
☆オーロット@オボンの実
特性:収穫
性格:慎重
努力値:HD252
技
・鬼火
・守る
・呪い
・やどりぎの種
☆シザリガー@命の珠
特性:適応力
性格:意地っ張り
努力値:AS252
技
・アクアジェット
・クラブハンマー
・はたき落とす
・剣の舞
☆これで彩ちゃんの旅がひとまず区切りがついたので、彩ちゃん以外が主人公のスピンオフが見たいという声にこたえて、スピンオフを数話書きたいと思います。(早く本編を書いてほしい人すみません)
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