バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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お待たせしましたバトルフロンティア編第三弾です。
剣盾のポケモンを試しに出してみました。
ストーリーのゴールも少し見えてきたな~。これからも応援よろしくお願いします!


第五十二話 軍師推参

 ツグミとのバトルを無事終えた夜、アヤはポケモンセンターの自室で頭を抱えていた。原因は、明日戦うブレーンが掲げている『戦術』というテーマだ。戦術とは簡単に言うと作戦のようなものであると思われる。だが、アヤはバトルの最中に作戦をひらめき、勝利を収めてきたことが多い。つまり、意外とヒナと同じく直感でどうにかするタイプのトレーナーなのだ。しかし、どうもパンフレットの文面を見るに、いつものようなその場しのぎの作戦では歯が立たなそうだ。

 

「戦術……、戦術……、戦術……」

 

というわけで、明日のバトルに絶望した彼女は、この単語をさっきから一時間ぐらい永遠に呟き現実逃避していた。

 

「アヤちゃん、それ何の儀式の呪文?お化けでも召喚するの?あははははは!」

 

と、ヒナがからかってもまだアヤは呟いている。よほど、明日が心配のようだ。だが、ヒナの頭にはアヤを助けられるとある妙案が浮かんでいた。

 

「るんっ♪てきちゃった」

 

ヒナは不敵な笑みを浮かべながら、パンフレットを片手に何処かへ連絡をとりだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えっ、どういうこと……!?」

 

次の日、バトルの直前にヒナから例の妙案を聞いたアヤは驚愕した。

「アヤちゃん、どうせ戦術も作戦もダメダメでしょ?だったら、私がバトル中もずっといっしょにいてアドバイスした方がよくない?そう、今日の私はアヤちゃんの軍師で、アヤちゃんの半身!あ、安心して!オーナーさんからの許可はとってあるから。ブレーンの人が許可すれば側にいてもいいって!」

 

ヒナは前代未聞の発想をあっけらかんと言ってのけた。

 

「そんなこと本当に認められるのかなー?」

 

アヤは尽きないモヤモヤを抱えながら、ヒナとともに今日のバトルが行われる会場、『バトルドーム』へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バトルドームの会場に入った二人を待ち構えていたのは、観客のどよめきだ。まあ、彼女たちは普通ダブルバトルでもないのに2人同時にフィールドに入ったのである。観客の反応はもっともだ。

 

「うわ~!これがいつもアヤちゃんが見ている景色か~!よーし、今日も絶対勝とうね!」

 

「う、うん……」

 

目を輝かせ、徐々にあふれんばかりにやる気がみなぎるヒナ。対するアヤはどんどん勢いがなくなっていく。穴があったら入りたいとは、この気分のことを言うのだろう。

 

「ごきげんようチャレンジャー私はフロンティアブレーンのチュチュ……ってWay!?チャレンジャーが2人!?」

 

と、すっかりアヤが縮こまっているとフィールドの反対側から声がした。声の方を向けば、長い赤髪とチョロネコの耳のような形のヘッドホンが特徴的なフロンティアブレーン、チュチュが顔をしかめていた。

 

「やっほー!私はヒナ!今日のチャレンジャーであるアヤちゃんの軍師だよ!よっろしく~!」

 

ヒナは相変わらずの勢いでチュチュに迫り、何やら色々説明しだす。が、それに比例して彼女の眉間にはドンドンしわが寄っていった。

 

「つまり……、ヒナがチャレンジャーアヤに戦術のアドバイスをすると?……認めないわ!このワタシと戦おうっていうんなら正々堂々一対一でかかってきなさい!」

 

案の定、ヒナの作戦は木っ端みじんに打ち砕かれた——かのように思えた。しかし、ヒナはここで切り札を出した。

 

「チュチュちゃ~ん。そんなこと言わないでよ~。ほら、これをあげるから」

 

彼女がポケットから取り出したのはただのジャーキーだ。

 

「じゃ、ジャーキー……!?」

 

実はチュチュ、ジャーキーが大好物でそれには目がないのだ。ヒナが持つジャーキーを目にした途端、彼女の勢いが弱まり、目が輝く。ヒナの読み通り見通りの展開だ。

 

「私さー、今まで結構アヤちゃんにバトルのアドバイスしてきたんだー。今回は、たまたまアドバイスをするタイミングがバトル中っていうだけで、やろうとしていることはいつもと変わらないと思うんだよね。それに、アヤちゃん作戦なんてどうせロクに考えられないだろうし。相手が弱かったらチュチュちゃんもるんっ♪ってしないでしょ?」

 

ここぞとばかりにヒナは言葉を畳みかける。形勢逆転だ。

 

「クッ……、言われてみればそうかもしれないわね……。分かったわ。ヒナがチャレンジャーアヤのアドバイザーとして、彼女のそばにいることを認めましょう。ただし、ヒナはダイレクトにポケモンに指示するのはノー!できるのはアドバイスオンリーよ!もしも、このルールを破った場合はレッドカード!すなわちチャレンジャーアヤの反則負けよ!」

 

ついにチュチュが折れた。これを聞いたヒナは意気揚々とアヤのそばに戻る。

 

「作戦通り」

 

そして、アヤの耳元でそっとささやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、アヤは軍師を従え、フィールドの指定の位置に立った。

 

 「ゴホン。それでは、気を取り直してバトルドームにおけるバトルのルールを説明いたしましょう。まず、チャレンジャーとフロンティアブレーンは手持ちのポケモンを3体選び、フィールド脇にある、黒い台にセット。すると、フィールドに備え付けられた巨大モニターにお互いのポケモンの情報が表示されます。それを見て、両者は3体の中から2体を選び、そのポケモンでバトルを行います」

 

チュチュの説明が終わると、アヤは3匹のポケモンを選び、黒い台に置いた。選んだポケモンはドダイトス、ムクホーク、サーナイトの3匹。対するチュチュはフーディン、アクジキング、そして頭がブーメランのような暗緑色のよく分からないポケモンだ。

 

「それでは、シンキングタイムスタート!」

 

チュチュの掛け声で、巨大モニターの数字が動き出す。制限時間は僅か1分。それにもかかわらず、天才軍師ヒナを従えたアヤは余裕そう。が、それは一瞬で崩された。

 

「なんかシュッってギュイーーーンって感じのポケモンがるるるん♪って感じになるから~。アヤちゃんはシュシュっとガシ~ン!っていくのとカチカチ~バーーーーン!ていうのどっちがいい?」

 

待っていたのは恒例のヒナ語。運が悪いことに、アヤは今日に限ってヒナ語が読解できなかった。

 

「わからない!ヒナちゃん、分かりやすく!」

 

彼女がヒナ語に苦しむ間にも、容赦なく時間は流れる。気が付けばタイムアップまで残り十秒。とっさに、すぐそこにあったドダイトスとムクホークが入ったボールを掴んだ。無論、そのセレクトに戦術の欠片もない。

 

「ふ~ん。ずいぶんと珍しい戦術ですわね」

 

彼女の心の中を見破ったのだろうか。チュチュはすでに勝利を確信したかのようだ。

 

「そ、そうでしょ!チュチュさんも知らない変幻自在摩訶不思議な戦術!見せてあげりゅよ!」

 

一応、ちょっとカッコいいこといって反撃してみたが、語尾を噛んだおかげで台無し。相当相手に圧倒されているようだ。

 

「なるほど、変幻自在摩訶不思議ねぇ。それじゃ、それをワタシに見せてもらいましょう!いきなさい!フーディン!」

 

「フゥウ」

 

チュチュはニッと白い歯を見せると、頭につけているヘッドホンを取り外し、頭上高く掲げた。同時にフーディンから放たれるピンクの閃光。メガシンカだ。

 

「お、お願い!ドダイトス!」

 

「ドダァ!」

 

フィールドに現れたドダイトスは雄大なる大地そのもの。それを見て、アヤは落ち着く。すると、ここでヒナが再び口を開いた。

 

「ま、余裕でしょ」

 

サラッとしたヒナらしい一言。今さっき散々な目にあったにもかかわらず、アヤは自分の中の闘志がめらめらと燃えてくるのを感じていた。

 

「そうだよね!よーし!ドダイトス、ストーンエッジ!」

 

意外にも激戦の火ぶたを切ったのはアヤであった。

 

「フーディン、サイコショック!」

 

「フゥゥ!」

 

それに合わせ、チュチュとフーディンの戦術も第二ラウンドに突入。間もなく、強力な技と技同士がフィールドのど真ん中で激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度のヒナのアドバイスは実に的確であった。おかげで、強敵であると思われたメガフーディンはあっさりと戦闘不能に陥った。

 

「まさか、ドダイトスなんかに負けるなんて……!カムバック、フーディン!」

 

チュチュはケガするような強さでした唇をかむ。一方のアヤとヒナは、つかの間の勝利に酔いしれていた。ドダイトスの体力も十分。この流れは確実に勝利に続いている。2人はそう信じた。だが、その流れはあっけなくせき止められた。

 

「あのポケモンはなに?アヤちゃん知っている?」

 

「ヒナちゃんが知らないポケモンなんて私が知るわけないじゃん!」

 

 

チュチュの2番手として現れたポケモンは、例の頭がブーメランのようなポケモンだった。

 

「知らなくても恥じる必要はありません。このポケモンは、ドラパルト。シンシューから遠く離れたガラル地方で発見された最高にクレイジーなポケモンよ!」

 

「パールト!」

 

強者の雰囲気を帯びた叫びをBGMにチュチュはまたニッと笑う。すると、ドラパルトの影の中に消えた。ゴーストダイブだ。しかし、アヤは動じない。同じような戦術は、リンコのゲンガーで予習済みである。

 

「ドダイトス、地震!」

 

ドダイトスは、陰に潜む敵を炙り出そうと両前足を大きく上げる。だが、その瞬間、ドラパルトに格納されていたポケモン『ドラメシヤ』が2匹、がら空きになった背中めがけて襲撃してきた。

 

「ドダッ!?」

 

不意の一撃にドダイトスはひるむ。と、同時に背後からの影から強烈な殺気が漂いだす。ドダイトスはとっさに振り向きストーンエッジをかます。しかし、ドラパルトは陰から飛び出し、スルスルと岩の間を縫い、ドダイトスに急接近。

 

「パルードォ!」

 

その勢いを残したまま、大文字を急所にめがけて放ち、ドダイトスの体力を焼き尽くした。

 

「戻って、ドダイトス」

 

余りにも鮮やかな戦いに、アヤは戦えなくなったドダイトスをボールに戻すことしかできなかった。これで、残るポケモンは1体ずつだ。

 

「ひ、ヒナちゃんどうしよう……」

 

追い風がやみ、すっかりアヤは弱気だ。しかし、ヒナは冷淡だった。

 

「さぁ?自分で考えてみたら?」

 

「そんな~!無責任にもほどがあるよ!」

 

流石のアヤもこれには黙ってられない。矢継ぎ早に文句をヒナにぶつける。しかし、彼女はアヤを見捨てたわけではなかった。

 

「まぁまぁ、落ち着いてって!私はさ、なんか戦術に縛られて戦うのはアヤちゃんらしくないな~って思っただけだって」

 

「どういうこと?」

 

「うーん、ドダイトスとフーディンが戦たとき、私色々と戦術のアドバイスをアヤちゃんにして、アヤちゃんとドダイトスはその通りに動いてくれたじゃん。結果的には勝てたけど、さっきの戦い、なんだかるんっ♪てしなかったんだよね~」

 

「そんな~」

 

「落ち込まないでよ。その代わりいいこと教えてあげるから」

 

「いい事……?」

 

「それはね、アヤちゃんは作戦や戦術をロクに考えられないから面白いってこと!あ、別にバカにしているわけじゃないよ。計画的に戦うよりも、その場の思いつきと勢いで戦った方がアヤちゃんらしいな~っていう意味だからね」

 

「うーん。言っている意味は分かったけど、今日のテーマは戦術だよ。本当にそれでいいのかな?」

 

「じゃぁ……。アヤちゃんの戦術はその場の思いつきと勢い!題して『作戦なし作戦』!これでどうかな?」

 

一見すると無茶苦茶な理論にも見える。だが、なんだかヒナにこういわれると妙に説得力があった。

 

「それなら、作戦なし作戦を試してみよう。お願い、ムクホーク!」

 

「ホーーーーク!」

 

ムクホークの勇猛な声を聞きながらアヤは気合を入れなおす。

 

「What!作戦なし作戦!?そんないい加減な戦いで私に勝てるとでも!?ドラパルト、ドラゴンアロー!あの生意気な小娘共とムクホークをぶっ潰してあげなさい」

 

「パルートッ!」

 

ドラパルトの頭部から格納されていたドラメシヤが発射される。先ほどと同じ技だ。

 

「ホーック!」

 

ムクホークは2匹の襲撃をヒラリとかわす。だが、かわしてもかわしてもドラメシヤはムクホークを追いかてくる。これは大人しく攻撃を受けるほかないか。誰しもがそう思う。しかし、アヤだけは例外であった。

 

「ムクホーク、電光石火!」

 

しつこい追尾をものともせず、アヤは反撃に出る。

 

「バカね!ドラメシヤはゴーストタイプ!ノーマルタイプの技は効かないわ!」

 

「そうなの!?」

 

驚きの事実だ。しかし、作戦には影響はない。ムクホークは目のも止まらぬ勢いで、ドラパルトの真正面に突っ込む。そして、当たる寸前にほぼ直角に急上昇。追尾してきた2匹のドラパルトは動きについて行けず、ドラメシヤと激突した。

 

「パルードッ……!」

 

元の技が強力であることがたたり、その威力は絶大だ。さらに、アヤはここでムクホークの新技を披露した。

「鋼の翼!」

 

ムクホークは翼を鋼のように硬くし、突っ込む。しかし、ドラパルトは負けじとサイコファングでその翼に食らいつく。

 

「ホクッ……!」

 

これにはムクホークもたまらず、バランスを崩す。ドラパルトはそこに、大文字で追撃してきた。

 

「これでどう!」

 

しかし、次にチュチュが目にしたのは、灼熱の炎をぶち破り、一直線に向かってくるムクホークの姿だった。

 

「ムクホーク!ドラパルトの頭を掴んで!そのまま地面スレスレでブレイブバード!」

 

アヤが叫び通りにムクホークは動いた。ドラパルトは飛行タイプ最高クラスの技の勢いで、地面を引きずられた。脱出したくても、ムクホークの強靭な脚がそれを許さない。やがて、ドラパルトはフィールドの壁めがけて投げ捨てられ、叩きつけられた。

 

「パルト……!」

 

そして、ドラパルトは見た。急旋回し、自分めがけて突っ込んでくるムクホークの姿を。

 

「ホークッ!」

 

回避する間もなく、ドラパルトは燕返しの餌食になった。もはや、反撃するだけの力は残されていない。ドラパルトは目を回しながら、チュチュの震える手が握るボールの中に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうして……どうして……!どうしてこの私がこんなやつに負けるのよーーーーーーーーー!」

 

戦いの後、チュチュは大声で叫ぶ、と、ここでヒナが一言。

 

「いい加減じゃないよ。作戦なし作戦が、アヤちゃんの戦術だからね~」

 

戦術といわれ、言い返すことが出来なくなったのか、チュチュは黙りこむ。そして、爆発しそうな文句と愚痴をこらえ、若干そっぽを向きながらトロフィーをアヤとヒナに突き出してきた。

 

「……まぁ、終ったことをあーだこーだ言っても仕方ありません。今回は潔く負けを——いや、まぐれの勝利を称えることにしましょう。はい、これが戦術のトロフィーです。今回のラッキーを無駄にしないよう、せいぜいこの先も頑張りなさい」

 

アヤがトロフィーを受け取ると、チュチュはプイっと彼女たちに背を向けた。が、この時、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で『あんたたちのバトル、よかった……』といっていたのをアヤは聞き逃さなかった。

 

「ありがとうございます、チュチュさん!」

 

アヤは深く頭を下げる。そして、ヒナとトロフィーを持ち、観客に見せつけるようにトロフィーを掲げた。

 




おまけ:チュチュパーティー一覧

・チュチュの肩書は『ドームジェネラル』です。


・手加減パーティー
☆フーディン
☆カイリキー
☆ゴローニャ

・本気パーティー
☆フーディン
☆ドラパルト
☆アクジキング


再戦するなら誰?(再戦時はダブルバトル)

  • りみ&たえ
  • 麻弥&蘭
  • 花音&薫
  • はぐみ&美咲
  • 宇田川姉妹

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