バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。   作:なるぞう

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バトルフロンティア編もようやく後半戦です。
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第五十六話 白き翼の少女

 知識を試す施設、『バトルシアター』。自分のポケモンは使わず、施設からレンタルしたポケモンで戦うことで知られる場所だ。また、バトルコートが劇場のようになっていることも特徴の一つ。ポケモンたちはステージの上で戦い、観客はそれを真横からフカフカの椅子に座って観戦するのである。さて、早速であるが、アヤはフィールドで不安に駆られていた。

 

「だ、大丈夫なのかなぁ……」

 

アヤはレンタルしたヌオーが入ったボールをまじまじとみた。ちなみに、ヌオーを選んだ理由は特にない。強いて言うなら、レンタルできるポケモンのリストと一時間近くにらめっこした結果、見かねたヒナに勝手に決められたからである。

 

「確か覚えている技は……、濁流と冷凍パンチ、あとは欠伸と地震。それで特性が貯水。どうやって戦おうか……」

 

一応、先ほどヒナにアドバイスをもらったものの、相変わらずのヒナ語で、ちんぷんかんぷん。しかし、よくよく考えればヒナとずっと一緒にいるアヤにとって、こんなの大した問題ではない。ヒナのアドバイスのおかげで勝ったことも多いが、ヒナのアドバイス無しで勝ったこともザラだ。それに、もしかしたら途中でアドバイスの意味がわかるかもしれない。そう思ったとたん、ふと彼女は自分の体が軽くなったのを感じた。

 

「よーし!頑張っちゃうぞ~!おー!」

 

1人には広すぎるフィールドに元気いっぱいな声が広がる。と、それを合図にアヤとは反対の方からフロンティアブレーンが入ってきた。

 

「その真っ直ぐさ、前から変わらないわね」

 

聞き覚えのある声。なびく黄色い髪。アヤは目を見張った。そこにいたのは、かつてZ技の試練を行った少女だ。

 

「ち、チサトちゃん!?どうしてここに!あれ?Z技の伝授は!?女優のお仕事は!?」

 

裏返る声で、色々な単語を連呼するアヤ。チサトは彼女とは真逆の口調でしゃべりだした。

 

「落ち着いて、アヤちゃん。前に、私がジムリーダーの仕事をカノンに譲った話はしたわよね。それは、フロンティアブレーンになるためだったの。流石に、女優とジムリーダーとブレーンの三足の草鞋を履くのは難しいから……」

 

「そ、そうなんだ。で、Z技の伝授は?」

 

「誤解しないでほしいんだけど、Z技の試練は毎日やっているわけじゃないわ」

 

「あっ、確かに」

 

彼女がそう言った時、チサトの顔には『やれやれ』と書いてあった。彼女は、ここで軽く咳払いをして場を仕切りなおした。

 

「さてと、これで聞きたいことは全てかしら?これ以上ないなら、お話はここまでよ。アヤちゃんが今まで得た知識、見せてもらうわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いは、始まった。アヤは、ヌオーを繰り出す。と、目の前に威圧の壁が立ちはだかった。

 

「グワァァイ!」

 

その正体は、カイリュー。以前、Z技の試練でアヤとキルリアを完膚なきまで叩きのめした、あのカイリューだ。つまり、これはアヤにとってリベンジマッチといえる。

 

「ヌオー!えっと……あの……」

 

アヤ的には、開幕早々に動きたかったが、言葉に詰まってしまった。何しろヌオーなんて生まれてこの方使ったことがないポケモンだ。恐らく、初見のポケモンを今まで培ってきた知識や経験で動かすことが、バトルシアターで求められていることなのだろう。しかし、チサトが使うポケモンは、慣れ親しんできた相棒である。なんだか、妙な不平等さをアヤは感じた。

 

「グワァ!」

 

しかし、そんなのお構いなしにカイリューは突っ込んでくる。余計なことを考えている暇はもうない。アヤは、ヌオーに冷凍パンチで迎え撃たせた。

 

「よし、順調な滑り出し!」

 

カイリューは、氷タイプに非常に弱い。我ながら名采配であると、アヤは思った。ところが、カイリューはピンピンしていた。

 

「生憎だけど、私のカイリューの特性はマルチスケイルなの。体力が十分あるときに、攻撃をしても無駄よ!」

 

チサトの言葉とともにカイリュウーは鳴き声を轟かす。そして、ヌオーの真横をかすめた。

 

「この動き……、まさか……!」

 

アヤの予想は当たってしまった。カイリューの毒毒をもらい、苦しみだした。こうなっては短期決戦に持ち込むしかない。彼女はすぐさま怒涛の連続攻撃に移らせた。

 

「お~」

 

おっとりとした見た目であるものの、意外とキレのある動きをするヌオー。しかし、それをあざ笑うかのようにカイリューは地におり、ゆっくりと羽休めをした。おかげでヌオーが蓄積させたダメージは水の泡だ。

 

「これで、カイリューの体力は万全ね。さぁ、アヤちゃん、どこからでもかかっていらっしゃい」

 

この時のチサトの笑みは、狡猾な悪タイプですら中々真似できないだろう。しかし、アヤは意外にも冷静だった。なにしろ、相手が長期戦に持ち込もうとするならば、それを崩せばいいだけ。アヤは、そのすべを熟知している。

 

「ヌオー!もう一度冷凍パンチ!」

 

アヤはひとまず凍てつく拳でカイリューを殴らせた。その後、カイリューは案の定羽休めをしてきた。しかし、これはアヤが仕組んだ罠だ。カイリューが地に降りた瞬間、ヌオーは大きく口を開け、眠気を誘った。欠伸である。アヤは以前、ヒナに使われた戦術を流用したのだ。

 

「してやられたわね……!こうなったら、力ずくで片を付けてやるわ!カイリュー、Z技を使うわよ!アルティメットドラゴンバーン!」

 

「グ、グワァァイ!」

 

恐らく、毒が回りきるよりも先に、カイリューが眠る。相手のおもうがままと分かっていても、チサトに残された勝ち筋はこれしかなかった。一方、アヤも安心するわけにはいかなかった。今はまだ、同じ土俵に上がったにすぎない。ここからの課題は、いかにしてカイリューを仕留めるかである。それも、1秒でも早く。

 

「ヌオー、濁流!」

 

Z技をなんとか耐えたヌオーは、カイリューの視界を奪う作戦に移った。ところが、カイリューは悠々と攻撃を受け止めながら降り立ち、極太の足で地を揺らした。地震だ。このままヌオーが地上に居座れば、大ダメージを受ける。かと言って、迂闊に飛び上がればカイリューの得意なフィールドに自ら入っていく羽目になる。まさに究極の苦渋の選択。しかし、アヤは迷わず、沼オーを大きく飛び上がらせた。

 

「死地にようこそ。カイリュー、ドラゴンクローよ」

 

チサトがどこか黒い笑みを見せると、カイリューは渾身の一撃をヌオーに叩き込んだ。当然、ヌオーは地上に吸い込まれるように落ちる。が、これこそアヤが狙っていた瞬間だ。

 

「今だ!岩雪崩!」

 

追い討ちをかけようと急降下するカイリューの背中に、次々と岩が直撃する。背後からの不意打ちに、たまらずカイリューは墜落。そして、飛び上がろうとしたところを冷凍パンチで殴られた。

 

「グァァァ……」

 

カイリューは、目を回し、ズドンと鈍い音を響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強くなったわね、アヤちゃん。カオルとカノンに勝ったのも頷けるわ」

 

戦いの後、チサトはアヤに言った。

 

「そうでしょ〜。えへへ」

 

アヤは頬をだらしないほど緩ませる。と、チサトは目線を若干逸らした。

 

「でも、やっぱり悔しいわね。ほんの少し前まで、私の方が強かったのに、あっという間に抜かされちゃって……」

 

「えっ……、なんかゴメン……」

 

アヤはアワアワしながらお詫びの言葉を探し出した。と、チサトが何かをかき消すように大きな声を上げて笑い出した。

 

「そんなに慌てちゃって!今のは冗談よ!私は、貴女のような素敵なトレーナーに出会えて心の底から嬉しいわ。と、言うわけで、アヤちゃんの勝利を称えて『知識のトロフィー』を授与するわね」

 

遠目で見れば、チサトの表情は、清々しく、女優にふさわしい晴れやかな表情だ。しかし、アヤが見たチサトの顔からは、僅かに悔しさが漏れ出していた。

 

「次は負けないわよ、アヤちゃん」

 

アヤがトロフィーを受け取ると、歓声に混じり、微かに力強い声が耳に入った。

 

「次も私が勝つよ、チサトちゃん」

 

フィールドが勝利のムードでいっぱいになる中、密かに2人のトレーナーは新たなライバルの登場に闘志を燃やすのであった。




おまけ:千聖のパーティ一覧
千聖の肩書は、シアタープリンセスです。

・手加減パーティ
☆カイリュー
☆ホエルオー
☆ギギギアル

・本気パーティ
☆カイリュー
☆ハッサム
☆ウツロイド
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