バンドリの彩ちゃんがポケモンの世界を冒険するようです。 作:なるぞう
翌朝、アヤは目覚めると、ヒナに連れられハナノシティから出て、2番道路を再び通りマックラトンネルへと入っていった。
「うーん……、ここも駄目だな……」
「何しているの……、ヒナちゃん……?」
ヒナはトンネル内に入ってから、取りつかれたように壁に明かりを当て何かを探している。いくら声をかけても返事はろくに返ってこない。だんだん不安が高まっていくアヤ。しかしヒナは暗い洞窟内をずんずん進んでいく。そして歩くことおよそ一時間、ヒナの足が止まった。
「よし、ここなら入れそうだね」
ヒナはボールを軽く投げ、ラグラージを出した。
「ラグラージ、そこの岩を砕いて!」
「ラグッ!」
ラグラージの拳は岩を木っ端みじんに砕く。すると、アヤの目の前に新たな通路が現れた。
「ヒナちゃん、これを探していたの?というかこの道はなに?
「多分野生のポケモンが掘り進めた洞窟じゃないかな?初めにトンネルを通った時にさ、いくつかこういう洞窟を見つけてたんだ」
「そうなんだ、さすがだね。私は全然気が付かなかったよ」
「ま、入り口は落盤や落ちてきた岩で塞がっていて分かりにくいからね。それに運よく見つけられた洞窟も人が入れるとは限らないしさ。いやぁ、入れそうな洞窟があってよかったよ~」
「入れそうな洞窟って……。えっ!?もしかしてこの中なに入るの!?」
驚きを隠せない顔が明かりの中に浮かんだ。そんなこと初耳である。
「そうだよ。こっちのほうが強いポケモンがいるってビビビって来たんだ」
しかしヒナはいたって平然としている。
「そ、そんな強いポケモンがいっぱいいるところなんて危ないよ!もっと安全なところで特訓しようよ!」
「なんで?強いポケモンと戦ったほうがググイって経験値を稼げるじゃん」
「で、でも……」
「大丈夫大丈夫。危なくなったら私が何とかするからさ。それじゃ、未知の洞窟大探検にレッツゴー!」
ヒナはラグラージをボールに戻すと目を輝かせながら暗闇の中へずんずん突き進んでいった。
「あっ!ヒナちゃん待って!私を置いて行かないでよ~!」
こうなった以上もう後戻りはできない。生きて帰れますようにと祈りながら、アヤも闇の中に飛び込んだ。
野生のポケモンが掘り進めた洞窟は、先ほどとは比較にならないほど暗く、顔の前に自分の指を立ててもそれが全く見えないほどだ。手元の明かりすら頼りにならない、文字通り闇の世界である。
「ポリゴンZ、フラッシュ」
ヒナはポリゴンZを繰り出した。
「ポリリリリ」
不思議な電子音が鳴り、ポリゴンZの体が発行する。これで数メートル先までは見えるようになったが、依然闇が支配する空間であることは確かだ。そのせいかアヤはここにきてからというもの、ずっとヒナの後ろに隠れている。完全にヒナが頼みの綱だが、その日菜の足がわずか数分後に止まった。
「どうしたのヒナちゃん?」
アヤも恐る恐るヒナの方から顔をのぞかせる。
「ほらアヤちゃん、特訓開始だよ」
ヒナが小声でささやく。その先では何かがうごめいていた。
「……わかった!」
意を決し、アヤは慎重に前に進む。すると突如、岩の形をしたポケモンが飛び出してきた。
「あのポケモンは何だろう……?」
アヤはすかさず図鑑を取り出し、そのポケモンに向ける。それによれば目の前にいるポケモンはイシツブテという、岩タイプのポケモンらしい。マヤとの戦いに備えるにはうってつけの相手だ。
「行け!ナエトル!」
「ナエッ!」
ナエトルと野生のイシツブテがにらみ合う。暗闇の中とはいえ、フラッシュのおかげで視界はばっちりだ。
「ナエトル!体当たり!」
アヤの初手体当たりの指示はもはや好例である。ナエトルも慣れた様子でイシツブテに突っ込む。しかし、その体当たりはイシツブテの防御にむなしくも阻まれた。
「あっ……、そういえばノーマルタイプの技って岩タイプに効かないんだっけ」
相手こそちがえど、マヤと戦った時と全く同じ展開だ。しかし、この時ようやく気が付いた。
「そういえば、私のナエトルが覚えている技ってノーマル技の体当たりだけ……?」
残りの技は守備力を上げる殻にこもるだけだ。つまりアヤの勝ち筋はほぼない。
「ど、どうしようヒナちゃん!助けてよ~!」
ついに洞窟にアヤの叫びが響き渡る。しかし、ヒナはさらっと一言添えただけだ。
「アヤちゃん、どうしてポケモン交代しないの?」
「こ、交換!?」
アヤの脳裏に、ふとテレビで見た映像が頭に浮かんだ。
「そういえば昔テレビでポケモンバトル見たときトレーナーの人、ポケモンを交換してたような……。えっと……、確かこんな感じで……。戻れ、ナエトル!」
見よう見まねで掛け声を出し、ナエトルをボールに戻す。そして再びボールを投げた。
「行け!ラルトス!」
「ラルト!」
ラルトスは飛び出すと、突然暗がりに放り出されたせいか辺りをキョロキョロ見渡している。しかし目の前から伝わる敵意に気が付くと、その方向をじっと見つめた。
「いくよ!ラルトス、念力!」
「ラル」
ラルトスが淡い光を放ち、イシツブテを浮かす。そして近くの岩肌に叩きつけた。
「ンゴ」
イシツブテは片腕で頭を押さえている。念力は間違いなく効いている。
「よし!もう一回念——」
勢いづいたアヤがもう一度念力を指示しようとした時だ。そうはさせないぞと言わんばかりにイシツブテが転がってきた。
「ラルッ!」
指示が遅れ、ラルトスは跳ね飛ばされる。ラルトスはその衝撃で地面に叩きつけられた。
「ラルトス!」
アヤの叫びに何とか答えようと小さな腕で必死に立ち上がろうとする。しかし、イシツブテはお構いなしに再度ラルトスに向かって転がってくる。だが、天はまだアヤとラルトスを見放していなかったようだ。ラルトスを轢く直前、彼女の目の前にあった小さな石ころがジャンプ台の役割を果たし、イシツブテを宙に浮かせたのだ。
「よーし、今なら!ラルトス、念力!」
ラルトスは何とか立ち上がり、再びイシツブテに念力を送る。
「ラー」
ラルトスの手の動きに合わせてイシツブテは宙で拘束されたまま、右に左へ動く。
「ッル!」
そしてラルトスが大きく手を振った瞬間、イシツブテは闇の中へ放り投げられた。直後に遠くで重いものが落ちる低い音がしたが、それが襲ってくる様子はない。ラルトスとアヤの勝利だ。
その後もアヤはナエトルとラルトスを相手によって使い分けながら、洞窟の中を進んだ。しかし、ここで思わぬトラブルが起きた。
「ねぇヒナちゃん……、ここどこ……?」
特訓や洞窟の散策に夢中になりすぎて、二人は迷子になってしまったのだ。もう洞窟に入ってかなりの時間がたっている。日暮れも近い。その上持ってきた荷物もとてもとても一泊できるようなものではない。早く出口を見つけなければ危ないのであるのだが……。
「わー!もしかして遭難!?なんだかるんってするね!」
こんな感じで、怖いくらいウキウキしながら歩いている。アヤは、ヒナを追いかけながら必死になって出口を探すのだが一向に見つからない。そして追い打ちをかけるように、アヤの背後からは何かが引きずられるような音が近寄ってきた。
「な、なに……!?」
アヤは足を止め、ボールを構える。すると同時にポリゴンZの明かりの中にぬっと、巨大なポケモンの顔が姿を現した。
「キャッ!あれはなに!?」
震える手で図鑑を取り出し、調べると画面にイワークという文字が表示された。どうやらイワークも岩タイプらしい。
「ひ、ヒナちゃん助けて!」
岩が数珠のようにつながった長い図体を前に、アヤの悲鳴が上がる。
「さぁアヤちゃん!特訓、特訓!」
しかし、ヒナは助ける気はさらさらないようだ。よほど危険な目に合わないと助けないつもりなのか。仕方なくアヤは臨戦態勢に入った。
「お、お願い!」
ボールから出したのはラルトスだ。ナエトルよりもラルトスの攻撃のほうが効くと判断したのである。
「ラルトス!鳴き声!」
まずは可愛らしい鳴き声で相手の油断を誘う——はずだったがなぜかイワークの顔はどんどん険しくなっていく。
「ワークッ!」
イワークは長く硬い尻尾を鞭のようにしならせ、近くの岩を打ち飛ばす。ラルトスは咄嗟に回避したが、その先に待ち構えていたのは例の巨体。それに阻まれたラルトスは、イワークの二撃目を回避することができず、その下敷きとなった。
「戻れ、ラルトス!」
ラルトスの身の危険を感じ、アヤは慌ててラルトスをボールに戻す。そして、代わりにナエトルを出した。
「ナエッ!」
威勢よくナエトルはイワークに立ち向かうが、岩タイプに不利なノーマル技だけでイワークを突破するのは至難の業だ。岩を落とされて、叩きつけられて、締め付けられて……。ナエトルの体力はもう僅かだ。
「ワーック!」
そして止めと言わんばかりに、頭上に岩が現れた。しかし、ナエトルは傷ついたせいかそこから全く動こうとしない。ついにアヤも万事休すか。そう判断したヒナがようやく重い腰をあげようとした時だ。ナエトルの頭部の葉っぱが不意に光った。
「ナエッ!」
そこから飛び出したのは無数の葉っぱだ。それは頭上の岩石を木っ端みじんに砕いた。
「すごい!アヤちゃんのナエトル、葉っぱカッターを覚えたんだね!」
先に歓声を上げたのはヒナだ。
「葉っぱ……かったー?」
アヤもワンテンポ遅れて反応したが、新技に少し戸惑っている。しかし、一秒でも早くここを出るだめにも、少なくとも今は新しい技を信じるしかない。
「よ、よし……ナエトル!イワークに向かって体当たり!」
ナエトルがイワークに向かって走り出す。
「そこでジャンプ、イワークに飛び移って!」
「エッ!」
体当たりの勢いに乗り、ナエトルの体は見事イワークの背に着地した。
「頭まで走って頭で跳ねて!」
ウネウネ抵抗するイワークの体にナエトルは懸命に食らいつく。そして後頭部で大きく跳ね上がった。
「今だ!葉っぱカッター!」
「ナーエーッ!」
イワークの背後から無数の葉っぱが、その巨体を切り裂く。そしてそれはナエトルが地面に再び戻ると同時に、ゆっくりと倒れてのであった。
「やったよ……、やったよナエトル!新技取得おめでとう!」
アヤはナエトルを抱きしめ、頭をぐしゃぐしゃに撫でまわす。しかし、どういうわけかナエトルの視線がまた鋭くなった。
「えっ……、どうしたの……?」
アヤも背後の無数の視線を察した。恐る恐る振り返るとそこには、無数のゴルバットとズバットが羽ばたいていたのだ。
「キャッ!ど、どうしよう……」
ナエトルやラルトスは傷ついているし、それ以前にアヤ一人で何とかなる量ではない。アヤは再びヒナに縋りついた。
「確かにこれはアヤちゃんじゃむりだねー。わかった、私が何とか——」
ようやくヒナが動き出したその時だ、なぜか明かりが点滅を繰り返しだした。ヒナは僅かに訪れる明るい時間に上空を見上げた。
「あ~、私のポリゴンZ、混乱しちゃったみたいだね。さてはアヤちゃんと話している間に、怪しい光でも受けたかな?なんかあのゴルバット、たまに変な光を出しているし」
「こ、混乱!?怪しい光!?」
「怪しい光っていうのは相手を混乱させる技の名前。混乱すると指示が通りにくくなって、たまに自分を攻撃しちゃうんだ。ほらあんな感じに」
ヒナの指の先を見ると確かに、ポリゴンZは頭や体を近くの壁や岩にガンガンぶつけている。
「——って呑気に解説している場合じゃないよ!早くなんとかしてよ!」
とうとうアヤの目には涙が浮かび出した。だが、ヒナは相変わらず余裕そうに笑っている。
「大丈夫だって。混乱はボールに戻して落ち着かせれば、すぐに治るから。……あれ?そういえば私、モンスターボールどこにしまったっけ?」
まさかの事態だ。ヒナは服やカバンのポケットに手を突っ込みまさぐるが、それらしき物体はない。
「ごっめーん。モンスターボール何処かに行っちゃったー。ちょっと探すから待ってて」
ヒナはマイペースにバックを背からおろし、荷物を出し始めた。当然アヤはたまったもんじゃない。
「えっ、ちょ、ちょっと!」
ゴルバットたちはいつ襲ってきてもおかしくない。そう思っている矢先、ついに一匹のズバットが攻撃を繰り出した。
「わわわわわわ!ラルトス、何とかしてぇ!」
アヤは混乱し、わけもわからずラルトスを繰り出した。
「ラルッ!」
迫りくる大群の中、ラルトスは両腕を上げる。するとアヤの目の前は白い閃光に包まれた。
アヤが白い閃光から解放されたとき、目の前に広がっていたのは見覚えがある街並みだった。
「ここは……もしかして……」
間違いない。ハナノシティのポケモンセンターの前だ。なんだかよくわからないけど助かったようだ。その日の夕飯の時にヒナに話を聞いてみたところ、彼女が言うには『ラルトスはテレポートを新しく覚えて、それを使ったんじゃないかと語ってくれた。
その日は疲れ切ってしまったのかヒナは電気を消し、すぐに眠ってしまった。アヤは暗がりに一人取り残された。しかし、そんな彼女を月明かりが照らす。気が付くとアヤは、その中で今日のことを思い返していた。高い行動力、独特な発想、人懐っく子供っぽい性格、そしてまともに戦っているところを見なくてもわかる桁違いのポケモンバトルの腕……。考えれば考えるほど、ヒナという人物の不思議さや魅力がわかってくる。
「……一見滅茶苦茶だった特訓も、終えてみれば新しい技を二つも習得できているし……。ひょっとしてヒナちゃんて天才?」
そう思いをはせていると隣から、消えてしまいそうな寝言が聞こえてきた。
「おねーちゃん……、ユキノオー……、ソルロック……、ユキメ……。クゥー……」
ヒナはすでに夢の世界に浸っているようだ。仮に天才であるとしても、こうしてみるとヒナもアヤも同じ少女である。
「私もいつか、ヒナちゃんみたいなポケモントレーナーになれるかな……?」
アヤはそんな淡い希望を胸に秘めながら瞼を閉じた。
おまけ:ヒナの手持ち
・謎のトレーナーヒナちゃんの手持ち。なんかの参考にしてください。
☆ラグラージ(♂)
特性:激流
主な技
・滝登り
・ステルスロック
・冷凍ビーム
・あくび
☆テッカニン(♀)
特性:加速
主な技
・剣の舞
・吸血
・影分身
・燕返し
☆ポリゴンZ
特性:適応力
主な技
・破壊光線
・目覚めるパワー(地面)
・悪の波動
・十万ボルト
☆追記
シンシュー地方のマップを目次の先頭に追加しました。