BLESS A CHAIN   作:柴猫侍

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*87 Velonica

 霊王宮から瀞霊廷へ帰還する手段は二通りある。

 一つは零番隊が赴いた際に使用した天柱輦と呼ばれる乗り物を使用する方法。

 もう一つは階段を下りるという至って単純な方法だ。

 

 ただし、後者の方法は如何せん時間がかかる。

 凡そ普通に()()()()()()()()()

 いつ滅却師が来襲するか分からない状況で、移動だけに一週間費やすなど平静では居られまい。

 

 だが、今の()()ならば違う。

 

「───あとどれぐらいだ?」

「もうすぐ着く筈だ。しかし、滅却師も中々厭らしいタイミングに仕掛けてくる……」

「そう急ぐなよ。足元掬われるぜ?」

 

 三位一体となりながら、螺旋状の階段の中央を垂直に飛び降りていく人影。

 焰真、ルキア、恋次の三人は、傷の深かった白哉や修行に時間が掛かっている一護に先んじて霊王宮を発っていた。

 共に千手丸が仕立てた反物を纏い、心機一転した装いで瀞霊廷を目指す彼らの顔は、精悍そのもの。

 

 身も心も鍛え上げる修行の下に生まれ変わった三人は、来るべき戦いに向けて昂ぶりこそすれ、恐怖は微塵も感じていなかった。

 ゴーグル越しに力強く眼下を見据えれば、次第に広大な見慣れぬ街並みが目に飛び込んでくる。

 

「あれが瀞霊廷か……!?」

 

 驚いたようにルキアが声を上げる。

 広大な土地を誇る瀞霊廷を見間違える筈がない。落下地点を間違えたとしても、斯様な西洋風の街並みが流魂街にある筈もない。

 否応なしに護るべき瀞霊廷が賊軍の手に堕ちたという事実を知らしめるような景色がそこにはあった。

 

「チッ、俺らが居ない間に好き勝手しやがって……!」

「いいさ、建物はまた建て直せば」

「焰真……」

 

 憤る恋次に対し、焰真は真っすぐな声音で言い放つ。

 弾かれたように振り向くルキアが目の当たりにしたのは、燃える様な紅を宿す瞳。

 出会ったあの頃から変わらぬ、情熱に溢れんばかりに燃える魂そのものが、其処には在った。

 

「今は命を救うことだけを考えるぞ」

「───ああ!」

「あたりめえだ。で? 下りた後の動向はどうするんだ?」

「もう、決めてる」

「「は?」」

 

 戦況も何もわかっていない状況で今後の動向を決めているとは、一体どういう意味なのか。

 理解が及ばなかった二人が頓狂な声を上げ、訝しげに焰真に視線を遣った。

 

 彼は尚も迫りくる瀞霊廷───延いては目下の遮魂膜を前にし、斬魄刀の鍔に手をかける。輪をかけた白銀の五芒星は重厚な煌きを放ちながら、その先に携える刀身に力を流し込んでいく。

 

「───滅却師の城を一気に落とす」

 

 驚く二人。

 だが、反論はしない。

 真摯な眼差しを湛えた三人は、敵城と思しき天に反り返る爪の如きオブジェクトを構えた巨大な建築物を捉えた。

 

 間もなく輝きが最大限に極まろうという時、眼前まで迫っていた遮魂膜目掛け掌を翳す。

 霊力を分解する筈の波動は、真っ先に衝突した超高密度の霊体との拮抗の末、その天蓋に穴を穿つこととなった。

 人数人が潜れる小さな穴だ。それでも落下の勢いで押し退かされた曇天を縫うように、一条の光芒が差し込む。

 

「こいつは挨拶代わりだ……!」

 

 振り抜かれる刃は迷いなく、光の速さで暗雲を切り拓いた。

 

 

 

劫火(ごうか)……大炮(たいほう)ォ!!!」

 

 

 

 天を、空を、大地を破り、光の一閃は滅却師の居城が城門を斬り伏せた。

 城門を守っていた滅却師は、着弾の衝撃波によって吹き飛ばされ、周囲の建物も余波だけで壁や窓に罅を刻んでいく。

 たったの一手。

 それだけで戦争の盤面が翻る予感を瀞霊廷全土に知らしめる光芒を見せつけた三人は、堂々と壊れた城門の前に降り立った。

 衣服に付いた埃を叩きながら、三人は徐々に大きくなるどよめきに耳を傾ける。

 

『な、なんだこいつらは……!?』

『死神!? 上から来たぞ!』

『待て! こいつの顔……まさか!』

 

 

 

「ユーハバッハに伝えろォ!!!」

 

 

 

『!!!』

 

 慄く滅却師に、焰真が鬼気迫る形相で叫ぶ。

 

「護廷十三隊十三番隊副隊長、芥火焰真だ!!!」

「同隊第三席、朽木ルキア!!!」

「六番隊副隊長、阿散井恋次だぜェ!!!」

「以上三人、お前の首を獲りに来たってなァ!!! 聞いてるか、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)ィ!!! そんでも俺らの邪魔したいってんなら……死ぬ思いしたい奴だけかかってきやがれ!!!」

 

 戦火の中、新たに撒かれる火種が星十字騎士団の雑兵───聖兵(ゾルダート)の闘争心に火をつけた。

 

「かかれェ!!」

「特記戦力とて臆すなァ!! 所詮は三人だ!!」

「討滅すれば陛下より褒美を賜われるぞ!!」

「やれ!! やれェ!!」

「死神は全滅だァ!!」

 

 雄叫びを上げてかかってくる聖兵の数、凡そ数十を超える。

 それらを一瞥した三人は、互いに目配せをし、斬魄刀を握る柄に力を込めた。

 

 炎が、凍気が、牙が吹き荒れる。

 

「浄めろ───『煉華(れんげ)』!!!」

「舞え───『袖白雪(そでのしらゆき)』!!!」

「吼えろ───『蛇尾丸(ざびまる)』!!!」

 

 一瞬。

 ほんの一瞬の内に、三人へ飛びかかった聖兵は皆返り討ちにされて地に沈んだ。

 

「ば、かな……!?」

 

 その内、辛うじて意識のあった滅却師は幻でも見ているかのように夢うつつの頭で思案に耽る。

 雑兵とは言え、中には死神でいう席官クラスの実力を持っている者も少なくなかった。

 にも拘わらず、たった一撃で。

 目にも止まらぬ速さで振り抜かれた一閃で、自身は動くことすらままならなくなったのである。

 

「こ、これが特記戦力……()()()()……ぐはッ……」

 

 そこで滅却師の意識は途絶えた。

 今度こそ静まり返る城門前。

 霊王宮での修行の成果を出す準備程度にもならぬ運動を終えた三人は、聳え立つ居城を見上げる。

 

「ここにユーハバッハが居るのか……」

「なんだ、ビビッてんのかルキア?」

「たわけ! 誰がビビっているなどと」

「院生じゃないんだから門の前で駄弁るなって……行こうぜ。そろそろ敵さんが来る頃だろうしな」

 

 幼馴染なりの緊張を解す会話を交わしていれば、やたら焰真が先を指さす。

 

「どうしたァ? お前にしちゃやけに急かすじゃねえか」

「止してやれ、恋次。此奴は以前虚圏(ウェコムンド)についてこなかったことを気にしておるのだ。まったく、いつまでも女々しい奴め」

「よし、ルキア。ちょっとそのゴーグル貸せ」

「なあ!? やめろ、そんなに引っ張ったら危ないだろう!! ゆっくり放せ!! いいか、ゆっくりだぞ!? ゆっくり放痛あああああああい!!?」

 

 ひそひそと耳打ちしていたルキアのゴーグルを限界まで引っ張るや、ゴムの弾性を利用してゴーグルが発射される。直撃を喰らったルキアはその場でゴロゴロとのたうち回る。

 

「よし、これで緊張は解れたろ」

「貴様、後で憶えておけよ……!」

 

 気安い関係をまざまざと見せつける二人だが、何バカやってんだ……、と恋次は呆れた面持ちを湛えるのみだ。

 

「さてと……」

 

 間もなく真剣な空気を纏う三人が、滅却師の牙城に面を向かう。

 

「ここからは敵がわんさか出てくるぜ。準備はいいな?」

「「応!」」

「よし……」

 

 ゆるぎない決意の下、磨かれた刃を携えて。

 

「終わらせるぞ、戦争を」

 

 次から次へと現れる聖兵を望みながら、三人の足は城の中へと向かう。

 

 

 

 ***

 

 

 

「───陛下、()()()()()()()()?」

 

 帰投命令を受け、銀架城へと舞い戻ったハッシュヴァルトが問う。

 眠りについていたように瞼を閉じていたユーハバッハはと言えば、その問いに怒る事もなければ気を悪くする様子はない。

 

「構わぬ。どの道、特記戦力を相手には親衛隊以外では時間稼ぎにしかならん」

「……だから、()を檻から出したと?」

「そうだ」

 

 銀架城へと帰還命令を出した星十字騎士団も、その大半が一人の特記戦力相手に敗北するのが濃厚というのがユーハバッハの見立てだ。

 精鋭たる聖文字持ちの星十字騎士団を時間稼ぎの駒を見るのは、冷血と見るべきか、はたまた目的の為に割り切っていると見るべきか。

 どちらにせよハッシュヴァルトはユーハバッハの言葉に従うだけだ。この男に諫言を呈する者も居なければ指図できる者も居ない。彼にとって他人とは須らく突き進む覇道の上に散らばる砂粒のようなものだ。如何なる障害とて───それが味方であろうとも敵であろうとも───踏み潰されるのみ。

 

 故に、ハッシュヴァルトは皇帝の意思を汲み、深々と頭を下げるだけに留まる。

 それを満足気に眺めるユーハバッハは、大気を伝わる霊子の衝撃波を肌でビリビリと感じとっていた。

 

「更に力を高めてきたようだな、焰真よ」

 

 

 

 それは遥か昔に血を分かった息子の名。

 

 

 

「いいぞ、お前の全ては我が為にある」

 

 

 

───さあ、来い。私の許まで。

 

 

 

 例え敵として相まみえるとしても、それすら運命だと言わんばかりに。

 

 

 

 ***

 

 

 

「と、止めろォ! なんとしても止め……ぎゃあああ!?」

 

 果敢にも立ち向かってきた聖兵を峰打ちで沈める焰真。

 倒した数が百の大台に乗るのも時間の問題だ。

 しかし、現時点で星十字騎士団と思しき腕利きには一度も会敵してはいない。

 

「ううむ、敵城の懐が斯様にも手薄なものか?」

「分からねえ。だが、居ないなら今の内に攻めるのが吉ってこった……そぉら!!」

 

 ルキアの疑問に問いつつ、蛇尾丸を振るう恋次が巨大な門を斬り崩した。

 大きいばかりで利便性に欠けた内装は虚夜宮と似ている。威厳を示す為だか何か知らないが、程々にしてほしいものだと恋次は呆れるように息を吐いた。

 間もなく土煙が晴れ、これまた広大な通路が目に入ってくる。

 ろくな照明もない通路は仄暗く、最奥に至っては暗闇で見通す事ができない。

 

「まーたでかい所に出てきやがった。どうする? いっそのこと手分けすか?」

「たわけ。折角戦力が集結しているのを分散する必要がどこにある。今回は井上の時のように救出が優先な訳ではないだろう」

「おっと、そう言われりゃあそうか」

「みたいだぜ、お前ら。わざわざ手分けす必要がなくなったみたいだ」

「「!!」」

 

 焰真の口から出てくる言葉に眉を顰めれば、すぐに意味を理解できる光景が目に映った。

 広大な通路の柱の陰より滲み出る人影。どれも先程まで襲い掛かって来た聖兵とは比べ物にならない威風を纏う彼らの正体は。

 

「……ようやくお出ましか。敵城のど真ん中に居る実感が湧いてきたな」

 

 錚々たる顔ぶれには、焰真も見覚えがあった。

 

『……』

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“H”

───“灼熱(ザ・ヒート)”───

Bazz-B(バズビー)

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“U”

───“無防備(ジ・アンダーベリー)”───

NaNaNa Najahkoop(ナナナ・ナジャークープ)

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“K”

───“叡智(ザ・ノーレッジ)”───

BG9(ベー・ゲー・ノイン)

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“F”

───“恐怖(ザ・フィアー)───

Äs Nödt(エス・ノト)

 

 

 

 以前刃を交わした相手も居れば、霊圧だけ覚えがある滅却師も居る。

 しかしながら、一様にしてこちらをジッと見据える姿には得も言われぬ不気味さを覚えるようだ。言葉を多く交わした訳ではないが、彼らが本当に以前対峙した者と同一人物であるのかさえ疑問に思ってしまう。

 だが、そんな胸中に浮かんだ疑問に答える筈もなく、四人の星十字騎士団は三人へと飛びかかった。

 

「焰真! そいつの棘に触れるなよ!」

「ああ!」

 

 恋次がエス・ノトの繰り出す光の棘を一瞥し、注意を促す。

 軽やかに降り注ぐ棘から飛びのく三人。

 続けざまに、焰真へBG9が、恋次にバズビーが、ルキアへナジャークープが襲い掛からんとする。

 

「蒼火墜!!」

 

 一番に動いたのは焰真だった。

 ルキアへダブルスレッジハンマーを振り落とさんとするナジャークープへ迸る蒼炎。倒すには至らずとも、勢いで吹き飛ばして攻撃を逸らす事で無力化してみせた。

 すれば、フリーとなったルキアが、恋次へバーナーフィンガーを放たんとするバズビーへ凍気の波濤を向ける。

 次の舞・白漣。霊王宮にてより洗練された凍気は、優にマイナスを下回る程の苛烈さを備える。

灼熱を孕んだ指先をまんまと凍らせれば、生まれた寸隙に乗じて恋次が蛇尾丸を振り下ろし、ルキアへ迫っていたBG9の触手をかたっぱしから斬り落とした。

 

 流れるように赤い紋様が浮かぶ刀身がBG9を襲う。

 動血装を発動する焰真の一閃だ。

 超絶たる膂力の下に放たれた一撃は、BG9の金属体を鞠のように吹き飛ばし、壁にめり込ませるに至る。

 間髪入れず追撃へ奔った焰真は、一切の躊躇もなくその鋒を機械人形の胸へと突き立てた。すれば、間もなく鉄仮面の中に浮かんでいた光が消える。

 

「───一人」

 

 仕留めたと確信する焰真は次なる標的へと目を向ける。

 恋次がバズビーの炎の剣と切り結び、ルキアがエス・ノトの棘を回避する間、先程蒼火墜を喰らったナジャークープが奇怪な弾丸を打ち込む姿が窺えた。

 次の瞬間、解き放たれる弾丸。

 それを最小限の動きで───体を傾けるようにして避けていく焰真は、軽やかな瞬歩でナジャークープの眼前に迫る。

 

 間合いを詰められたナジャークープは、反射的に握りしめた拳を繰り出す。

 が、固く握られた鉄拳は焰真の炎の幻影を捉える事しかできない。

 再び彼が姿を現した場所はナジャークープの背後。僅かに刀身についた血液を振るい落としている途中だった。

 

 直後、異変に気がついたナジャークープが胸に手を当てる。

 ───刺されていた。

 血でしとどになる胸と背中。

 一撃ではない。胸側と背中側からそれぞれ一突きずつだ。

 先程のBG9同様、霊力発生の源を司る鎖結と魄睡を貫かれたナジャークープは、ニヒルな笑みを浮かべるや地面へと崩れ落ちた。

 

「───二人」

 

 後は手を出すまでもない。

 そう結論付ける焰真は、ルキアへと目を遣った。

 

 一撃でも喰らえば本能に刻み込まれた恐怖を呼び起こされ発狂に至るエス・ノトの棘。

 それを最初は縦横無尽に跳んで、潜って、紙一重のところで躱し続けていたルキアであったが、頃合いを見計らったかのように振り返り、敵に面と向かう。

 すれば足を止めた獲物目掛けて一斉に光の棘が降り注ぐ。

 足を止めた寸隙を狙っての射撃。

 避ける間もなく喰らうルキア───だが、その顔には一切の恐怖の色は現れない。

 代わりに彼女の立つ足場が揺れ始め、ゾッと総毛立つ寒気と凍気が円を描いて放たれる。

 

(マイナス)273.15℃───絶対零度」

 

 純白の刃が手向かうエス・ノトに奮われた。

 交差する影。

 二つの人影が離れた時、敗けていたのはエス・ノトであった。たった一瞬の内に全身を氷結させられた彼は、物言わぬ氷像と化して通路に立ち尽くす。

 

 深閑とした決着がつく一方、恋次とバズビーの戦いは熾烈を極めていた。

 猛る炎を切り裂く蛇尾丸の刃。何度も飛び散る火の粉は、ルキアの戦いとは正反対に激しい衝突の様相を繰り広げている。

 

 しかし、転機は訪れた。

 炎の剣───バーナーフィンガー4と切り結んでいた蛇尾丸が焼き切れたようにバラバラに千切れたのだ。

 複数の刃節に分かれた蛇尾丸にとって、それらが千切れる事態は由々しき問題。

 リーチが極端に短くなるなど、直接攻撃系の斬魄刀としては致命的なまでに攻撃性能が激減する。

 

 そんな恋次へトドメを刺さんと一指し指から灼熱を迸らせるバズビー。

 恋次は屈み、自身が羽織っていたマントを投げ捨てる。

 マントの陰に身を隠す恋次に、バズビーの狙いは寸前の所で外れた。恋次の命を貫くには至らず、高熱の灼閃はマントに焦げた穴を穿つだけであった。

 

 すると今度は恋次がバズビーの命に牙を剥く。

 

狒牙絶交(ひがぜっこう)!!」

 

 千切れた刃節が次々に浮かぶ。

 バズビーを取り囲むように浮かんだ刃の群れは、彼が異変に気がつき回避行動を取るよりも早く殺到した。

 飢えた肉食獣が如く群がる牙は、瞬く間にバズビーの体を喰らい尽くす。

 骨肉を齧り、血潮を啜った刃は始解を解く恋次の下へと戻るや、元の封印状態へと変化する。

 

 そうしている間にもバズビーは血みどろになった体で蹈鞴(たたら)を踏む。

 何とか敵の下へ向かわんとする彼であったが、あちこちを食い破られた体では満足に動く事さえ敵わず、間もなく双眸から光が消えた。

 ドサッ、と肉が床に落ちる鈍い音が通路に反響する。

 勝利した者達へ送られる歓声もなく、静寂に包まれる場。

 

「……」

 

 一汗掻いたルキアと恋次が自身の成長を実感する一方、怪訝そうに眉を顰めていた焰真は床に倒れた遺体を確認しようと歩み寄る。

 手を伸ばす、その時だ。

 

 

 

「───ラァ~~~ッキイ☆ あたしら一番ノリじゃね!?」

 

 

 

 自分達へ降り注ぐ落雷に勘付き、その場から離れる。

 辛うじてルキアと恋次も躱し、極太の稲光は床に大穴を穿つだけに留まった。

 

「何奴!」

「早速新手が来やがったか!」

 

 刀を構えるルキアと恋次に続き、焰真も鋭い眼光を現れた人影へと向けた。

 数は四。

 どれもただならぬ霊圧を発する星十字騎士団の精鋭と思しき風格であった。

 

「チッ!! 避けやがったか……今度こそブチ込んでやる!!」

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“T”

───“雷霆(ザ・サンダーボルト)”───

Candice Catnipp(キャンディス・キャットニップ)

 

 

 

 目が眩むような金髪の美女が、獲物を前にした獣が如く舌なめずりをしつつ、好戦的な笑みを浮かべた。

 

「不意打ちで当てられないなんてダッサ。次も避けられるのが関の山にゃーんッ」

「ああ!?」

「やだぁー。キャンディちゃん、こわァーいッ」

 

 仲間を煽る頭頂部から左右へ跳ねる二本のアホ毛が目を引く滅却師がわざとらしく怖がった様子を見せる。

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“Z”

───“死者(ザ・ゾンビ)”───

Giselle Gewelle(ジゼル・ジュエル)

 

 

 

「まあ、落ち着けよビッチ。相手はあの特記戦力筆頭の片翼だ。こんくらいしてもらわなきゃ拍子抜けだぜ」

 

 ジゼルに続き、キャンディスに毒舌で宥める金髪の少女。

 一際小柄な彼女は、全てを食べ尽くした菓子の箱を放り捨てたかと思いきや、ウエストポーチからまた新たな菓子を取り出すではないか。

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“G”

───“食いしん坊(ザ・グラタン)”───

Liltotto Lamperd(リルトット・ランパード)

 

 

 

「でも、さっさと殺せるならそれでいいと思うの……」

「バァーカ。不意打ち如きじゃ()れないのが特記戦力って言ってんだよ」

「なるほどォ~><」

 

 ガタイがしっかりとしている桃髪の女性が、リルトットの言葉に納得するように頷く。

 その緩くフワフワとした口調を聞いていると気が抜けてくるようだが、拳から漂う血の香りは誤魔化せない。

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“P”

───“(ザ・パワー)”───

Meninas McAllon(ミニーニャ・マカロン)

 

 

 

 総勢四名の女滅却師。

 数は先程と変わらないが、どれも曲者でありそうな雰囲気を感じ取った三人の表情は険しい。

 

「どうする、焰真? 私達だけで相手してお前が先に行くのも手だぞ」

「そうだぜ。三下相手に時間無駄に使うのは得策じゃねえ」

 

「ああ? ……誰が三下だってェ───ッ!!?」

 

 恋次の声を聞き逃さなかったキャンディスが怒髪衝天の勢いで怒り狂う。

 彼女の肢体から爆ぜる電光は辺りの床や壁を焦がしていく。雀部と同じ電撃を操る能力者だろうか。攻撃速度もさることながら、触れれば痺れるという点が刀を扱う者としては厄介な部分だ。

 しかし、いつまでも下の者を相手にし続ければユーハバッハに策を弄する時間を与えるも同義だ。

 

 悩ましいところではあるが───。

 

「……分かった。ここは二人に任せたぞ」

「ああ、どんと任せておけ」

「女が相手だろうが手加減しねえから安心しろ」

 

 二人を信じ、場を任せんと踵を返す焰真。

 そんな信頼を背に負った二人もまた、精悍な顔つきで斬魄刀を構えてみせる。

 

「行かせるかよ」

「!」

 

 しかし、飛簾脚で先回りするリルトットが能面のような無表情で告げる。

 

「腐ってもオレらは星十字騎士団だぜ? 早々に陛下のところになんか行かせられるかよ」

「……泣いても知らねえぞ」

 

 立ち塞がるリルトットを睨みつける焰真。

 どちらも譲ることなく、静かに睨み合う時間が流れる。ぶつかり合う相手を値踏みする視線。何を天秤にかけ、どう動くべきかを思案している。

 こうしている間にも、女滅却師らはルキアと恋次へじりじりと距離を詰めている。

 火花を散らす睨み合いだが、時間が経てば勝手に戦いの火蓋が切って落とされん雰囲気がビシバシと伝わってくるようだ。

 

 先に結論を出したのは───リルトットだった。

 

「ここで芥火焰真を取り逃がすのはゴメンだ。小手調べなんかいらねえ。完聖体で仕留めるぞ」

「よっしゃ、キタァ! 処刑タイム開始ィ~~~っとォ☆」

「キャンディちゃん張り切りすぎィ~。ま、ボクも同意見だけど」

「惨殺はイケないから瞬殺ですゥ~><」

 

 浮かぶ光輪。

 

 

 

「───『神の晩餐(グラトニエル)』」

 

 

 

 牙が翼と。

 

 

 

「───『神の雷斧(サンダラフォン)』!!!」

 

 

 

 雷が翼と。

 

 

 

「───『神の死蝋(ジェルノボグ)』」

 

 

 

 骨が翼と。

 

 

 

「───『神の鉄拳(ヴァルク)』」

 

 

 

 (しし)が翼と。

 

 

 

 司る聖文字を象徴するような翼を生やした天の使いが三人を取り囲む。

 神罰はすぐさま下る。

 轟音を轟かせる雷撃を初めに、霊子を喰らい尽くさんとする巨顎、体を貫かんと飛来する骨、はち切れんばかりに膨れ上がった巨腕から繰り出される拳など、三者三様の攻撃が迫って来た。

 一斉に襲い掛かる攻撃は、銀架城の一角を破壊の光で包む。

 巻き上がる土煙の量も凄まじく、高濃度の霊子が満ちている影響もあってか味方を視認する事さえままならない。

 

「ルキア! 恋次!」

「ここだ!」

「そこに居たのか! こうなったら卍解で一網打尽にするぞ!」

「いいや、駄目だ! 貴様はユーハバッハの下まで力を温存しろ!」

「はあ!?」

「私達が何とかする!」

 

 土煙の奥から声が響いてくる声に、焰真は顔を顰めた。

 確かにルキアの言い分も分かるが……、リスクとリターンの間で葛藤する。

 

「なぁーにコソコソ相談してやがんだァ!!」

「チィ!!」

 

 しかし、土煙を裂く稲光がルキアを襲い掛かる。

 寸前で展開した氷壁で身を守ったものの、衝撃までは防げなかったのか氷は間もなく崩れ去った。

 一方、恋次はと言えば二人掛かりで襲い掛かってくるミニーニャとジゼルの対応に追われている。

 

「こいつら……! さっきの奴らより連携ができるぜ!」

「避けないでください。上手く殺しにくいですからァ~><」

「うおお、危ねえ!?」

 

 可愛らしい見た目と服装に反し、巨漢以上の剛腕に変化したミニーニャの拳が、恋次が立っていた床に突き刺さる。

 その威力は凄まじく、衝突の余波で破片や土煙が舞うだけに留まらず、床をクレーターの如く陥没させる程だ。もしも頭に喰らおうものなら、脳漿をぶち撒けながら首から上が肉片へと化すだろう。

 

 状況はまさに混戦を極めている。

 

 それを決定的にしたのはジゼルであった。

 

「う~ん、流石に四人じゃ心許ないなァ。それじゃあ出番だよ、みんなァ~!」

『!』

 

 ジゼルの掛け声に呼応し、通路の柱や窓の陰から次々に人影が舞い降りる。

 どれもが生気のない顔を浮かべており、中には血の気が通っていないような浅黒い肌の人間も居た。

 漂う異様な空気───否、死臭だ。

 鼻を摘まみたくなる臭いを放つ人々が集う中、ジゼルは一人の白装束の少女に抱き着いた。

 

「さっ、バンビちゃん♡ こいつら倒したらご褒美あげるから頑張ってねーッ」

「ご……ほうび……?」

「そ。バンビちゃんもご褒美欲しいでしょ~?」

「ごほうび……ほしい……! バンビ、ごほうびほしい……!」

「じゃあハッスルしちゃおっか……ねっ!」

 

 生気ない軍勢の先陣を切った白装束の少女───否、死者は迷う事無く三人へと立ち向かう。

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“E”

───“爆撃(ジ・エクスプロード)”───

Bambietta Basterbine(バンビエッタ・バスターバイン)

 

 

 

 ジゼルの能力で蘇ったバンビエッタは、虚ろな瞳を湛えたまま爆弾化の霊子を辺りにばら撒く。

 例え、そこに同じ亡者と化した死神や滅却師のゾンビが居てもお構いなしだ。

 三人へ攻撃すべく次々に破壊の種を植え付けられては爆破されていく死者の群れ。中には焰真の顔見知りも居た。

 彼らが爆散する姿を。そして敵味方問わず蹂躙していく光景を目の当たりにした焰真の表情には、ありありと赫怒が浮かび上がる。

 

「野郎……!」

「よそ見とはいい御身分だな」

 

 飛来する神聖滅矢。

 すぐさま叩き落す焰真。彼の前には、四人の中でも司令塔と思しきリルトットが翼をはためかせて行く手を阻む。

 同時に押し寄せるゾンビの大群を前に、焰真はその対処に追われる。

 百歩欄干や鎖条鎖縛など、手あたり次第の縛道で行動を不能にする焰真は叫ぶ。

 

「人を……命を何だと思ってやがる!?」

「敵を相手に説教か? 情報通り、とことん甘っちょろい奴だぜ」

「お前……!」

「敵だろうが味方だろうが死んだら同じ肉の塊だ。誰彼構わず殺そうとする味方の死体を仲間の為に使う方が、オレとしちゃ人道的だと思うがね」

 

 ゾンビの肉壁の合間を縫うように放たれる神聖滅矢。

 鬼道の片手間に撃ち落とされこそするが、中々に状況は芳しくない。

 

 反面、リルトットは思わぬ僥倖に内心ほくそ笑んでいた。

 

(死神のゾンビ連れてきたのは正解だったな。芥火焰真は死体だろうが味方は斬れねえ)

 

 特記戦力たる芥火焰真の戦闘力は、下手すれば四人全員を上回る。

 それを死んでいた死神を盾にするだけで戦力を削れるのであれば、戦果としては上々だ。

 

「こいつは戦争だぜ? 負けた方が死ぬ。なりふり構っていられないのはお互い様だろ」

「それでも俺は……はっ!?」

 

 言い返そうとする焰真に襲い掛かる熱線。

 身を屈めて避けた焰真が弾かれるように振り向けば、通路の左右には信じられぬ光景が広がっていた。

 

「な……あいつらは!?」

「オオ───ッ!!! 見つけたぜェ、芥火焰真ァ……!!」

 

 赫々と逆立つモヒカンは、猛る怒りを表すようで。

 しかしながら、先程倒れた筈の男───バズビーが何事もなかったかのように現れる光景に、焰真のみならずルキアと恋次も瞠目した。

 

「馬鹿な……生き返ったのか!?」

「チィ、それだけじゃねえみたいだぜ!」

 

 各々の相手に苦心しつつ一瞥した先。

 そこにはバズビーのみならず、倒した筈の顔ぶれに新たな面子が加わった敵が並んでいた。

 

「オイオイ、随分な人数が集まってきたじゃねえか。これじゃ手柄を横取りできやしねえ」

「退キナヨ。芥火焰真ニは借りガあルンだカら」

『陛下の命令はこういう意味か。星十字騎士団を集結させ、特記戦力を討つと』

 

 ナジャークープ、エス・ノト、BG9に並び立つ、白髪のオールバックと拳銃が印象的な紳士然とした男が構える。

 

「ここまでお膳立てされたのだ。一人も始末できなければ星十字騎士団の名折れという訳か……」

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“N”

───“神速(ザ・ニンブル)”───

Robert Accutorone(ロバート・アキュトロン)

 

 

 

 総勢九名の星十字騎士団。

 否、ゾンビも頭数に含めればそれよりも多くの敵が集まってきている事になる。

 多勢に無勢とは、まさにこの状況だ。

 

「流石に拙いか……!」

「今更後悔しても遅いってのォ!!」

 

 歯噛みするルキアへ、雷の双剣を携えるキャンディスが肉迫する。

 恋次もまた剛腕を振るうミニーニャの対応に追われているところだ。

 

「これが敵城へ攻め込むって事だ。見通しが甘かったな」

 

 勝ち誇ったようにリルトットが告げる。

 

 確かに言われた通りだ。

 三人で攻め込むには少々無理があったかもしれない───()()()使()()()()という制約の下での話に限るが。

 劣勢を察した焰真が、紅玉の如き瞳を細めて敵を睨みつける。

 刹那、首筋に刃を添えられたと錯覚する星十字騎士団が慄いたように距離を取った。殺意ではない。しかしながら、確実に命を手中に収められるような寒気だ。

 

 すると、みるみるうちに一人の死神の霊圧が高まっていく。

 

「……いいぜ、望むところだ」

 

 体から迸る蒼炎は、仄暗い空間を一瞬の内に眩い光で照らし上げる。

 放たれる霊圧は清廉な水のように清らかで、炎のように猛々しい。

 相反する感触を覚えさせる膨大な力の波動は、留まる事を知らず星十字騎士団の本能に訴えかける。

 

 

 

 圧し掛かる強大な存在感は、彼の滅却師の王を彷彿とさせるが如く。

 

 

 

「奪えるもんなら奪ってみやがれ……この俺から!!!」

 

 

 

 収束した炎は五芒星を描き、

 

 

 

(ばん)!!!」

 

 

 

 真の姿を解放する───その瞬間の出来事だった。

 

 

 

「ちょ~~~っと失礼!」

「ッ!? 避けろ!! キャンディ、ジジ、ミニー!!」

 

 焰真の背後より迫る幾条もの閃光が、星十字騎士団へと襲い掛かった。

 すぐさま避けるなり防御なりする彼らであるが、ある者は怪訝な顔を、ある者はあからさまに不機嫌な顔を、ある者は理解が及ばず困惑した顔を浮かべている。

 しかしそれは焰真も同様であり、意図せぬ援護射撃に振り返った。

 

「……え?」

 

 虚を衝かれ、言葉を失う。

 応援に駆け付けた面々ならば、恐らくは隊長や副隊長といった者だとばかり思っていた。

 

 そんな予想を尽く裏切る面子。

 忘れない。忘れる筈がない顔ぶれ。

 だがしかし、この場に居る事が理解できない者達でもある。

 

 並び立つは十人。

 

「よぉーし! アタシの作戦大成功! だから言ったっしょ!? あいつ追いかければ会えるって!」

「見てみなさい、あの死神の驚いた顔……ウフフッ、滑稽ね。これだけでも来た価値があるわ」

「ア・ごめーん。なんか言ってたみたいだけど聞いてなかった」

「ハハァ! おめおめと逃げ帰った奴らがわんさか居やがるぜ!」

「別にあんたから逃げ帰った訳じゃないよ。チョーシ乗ってんじゃないよ」

「そうですわ。あたかも自分の手柄のように吼える……ああ、貴女こそ滑稽ですわァ」

「何にせよ、我々の目的を果たすには間に合ったようだ」

「ウゥ~ロァ~?」

「はぁ……にしてもこの数だぜ。あー、メンドくせえ……」

 

 一人一人の顔を見つめながら、土煙が晴れた所で最後の一人と目が合った。

 白亜の容姿。

 些か全体的に若々しい印象を受けるが、こちらを覗く金色の双眸はあの時とちっとも変わらない。

 

 どうして。

 どうしてお前が。

 困惑、疑問。浮かぶ感情は様々あるが───最後に残ったのは歓喜。

 再会できた喜びが焰真の胸を高鳴らせた瞬間、口元に弧を描いた()()が告げる。

 

 

 

「ちゃお。アクタビエンマ」

 

 

 

 ***

 

 

 

「6人の特記戦力は“未知数”で選んだ」

 

 側近のハッシュヴァルトのみならず、次期皇帝として選ばれた雨竜に対してユーハバッハは語る。

 それは敵対する死神の内、最も注意すべきとして選びあげた特記戦力についてであった。

 

 黒崎一護は“潜在能力”。

 更木剣八は“戦闘力”。

 兵主部一兵衛は“叡智”。

 藍染惣右介は“霊圧”。

 浦原喜助は“手段”。

 

 いずれの理由も、基準となった点は“未知数”である事。

 

 死神、虚、滅却師、完現術と種族の垣根を超えた力を持った人間。

 戦う度に封が解かれ、際限なく力が上昇し続ける底の知れぬ修羅。

 尸魂界創建以来、霊王と共に世界を見守り続けた歴史の生き証人。

 今も尚、魄動と共に無尽蔵に湧き上がる霊圧が強さを齎す大罪人。

 一つの戦の為に千は超えるであろう権謀術数を以て翻弄する天才。

 

 誰もが並み居る秀才では歯が立たぬ飛び抜けた存在。

 故に特記戦力として特筆し、星十字騎士団に危険因子としてわざわざ知らしめたのだ。

 

 そんな5人に加え、もう一人存在する特記戦力こそが芥火焰真である。

 

「芥火焰真を特記戦力として選んだ理由は、未知数の“繋がり”だ」

「“繋がり”……ですか」

「ああ。奴と魂で繋がった者は、死して尚奴に力を齎す。だが、それだけならば特記戦力として取立てはせん」

 

───真に未知数なのは周囲に与える影響だ。

 

 ユーハバッハは神妙な面持ちの雨竜へ語を継いだ。

 

「奴の魂を分け与えられた者は、私が想像するよりも遥か強く成長する。これは我が“聖別(アウスヴェーレン)”に勝るとも劣らない点だ」

「陛下の能力にも……」

「そして何より畏れるべきは、奴すらも知る由のない所にまで影響が伝播する事だ。それは力であり人脈であり……当人さえも知らず与えた影響は、我等にとっても予測不能な未来を齎す」

 

 現に、その兆候があった。

 

 各地で隊長格をあと一歩まで追い詰めた星十字騎士団が、思いもよらぬ軍勢の乱入により仕留め損なったのだ。

 

「クックック、だが皮肉な話だな」

 

 しかし、焦る事も憤る事もしないユーハバッハは嗤う。

 脳裏に過るのは、見えざる帝国の麾下へ入る事を拒んだ大罪人・藍染惣右介の顔。百年以上にも渡り、非人道的な実験を繰り返して数多の犠牲者を生み出してきた彼の所業を想起すれば、笑わずにはいられまい。

 

 

 

「藍染惣右介が創り出した虚と破面共が、死神を……芥火焰真を救う為にやって来るとはな」

 

 

 

 ***

 

 

 

「お前は……まさか!?」

 

 

 

 最期に別れたのは現世。

 

 

 

『しなないで……むこーで……ちゃんとね……』

 

 

 

 斃れた彼女の手を握りながら、再会を約束した。

 

 

 

『ちゃあんと……いいこと、いっぱい……して、ね』

 

 

 

 今にも息絶えそうな彼女の願いを聞き届け、幾星霜。

 

 

 

『キミみたいにありがとうっていわれたいなぁ』

 

 

 

 星となった彼女を見送った───筈だった。

 

 

 

()()()()、恩返しに来ちゃったよ」

 

 

 

「───ディスペイヤー!!」

 

 

 

 現世で決着をつけた絶望の名。

 生体破面『ディスペイヤー』。煉華の浄火にて罪を洗い流した直後、アルトゥロの虚閃で胸を穿たれた筈の彼女は、五体満足の姿で。しかも空座決戦にて焰真が浄化した破面を引き連れて現れたのだ。

 

「お前ら、どうして!?」

「言ったじゃん、恩返しに来たってさ。そーれーにー、今のボクはディスペイヤーじゃなくて『虚白(こはく)』って名前があるの」

「はあ!?」

「どうどう? オサレな名前でしょー♪」

「いや、別にそういうのは思わねえけど……」

「あれ?」

 

 ガクッ、とズッコケるディスペイヤー改め虚白は、コミカルな動きで雰囲気をぶち壊す。

 

「おかしい……感動的な再会になるケーサンだったのに」

「今の会話のどこで感動する予定だったんだよ」

 

 頬を掻く虚白に対し、黄緑髪の少女が呆れたように告げる。

 

 

 

破面№1(アランカル・プリメーラ)

リリネット・ジンジャーバック

 

 

 

 すれば、虚白にツッコむリリネットの後ろから、エキゾチックな紫髪をたなびかせる男が歩み出てくる。

 

「ウフフ、この風……この肌触りこそあたしが求めていたものよ」

 

 

 

破面№20(アランカル・ヴィゲシーモ)

シャルロッテ・クールホーン

 

 

 

 ファビュラスっぽい雰囲気を漂わせるクールホーンであったが、一瞥もくれない中性的な少年は、はぁー、とため息を吐く。

 

「別に誰も求めてないから帰っていいよ、シャルロッテ」

「ねえ、貴方あたしに辛辣過ぎない? あたしのガラスのハートはもうボロボロよ」

「すぐに元通りになるんだから問題ないだろ」

「一度粉々になるのが問題なのよ!」

「ア・ごめーん。話聞いてなかった」

 

 

 

破面№6(アランカル・セスタ)

ルピ・アンテノール

 

 

 

 ルピとクールホーンが口喧嘩する一方、他の集団が今度は喧嘩腰になっていた。

 

 

 

「っつーか、オメーらはあのブ男に付き添ってただけだろうが!!」

「そりゃあんたもだろ!! 雑魚散らして一人だけ戦ったような風吹かしてんじゃないよ!!」

「やれやれ……お猿さんも急に人間に進化した訳じゃないという事ですわね」

「「てめえスンスン、何か言いやがったかゴラァ!!」」

 

 

 

破面№54(アランカル・シンクエンタクアトロ)

エミルー・アパッチ

 

 

破面№55(アランカル・シンクエンタシンコ)

フランチェスカ・ミラ・ローズ

 

 

 

破面№56(アランカル・シンクエンタセイス)

シィアン・スンスン

 

 

 

 虚圏から変わらぬ間柄の三人は、今日も今日とて言い合っている。

 そんな彼女達を一瞥し微笑を浮かべる金髪碧眼の美女は、集った面子を見渡し、静謐な声を滲ませた。

 

「しかし、これだけの戦力が集まっているとは……無用な犠牲は出したくないが、致し方あるまい」

 

 

 

破面№3(アランカル・トレス)

ティア・ハリベル

 

 

 

 その中で一風変わった雰囲気を漂わせる少年は、本能で動く獣のように獲物を品定めしている。

 

「ウゥ……アゥウ……?」

 

 

 

破面№77(アランカル・セテンタシエテ)

ワンダーワイス・マルジェラ

 

 

 

 彼を側で見守る男性はと言えば、本日何度目かも分からぬ溜め息を吐きながら、虚白とやり取りをする半身(リリネット)に目を遣った。

 

「どうしてこんなメンドくせえ頼み受けちまったかねェ……あの店長さんも人が悪ィな」

 

 

 

破面№1(アランカル・プリメーラ)

コヨーテ・スターク

 

 

 

「破面のお前らが、どうしてここに……!?」

 

 虚白ならばまだ分かる。

 数十年経ったとは言え、彼女が約束を守りに来たからと理解できるからだ。

 

 しかし、その周りの目的が皆目見当もつかない。

 全員空座決戦にて倒した破面である手前、その時の()()()()であると考える方が焰真としては自然であるが、どうにもそのような雰囲気は見受けられない。

 それに応えるのは、腰に斬魄刀らしき刀を下げる虚白だった。

 

「破面じゃないよ」

「……なんだと?」

 

 面食らう焰真に、虚白は悪戯が成功した子供のように無邪気な笑みを湛える。

 真っ白に雪がれた彼女達は、最早破面などという存在ではない。

 整へと昇華した訳でもなく、再び虚へと身を窶した訳でもない。

 

 

 

 ただ、真に魂が力を求めた時に取り戻したのだ。

 

 

 

「───ボクらは『帰面(レラシオン)』」

 

 

 

 心を欠く程に欲した渇望を───仮面の力を。

 

 

 

「キミの……()()()()()()()()()()さ」

 

 

 

 数十年越しに告げられた言葉。

 漸く───本当に漸く伝えられたと、虚白は湧き上がる万感の思いに瞳を潤ませていた。

 

 彼女がどのような道を歩み、藍染の麾下にあった元破面達と知り合ったか、焰真は知る由もない。

 しかしながら、彼女達の仲間としての連帯感はひしひしと伝わってくる。

 最早孤独であった一人の虚は居ない。

 此処に赴いたのは、手を取り合った仲間と共に駆けつけてくれた心強い味方だ。

 

 キュッと口を結ぶ焰真は、込み上がる熱い雫を見せるまいと面を伏せるや、直後に清々しい程の破顔を見せつける。

 

「……ありがとな!」

「こちらこそ───っとォ! 危ないなァ!」

「ディ……虚白!」

 

 刹那、焰真が佇んでいた場所に無数の光の矢が降り注ぐ。

 即座に響転で割って入った虚白は、振り抜いた斬撃で必要最小限の矢を叩き落すに至ったが、油断はできない。

 

「───おい、人の城ん中でお喋りとは余裕じゃあねェかァ!? 芥火焰真ァ!!」

 

 帰面への攻撃の先陣を切ったバズビーが吼える。

 一度焰真に辛酸を舐めさせられた彼の赫怒は鎮まるところを知らない。今に周囲へ飛び火しそうな烈火の怒りは、現に紅蓮に燃え盛る炎として現れている。

 そうでなくとも、特記戦力を討ち取って手柄を我が物にと奮起する星十字騎士団の我慢は限界に達していた。

 

 鏃の先は、今や今やと焰真の命に狙いを澄ませている。

 

「チッ! やっぱりこいつらを倒さなきゃ先には進めないか」

「ならボクらに任せてよ。キミは滅却師さんのボスんとこに行っちゃいな」

「……やれるのか?」

「やってやんよ」

「信じても、いいか」

 

 言葉はなく、虚白の掌が焰真の背中を叩いた。

 

 それだけで十分だ。

 

 瞬間、焰真の足は前へと駆け出す。

 当然鏃の先も焰真を付け狙うものの、矢の行く手を阻むように迸る閃光がそれを許さない。

 

「クソ!! 破面崩れが!!」

「数だけゾロゾロと……邪魔すんじゃねえ!!」

 

 苛立ちを隠さぬキャンディスに続き、とうとうバズビーの怒りが頂点に達する。

 

 

 

「死にてえならテメエらから燃やしてやるよ!!! 『神の怒り(ヴォルメテオス)』!!!」

 

 

 

 顕現する烈火の化身。

 それに呼応するように翼を生やす星十字騎士団もまた、帰面の面々を射殺さんばかりの鋭い視線を差し向ける。

 が、一切臆した様子を見せぬ()()()()は何も持たぬ手で顔を覆う。

 

 彼らの手元に“剣”はない。

 ただ、その身こそが“刃”だと言わんばかりに佇むのみ。

 

「……適材適所だ。得意そうな相手とやり合う。いいな、ハリベル?」

「異論はない」

 

 気安くこそないが、信頼を匂わせる言葉を投げかけるスタークとハリベル。

 十刃の中でもトップクラスの実力者であった彼らを起点に、滅却師の城には禍々しい霊圧が満ち始める。

 それは滅却師の本能に訴えかける負の霊圧。

 戦慄く心を押さえつけ、滅却師は異変を宿す乱入者を見据える。

 

「───来やがるか」

 

 完聖体を発現させていたバズビーは独り言つ。

 

「───行くよ」

 

 それに応える虚白もまた、翳した掌で顔を覆う。

 湧き上がる霊圧はドス黒く、真っ白な体を覆い尽くさんばかりの黒い帳を下ろす。

 中で繰り広げられるは、奇術師も面食らう早着替え。

その正体は間もなく、漆黒の窓掛けを裂いて現れる()()()()()の姿そのもので明らかにされる。

 

「あれは()()()()()……!?」

 

 慄くルキアは垣間見る。

 

「───仮面だと!!?」

 

 

 

虚化(ホロウか)

 

 

 

 紛れもない白亜の仮面と禍々しい霊圧が、その異様を虚だと死神と滅却師に知らしめる。

 

「んだと……ッ!?」

「こんなの情報(ダーテン)には無かったですぅ……」

 

 慄くキャンディスとミニーニャであるが、その寸隙の合間にも虚化した帰面は各々が敵と見定めた相手へ仕掛ける。

 虚白は、その中でも敵味方共々爆砕する無差別爆弾魔と化したバンビエッタへと刃を振り下ろした。

 

「はあッ!!」

「ううう!!」

「すっごい肌の色だね。ガングロギャルって奴?」

「あああ!!」

「ウラハラさんに聞いたけどさ……流行ったのもう昔だってさ!」

 

 歯を剥き出しにし、涎を垂れ流すバンビエッタを挑発してみせた虚白。彼女の踵落としは白い軌跡を描き、頭上に浮かぶ光輪(ハイリゲンシャイン)を破壊して脳天に突き刺さる。

 生前の軽やかな身のこなしの陰もなく、鈍重な動きを晒す死者は、一直線に城の床へと叩きつけられた。

 

「ふぃー、まずは一人……って訳にはいかなさそうだね!」

「アァー!!」

 

 額に手を当て、白煙の中を覗き込んでいた虚白は、光の翼を羽搏かせて飛翔するバンビエッタを迎え撃つ。

 十字架を模った柄の斬魄刀は、刀というよりも剣に近い両刃。

 それを厭わず鋼皮に任せて刃を押さえつけ、バンビエッタの突進を真正面から受け止める。

 

「虚圏でもキミみたいに強そうな人を斬ったけどさ……だったら手加減はいらないっか」

「!?」

「ね? 『鎖斬(さぎり)』」

 

 刹那、斬魄刀が発光したかと思えば、刃を押さえつけていたバンビエッタの腕がすっぱりと斬り落とされた。余りにも一瞬の出来事に死者の瞳はひん剥かれる。

 その間、刀を握った腕を支えに付き出される拳───そして、狙いを澄ませていた人差し指から赤黒い閃光が迸る。

 

 それを遠目に眺めていたリルトットは心の中で舌打ちをする。

 

(思い出したぜ。虚夜宮で拉致った破面から吐かせた情報の中に、十刃の情報もあった。あの金髪とおっさんがそうだ。他の連中も情報(ダーテン)にあるにはあるだろうが……)

 

 あの白い少女だけは、一切の情報がない。

 

(なんなんだ? 同族にも認知されてないなんざ、余程の新参か古参か……どちらにしろ、大半の記憶に残ってねえ木っ端って筈だ。なのにどうして───どうしてバンビを圧倒できる?)

 

 拙い。余りにも情報が無さ過ぎる。

 破面の───否、彼ら帰面の情報は見えざる帝国に一切もたらされていない。

 完全ノータッチの第三勢力。それが特記戦力筆頭の味方を名乗り出てきた訳だ。敵対する側としてはやり辛い事この上ない。

 

(しかも、仮に破面のトップに近い奴すらも味方に引き込めるってんなら、ますます芥火焰真に破面をぶつける訳にはいかなくなりやがった。下手すりゃ見えざる帝国側の破面が向こうに付きかねねえ)

 

 巡る思考と浮かぶ予想に頭を悩ませるリルトット。

 破面すらも浄化し、帰面として味方に引き込める能力など初耳だ。

 

 尤も、浄化された破面が焰真に味方する等、当の本人ですらも予想していなかった事態である以上、それから先を見えざる帝国側が予想する事は不可能に近い。

 

 

 

───これが芥火焰真の特記戦力たる所以か。

 

 

 

 まざまざと突きつけられる現状に、リルトットのか細い胴から腹立たしそうな音色が豪快に鳴り響く。

 

「読めねえ男だぜ……芥火焰真」

 

 既に混沌と化した戦場から去った死神の名を紡げば、死神と滅却師と虚の激闘は苛烈さを増す。

 

 

 

 ***

 

 

 

 迫りくる聖兵を薙ぎ倒し、前へと進む。

 

「───ここが」

 

 不意に足を止めて見上げる焰真。

 彼の視線に佇むのは、滅却師の象徴とも言える五芒星が掲げられた巨大な扉であった。

 前に立つだけで圧巻されそうになる荘厳な装飾であるが、これがユーハバッハへとたどり着く為の障害だと思えば、斯様な躊躇いも露と消える。

 

「劫火……」

 

 極限まで高める霊圧は、瞬く間に炎の矢と化した。

 

「大炮ォ!!!」

 

 収束、そして拡散。巨大な扉を覆い尽くす程の蒼炎が部屋を照らし上げる。

 唸る轟音はそれほどまでの衝撃をありありと示さんばかりに城全体を低く揺らす。

 

「……どういう絡繰りだ」

 

 しかし。

 焰真の全身全霊を受けた筈の扉は、開くどころか傷一つついた様子が見受けられない。正しく無傷だった。

 平静を保ちながらも、普通ではない扉に訝しむ焰真はそっと扉に手を添える。

 材質に違和感は覚えない。扉自体には何の仕掛けもなさそうだが、だからこそより不気味に感じてしまう。

 

「殺気石って訳でもなさそうだが」

「───それはね、僕が壊れない扉を想像したからさ」

「……成程な」

 

 不意に背後から響く声に驚く事もなく、焰真は悠然と振り返る。

 其処に佇んでいたのは、ふてぶてしくコートのポケットに手を突っ込んだ金髪の少年であった。フードの陰に隠れた顔は、まるで作ったかのような薄っぺらい笑みが張り付いている。

 

「お前が門番って訳か」

「うん。そうだよ、芥火焰真」

「また俺を知ってる奴か」

「そりゃそうさ。陛下がわざわざ警戒すべしって取立てた死神……どんな人かって想像しない方がおかしいでしょ」

 

 のらり、と立っていた場所を変える少年。

 

(───見えなかった)

 

 歩法という生易しい移動手段ではない。

 瞬間移動、あるいは空間転移の類と思われる術を使った少年に、焰真は警戒心を高める。

 

「想像も何も、見えざる帝国は俺らの情報を持ってる筈だろ」

「実は僕、最近自由に動けるようになったばかりでさ」

「なんだと?」

「だから、最近まで瀞霊廷の事情とかよく知らなかったんだ。想像の余地がないって奴さ、許してよ」

 

 淡々と紡がれる言葉。

 そして、彼の身振り手振りから目を離さない。

 

「それにしても君……想像通りに強そうだね」

「想像想像とうるさい野郎だ。お前がどう想おうが、俺の強さに変わりはないだろ」

「いいや、変わるよ」

 

 ゆらり、と影が伸びる。

 

 またもや不可解な移動手段で焰真の視界から逃れた少年は、不壊の扉の前に現れる。

 

()()()()()()()()()()

「どういう意味だ?」

「ああ、駄目駄目。ちゃんとそこは想像してくれないとつまらないよ。ほら、よく想像してご覧。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……つまらない世界だな」

 

 吐いて捨てるように応える焰真に、そっかぁ、と少年は残念そうに紡ぐ。

 

「どうにも反りが合わないみたいだね」

「仲良しごっこしたくて戦争吹っ掛けてきた訳じゃないだろ? こうしてる間にも、俺の仲間が戦ってくれてる。一分一秒だって無駄にはしたくない。だから、そこを退いてもらおうか」

「そっか───それは残念」

 

 言葉を消え入る、その瞬間だった。

 優に千は超えるであろう剣や槍が焰真の周囲を取り囲む。

 現れる予兆は微塵もなかった。霊子も、霊圧の揺らぎすらもない。

 まるで始めから存在していたかのようにポッと現れた武器の鋒は、全てが焰真を狙っている。

 

「まやかし……じゃあなさそうだな」

「そう言えば、自己紹介がまだだったね」

 

 ヘラヘラと軽薄な笑みを湛え、少年は告ぐ。

 

「僕は“夢想家(ザ・ヴィジョナリィ)”のグレミィ」

 

 空想の刀剣は、今尚焰真を斬り殺さんと数を増していく。

 千、万、億を超える刃は空間を隙間なく埋め尽くし、逃げ場を失くした。

 

「陛下と戦う前に僕と会えて良かったね」

 

 

 

───これで死ぬならそこまで。

 

 

 

───生き残るなら、きっと楽しくなる。

 

 

 

「だって僕が、星十字騎士団で一番強いと思うから」

 

 

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)

“V”

───“夢想家(ザ・ヴィジョナリィ)”───

Gremmy Thoumeaux(グレミィ・トゥミュー)

 

 

 

 勝るは、望みか夢か。

 

 最も頂上に近しい両雄の死闘の火蓋が切って落とされた。

 




✳︎設定紹介✳︎
レラシオン…スペイン語で『関係』の意。
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