BLESS A CHAIN   作:柴猫侍

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*88 chAngE

 虚化。

 

 それは死神と虚、二つの魂としての境界の隔たりを失くす事により、魂魄として上の次元へと到達するべく考え出された禁忌の一つ。

 しかしながら、提唱者である稀代の天才・浦原喜助を以てして、完全なコントロールは不可能と断言されるに至った。

 

 理由は単純。虚の毒性に整側の魂魄が耐えられないからだ。

 普通の整は当然ながら、隊長・副隊長クラスの死神でさえ魂魄自殺に陥る毒性は看過できぬものであった。

 だが、虚化を全く御せないという訳でもない。

 約百十年前に起こった虚化事件。藍染惣右介の策謀によって引き起こされた大事件により現世へ追われた浦原は、その後の研究にて魂魄自殺を阻止する術を発見した。

 

 仮面の軍勢(ヴァイザード)全員を救った方法───それは人間の魂魄と滅却師の光の矢から創り出したワクチンを接種させるというものだ。

 死神と相反するものは滅却師。

 虚と相反するものは人間。

 これら二つより創り出されたワクチンは、虚化によって引き起こされる境界線の破壊。すなわち、魂魄のバランスを限りなく正常の状態へと引き戻す事ができるのだ。

 

 この理論を用いて救われたのは仮面の軍勢、そしてやや手法は違うもののホワイトに侵食された黒崎真咲の二例のみ。

 

 

 

───いや、正確にはもう一例存在する。

 

 

 

 純血統滅却師と人間の間に生まれた混血統滅却師でありながら、生まれる以前の虚の襲撃により完現術者に目覚め、やがて死神となった青年───芥火焰真。

 彼の浄化能力の根源こそ、本来は滅却師にとって生命を脅かす虚の霊圧が魂魄内に混在していた霊王の欠片と混じり合う事で、虚の霊圧を無毒化する方向へ変質した“霊圧”だ。捉えようによっては、虚の霊圧を無毒化する天然のワクチンとも言える。

 清らかな霊圧は斬魄刀を通じ、罪を赦す浄火として数多の魂を洗った。

 

 ()()()()()()()()()()()()()が、虚なる存在へと霊圧を注ぎ込んだ。

 

 それはやがて一つの奇跡を起こす。

 破面として強大な力を持っていた魂を、仮面の軍勢とも破面とも違う潜在的な虚化の因子を持った存在へと昇華させたのだ。

 

 何が彼らに力を欲させたかは焰真にとって知る由もない。

 だがしかし、渇望するまでに取り戻した仮面(ちから)は、飢えを満たす為ではなく人を救う為に揮われていた。

 

 これは浄罪が辿った結末。

 断罪だけでは辿り着けなかった道の一つ。

 赦しの(はて)に結ばれた繋がりが、焰真へと齎した“力”だった。

 

「っとォ! 危ねえな」

「……中々出来るお相手のようだ」

 

 放たれた霊子の弾丸を紙一重で躱したスタークが、胸を撫で下ろすような息を紡ぐ。

 対峙する相手は拳銃を得物とする滅却師、アキュトロン。彼の早業には、狼の頭骨を模した仮面を被るスタークですら、幾度となく冷や汗を流したものだ。

 同じ銃使いとして、予め()()()()()()()()()()()()考慮していなければ、危うい場面は多々あった。

 

 対してアキュトロン側もスタークの体捌きに内心驚愕している。

 第一次侵攻にて、動揺していたとは言え京楽の右目を奪った彼の銃捌きは常人が初見で対応できるものではない。

 その一端を担う聖文字こそ“N”───“神速(ザ・ニンブル)”だ。

 発動すれば飛簾脚など目ではない速度での動きを可能とする能力。それを以てすれば、如何なる相手とてアキュトロンの緩急極まる動きを前に翻弄され、気づけば凶弾に倒れている。

 

 にも拘わらずだ。スタークは今という今まで生き延びるどころか、全ての弾丸を躱している。

 つぶさに観察していれば、こちらの一挙手一投足を見逃さぬだけでなく、銃口の向き、果てには引き金を引き僅かな音も聞き逃さぬ事で、間一髪の回避を繰り返していた。

 

「余程、銃の心得があると見ました」

「そんな大層なモンじゃねえよ……」

「しかし、どうにも貴方の手元に銃は見受けられない。銃の心得があるのに銃がないというのもおかしい話だ」

「……持ってないもんは仕方ないだろ」

「それはこちらを甘く見ていると受け取っても?」

「……はぁ、メンドくせえ」

 

 虚閃

 

 アキュトロンが乱れ撃つ霊子の弾丸を、構え無しで放った群青色の閃光で一蹴する。

 そのまま光に呑み込まれるアキュトロンの影だったが、気づけば彼の姿はスタークの背後に現れ、頭蓋骨に穴を穿たんと撃鉄を起こした。

 寸前で屈むスターク。今度は回し蹴りを背後に繰り出すも、これもアキュトロンを捕えるには至らない。

 

 距離を取る両者。

 何度目かも分からぬ睨み合いが再び始まった。

 

「速いね、あんた。俺みたいに動くのが怠い人間にゃ捕まえられねえよ」

「冗談を。私に追いつけている上に、弾丸の一発も喰らって頂けないとあっては私の面目は丸潰れだ。早急にでも斃れて頂きたいのですが」

「物騒なこと言うなよ。こちとら戦わないであんたらが帰ってくれるのが一番とか考えてるんだからよ」

 

 あくまでスタークのスタンスは変わらない。

 仲間が死なないのであれば、そもそも敵と争う必要もないと考えている。

 しかしながら、眼鏡の奥に静謐な瞳を湛えるアキュトロンは鷹揚と首を横に振った。

 

「それは無理な話だ。千年も待ち侘びた戦争……我々の勝利で飾らなければ陛下の大望も叶えられないといったもの」

「その陛下ってのが親玉か……なあ、その大望やらってのはそんなに命を懸ける必要があるもんなのかい?」

「……それは貴方に関係のない話だ。ただ、我々には敗北は許されない。故に貴方達の命を奪うのです……───『神の歩み(グリマニエル)』」

 

 天の使いの象徴が顕現する。

 内包する霊圧に相反し、霊子の衝撃波も大気の揺らぎもない滅却師として高次の存在と化したアキュトロンを前に、スタークの目は細められた。

 

「成程、そういう性質ね……」

 

 メンドくせえ……、とどこか納得したような面持ちを湛えて紡ぐ。

 

「……リリネット!」

「わあ!? なんだよ、スターク!」

 

 突如として相方に呼ばれた少女が振り向く。

 ゾンビと化した死神と戦っていた少女は、大慌てでスタークの下まで駆け寄る。

 その余りにも覚束ない立ち振る舞いを目の当たりにしたアキュトロンは、怪訝な眼差しを二者へと向けた。

 

「……どういうおつもりかな?」

「どうもこうも、あんたが本気出してくるから俺も本気出さなきゃいけなくなっただけだ」

「その少女が本気を出す為に必要な道具だと?」

「誰が道具だァ、このジジイ!!」

「やめろ、リリネット」

 

 ギャーギャー騒ぐ相方を窘め、スタークはアキュトロンを見据える。

 

「ま、確かにあんたの言うことは間違っちゃいねえ」

「ほう?」

「だが、一つだけ訂正させなきゃいけねえ言葉がある」

 

 徐にリリネットの頭に乗せられた掌。

 それは大きく温かく、長年孤独を共にした少女に理屈を要しない安心感を覚えさせる。

 

「やるんだね、スターク!」

「ああ」

 

 力強く訊いてくるリリネットに、スタークもまた鋭い眦を浮かべた。

 先程とは一変した佇まいに、アキュトロンも警戒心を高める。交差する視線が散らす火花は苛烈さを増し、今にも銃口から火を迸らせそうな勢いだ。

 

「して、訂正させなければいけない事とは?」

「それはだな……こいつが道具なんかじゃなくて、秘密兵器ってことだよ」

「……なんだと?」

「見せてやるよ、俺達の力をな」

 

 唱えるは、帰りし刃の名。

 

 

 

「蹴散らせ───『群狼(ロス・ロボス)』」

 

 

 

 震える霊圧が大気を唸らせる。

 その音は、さながら群れた狼の遠吠えが如く通路中に響きわたっていく。

 

「これは……!?」

「───刀剣解放ってより、帰刃って言った方が合ってるか?」

「!!」

 

 群青の光に包まれていたスタークが、その姿を戦場に晒す。

 左目につけた眼帯。身に纏うコートは湧き上がる霊圧によって悠然と靡いている。そして両手合わせて合計二丁の拳銃が手に握られていた。

 まさしくガンマン。破面時代の刀剣解放と変わらぬ姿がそこにはあった。

 

「馬鹿な……刀剣解放は破面だけのものでは!」

「できるもんは仕方ねえだろ」

 

 例が無かった訳ではない。

 現に虚化の力を得た東仙要も、破面でない身でありながら帰刃を可能としていた。そちらと、破面が力の核を刀に封じ込め、それを解放する刀剣解放。

 帰刃と刀剣解放。仮面を通して完全な虚の力を呼び戻す帰面の解放は、どちらかと言えば前者の表現が正しいと言えるだろう。

 

「さて……お互いを本気出したんだ。撃ち合いっこといこうぜ」

「舐めた真似を」

「舐めてたらメンドくせえ帰刃なんか見せねえっての」

 

 開戦の火花は銃口より迸る閃光で。

 

 目にも止まらぬ早撃ちを繰り出す両者であったが、制したのはスタークであった。

 幾ら洗練されているとは言え、単発の弾丸である神聖滅矢と放射し続ける虚閃とでは後者が押し勝つ。

 

 しかし、だからと言ってスタークが圧倒的な訳でもない。

 

「遅い」

「流石に速ぇな。狙いにくいから止まってくんねえか?」

「まさか」

 

 高速移動し、連射される虚閃の合間を潜るアキュトロン。

 二丁の拳銃から虚閃を撃ち続けるスタークは、緩急の激しい動きで翻弄する彼を捕え切ることができない。虚閃の寸隙を狙って撃ち込まれる弾丸も、正確な射撃を許さぬ一因だ。

 

『スターク、ちゃんと狙えよ!』

「狙ってるっつーの。ごちゃごちゃ言うな」

『そんなこと言ったって……ほらァ、きた!』

「分かってる……っと!」

 

 拳銃と化したリリネットも、弾幕を潜って迫りくる神聖滅矢に戦々恐々としている。

 しかし、アキュトロンを狙おうとすれば弾丸が迫り、弾丸を狙えばアキュトロンを見失う。そもそもアキュトロンが光の帯を描く程に速いのだから、目や探査神経に頼ってから撃つのでは間に合わない。

 

「仕方ねえか……おい!」

『!』

 

 柄にもない大声を張り上げるスタークに味方の面々が耳を傾ける。

 

「伏せろ!」

 

 その一言で察する。

 ある者は自分の戦いを中断してでも伏せ、ある者は見物を決め込むように安全圏からスタークを見上げる。

 すると、徐にスタークが拳銃を前方へ二丁構えた。

 正面から迫りくる神聖滅矢を撃ち落とす射線。しかし、早速アキュトロンは射線から逃れるように動いている。

 

(その程度では永遠に私を撃ち落とせまい。集中力が切れた所をじわじわと削って───)

 

 と、思考を巡らせるアキュトロン。

 

 彼の視界の全ては、群青に染まった。

 

「───“無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)”」

 

 通路を覆い尽くす群青の嵐。

 それらは全て、スタークが構える銃口より迸る虚閃が生み出す光景であった。無尽蔵な霊力を持ち合わせるが故にできるシンプル故に強力な技、“無限装弾虚閃”。

 敵が早い?

 狙えない?

 ならば逃げ場がなくなる程の弾幕を張ればいいだけだ。

 スタークを第1十刃に至らしめた殺戮能力は、この場においても遺憾なく発揮される。

 

「くッ……う!?」

 

 予想外の蹂躙に瞠目するアキュトロン。

 だが、それだけで落とせる程甘い彼ではない。“神速”の名に恥じぬ速さで虚閃の嵐から逃げるアキュトロンは、己の見通しが甘かった事を自省するように歯噛みする。

 次の瞬間、虚閃に呑み込まれる寸前に彼の姿が光と共に消え去った。

 

「正直、侮っていたようだ」

 

 ()()()()()()()に現れたアキュトロンが淡々と言い放つ。

 

「だが、貴方も私を見縊っていたようだ。あの程度の弾幕如きでは、私は捕えられない」

 

 紛れもなく瞬間移動したアキュトロンは、無防備な後頭部に狙いを澄ませる。

 “神速”の真骨頂はただの高速移動ではない。光速を超えた先にある瞬間移動───あるいは空間転移とも言えるワープ能力だ。

 確かに“無限装弾虚閃”は凄まじい技だ。あの弾幕を前には並みの防御や速さでは対処し切れない。

 ならば、一思いに無防備な場所に転移してしまえば回避も虚をつく事も容易い。

 

「お命を頂きましょうか」

 

 後は引き金を引くだけで終わる。

 

「───そういや、言ってなかったな」

 

 しかし、尚も余裕を崩さぬスタークの声と共に、どこからともなく狼が視界に飛び込んで生きた。

 

「これは!?」

「二対一だってな」

「なんだと!?」

 

 これまた予想外の攻撃だ。

 即座に迎撃したはいいものの、すぐさま第二、第三の狼が現れてはアキュトロンへと牙を剥いてくる。

 

 気づけば十───否、数十は下らない狼の群れがアキュトロンの周囲を囲んでいた。

 これらを一々撃ち落とすのは余りにも無謀だ。聖隷(スクラヴェイ)による吸収もできない点から、霊子で構成されたものでない事も明らかだ。

 

 やむを得ず、最善と思われる全身を静血装で覆い防御に徹する。

 案の定、狼の群れはアキュトロンの体に噛み付く。

 痛みを覚える間もなく、視界が白む程の閃光が膨れ上がった。爆発───それも途轍もない規模のものだ。至近距離で喰らうアキュトロンは全身に襲い掛かる衝撃に呻きながら、何とか狼の弾頭の爆撃を凌ぐ。

 

「───ぶはぁ!!」

 

 ようやく爆発が止んだ時、アキュトロンは襤褸切れになった白装束を靡かせながら、今一度奥の手の転移を発動する。

 再びアキュトロンの姿は光と共に消えた。

 

『スターク!』

「しっ。黙ってろ」

 

 唯一声を上げたリリネットを黙らせたスタークは、全神経を集中させる。

 

 満たる静寂。

 自然とグリップを握る手にも汗が滲んでいた。

 

 自由に瞬間移動できるアキュトロンに対し、スタークはどうしても撃ち合いで出遅れるハンデを背負っている。

 だからこそ、コンマ1秒でさえ遅れた分を取り戻すべく、次に敵が現れる場所をより早く探知しなければならない。

 

(どこだ?)

 

 上───違う。

 

(どこだ?)

 

 背後───違う。

 

(どこだ?)

 

 下───来るか。

 

 白煙の中に紛れて現れたアキュトロンが、その銃口をスタークへと向ける。

 

(遅い!!)

 

 即座にスタークが銃口を向けてくるが、まだ霊圧が収束し始めた段階だ。とても予め準備していた神聖滅矢よりも早く撃てる筈がない。

 虚閃の弾速は遅い。

 それを考慮しても、この早撃ちを制するのは自分だ。

 

 勝利を信じて疑わぬアキュトロンは、猛る闘志のままに引き金を引き

 

 

 

 

 

───拳銃ごと全身を打ち砕かれた。

 

 静血装でなく動血装に霊子を振っていた体にとって、虚閃程でないにしても速度があった霊圧の弾丸は致命的であった。

 

「なっ、が……ッ!?」

「悪ィな。今のは虚弾(バラ)って言ってな」

 

 理解する間もなく全身に霊圧の弾丸を叩き込まれたアキュトロンへ、響転で近付いたスタークは胸へ銃口を突きつける。

 

「速度は虚閃の───20倍だ」

「なる、ほど……見縊っていたのは、私の方、と……」

「恨みはねえが、あんたはここでリタイアだ」

 

 勝利の確信諸共打ち砕かれたアキュトロンの胸を、黒い閃光が貫く。

 

 黒虚閃

 

 解放した十刃が繰り出せる霊圧が凝縮され黒く見える虚閃だ。

 威力は通常の虚閃と比べても桁違いの威力を発揮し、血を混ぜなければならない王虚の閃光に比べても速射性・威力に富んでいる。

 故に虚を突かれ無防備であったアキュトロンに身を守る術はなく、胸に大穴を穿たれた人影は放物線を描いて死者の群れの中に堕ちていった。

 

『……スターク、やったの?』

「一応鎖結だけぶち抜いたつもりなんだが……まあ、強そうな奴だったし、あれくらいがちょうどいい塩梅だろ」

『そ、そっか』

 

 敵の生死にはこだわらないスタンスのスタークだが、裏を返せば無暗な殺生は好んでいない。

 だからこそ、敵とは言え命を獲るまでも真似はしない。霊力を奪い、それで相手が戦えなくなった時点で自分の勝ちだ。

 一方で、力を失った相手が第三者に襲われようともわざわざ助ける真似もしない。それはそいつの命運が尽きただけ。あくまで自身は殺生を好まないだけであり、誰彼構わず命の責任を取るような柄ではないのだ。

 

「さ、て、と……」

 

 星十字騎士団が一人斃れた事で、否応なしにスタークへ注目が集まる。

 

「次は誰を相手にすりゃいいんだい?」

 

 孤独でなくなった狼は、一筋縄では倒せない。

 

 

 

 ***

 

 

 

 一人の帰刃を皮切りに、帰面が真の姿を解放する。

 相手は見えざる帝国精鋭の星十字騎士団だ。例え十刃クラスの強者であっても、油断できる相手ではない。

 

 だからこそ、死力を尽くした闘争が繰り広げられる。

 

「突き上げろ───『碧鹿闘女(シエルバ)』!!」

「喰い散らせ───『金獅子将(レオーナ)』!!」

「絞め殺せ───『白蛇姫(アナコンダ)』」

 

 雄叫びを上げる第3従属官(トレス・フラシオン)改め3獣神(トレス・ベスティア)

 アパッチ、ミラ・ローズ、スンスンの三人は各々の帰刃を発動し、野生染みた獣の力をその身に宿す。

 対峙する相手はミニーニャだ。

 “(ザ・パワー)”の聖文字が示す通り、膨れ上がる筋力より生み出される純然たる力こそが彼女の強さの源。

 死神で言うところの鬼道系の能力を持たず、中級大虚に多く見られる増強した身体能力に任せた戦闘方法を主とする三人にとって、ミニーニャは上位互換のような相手だ。

 

 しかし、それで引き下がる彼女達ではない。

 

「「おおおおお!!!」」

「死に晒しなさい」

「ちょこまかと目障りですねぇ……」

 

 普段は事あるごとに突っかかる三人だが、ここぞという時の連携を見せ、ミニーニャに仕掛けていく。

 角を活かした突進を繰り出すアパッチ。鋭い爪を振るうミラ・ローズ。白銀の鱗に覆われた長く太い尾を振り下ろすスンスン。

 

 一糸乱れぬ三位一体の一斉攻撃だ。

 

 だが、両腕を丸太の如く膨らませたミニーニャは、肉迫してくるアパッチとミラ・ローズを両手で受け止めるや、振り回すようにして投げ飛ばす。

 最後に迫る尾に限っては避け切れなかったものの、分厚い筋肉の壁を前には決定打にはなり得ない。鈍い衝突音が響いた直後、額から僅かに血を流すミニーニャは尾を掴んでは砲丸投げの要領でスンスンを振り回し始める。

 

「くっ、うぅぅぅ……!!?」

「雑魚に構っている暇はないんですぅ~><」

「きゃああ!!」

 

 回転で竜巻が起こらんという勢いで振り回されたスンスンが、豪速で壁に向かって投擲される。

 

「スンスン!!」

「チィ!!」

 

 しかし、彼女が壁に激突する直前で割って入るアパッチとミラ・ローズ。

 二人が庇った瞬間、轟音を響かせた白煙が巻き上がり、破片が辺りへ飛び散っていく。その中には少なくない血飛沫も混じっており、衝突の凄まじさを物語っている。

 

「これで死にましたかねぇ」

 

 所詮は従属官だった破面だ。

 十刃レベルでなければ、星十字騎士団とは戦いにもなりはしないとミニーニャは結論付けて踵を返そうとする。

 

 その瞬間、怖気が背筋を奔った。

 

 何者かも分からぬ存在にジッと見つめられているような不快感。自然と背中に汗が滲み出し、振り返ろうとしても強張る首の筋肉がそれを拒絶してしまう。

 しかし、意を決し振り返る。

 

「は───?」

 

 得体の知れぬ怖気を確かめんと振り返ったミニーニャ。

 彼女の視界を埋め尽くすのは、壁───否、拳であった。

 身長の小さい人間であればすっぽりと覆い隠せてしまう程の巨拳。それを受け止める間もなく真正面から喰らったミニーニャは、肉が潰れる不快な音と共に床を跳ねるように吹き飛ばされる。

 

 星十字騎士団をいとも容易く殴り飛ばした()()()は、背中に佇む三人を守るように直立していた。

 鹿や獅子、そして蛇の意匠を感じさせる混獣(キメラ)───『アヨン』は大山の如き巨体を揺らし、自身を召喚した三人に顔を向ける。

 

「……なんだよ、別にあたしらの怪我なんて気にしちゃいないだろ」

「……オォン……」

「フンッ、それっぽい態度取るようになりやがって」

 

 混獣神(キメラ・パルカ)の代償として左腕を犠牲にしたアパッチの言葉に、アヨンは悲しみとも心配とも取れる重く低い声を喉から発する。

 その様子に鼻を鳴らすミラ・ローズは、『誰に絆されたんだか……』と呆れた様子でかぶりを振った。

 

「はぁ、私達の心配をするのなら敵をちゃんと殺してからに下さいませんこと?」

「オォォ……」

 

 最後にスンスンの言葉を聞き、アヨンは蠢く瓦礫の方へ目を遣った。

 ガラガラと瓦礫の山を崩しながら現れるミニーニャは、額から血を流し、あらぬ方向に曲がった首を腕力にものを言わせて元の位置まで折り曲げている。

 アヨンの戦闘力は並みの破面を上回っている。

 ともすれば、護廷十三隊副隊長の大半を圧倒し得る戦闘力。斯様な拳を受けても尚原形を留めているミニーニャは、それだけ肉体が頑強だと言ってもいい。

 

「ふぅ~……油断しちゃいましたぁ」

 

 あざとい口調ながら、見せている姿は怪奇の類に近い。

 

 

 

 だからこそ、怪物を呼び出した。

 

 

 

「アヨン!! 遠慮はいらねえ!! あのかまととぶった女の顔をぐしゃぐしゃに潰しちまえ!!」

「オ……オッ、オッ、オッ、オオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 アパッチの声に応じ、長い(たてがみ)に隠れていた目と大口を露わにしながらアヨンは吼えた。

 指示が陰湿ですわぁ、と呆れるスンスンの毒舌には反応せず、豪脚で銀架城の床を踏み砕くアヨンはミニーニャへ特攻する。

 為すべきは一つ。言われた通り、敵と認識した女滅却師を一山いくらの肉塊にする事だ。

 “怪槌(エル・マルティージョ)”───ただでさえ巨大な腕が肥大化し、命を叩き潰す破壊槌と化す。

 

「正面からの力比べ……嫌いじゃないですよぉ~><」

 

 が、それで倒せる程相手も甘くはない。

 同じく肥大化させた拳を振り抜くミニーニャ。直後、戦場と化していた銀架城の通路に凄まじい衝撃波が広がった。

 二つの鉄拳が衝突した破壊の波は、有象無象のゾンビを吹き飛ばし、各々の相手と戦っていた死神や滅却師、帰面達の戦闘を一時中断させる程の規模。

 

「オォオ……!!」

「まだまだぁ」

「オオオオオ!!!」

 

 しかし、ただの一発で殴り合いが終わる訳ではない。

 

 敵の強大さを認識しながらも、恐怖に震える本能を押し殺すように吼えるアヨンが、一発、また一発と拳を突き出し、周囲に嵐を巻き起こさんばかりの拳撃を次々に繰り出していく。

 対するミニーニャも、単なる聖文字で強化した拳ではなく、動血装(ブルート・アルテリエ)にて破壊力を底上げし、体格で勝るアヨンを前に劣勢どころか優位に立ってみせる。

 

 拳と拳の応酬。

 

 辺りに巻き散る血肉もほとんどはアヨンのものだ。

 いくら破壊の申し子たる獣でさえ、神の力を肉体に宿す天使は相手が悪かった。次第に削られていく肉体は、アヨンの敗北をありありと周囲に分からせる。

 

「これでお終いですぅ~……ねっ!」

 

 ボッ! と血肉が爆ぜる。

 直後、胸部に空洞を穿たれたアヨンの巨体がぐらりと揺らぐ。全力の拳で背骨ごと吹き飛ばされたアヨンは天井を仰いでから動かなくなった。

 振り抜いた拳を引くミニーニャは、降り注ぐ血の雨により血化粧を施されながらも、淡々と当然の帰結に落胆するような声音を紡ぐ。

 

「やっぱり大したことはないですねぇ。破面だろうが帰面だろうが、十刃じゃなければ話に……」

「話に───なんだって?」

 

 空洞の先で閃く光。

 それはアヨンの背中で虎視眈々と練り合わせていた滅殺の光芒の予兆であった。

 

 虚閃。それも特大の。

 一人ならばとるに足らない威力とて、三人分の虚閃が混じり合ったとすれば看過できる威力ではない。

 

(避けないと───ッ!?)

 

 光の翼を羽搏こうとしたミニーニャを掴む腕───否、尾。

 それは絶命したと思われるアヨンの蛇頭を有す尻尾であった。角の陰に佇む瞳はグルリとミニーニャを凝視する。お前を逃がさない。まるでそう言わんばかりの眼力が彼女を射抜く。

 

 即座に逃げんと腕に力を込め、尚且つ聖隷で拘束してくる尾を霊子化するミニーニャ。

 その作られた表情には、今日初めての焦りが浮かぶ。

 

「邪魔ですよっ……!」

「もう遅え!」

「しっかりと合わせなよ!」

()()()の頑張りを無駄にはしませんわ」

 

 失った片腕を補うように構えられる三人の右手。

 正三角形を描く掌から迸る閃光は、見事なまでの調和の涯に三人が持ち得る以上の力を発揮する。

 

 

 

 破壊の産声は、斯くして上がる。

 

 

 

融合虚閃(セロ・シンクレティコ)!!!』

 

 

 

 アヨンの胸に穿たれた穴を通り、ミニーニャへと疾走する閃光。

 王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)に勝るとも劣らない一条の暴力は、身動きが取れなかったミニーニャの全身を呑み込んだ。

 

「おおおおおっ!!!」

「がああああッ!!!」

「んっ……くぅ!!!」

 

 全身全霊を注ぐように霊力を注ぐ三人。

 それでも光が銀架城を蹂躙した時間はごく短い間だ。

 その時間が終わるや、死力を尽くした一撃を放った三人は糸が切れたように膝から崩れ落ちる。頬を滴り落ちる滂沱の汗は、それだけ彼女達が無理を押した証拠だ。

 

「はぁ……クソッ! やっぱり慣れねえことはするモンじゃねえな……!」

「それでも……はっ……無駄口叩く余裕はあるようじゃないか」

「流石……体力だけは有り余っている獣ですわね……」

「おい、ブッ飛ばされてえのか……!?」

 

 軽口を叩く余裕はあるようだ、と互いの安否を確認する三人。

 

「にしても、まあまあな威力が出たんじゃないかい?」

「ええ。それでこそあの胡散臭い死神に言われて()()()()甲斐があるというものですわ」

「じゃなきゃあいつの金玉潰してやるところだぜ」

 

 物騒な言葉を吐き捨てるアパッチだが、紛れもなく格上だった星十字騎士団相手に一矢報いた技に、内心三人は感嘆していた。

 とある経緯から、個々人の力が及ばずとも合わせれば超絶たる力を発揮するという経験をした三人だ。成り行きで不承不承ながら教えを乞うたものの、この結果を見れば納得せざるを得ないだろう。

 

「はん! これで一人片を付けたんだ。早くハリベル様に加勢しに……」

「───誰の加勢に、ですの?」

「……おいおい……」

 

 冗談だと言ってくれ、と振り返るアパッチ。

 同様に慄くミラ・ローズとスンスンの視線の先にも映るのは、愛らしい白装束がボロボロに焼け焦げた挙句、本人の肌も所々が爛れたミニーニャの姿であった。

 感情が顔に出にくいミニーニャとは言え、その凄惨たる顔つきからは抑えきれぬ怒りがありありと浮かんでいる。

 それは格下相手に遅れを取った怒りか、女としての自分を疵物にした所業に対する怒りか。

 

 どちらにせよ、わなわなと震える拳が収まりのつかない激情をこれでもかと表していた。

 

「殴殺してさしあげますぅ~><」

「クソッ……!」

 

「───ちょ~~~っと、ごめんよォ~~~!」

 

「「うおおおお!!?」」

「きゃ!?」

 

 ミニーニャから迸る殺気に身構えた瞬間、どこからともなく飛んできた虚白が三人の眼前にド派手に着地……否、墜落した。

 わざと狙って堕ちてきたかと思えば、上半身が埋まり、床から生えたように伸びる脚をじたばたさせている。故意ではなく素だ。

 呆れる三人の内、ミラ・ローズが脚を引っ張り上げて救出すれば、すぐさまアパッチの怒声が飛ぶ。

 

「何してんだ、テメー!?」

「いやぁ……リンチされて。面目なぃ……」

 

 鼻血を垂らす虚白が指さす方角には、電光を散らすキャンディスと異様に膨らんだ口を伸ばすリルトット、そして片腕を斬り落とされても尚健在のバンビエッタが構えている。確かにあの数を相手するには苦戦は必至だ。

 しかし、ミニーニャ相手に手一杯な三人に他の面子と戦う余力はない。

 

「悪いけど、こちとらあんたに手を貸す余裕はないよ」

「そ、そんな殺生なぁ……」

「解放しないで戦うから苦戦するのではなくて?」

 

 ジト……、と目を細めるスンスンの睥睨に虚白があからさまに目を逸らす。

 

「それは……ほら。もったいぶりたいじゃン?」

「おら、持ち場に戻れ!!」

「ごめんなさいミラ・ローズさん嘘です嘘です!! なんか狙われてるから囮役を買って出ただけです!!」

「兎にも角にも、貴女がここに居ると私達も集中砲火を喰らうんですよ! ほら、囮をするなら徹底的に餌になりなさいな!」

「許してスンスンさん!! このままだと本当にご飯にされちゃうから!! 比喩じゃなくてバックリいかれるから!! ヘ、ヘループ!! 誰か助けてー!!」

 

 余程三人同時を相手取る事が堪えたのか、虚白は情けない声を上げて救援を求める。

 

「させねえよ」

「目障りな白餓鬼が! てめえからブッ殺してやるよ!」

「一網打尽にしてあげますぅ」

「うぅ……あぁぁあぁぁあ───あ゛ッ!?」

 

『!?』

 

 突如、虚白と3獣神へ肉迫していた四人を前に異形が割り込み、霊子の弾を振り撒いていたバンビエッタを殴り飛ばす。

 人型から大きくかけ離れた異様は、まさしく人ならざる者の参入をまざまざと知らしめる。

 

「なんだ、こいつは?」

「オロァ?」

「ワンダーワイス! 助かったありがとネ! 後でウラハラさんに頼んでお菓子差し入れるから!」

 

 警戒心を高めるリルトットとサムズアップで救援に礼を告げる虚白に対し、ワンダーワイスは言葉とも取れぬ声を返す。

 

 滅火皇子(エスティンギル)

 

 本来、流刃若火の炎を封じ込めるべく生み出されたワンダーワイスの帰刃。

 しかしながら、対山本元柳斎重國という名目の下で誕生した彼は並みの破面───ともすれば、下位十刃では歯が立たぬ戦闘力を保有している。

 その代償として記憶や言語を失ったものの、赤ん坊程度の知性や理性は備えており、僅かながら意思疎通は可能だ。

 

───仲間の誰かが助けを求めれば、すぐさま応じて馳せ参じてみせる程度には。

 

「オォ……ロアアアアア!!!」

 

 獣の如き雄叫びを上げるワンダーワイス。

 次の瞬間、肥大化した肩部の甲殻が弾け飛んだかと思えば、中より湧き出た無数の触腕が四人の行く手を阻む肉壁となる。

 

 百奇皇手(センチュリオン)

 

 視界を埋め尽くす殴打の嵐。

 これには攻勢に出ていたリルトットらも、堪らず静血装を発動して守勢に回らざるを得ない。

 

「クソが!! ウザってぇ!!」

「チッ……面倒なのを引き連れてきやがって」

「これじゃあ折角の特記戦力が逃げちゃいますねぇ」

 

 背中の雷翼を二振り握り、それを双剣として振るうキャンディス。雷撃の鋭さをそのままにした“ガルヴァノ・ジャベリン”は迫りくる触腕を次々に斬り落とすが、如何せん数が多過ぎた。

 リルトットは巨大な口で触腕を噛み千切り、ミニーニャもまた拳で応戦はするものの、文字通り()()が違い過ぎる。

 虚白を仕留める一歩手前まで迫っていた四人は、ワンダーワイスの拳撃により向かい側の壁まで弾き飛ばされた。

 

「……向こうは大丈夫そうだな」

「余所見たァ随分余裕じゃあねえか、オイ!」

 

 その光景を横目で眺めていたハリベルはと言えば、赫々と燃え盛る炎の剣を走らせるバズビーと切り結んでいた。

 虚化に際して右腕に生み出した剣は、ちょうど彼女が最上級大虚だった時代を彷彿とさせる大剣にそっくりだ。

 手に馴染んだ剣は手足の如く自由に操れる。

 故に、迸る火炎を鎮める水流を纏わせながら攻撃をいなすことも難しい話ではなかった。

 

 ただ、限界はある。

 鮫の頭骨を模った仮面を被るハリベルは、幾度か正面から切り結ぶ度に水流を茹で上がらせ、蒸発させる熱量には警戒していた。

 折角有利な戦場を仕立てるべく振り撒いた水も蒸発しては元の木阿弥だ。

 対峙する烈火の熱量に勝るには、それを呑み込む圧倒的な水量が必要である。

 

「潮時か」

「なんの……話だよォ!」

 

 横薙ぎに振るわれる炎剣。

 しかし、宙返りするように舞い上がった鮫を捕える事は叶わない。

 

「バーナーフィンガー3!!」

 

 関係ないと言わんばかりに、バズビーは追撃の溶岩を解き放つ。

 するや、まんまと距離を取ったハリベルから湧き上がる禍々しい霊圧と、澄んだ色の水の貝殻が押し寄せる溶岩を阻む。

 轟々とうなる水の貝殻は守るように優しくハリベルを抱擁する。

 

「討て───『皇鮫后(ティブロン)』」

 

 激流の殻を裂いて現れる舞姫。

 大胆に露出した格好の帰刃を晒すハリベルは、邪な視線を鎧袖一触する凛然たる面持ちのまま、バズビー目掛けて大剣を振り下ろす。

 

断瀑(カスケーダ)

 

 大気中の水分が集い、一条の瀑布と化してバズビーを襲う。

 脆弱な存在を押し流す圧倒的な水量と勢い。その余波の波濤だけで床に(ひし)めき合っていたゾンビは部屋の外へと退場していく。

 

「……やはりこの程度では倒せんか」

「当たりめえだろうが」

 

 しかし、瀑布が終わりを告げる頃に白煙と共に現れた男の姿に、ハリベルは驚く素振りを見せる事無く大剣を構え直す。

 直後、“バーニング・ストンプ”で周囲に満ちていた水気を払い飛ばすバズビー。獰猛な笑みを湛えた彼は、周囲に満ち満ちる熱気すらも焼き尽くさん炎を背中の翼から噴き上がらせる。

 

「この程度なのか? てめえの帰刃ってのはァ!」

「まだ貴様に私の底を見せたつもりはない……が、案ずるな。どちらにせよ、出し惜しみするつもりはない」

「は! そりゃいい。この溜まりに溜まった鬱憤はよゥ……雑魚を殺ったところで晴れるもんじゃあねえからなァ!」

 

 猛る炎と爆ぜる水が激突する。

 完聖体のバズビーと帰刃したハリベル。両者は一歩も引くことなく、己が矜持を刃に乗せた死闘を続ける。

 

「わー、もうメチャクチャだなぁ」

 

 各地で繰り広げられる激闘を眺めていたルピは、迫りくるBG9と戦いながら、視線をクールホーンの方へと移す。

 

「で? いつぐらいに終わりそうなの、そっちは」

「気が早い過ぎるのよ、ちょっと待ってなさい!」

「あっそ」

『お喋りとは余裕だな』

「ア・ごめーん。あんまりにもキミが大したことないからさァ~」

 

 BG9を煽るルピ。しかし、一時とは言え十刃に抜擢された破面だ。技術開発局からも十刃クラスと断定された力は本物だ。例え星十字騎士団相手とは言え、油断さえしなければ一方的にやられる事もない。

 

 片や、クールホーンとジゼルの戦いは塩試合もいいところだ。

 帰刃もせず、クールホーンが降り注ぐ神聖滅矢を掻い潜って懐に入り込んだかと思えば、途端にジゼルが弱腰になって命乞いを始めたではないか。

 

「……それで? 遺言はそれくらいで構わないかしら?」

「わァ───ッ、まってまってまって! こんなかわいい女の子をイジメて心が痛まないの!? そういうのは美しくないっていうかさ! ほら、女の子は許してあげるのが美しさだとボク思うなァーッ! 美しくなりたいんでしょ!?」

「冗談言わないで……あんたの美しさはあたしの足元にも及ばないわ」

「はあ?」

 

「おい、キレられてんぞ」

 

 堪らずツッコミを入れたルピであったが、構わずクールホーンはジゼルに冷ややかな視線を送る。

 

「いい? 美しさっていうのは心より滲み出るもの……清らかでひたむきな心より美しさは生まれるのよ」

「……何、急に? 説教?」

「貴方、()()嘘を吐いたわね」

 

 僅かにジゼルの目元が動く。

 それを見逃さぬクールホーンは、深く深呼吸をした後に言い放つ。

 

「一つ。美しさどうこう並べてるけど、あたしは最初から美しいのッ!」

 

 胸を張るクールホーンは、『そ・れ・と』と指先で円を描きながらジゼルを指さす。

 

「美に性別は関係ない……けど貴方、男よね」

「───は?」

 

 思わずドスの利いた声がジゼルの喉から発せられた。

 続いてルピも告げられた内容に『うわぁ……』と引いた様子を見せる。理由はジゼルに対する生理的嫌悪と、クールホーンのセンシティブな話題に対しての真正面からの指摘だろう。

 どちらにせよ、一変した空気は易々と元に戻る気配はない。

 男である事実を看過されたジゼルはクールホーンを瞳孔が拓いた目で睨みつけるも、当の本人はわざとらしく無駄に高い鼻の前で手を仰ぐ。

 

「会った時から精液(セイメン)臭くて堪らないの。香水にしては趣味が悪いわぁ……あら、ごめんなさい。栗の花の香水をつけてるんだったら誤解かしらね」

「殺せ」

 

 直後、ジゼルが音頭を取れば、ゾンビの群れがクールホーンへと押し寄せる。

 すると近場に居たルピも巻き添えを喰らう訳であり、

 

「おい、オカマ! お前が無駄に怒らせたせいでボクまで巻き込まれてるじゃないか!」

「今更何言ってるのよ。ここまで来たら一蓮托生よ。腹を括りなさい」

「後で鼻の骨折ってやるからな。覚悟しておけよ」

 

 無駄な男気を見せながらゾンビを一蹴するクールホーンに、ルピの蟀谷には青筋が浮かぶ。

 すると、ふいにBG9が憐れむような音声を響かせる。

 

『心底同情する。ジゼルに目をつけられた以上、貴様らには尊厳ある死は訪れん』

「うん? なんだよ、急に口挟んできたと思ったら……そーゆーのはさ、ボクに勝ってから言えよな」

『敢て言ってほしいのならそうしよう。ルピ・アンテノール。貴様が私に勝てる確率は限りなく0に等しい』

「……へぇ~、玩具の癖に言ってくれるじゃん」

 

 興味がなさそうに応えながらも、ルピの瞳にはありありと苛立ちが浮かび上がっていた。

 ルピにも相応の自尊心がある。十刃だった自信は一旦粉々に打ち砕かれたものの、それは相手が悪かっただけだと今迄の己に言い聞かせていた。

 

 だが同時に運が良かったとも振り返っていた。

 圧倒的な格上にやられるのは仕方ないと割り切っていたが、生憎と己のプライドは敗北を許さない性質だ。

 この自尊心と嗜虐心を最高に満たせる瞬間があるとしたら、自分が格上とみなした相手を出し抜き、上から見下せる状況───勝利を掴んだ時であろう。

 

 格下には当然。

 格上であっても壊してやる。

 ルピの中に根付く破壊の衝動は、例え破面でなくなった今でも消え去るものではない。

 

「ともかくボクは面倒事もつまらない事も嫌いだよ。終わらせるならさっさと終わらせたいの」

「あら、同感ね……あたしもこんな青臭い餓鬼を長々と相手するのは御免被るわ」

 

 ドロドロとした暗い怒りを背に宿すジゼル。

 彼女───否、彼に対して長期戦を仕掛けるのは不利であると二人共理解していた。再現なく湧き出てくるゾンビが居る状況を考慮しても結論だ。

 

 だからこそ、出し惜しみはしない。

 全力で、尚且つ速攻で叩き潰す。

 

「煌け───『宮廷薔薇園ノ美女王(レイナ・デ・ロサス)』」

「縊れ───『葦嬢(トレパドーラ)』」

 

 死者の群れの上に咲く二輪の草花は、群れを指揮する男へと迫っていった。

 摘まれる花はどちらか、未だ決着はつかない。

 

 

 

 ***

 

 

 

「あれが帰面とやらか……」

 

 思わぬ救援の予想だにしていなかった活躍に、ルキアは感嘆の言葉を漏らす。敵としては脅威でしかなかった破面の強さも、味方に回れば何と心強い事か。

 素直に有難さを覚えるルキア。

 するや、彼女の視界に光の棘が迫ってくる。

 

「ドコを見テ()ルの?」

「効かぬと言った!」

 

 踊るように翻り、エス・ノトの攻撃を掻い潜るルキアは、すれ違いざまに袖白雪を閃かせる。

 純白の刃はするりと白装束を切り裂き、その下にあった静血装で守られた肉体を深く斬りつける。

 目を見開くエス・ノト。自身の静血装を破られたのもそうだが、骨にまで到達せんという傷から一滴もの血液が流れ出ない異変に愕然としていた。

 

「コレハ……!」

「見誤ったな」

「ナン、ダト……?」

「袖白雪は切先から凍気を発する斬魄刀ではない。所有者自身の肉体を氷点下以下にする斬魄刀だ」

 

 間もなく薄氷が体を纏う。

 刻一刻と熱を失う肉体は、氷よりも冷ややかに、氷よりも鋭く研がれていく。

 

「肉体が氷点下を下回れば生命は生き永らえられん……だが、私は自らの霊子を御する事で一時的に肉体を殺す術を手にしたのだ。故に貴様の“恐怖”とやらも効かん。死んでいる訳なのだからな」

「馬鹿ナ……ソンナ事……!!」

「嘘か真か、己のその眼で確かめるのだな」

「クッ!!」

 

 自身の“恐怖(ザ・フィアー)”が効かぬ事態に焦燥を隠せないエス・ノトは駆ける。

 聖文字が効かない以上、直接ルキアを嬲り殺すしか手は残されていない。例え氷点下を下回る肉体とて、その細首をへし折るには一瞬あれば事足りる筈だ。

 だが、その考えが甘い事を知るのは駆け出した直後───最早引き返せない位置まで辿り着いた瞬間だった。

 

 謎の震動がルキアを中心に巻き起こる。

 氷震。地面内部の水分が氷結する事によって起こる自然現象。それを自らの肉体を以て引き起こすルキアの肉体温度は───絶対零度に達していた。

 

()てろ」

 

 重なる影。

 それらが遠ざかった時、エス・ノトの体は白銀に煌めく氷に包み込まれていた。

 

「そして眠れ」

 

 エス・ノトは見誤っていた。

 袖白雪の氷結領域は、ルキアと刃が描く天地の全て。すなわち、そもそも触れんと近づく行為そのものが自殺に等しい愚行である。

 知らずに足を踏み入れ、絶対零度の世界に晒されたエス・ノトは身動きもしない。

 

 その様子を一瞥する間、ルキアは自身の体の体温を元に戻す。霊子を御しているからこそ動けているが、本来は対組織が死滅しかねない温度だ。ゆっくり、実にゆっくりと能力を解いていく。

 半歩の過ちで命を落とす危うさを孕んだ斬魄刀、それが袖白雪だ。

 儚いが故に美しく、儚いが故に凄まじく、儚いが故に残るものは無し。

 

「……これで兄様の一矢は報いたか」

 

 微かな達成感を覚えながらも、そう悠長に構えている暇はなさそうだと面を上げた。

 戦況は混沌としている───が、敵陣の中心に居ながらも着実に戦果は挙がっている。僥倖とも言える応援のおかげで、風向きはこちらに向いていた。

 

(となれば、恋次の加勢にでも向かうか。あやつは搦め手にとんと耐性がないからな……)

 

 下手に帰面の加勢へ向かうより、気心知れた幼馴染との方が上手く連携できるだろう。

 

 早々にその場から離れようと、ナジャークープと戦う恋次へと足を向けるが、

 

 

 

───パキッ

 

 

 

 罅割れる微かな音を耳が拾い、咄嗟に振り返る。

 

 馬鹿な。

 

 絶対零度に晒されて生きていられる筈がない。

 そう思い込んでいたルキアの幻想を砕かんばかりに、肌に張り付いた氷の殻を破り、恐怖の化身が羽化してしまう。

 

「『神の怯え(タタルフォラス)』!!!」

 

 人間離れした異様を晒す姿の完聖体もある中で、一際おどろおどろしい姿形へと変貌するエス・ノト。その首から下腹部にかけて刻まれた縫合痕は、さながら彼という入れ物に詰め物が施された過去を暗示させるようだった。

 

 彼の異様に動揺するのも束の間、ルキアは即座に己の肉体を氷点下以下にする。

 まだ能力が解けてからそう時間は経っていない。恐怖を浸透させぬ体に仕上げるまで、さほど時間はかからない───その筈だった。

 

「ッ……莫迦な!?」

 

 後ろへ下がろうとした足が竦んで動かない。

 まさしく恐怖で竦んだ状態に、ルキアの動揺はさらに大きくなる。

 

「モウ動カナ()……動けナ()ネ」

「なんだと……!?」

「モウ、僕ノ姿は君ノ脳裏ニ灼キつ()タ。視神経ヲ通ッて浸ミ込む恐怖ハ、例エ目ヲ塞()だッテ頭カラ離れル事ハ無イ!」

 

 宣告されるよりも早く目を閉じていたルキアであったが、エス・ノトの言葉通り、一度目の当たりにした完聖体の姿が数え切れぬ恐怖を呼び起こす。

 それどころか、美しい記憶の数々でさえ浸み込む恐怖に上塗りされてしまう。

 

 戌吊で恋次達と暮らした貧しくも楽しい日々の記憶。

 霊術院に入って焰真と鍛錬を積み重ねた青春の記憶。

 浮竹や海燕など、目指すべき背中を見た憧憬の記憶。

 緋真と白哉、そして生まれてきた六花との温かな家族の記憶すらも。

 

 全てが暗く、冷たく、黒い空洞を穿たれては色を失っていく。

 

「く、う……ッ!」

「ソうダ!! 泣ケ!! 叫ベ!! 慄ケ!! 脳髄に刷リ込マれる恐怖ノ残像ニ怯エて震()ろ!!」

「う……ああッ!!」

「心安らグ思()出モ!! 美シ()過去モ!! オマ()がコレマデ生キてキた全テの時間ヲ後悔させテやル程ノ恐怖デ塗リ替()てヤる!!」

「あ、あああああああああああああああああああ!!!」

 

 心が限界だ。

 優しさに溢れた温かな言葉も、背中を強く押す心強い言葉も、安らかな赤子の寝息でさえも今は群がる蠅の羽音のように耳障りで聞くに堪えない。

 それを振り払わんと絶叫するルキアだが、耳を塞いだところで瞼の裏に浮かぶ光景が消えてくれる訳ではない。

 

 迫りくる恐怖に逃げ場はない。

 ほんの一瞬、動揺した隙を衝かれたばかりに。

 

「馬鹿野郎!! 目ェ覚ませ、ルキア!!」

 

 が、またもや不意を突く拳がルキアを襲った。

 

「んのっ、ぐわあ!?」

 

 殴り飛ばされた衝撃で床にビタンと倒れるルキア。

 派手に鼻っ面を打ち付けた彼女は、よろよろと体を起こした時、ツーっと鼻血を垂らす羽目になった。

 

「な……何をするのだ恋次!?」

「てめえが敵にやられて情けなく叫んでるからだろうが!!」

「……ッ! 貴様、その腕は……!」

「なーに、大した問題じゃねえよ」

 

 発狂したルキアの我を取り戻させた恋次であったが、彼の左腕は力なく脱力してしまっている。骨が折れた訳でも腱を切られた訳でもない外観だが、ぶらぶらと振り子になっている腕は無駄な重しに他ならない。

 

「ハッハァ! 大した問題じゃねえなんて強がんなよ、レッドモンキー!」

 

 してやったと浮足立つナジャークープは、白黒の歯を覗かせるように笑う。

 

「俺サマの『神の点穴(ナハク)』で穴を広げられたんだ。しばらくは真面に動かせると思うなよ」

「チッ、しゃらくせえ真似しやがって」

「殺し合いにしゃらくせえも何もねえだろうよ。ま、もう腕か脚の一本も動かなくしてやれば、その心配もいらなくなるんだがなァ?」

「おいおい、それでいいのか? てめえぐらいの相手なら、腕の一、二本くらいなくったって余裕なんだよ」

「……ハッ! 言うじゃねえかよ」

 

 恋次の挑発を、あくまでナジャークープは鼻で笑う。

 口は強気でも、彼の片腕が動かない事実は揺るがない。刀を振るう者として、片腕を失う事態がどれだけの痛手であるかはそういった得物を使わぬナジャークープでさえ把握している。

 絶対に揺らぐことはない優位に、ナジャークープは余裕を崩さない。

 ましてや完聖体を顕現させたエス・ノトも二人の後ろに控えているのだから、奴らは最早袋の鼠だ。

 

「エス・ノトぉ! そいつらを囲えよ! 俺がちゃっちゃとトドメ刺してやるからよ!」

「……嫌ダ」

「ああ!?」

「コ()ツ等ハ僕が殺ス。君ノ方こソ、邪魔しナ()でクレル?」

「か! つれねえ野郎だぜ……なら、早い者勝ちと行こうぜ!」

 

 挟撃の形でルキアと恋次を神聖滅矢が狙う。

 しかし、不思議なまでに背中合わせに二人は動かない。このままでは狙い撃ちにされると分かっていても微動だにしない様相は、まるで二人だけの時が止まっているようだった。

 

 流れる静寂。

 早鐘を打っていた鼓動も、いつの間にか元通りとなっては自然と互いの間隔に合わさっていた。

 

「……恋次」

「あ? なんだよ」

「さっきは殴ってくれて助かった。ありがとう」

「……礼を言うことじゃあねえだろうが」

「ああ、そうだな。だから後で貴様の顔面を全力で殴り返す」

「おい!? そりゃねえだろうが!!」

「フッ……だったら全力で受け止めてみせろ」

「!」

 

 不意に感じる視線に目だけを向ける。

 すれば、力強い光を宿す瞳がこちらを覗いていた。

 

「私が無様に泣き喚いていたら貴様が殴ってくれ。怒鳴ってもいい。ただ、私が立ち止まる事だけは許してくれるな」

「ルキア……てめえ」

「私も貴様がうじうじと立ち止まっていたら背中を蹴り飛ばしてやる。いいな?」

 

 数十年の時を過ごした幼馴染。

 一時は心が離れ離れになったものの、無事にこうして絆は結び直された。

 一度離れたからこそ実感した共に歩む存在の大切さは、より固い絆と強い決意を二人に漲らせる。

 

「だから、恋次。もしも……もしもだ。焰真の奴が立ち止まっていたなら、私達が背中から押し飛ばしてやるぞ」

 

 先に行った友を想い、言葉を紡いだ。

 

「ははっ、そりゃいいぜ!」

「その為には、分かるな?」

「おうよ!」

 

 振り翳す刃。

 最早、二人の瞳に恐怖は移っていなかった。

 あるのは互いが背中を押してくれるという信頼───そして、それより生まれ出づる勇気の心。

 

 恐怖に打ち克ち、それでも前に進まんと抗う“生”の強さを宿す二人は、迫りくる死の気配に立ち向かう。

 

 

 

 一度は解いた。

 

 

 

「卍!!」

 

 

 

 それでも結び直せた。

 

 

 

「解!!」

 

 

 

 だから、繋いだ絆は何よりも光り輝く。

 

 

 

「───『白霞罸(はっかのとがめ)』!!!」

「───『双王蛇尾丸(そうおうざびまる)!!!』

 

 

 

 進むべき未来(みち)を煌々と照らして。

 

「卍解如きデ……恐怖ハ打チ消セな()!!」

「その通りだ」

「ッ!?」

 

 絢爛たる白銀の出で立ちと化したルキアが告ぐ。

 美麗な氷像は、一切の罅も瑕もなく舞うように刀を構える。

 

「エス・ノト。貴様には礼を言う。生きるということは、恐怖に怯えながらも前に進むことだ。貴様のお蔭で私はまた一つ、恐怖を乗り越えられた」

「オマ()……!」

「……孤独に震え、縋るものも無く怯えていたからこそ、同じように震える誰かを抱きしめてやれる。済まぬ、私にはまだ───抱き締めなければならぬ家族が居るのだ」

 

 凛然と、勇敢に。

 

 氷の刃を腐乱したように肉が蕩けたエス・ノトへ向けるルキアは、凍てついた身体を奔らせる。

 流麗に舞い踊る氷の妖精を彷彿とさせる動き。

 煌めく塵を振り撒きながら疾走するルキアは、おどろおどろしい眼を無数に浮かばせるエス・ノトに切先で描く。

 

 氷と光が、交差する。

 

「───」

「……済まぬな、五芒星を描いてやれなくて」

「ナッ……!?」

 

 腕を振り抜いたエス・ノトは、自身の胸の中央に刻まれた六花の紋様に気付く。

 それはみるみるうちに全身へと広がっていき、血肉や骨の髄まで凍り付かせるではないか。

 痛みの概念が割って入る余地も無い刹那の時間。

 死を目前としながらも、不思議と苦痛を覚える事が無かったエス・ノトは、

 

(ソウか……コレが……)

 

 

 

 魂の奥に伝わる温もりを。

 

 

 

(おわり)、カぁ)

 

 

 

 かつて、ユーハバッハに与えられた力と同じ魂の胎動を感じ取る。

 

 

 

(羨マシ()、なァ……)

 

 

 

 恐怖(じぶん)に打ち克った勇気(ルキア)を見届けた。

 

 

 

(君ハ()に叱ラレテも───チットも怖クナ()んダろウなァ)

 

 

 

 此処に在らずとも、彼女の背中を押した死神を思い浮かべながら。

 

 

 

「おいおいおい、冗談じゃねえぜ! やられちまいやがって!」

 

 相手が卍解してものの一分と経たぬ間に倒されたエス・ノトに、ナジャークープは悪態を吐く。

 しかしながら、それで鋭い蛇の牙と雄々しい狒々の腕を顕現させた恋次の姿は現実だ。迸る猛々しい霊圧も偽りなどではない。

 

「しゃあねえ、こうなった以上とっとと終わらせてもらうぜ!!」

 

 双王蛇尾丸の情報(ダーテン)は奪掠に際し収拾済みだ。

 典型的なパワータイプの卍解。ただただ圧倒的な攻撃力で相手を破砕する腕力と火力を前には、並大抵の防御では意味を為さない。

 

 故に狙うは短期決戦。

 確実に相手を無力化した上で首を刎ね飛ばす算段を立てたナジャークープが、“無防備(ジ・アンダーベリー)”の真価を発揮せんと手を翳す。

 

「俺の『モーフィーン・パターン』で麻痺させてやるぜ! 覚悟しなァ!」

「そう何度も喰らって堪るかよォ!」

 

 体に網掛するような紋様が浮かぶが、即座に恋次が狒々王の掌底を床面に叩きつける。すれば、バラバラに砕け散った床が破片と土煙を巻き上げ、ナジャークープの視界を覆う。

 

「そんなもんで目隠しになるかよォ!」

「グッ!?」

 

 しかし、完聖体を顕現させているナジャークープの力は凄まじかった。

 煙に紛れる恋次に対し、ある程度の霊圧配置に目測を立てては、狙いを外さずに能力を発動する。

 すれば、膝から崩れ落ちる恋次の姿が煙の隙間から覗く。“無防備”の効力故、背中から伸びる狒々王の腕も力なく床に転がり、関節を境にバラバラと分解しているではないか。

 

 絶好の好機だ。

 吊り上がる口角を自覚しつつ、ナジャークープは息の根を止めんと駆け出した。

 

「でもまあ、そう来るよな!」

 

 だが、恋次に届く寸前に通路を二分する氷壁がナジャークープの行く手を阻む。

 屈折した景色の奥を見遣れば、限界時間が訪れて卍解を解くルキアの姿が窺えた。最後の力を振り絞り、恋次の援護をしてみせたといったところか。

 

「けどよォ、残念だったな! 俺を捕えるつもりだったろうが、そうはいかねえぜ!」

「別に構わぬ」

「ああ?」

「貴様の相手は───あくまで此奴だ」

 

 踵を返し、背を向けるルキア。

 刹那、分厚い氷壁を突き破る真紅の光線がナジャークープに迫る。サングラスの奥の瞳を見開くや、即座に身を捩って回避する。紙一重のところだった。あと少し反応が遅れていれば消し炭になっていたところだ。

 

「んなっ!?」

「二度も言わせんな。てめえなんか腕の一、二本なくったって勝てるってよォ!」

「てめえ、下手な猿芝居を!」

 

 氷壁を穿つは地面に転がっていた筈の狒々王の腕だった。

 開かれる掌の中央から迸った狒骨大砲を見る限り、“無防備(ジ・アンダーベリー)”で身動きが取れなくなっていたとは考えにくい。霊圧配置を的確に射貫き、穴を拡げる事で体内を巡る霊力を搔き乱す“無防備”は、喰らえばしばらくの間直撃した部位の霊圧操作さえままならなくなるのだ。

 

 つまり、恋次はわざと喰らった芝居を打っていた事になる。

 臍を噛むナジャークープは、募る苛立ちのままに恋次へと神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)を構えた。

 

「オオオオオ!」

「うおおおお!」

 

 咆哮を轟かせる両者の切先と矢先が交わらんとする。

 

 その時だった。

 壮絶な激震が全員に襲い掛かれば、自然と殺し合う者達の意識が余所へと逸れる。

 

「なんだ、地震か!?」

「いや……地震でも霊圧でもねえ! 建物が……()()()()()()()()!?」

 

 どちらかと言えば、建物自体が揺れている感覚だ。

 一度ザエルアポロが管轄する宮で散々な目に遭った恋次は、直感で自然現象でない事と、何者かの霊圧による揺れでない事も見抜いた。

 人為的な震動は延々と続く。

 死神と帰面を相手取っていた星十字騎士団でさえ見当のつかない揺れは、このまま永遠に続くかと思われた。

 

「みんな!!」

「焰真!?」

 

 しかし、突如として舞い戻ってきた人影───否、焰真の叫びに誰もが注目し、

 

「外に逃げろォ!!」

 

 鬼気迫る形相で言い放たれた言葉に、一瞬固まった。

 意味が分からない。

 死神と帰面にしてみれば逃げざるを得ない強敵が現れたのかという想像が脳裏過り、星十字騎士団も特記戦力を追いやる何者かが現れたのかと楽観的な思考が生まれた。

 だがしかし、目の前に迫りくる()()に、両者は己の想像が何と短絡的だったかと後悔する羽目になる。

 

 轟音を響かせていたのは───壁。

 通路をすっぽりと埋め尽くす壁が、津波の如く流動しながら進路上に存在するありとあらゆるものを押し潰してくるではないか。

 

「なんだ、これは!? は、速い!」

「おい、マジかよ!? こうなりゃあ力尽くで……!」

「いいから逃げろ、全員だ!! 潰されて死ぬぞ!!」

 

 味方のみならず、戦っていた滅却師相手にも忠告してみせた焰真は、思わぬ出来事に驚愕し足が止まっていたルキアと恋次を抱きかかえ、入って来た城門を目指す。

 遅れて駆け出す帰面と星十字騎士団もまた、死に物狂いで出口へ急ぐ。

 その間、逃げ遅れた死神や滅却師のゾンビは圧し潰され、原形を留めぬミンチへと早変わりする。

 

「くそ!」

 

 その悲惨な光景に焰真は悪態をつく。

 死者とは言え、遺されていた体を供養する事もできぬ内に潰されていく様は見ていて気持ちがいいものではなかった。

 

(焰真……貴様は一体何と戦って……?)

 

 こうも彼を追いやった相手の存在に戦慄するルキアは、間もなく曇天に覆われたの下に運び出された。

 数拍遅れて飛び出す面々。

 直後、血塗れの壁が城門すらも圧し潰し、外へと流れ出た。

 あれほど滑らかに動いていた壁も、外に出た途端に頑丈な石材で出来た壁に元通りだ。とても流れるような動きができる材質には見られない。

 

 死神と帰面が九死に一生を得た不可思議な現象に愕然とする間、いち早く元凶に気がついたリルトットが苦虫を嚙み潰した面持ちを湛え、吐き捨てるように紡ぐ。

 

「グレミィ……あの野郎、俺達も巻き込みやがって」

 

 

 

「いやあ、ごめんよ。まさか君らが銀架城の中で戦ってるなんて想像つかなくて」

 

 

 

『!』

 

 誰に悟られる事無く現れた少年が、城門を塞いだ壁に腰かける。

 余裕綽々と敵味方関係なく見下ろすグレミィは、申し訳なさそうな雰囲気を感じさせぬ謝罪を告げた後、スッとある人物に目を遣った。

 

「さ、これで本気が出せるよね。芥火焰真」

「……お前、よくも」

「『よくも』……何? あんまり勿体ぶると、なんて言いたいのか想像もできないよ」

 

 あからさまな嫌悪感を放つ焰真に、グレミィはせせら笑う。

 

「兎も角、これで有象無象は居なくなったんだからさ」

「ああ? 何言ってやがる、グレミィてめえ!」

「やあ、バズビー。でもしょうがないじゃないか。ぼくと彼が全力出したら、周りの全員なんて居ないのと同じようなものだし」

 

 どうしてもって言うなら混ざってもいいよ、と言葉は締めくくられた。

 このように傲岸不遜な物言いに喰って掛かったバズビーも、堪らず青筋を立てわなわなと握った拳を震わせる。

 

「危うく死んじゃうところでしたぁ~><」

「あの野郎……よくもあたしを埃塗れに!! 今すぐブッ殺して……!!」

「やめとけよ、ビッチ。お前がグレミィに挑んでも、返り討ちにされるのが関の山だ」

「あー、ヤダヤダ。こんなところいたら危ないし、さっさとトンズラここうよ」

 

 バンビーズの面々も、唐突に現れたグレミィへ不快感を隠さない。

 否、味方すらも巻き込みかねない強大な力に対し畏怖を覚えているといった方が正しいだろうか。

 何にせよ、あれほど好戦的であった星十字騎士団の面々がこの場から離れんとする程、グレミィ・トゥミューという存在は圧倒的であった。

 

「さあ、見せてご覧よ。ぼくもこの目で見てみたいんだ───卍解」

「それだけの為に味方も巻き込んで……!」

「もしかして怒ってる? でも、敵の君にとっては筋違いでしょ。敵が勝手にやられたら『あ、ラッキー』ぐらいの感覚が普通じゃない?」

「敵だろうが味方だろうが見てて気持ちいいもんじゃないんだよ、俺はな」

「ふーん……まあ、それも価値観の違いって奴かぁ」

 

 よっこいしょ、と一息つきながら立ち上がるグレミィが、徐に手を翳す。

 

「それじゃあ、仕切り直しといこっか」

 

 刹那、焰真とグレミィの足元を中心に大地がせり上がってくる。

 瞬く間に築き上げられる台地は、まさしく山。薄暗い瀞霊廷のど真ん中に建てられた砦状の舞台は、両軍の命運を分ける決戦に相応しい物々しさを漂わせていた。

 二人だけの戦場にしては広大な、しかし刃を交える両名を思えば些か狭苦しいかもしれない。

 

「これが俺とお前がやり合う場所か? 随分とちゃちな舞台だな」

「ごめんね、建築家じゃないからデザインには目を瞑ってよ。でも、戦場っていうならこれくらい飾り気のない方が戦い易いんじゃない? 何も壊さない分、気を揉むこともないよ」

「そのほんの少しでも人に気を向けられるようだったら良かったのにな」

 

 そう吐き捨て、焰真は共に舞台へ引き上げられてしまったルキア達を一瞥する。

 

「皆は下りてくれ。こいつは俺がやる」

「何を馬鹿なことを! 今の能力といい、こんな得体の知れない相手は全員でかかった方が手っ取り早いに決まっている!」

 

「あーあ、人の優しさってのが分からないみたいだね」

 

「……なんだと?」

 

 明確な侮辱を受けたと察したルキアが睨みつけるも、歪に歪んだグレミィの表情は変わらない。

 

「だってそうでしょ。彼が必死になって逃がしてくれた意味が分からないなら言ってあげる───きみらが戦力外、邪魔だから退けてろって意味さ」

「貴様……」

「それでも戦いたいなら別に構わないよ」

「!」

 

 霊圧とも違う威圧感。

 形容し難い圧───否、これは死の予感だ。それらを滲ませるグレミィは、点々と指先で一人一人を辿っていく。

 

「圧死、煙死、焼死、狂死、絞死、餓死、失血死、即死、墜死、溺死、凍死、徒死、刎死、轢死、浪死……きみらのありとあらゆる死の形を想像してあげるよ」

『……!』

「ぼくは()()()()()()()()“夢想家”、グレミィ・トゥミュー。きみらの死に方だって、ぼくの思い通りさ。例えば、ほら」

 

 そう言って指先をルキアに差し向けるや───グレミィの眼前に肉迫した焰真が、目にも止まらぬ速さで手を打ち払った。

 たったそれだけの動作でも、周囲に広がる衝撃波は凄まじい。

 

 ビリビリと肌を痺れさせる振動が体内を突き抜ければ、誰もが頬に冷や汗を流す。しかしそれ以上に烈火の如く怒りを瞳に宿す焰真の気迫に気圧されていた。

 それはグレミィとて例外ではなく、想像以上の速さに目を見開いた彼に対し、焰真が業腹を煮やした声音を紡ぐ。

 

「させると思ったか?」

「……()()()()()。待ち侘びていたよ」

 

 弧を描く口元。

 すると、徐に焰真の足元から溶岩が湧き上がる。

 まったくの予兆が無く噴き上がった溶岩に呑み込まれる焰真だが、それらも寸前で纏た青白い炎によって身を守っていた。

 ほんの少し込める霊圧を強めれば火勢が増す。煮え滾る溶岩を吹き払う程の炎をその身に宿す焰真は、やや距離を取った場所に立つグレミィに対し、ゆっくりと鋒を向けた。

 

「お前がどんな不可測な力を持ってたって関係ない。俺は大切な人を護り抜く……その為に全身全霊でお前を倒す!!」

「そうこなくっちゃ。相手は最強の死神の一角だ。最強を証明できる機会なんてそうそうないからね。ぼくも柄になくワクワクしてきたよ」

 

 身構える双星。

 生の輝きを放つ死神と、死を創造する天使。

 相反する存在は、瀞霊廷にて最も高き戦いの舞台にて衝突する直前であった。心なしか空を流れる雲の蠢動も早まっていく。

 

 息苦しい静寂が舞台を覆う。

 喉を鳴らし見守る面々。霊圧の問題ではない、両者から静かに流れ出づる力の胎動が、これより始まる次元の違う死闘を予感させ、二の足を踏ませていたのだ。

 

 しかし、不意に足音が鳴り響く。

 

「一人で戦うなんてつれないこと言わないでよ」

「ディスペイヤー……じゃなかったな」

「うんうん、虚白だよ。ちゃんと憶えといてね」

 

 隣に歩み出る白い人影を一瞥し、焰真は語を継ぐ。

 

「はっきり言やあ、こいつは規格外だ。能力もてんで予測つかねえ」

「まあ、こんなのを一瞬で創れるくらいだしね」

「ああ、でも方法がない訳じゃない。あいつの想像が追い付かなくなるくらいに畳みかける。力業だが、それしかない」

「いいね、嫌いじゃないよそういうの」

「……だから、お前を傷つける訳には」

 

 やんわりと引き下がるよう諭すつもりだった焰真の目の前に、拳が突き出された。

 

「荷が重いなんて言わせないよ。だって、皆で背負うものでしょ?」

 

───それ以上は、何も言い出せなかった。

 

 誰もが覚悟している。

 なのに自分が無下にするなど、出来る筈もない。

 優しさと傲慢は時に紙一重である事を、焰真は一度思い知らされた。

 だからこそ、彼女の口から告げられようとする言の葉にしっかりと耳を傾ける。

 

「いつまでもキミだけには背負わせない。キミって頭痛くなりそうなくらい真面目ちゃんっぽいし」

「っ、お前なぁ……!」

「アハハッ! キミってほんと、初めて会った時から変わらないね」

「何がだよ、ったく」

「どんなに強くなっても、泣きそうな顔して戦ってるトコ」

「───!」

 

 ハッと瞠目した焰真が、今一度虚白を見つめる。

 すれば、黄金色の瞳孔がこちらを捉えていた。透き通る瞳に映り込む自身の表情は、確かに今にでも泣き出そうな幼子のそれだった。

 

「ねえ、アクタビエンマ」

「ああ」

「一度だけ信じてほしいんだ。キミが救った命の……魂の強さをね」

「……ああ!」

 

 憂いは消えた。

 雨が降り出しそうな曇り顔は晴れ、星をその目に宿した焰真がグレミィに対面する。

 虚白もまた、手首に嵌められた鎖と柄尻が繋がる刀を構え、焰真の隣に並び立った。

 

 壮観たる眺めだ。

 死神と虚が手を取り合い、戦おうとする姿。種族の垣根を超えた共同戦線を目にすれば、一方に接点を持たぬ者でさえもいつの間にか胸に熱さを覚えていた。

 

 しかし、一方で冷ややかになる視線。

 

「はあ、命知らずだね」

 

 特段目にかけた訳でもない虚擬きの乱入に、グレミィの高揚は冷や水を掛けられたかの如く急激に冷めていく。

 

「物を知らないのはキミの方だよ」

「……なんだって?」

 

 だが、虚白が言い返す。

 

「イレギュラーってのはなんにでも付き物でしょ? アクタビエンマにとってもイレギュラーだったボクらの未来を想像するなんて、キミには無理だよ」

「未来、ね。それはこれから実現するものだよ」

「そうだね。なら、これからボクが何をするのか───想像してみせてよ」

「……」

 

───こいつは何を言っている?

 

 そうグレミィが思った理由はただ一つ。

 虚白の霊体より溢れ出す霊力の波動が、予想を遥かに上回る強さを放っていた。だが、それだけならばまだ驚愕には値しない。

 

 いうなれば、霊圧の質だ。

 

(これは───()()だ?)

 

 死神のように忌々(ゆゆ)しく。

 虚のように禍々しく。

 滅却師のように神々しく。

 

 どれとも断言できぬ混沌とした霊圧が、グレミィの思考を混乱させ───期待を抱かせるに至った。

 

「成程ね」

 

 前言撤回だ、と微笑を浮かべるグレミィは、静かにその変貌を見届けんと心に決めた。

 

 一方で、焰真もまた驚いていた。

 霊圧の質もそうだが、この急激な上昇量。

 煌々と燐光を散らしながら力を収束させる光景は、紛れもなく羽化の前兆であった。

 

「お前……まさか!」

「滅却師さんにはもう奪われないんでしょ?」

「……ああ、奪えっこないさ」

 

 焰真もまた力を高める。

 強く、強く。

 全身を包み込む淡い光が、仄暗い闇に覆われた瀞霊廷中を包み込む輝きを放つ程に。

 

 足元に描かれる二つの十字。

 それは二人を優しく抱擁する、人々の希望そのものかもしれない。

 

───全部守るって決めたんだよ!!! 人も、死神も、滅却師も、虚もだっ!!!

 

 かつての焰真の言葉が虚白の脳裏を過る。

 

 それを告げられるだけの人間が、現世も尸魂界も含めてどれだけ居るだろうか。

 種族間の軋轢を知り得ながらも、全てを分け隔てなく人として見る者もまた同じく。

 

 だが、そんな彼に出会えた事こそが運命の転機だっただろう。

 藍染惣右介が創りし実験虚として、数多もの死神を喰らい、滅却師とも融け合った。多くの罪を重ね、それでも尚生きろと告げられた彼女が手にしたものは、単なる力ではない。

 

 心の写し鏡となる死神の斬魄刀。

 失った心が力と姿の基となる虚。

 掠奪が能力の根幹を為す滅却師。

 

 三つの種族が織りなす奇跡は、今まさにそのきっかけとなった青年の前に光臨せんとしていた。

 

 すると、ようやく差し出された拳へ、コツンと自身の拳をぶつけた焰真が微笑む。

 

「力を合わせて……」

「皆を救う、だね?」

「……はっ! それじゃあ行くか!」

「共同戦線、張り切って行こォー!」

 

 広がる光はどこまでも広く、強く、温かく、

 

 

 

『  解 !!』

 

 

 

 夜空を照らす星と成った。

 




✳︎作品紹介✳︎
https://syosetu.org/novel/213313/
↑虚白(元ディスペイヤー)が元破面と行動を共にするに至った前日譚。
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