猫、拾いました   作:秋の月

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ややタイトル詐欺です。投稿サボっていた事お詫び申し上げます。

最近hoi4にハマり、気付いたら夜中でした状態が続いて寝不足です。皆さんはそうならないようお気を付けて。


9話 猫、恩返しする

何かがきっかけで映し出される世界は目紛しい程変わるなんて言葉、まさか実際に体験するなんて思っても見なかった。

 

「長門はなんか運動とかしてんのか?俺は部活でテニスとかしてるんだが」

 

「いや特に...」

 

「長門ってドルオタだと近江から聞いたんだけど、誰が好きなの?因みに俺は輿水幸子ちゃん推し」

 

「ドルオタじゃねぇよ...偶々知る機会が合っただけだ」

 

何故俺はクラスメイトと話しているのか。いや本当はこれが学生として有るべき姿なのだろうが、そんな物はこの学校に来てから捨てたはずなのに。

 

「本当にー?なんかオタクって感じがするんだがなぁー」

 

「本当だ。俺はオタクじゃなくてコミュ障なだけだ」

 

『ダサッ』

 

「お前らなぁ...」

 

俺はもしかしたら弄られてるだけなのかもしれない。

 

―――

 

人の縁とは怖いものだ。気付いたら俺を囲む包囲陣が出来ていた。先程の会話の上からテニス部の越前、輿水幸子推しの佐渡。近江の中学の頃からの友達らしい。中学から同じ高校に進学した仲だと聞き、上京してきた俺は少しその様な昔からの関係と言うのが羨ましく思う。都会に出たいなんて無駄な期待を込め、挙句の果てに現実に希望を持てなくなった自分が。自分と言う迷路で路頭に迷い、諦めて歩みを止めた俺が彼等を羨むのはおごがましいのかもしれないけどな。

 

「何しけたツラしてんだよ、俺今日は部活ねぇしどっか寄り道して帰ろうぜ」

 

「あ、あぁ...そうだな...」

 

「どこ行く?暑いしアイスでも食いに行く?」

 

「おぉ、いいな」

 

まあもっとも、彼らは深く考えてなさそうだけどな。でもそんなんで良いのか...?

 

「長門って結構面倒な性格してるんだな、もっと軽く考えれば良いんだよ」

 

近江が肩を一方的に組んできた。馴れ馴れしいと言うか、鬱陶しいと言うべきか、野郎の筋肉がぶつかったり、屈まなくてはならないのもあって腰とかも結構痛い。

 

「ちょ、近江鬱陶しい」

 

「鬱陶しいって失礼だな!?」

 

いや俺は事実を述べたまで...ってなんでそこの女子は写真を撮るんだ、なんで顔を紅く染め上げてるんだそして眼鏡を輝かせるな!

 

「いいから離れろって、腰とか痛てぇんだ」

 

「おっとわりぃわりぃ」

 

全く善意の篭っていない謝罪をしながら彼は肩を離す。近江と俺とじゃ俺の方が頭一つでかい(と言うのと近江はクラスの男子の中で一番背が低いらしい)ので、肩を組むと必然的に腰を屈ませる事になる。

 

「近江牛乳飲んでるのか?」

 

「あれは全く効果なかったからやめたよ」

 

どうやら過去に試したらしい。慰めの言葉以外思い浮かばねぇ。

 

「ま、俺のことは良いんだ。もう少し楽にならねぇと人生辛いだけだぜ〜?なんだったらみくにゃんにアタックするとかなぁ。何かとお前気にかけられてるからなぁ」

 

「まあ、前川にはお世話になってるがなぁ...それって『クラス委員長として』な感じだからな...」

 

脳裏に前川がうちに来てからの毎日が過ぎるが、これを話したら最期俺は八つ裂きにされるだろう。ひえぇ...。

 

「まあ、そうだが...」

 

「脈はあると思うんだけどなぁ...」

 

...突然抱きしめられる事もあるけど、果たしてどうなんだろうか。人の感情なんてものは分からない。ただ、分かるとすれば――

 

―――

 

「前川さんがお買い物に誘うなんて珍しいね!」

 

「急にごめんにゃ、美波ちゃん。お世話になってる人に向けて贈りたいものがあってね...」

 

「贈りたいものかぁ...相手ってプロデューサー?でも凛ちゃんが拗ねるよ?」

 

凛ちゃんのプロデューサー愛は結構強いから見ているみくも少し引いちゃうけど...何となく共感出来るんだよね...。分かっちゃう自分が恥ずかしい...。

 

「プロデューサーにも迷惑かけたし、なにかプレゼントしようと思うけどね...」

 

「その反応、なんか別に本命がいるって感じだね?誰々!?みくちゃんが惚れた人って!」

 

美波ちゃんも恋多き乙女だったよね...いつも騒ぐ様な人じゃないけど、こう言う所は食いつくんだ...。

 

「ほ、惚れたとかそう言うのじゃ...!で、でも悩んでたみくを支えてくれてね...今みくがみんなと一緒に居れるのはその人のお陰で...その人が居なかったら普通の女子高生になってたにゃ...」

 

「それは私からもお礼を言わないとだね!みくちゃんがシンデレラプロジェクトから消えちゃったら寂しいからね!」

 

美波ちゃん...そんな事思ってくれてたんだ...!そんな美波ちゃん...いや、それだけじゃなくて皆に迷惑かけた私は大馬鹿者なんだなぁ...。

 

「で、その人ってカッコイイの?」

 

「へっ?そ、そんな事聞かれてもっ!」

 

「気になるじゃん!アイドル以前に私たち女の子だしね、気にならないなんて事は無いよ!で、どうなの!」

 

み、美波ちゃんなんかさっきからテンション高いなぁ...上機嫌にも見えるし...て、テンションについていけない...。

 

「うぅ...顔は悪くないにゃ...」

 

「おお!顔が良くて相手に寄り添える男の子!優しくてカッコイイじゃん!良い相手に逢えたんだね!ならしっかりしたもの選ばないと!」

 

「うぅ...」

 

長門チャンに対して色々恥ずかしい事したり言ったりしてたけど、改めて彼に対する印象を他の人の口から聞くのって恥ずかしいにゃ...。多分今のみくは茹だったタコみたいに赤くなってるにゃ...恥ずかしくて顔上げられないよぉぉ...。

 

「どんなの贈りたいの?優しくてカッコイイ男の子と言うのは分かったけど、趣味とかないの?」

 

「んー...強いて言うなら料理とかかな?」

 

「...男の子なの?」

 

「男の子...だよ。教室に居ても寝てるかスマホ見てるかのどっちかだし...あと偶に本読んでるとかかにゃ」

 

長門チャンの家に上がり込んでいるなんて口が裂けても絶対に言えないにゃ。Pチャンからは「節度を持ってください」と言って許可してもらってるけど、プロジェクトのみんなに話すと絶対に面倒な事になると分かっているから絶対に言えない。

 

「...ならエプロンとかかな?」

 

「エプロン...美波ちゃんそれいいにゃ!」

 

長門チャンの持っているエプロンは黒無地のシンプルなものだけど、結構使われているからなのか、色褪せたり、解れたりしていた。それならピッタリかもしれない。

 

「ならあっちの小物店だね」

 

何が似合うかなぁなんて思って美波ちゃんの案内する小物店まで歩く。でも長門チャンって多分服とかエプロンとか無頓着な感じだから、仮に「どんなの欲しいの?」と聞いても「着れればいい」とか絶対言うにゃ。そんなんだからモテないにゃ。だからみくが一人占めするにゃ。

 

「ふふっ、みくちゃん嬉しそうだね」

 

「ふ、ふぇ!?突然なんや美波ちゃん!」

 

「みくちゃーん?キャラ忘れてるよー?」

 

はっ!いけないつい!なんだか無駄に恥ずかしい思いをした感じにゃ...心做しか周りの視線が生暖かい...と言うか見られてるのにアイドルだって気付かれないのね...騒ぎにならない事を喜んで良いのか、気付かれない事を悲しむべきか...うーん。

 

「ほら着いたよ」

 

「おー...いつの間に着いたにゃ...」

 

「彼氏さんに良いもの選んであげなよ!」

 

「ま、まだ彼氏じゃ無いにゃ!」

 

「ほーん...ふーん...『まだ』なんだ~!」

 

墓穴掘ったにゃ!?やらかした!

 

「そ、それは言葉の綾で「好きなんでしょ」だ、だから「好きなんでしょ」うぅ...はい...」

 

美波ちゃんから謎の威圧を感じたにゃ...あれはアーニャちゃんが他の子とじゃれついてる時に見せる奴にゃ...まさかこの日常的?場面で使われるとは...。

 

「素直にならないと他の人に取られちゃうよ?」

 

「うぅ...」

 

確かにいつ取られてもおかしくないにゃ...最近の長門チャンは教室でも笑う様になったし、あの「一人最高!」を謳う彼が「少し仲良い奴が出来た」なんて言い出し始めたし着実に変わり始めている。本人は否定すると思うけど最近他の女の子の見る目が変わってきている。無自覚な悪意を持つ子が減りつつあるのが事実だから。恥ずかしくて口には出せないけど長門チャンってしっかり整えたら何処にでも出せるカッコイイ男の人だから。

 

「みくちゃん拗ねてる?」

 

「...別に拗ねてないにゃ。ちょっと考え事してただけにゃ」

 

「そうなの?もう着いたのに反応無かったから」

 

「わっ!本当だ...気付かなかったにゃ...」

 

長門チャンの事を考えてたのもあってか周りに気付かなかったみたいにゃ。これは恐ろしいにゃ...外では絶対にやらないように気を付けるにゃ。

 

「...あ、可愛い猫の置物にゃ!」

 

「確かに可愛いけど目的違うでしょ!」

 

「そ、そうだったにゃ...」

 

でもそれとは別にゃ。美波ちゃんの困った様な視線を浴びながら入口に置いてあった籠に猫の置物を入れる...とふと一つのエプロンが目に入った。

 

...これにゃ!

 

―――

 

「男の子が着けるものなのかなぁ?」

 

「可愛いものも好きだから納得してくれると思うにゃ。そもそもエプロン着けてる時点で無駄なだけだけど」

 

「そ、それもそうだね!」

 

結局エプロン以外のものも買ったせいでみくのお財布が軽くなったけど、目的の物が買えて良かったにゃ。

 

「美波ちゃんありがとうにゃ!お陰で良いもの買えたにゃ」

 

「ううん。私は結局見てただけだから全然役に立ってないよ。それよりも頑張ってアタックするんだよ」

 

「す、するかぁ!?」

 

い、いや完全にしないわけじゃ無いんだけどね!って誰に否定してるんだろう。

 

「じゃあね、頑張ってね!」

 

「な、何を頑張るにゃ...」

 

プロジェクトで一番歳上な筈なのに、一番乙女なのは多分美波ちゃんだろうなぁ...なんて考えながらみくは帰路に着いた。

 

長門チャン、喜んでくれるかな?

 

(ブー!ブー!)

 

長門チャンの喜ぶ顔を思い浮かべていた所、ポケットに入れていた携帯が揺れ始めた。誰からだろう...あれ?Pチャン?

 

『安全上の理由により、寮暮らしのアイドルは会社から近い寮に引越す事になりました』

 

...え?

 

 




本編はエピローグを含め残り二話の予定です。


突然言い渡された「強制引越し」のお知らせ。秋葉原を通る黄色い電車の日中の終点駅付近に住む前川みくは、長門聡と離れ離れになってしまうのか...。

次回・第十話...猫、旅立つ









余談ですが、これの本編書き終えたらごちうさの二次創作を投稿します。興味ある方はそちらの方も気長にお待ちください。
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