ポケットモンスター虹 Desire like a Drizzle   作:真城光

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空模様

「なるほどなるほど。シンジョウくんとカエンくんの間にはそんな関係が」

 

 ポケモンたちをモンスターボールに戻し、事情を説明する。イリスはうんうんと頷いて納得している。というかジムリーダーだったの? という問いはスルーした。

 カーシャもまた、驚きと感心とともに聞いていた。カエンと仲が良さそうに見えるが、そこまで踏み込んだ話というものはしていないらしい。

 ある意味で師弟のような関係ではある。

 

「いやあ、シンジョウ兄ちゃんがラフエル地方に来てたなんてな。なんで連絡をくれなかったんだ?」

「気ままに旅をするつもりだったからな。近くまで来たら声をかけるさ」

「うわ、これ、ぜってー怒られるやつだな……」

 

 などとカエンは小さくつぶやく。

 そんなことより、とイリスは一言挟んだ。

 

「カーシャちゃん、このあたりはいつもこんな天候なの?」

「いえ、最近になってです。最初はよかったんですけど、雨に慣れないポケモンたちもいて」

「ああ、やっぱり。それでさっきのスピアーたちはあんなに苛立ってたのね」

 

 イリスの予感は的中であった。雨は異常気象であった。普段とは違う環境で、スピアーたちを含めてポケモンたちも戸惑っているのだろう。

 であれば、その原因はなんだろうか。暖かい湿った空気が山脈にぶつかれば確かに、雨は降る。だがそれは普段から雨が降るはずであり、テルス山南部では該当しないのだろう。

 シンジョウはほとんど、結論を出していた。雨を降らすポケモンがいる。ニョロトノやペリッパー、あるいはあまごいが可能なポケモンがである。

 しかし、大雨を何度も降らせることは可能なのか。それだけの数のニョロトノが大量発生する可能性は考えられない。であればペリッパーだろうが、ペリッパーは海辺に暮らすポケモンだ。大量移動するならばニュースにもなる。

 あまごいが使えるポケモン……これについて考えればきりがないが、そもそもあまごいが使えるポケモンが多くいるのであれば、その時点でこの近辺は湿地帯になっていることだろう。少なくともテルス山の周りは森林か、岩山の地域だ。

 ラフエル地方に来たばかりの自分ではこのあたりのことはよくわからない。一度、きちんと地勢を把握している者に確かめるべきだろう。

 

「災難だねえ。二人もデートの邪魔されちゃうし」

「で、でーと!?」

 

 イリスの言葉に動揺するカエン。カーシャは言葉の意味がわからないのか、首を傾げている。

 見ようによってはそうだろうとは思うが、シンジョウは助け舟を出してやることにした。

 

「あまりいじめてやるな」

「はいはい、ごめんね。雨のことはわかったよ。じゃあ別の質問! この上にある洞窟のこと、知ってる?」

 

 それに、あっ、と言葉を漏らしたのはカエンとカーシャの二人だった。誤魔化すことを知らない素直な二人に、微笑ましさを覚える。

 

「なにかまずかった?」

「い、いえ、あそこは私の一族のものなんです。本当は誰も入れちゃいけないって言われてて」

 

 にんまり、と笑ったのはイリスだった。おもちゃを見つけたみたいな笑いである。

 要するにカエンとカーシャは、誰も来ないのをいいことにあの洞窟を秘密基地のようにしていたのだ。

 確かに子どものときに、あんなものを見つけてしまったら、楽しくて仕方ないだろう。

 23歳にもなってシンジョウも心を躍らせたのだ。カエンの気持ちもわかるというものである。

 

「お、怒らないでくれよな!」

「私たちが怒ってどうするの」

「……危ないとは思うが」

 

 と小さくつぶやけば、イリスがじろりと視線を向ける。肩をすくめて、シンジョウはため息をついた。

 どうせ自分が言わなければ、イリスが言っていたことだろう。せめて先輩としての役目を果たさせてほしいものだと思った。

 

「まあ、いいや。ひとまず今日は帰った方がいいよ。ほら、日も沈んじゃうし」

 

 イリスの言う通りであった。すでに時刻は夕暮れであり、影も伸びている。

 少なくとも良い子は帰る時間であるし、旅の身であるシンジョウもイリスも、宿に行くか野宿をするか考えなければならない。

 

「でしたら、お礼をさせてくれませんか。我が家に来てください。命の恩人ということならば、許してくれるかと」

 

 カーシャがそう言った。それにイリスはいやいや、と手を振る。

 

「別にいいよそういうの」

「ご飯もいっぱい作りますから、大勢で食べた方が楽しいと思いますし」

「ぜひともお世話になります! ね、シンジョウくん!」

「巻き込むなよ」

 

 唐突に食い意地を張るイリスに、シンジョウは苦言をもらす。背負っている大きなバッグがイリス以上に跳ねていた。

 だが、カーシャの提案に乗るのは悪い話ではない。

 この近辺の話も聞けるし、宿も確保できるのはありがたい話だ。

 

「カエンくんも、来る?」

「い、いいのか!?」

「お礼だからね」

 

 というふうに、とんとん拍子で話が進む。

 気づけば全員でお世話になるという話になっていた。大所帯はあまり得意ではないが、イリスという女に出会ってしまったことが運の尽きだろうとシンジョウは諦めたのだった。

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