オタクの俺が転生したら、エロ漫画の竿役になっていたんだが?   作:トゥワンネ

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絢瀬絵里①

目が覚めた。

 

状況が理解出来ない?安心しろ、俺もだ。いや俺の方が理解出来てないわ。そうだな、とりあえず俺の回想を聞いてくれ。

 

***

 

俺の名前は…どうでもいいな。いや、便宜上名乗っておこうか?武内遼って言うんだけど、ま、忘れてくれても構わない。

 

俺にとってはついこの前に感じる出来事だが、実際はどれほど前なのかはわからない。まあ、そんなことは起こったことに比べればクソほどにどうでもいいことだが。

 

俺は毎日、飽かず部屋で音ゲーを嗜んでいた。音ゲーって言っても、今流行りのバ⚫ドリ?とかそんなやつじゃない。ゲーセンとかには大抵ある、アレだ。

 

すごいだろ。俺の部屋は音ゲー屋敷。日本全国の音ゲーマーの夢を叶えた部屋だった。フリーターの俺がそんな金を調達できたのは、親が死んで金が入ってきたから。こんな最悪な息子はそうそういるまい。つっても罪悪感なんてとっくに捨てたけどな。そうでもなきゃやってらんねーよ。

 

あの日もまた、⚫HUNITHMを楽しんでいた。と、後ろで扉の開く音が。また姉ちゃんか、わかったわかったもう少し音を小さくしますよ…っと。

 

いやー、あの瞬間はさすがに忘れられないね。近づく姉ちゃんの気配。何となく腹に違和感。手でまさぐると鮮やかな赤、突然その場に崩れ込む。激痛、激痛また激痛。血を吐きながら振り返る。姉ちゃんが、2発目の一撃を振りかざそうとしていた。驚くことに不思議と冷静、目にしたものは姉ちゃんの、廃人のような虚ろな目。

 

ここで俺の意識はシャットアウトした。俺は死んだのか、そうか。俺に生産性なんてないとしても、死ぬのは残念なもんだなぁ。なんか、切り刻まれている感覚。これが死ぬ感覚なの?バラバラにされてるようにしか感じられねえよ。もういいか、別に死んでも。昨日虹レになったし。

 

アディオス今世、おはよう来世。

 

***

 

で、今に至るわけだが…俺はベッドに横たわっていた。

 

とりあえず、着ていた服は元通りのようだ。血も出ていない。鏡がないから確認のしようがないが、顔を触ってみると、不摂生な生活が祟り、ついこの前額に出来たニキビを確認。あ、異変ないわこれ。

 

とはいえ、異変がないのは自分だけ。周りを見渡すと、見たこともない部屋にいた。部屋といっても、セックスしないと出られない部屋のような、無機質で真っ白な部屋じゃない。なんというか、高校生が住んでるような、ごく普通の部屋。

 

枕元にメモを確認。心当たりしかない筆跡。

 

『①絢瀬絵里』

 

どう考えても俺の筆跡だ。相変わらず汚い字だなぁ…。いやそんなことより、このメモについて考えなくては。

 

絢瀬絵里、か。あれだ。ラブライブ!のキャラだ。あのアニメの中では俺の一番好きな子。推しってやつ。

 

絢瀬絵里がどうした?さっきから不可解なことが多すぎないか。三途の川のくだりはスキップ?そろそろ閻魔様が偉そうに歩いてきて、俺の舌を抜いてくれてもいい頃じゃないの?

 

まあ考えても仕方あるまい、とりあえず動こう。というか、誰のかもわからないベッドで寝ていたくない。変なところで潔癖でるから嫌なんだよなぁ。

 

部屋を出てみたが、家に人がいる気配は感じられなかった。とはいえ、誰かに見つかって通報されるのも嫌なので、俺はそそくさと家を出た。

 

全く知らない街。何の変哲もない住宅街だ。のび太が住んでる街って感じ。なんでもいい、とりあえず歩こう。ひたすら直進していけば、モンスターにでも出会うかもしれない。…普通に通行人も歩いてるし、ここはパラレルワールドか、俺の幻想のどちらかだな。100割後者だろうが。

 

そんなことを考えながら歩いて1分ほど。俺の目の前に小さな階段が現れた。先を見上げると、少し高地になっているらしい。まっすぐ行くっつったって、登るのもめんどくせえな。右に行くか左に行くか、どちらにしようかな…

 

そういえば、階段で思い出した。生前最後のシコネタはラッキースケベからセックスに発展していたなぁ。踊り場を駆ける男の前で、足を滑らせた美少女は、お約束の顔面騎乗をお見舞いしていた。

 

そんなことを考えながら階段の先を見上げた途端、人影が現れた。……ん?んんん??いや、作画違くね?

 

絢瀬絵里さん?

 

ここで、『絢瀬絵里』のメモ書きが頭に蘇る。

 

使命感というか、運命というか、とにかく俺の意思とは全く関係なかった。先ほどの陰キャ思考はどこへやら、俺は階段に向かってゆっくりと足を踏み出した。

 

下から覗く絢瀬絵里は、いやどこから見たってそうだろうが、可愛らしかった。お、パンツ見えそう…見えないか。さすがお硬い生徒会長、スカートの長さにおいては校則を遵守しているようだ。

 

彼女はどうしたんだろうか、足がおぼつかない様子で階段を降りている。これは完全に伏線じゃないか?俺が踊り場に足を踏み入れたとき、コイツは必ずコケて俺に覆いかぶさる。そんな根拠のない確信が芽生える。

 

意気揚々と階段を上る俺と、千鳥足で階段を下る彼女。このスピードなら、踊り場ですれ違うペースだ。胸が高まる。

 

さあ、踊り場だ。アンタは?さあ、コケちまえッ!

 

絢瀬絵里が踊り場に足をつけた瞬間、彼女はよろけ、驚きの表情で悲鳴をあげながら、俺を下敷きにする――はずだった。

 

いや、俺は倒れたよ。確かに俺は、彼女とぶつかった衝撃で尻餅をついた。ここでケツから落ちてくるのが典型的なラッキースケベだろ?

 

何が予想通りじゃないかって、ぶつかる瞬間の彼女の表情。少し火照った顔に、サキュバスを思わせる邪悪な笑み。違う。俺の推していた絢瀬絵里は、こんなんじゃ――

 

馬乗りになった彼女は、透き通るように綺麗な髪をかき分け、挑発的な口ぶりで俺に言った。

 

「ねえ、あなた。私と…イケナイこと、しない?」

 

***

 

拉致られた。

 

気がついたときには、俺はまた見覚えのない部屋に転移していた。だが死んだ直後のように、ベッドに横たえられているわけではない。椅子に座らされた俺は、SMプレイの要領で、手首を椅子に縛り付けられていた。なんで縄跳びの縄?他の縄がなかったのかな。状況を飲み込めず、声を上げようとして気付いた。猿轡。これ絶対SMじゃん…

 

「あら、気付いたのね。」

 

微笑みながら悠然と歩む彼女は、やはり俺の知っている、賢い可愛いエリーチカではなかった。

 

「※!@?!*~??♪!卍卍!?」

 

猿轡に言いたいことを言わせてもらえない俺を、邪悪な笑みで見下ろす絢瀬絵里。黒々と光るボンテージが、彼女のスタイリッシュで端麗な容姿を、これでもかと主張していた。

 

「あなたは私とぶつかった後、すぐに気絶してしまったのよ。始末が悪いから連れて帰ったの。フフッ…あなたを活かすも殺すも、私次第なのよ。」

 

アレだな。まず、聞いてもないのに状況説明。そして、明らかに無理のある設定。極めつけは、脈絡のない勝者宣言。

 

エロ漫画だわ。これどう考えてもエロ漫画だ。誰の作品か知らないが、読者はオナニーに重点を置く以上、作者はストーリーを組み立てるのが面倒だったんだろうなぁ、知らんけど。

 

俺の経験上、間違いなくあと3コマ以内に服を脱がされる。いや実は、俺ストライクゾーン広いんだ。ソフトSMくらいなら全然いけちゃう。ほら、息子もご満悦のようだ。申し訳程度の抵抗を見せ、ほらまず服を脱がせよ、手に持ってるそれ、蝋燭だろ?

 

彼女は俺の服を破り肩を露出させた。そして、火のついた蝋燭を俺の肩に、"落とした。"

 

いや俺も蝋燭プレイなんてしたことはないからわからないが、したやつ曰く、「そんな熱くない」らしい。だから俺も、蝋燭を垂らされたって大したことはない、そう思っていた。

 

そう、蝋燭は"垂らす"ものだろ?いや世間一般では垂らすものじゃないだろうが。なんかおかしいよ。二度見して、ようやく異変に気付けた。

 

「〜〜〜~〜〜〜〜〜!!!?!!??!!!!」

 

あっっっっっっっつ!!!!!!!何も考えられず、ただただ全力で蝋燭を振り払う。いやおかしいだろこの女!なんで蝋燭をそのまま俺の肩に落として、何のためらいもなく火傷させちゃってんの???

 

熱さよりもその驚きで、本気で暴れた。そのとき、縄の結び目がほどけ、椅子に縛られていた俺の手首は自由の身となった。縄跳びの縄に締め付けられた手首が、痛ましそうに赤く腫れていた。慈しみの欠片もねえな、この女。

 

ここが好機と跳ね上がり、俺は目の前のドアに向けて一目散に駆け馳せた。ドアを勢いよく開けたそのとき、俺は振り返った。彼女は追ってきていなかった。ただ、神に愛された美貌を崩し、口角を吊り上げ、醜悪な笑みを浮かべていた。あまりの不気味さに振り返り続けることは出来なかった。

 

***

 

部屋を飛び出した俺が見たものは、廊下でも玄関でもない。普通の住宅街だった。探せば、土管が偉そうに鎮座する空き地だって見つかりそうだ。驚いて後ろを振り返ると、そこは見知らぬ一軒家だった。標識を見ると…『武内』。

 

はぁ、全く。この世界の理解なんて死んだ瞬間からとっくに諦めているが、不可解な出来事にこれほど連続して起こられても対処のしようがない。

 

俺は道の真ん中に寝転がった。通行人が怪訝そうな顔をしてこちらを窺っていた。そりゃ半裸の男が道で寝てりゃ、引くよな。こんなことも考える。車に轢かれて来世になったら、次はどこへ行くのだろうか。轢かれるとしたら、運転手は絶対あの女だろうな。

 

いや、彼女が悪かったんじゃない…そう思いたい。俺はこのシチュをソフトSMだと思っていた。それが大間違いだったのだ。

 

逆リョナだった。ドが付く地雷シチュ。確かに、得意だと思って飛びついたら地雷ってこと、結構あるもんな。

 

少し落ち着くと、思い出したかのように肩が痛み始めた。火傷は治っていなかったのか。手を見ると、手首はまだ赤かった。

 

ま、不可解な出来事の連続とはいえ、この街がまともな土地区画をしているならば、どこかに病院くらいはあるだろう。とにかく病院で火傷の手当を受けることにした。お、ちょうどいいタイミング。道端に私営病院を発見。治療費はどうしよう、まあこんな世界だ、なんとかなるだろう。

 

中に入ると、感じの良さそうなおばさんナースが受付に座っていた。必要事項を記入し、とりあえず客もほかにいなかったので、記入用紙を提出するとすぐに名前が呼ばれた。ナースが診察室の扉を開けた。

 

あー、なるほど。そういうことね。

 

「武内さんね。こちらへいらっしゃい。あら、服はどうしたの?」

 

医者、絢瀬絵里は、何事もなかったかのように俺と向き合う。先ほどの悪意は雲散霧消、俺の目の前には、可憐な1人の美少女が微笑みながら可愛らしく座っていた。

 

俺は何気なく周囲を見渡す。……先ほどまで3人はいたナース達は、誰ひとりいなくなっていた。

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