聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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仏4号
十説 ロキ、悪友と遭遇


夢の国を堪能し終え、もはや当たり前のようにオラリオに戻って来た仏

 

今日は両手に沢山のお土産を持ちながら、ベルと仲良く街中を歩いていた。

 

「それでもうダメだと思ったら、なんと僕の叔父さんがミノタウルスの群れをやっつけてくれたんです!」

 

「本当に来ちゃったのか~……ベル君の危機は去ったけど、また別の意味の危機が迫ってるかもしれないなぁ……」

 

先日ダンジョンで遭遇した奇妙な体験をテンション高めの様子で語るベルに

 

仏は苦笑いしながら手に持っていたなんともファンシーなイラストが描かれた袋から

 

ちょっと大きめの缶詰を取り出して彼に手渡す。

 

「とりあえずはいコレ、夢の国で買って来たお土産」

 

「夢の国……? なんなんですかコレ」

 

「クッキー、紐には内緒で一人で食べなさい」

 

「いや神様に内緒にするのはちょっと……そんな事したら絶対怒りますから一緒に食べますね」

 

夢の国って一体何だろうと疑問に思いながらも、カラフルな缶詰を両手で受け取りながら、とりあえず「ありがとうございます」と礼を言うベル。

 

「それにしても描かれてる絵がなんというか……エイナさんが凄く喜びそうな可愛らしい絵ですね」

 

「まあ~女子にはたまらないだろうねぇ、でもそこに描かれてるキャラと直に会ったら、男だってイチコロよ?」

 

「実在するんですか!?」

 

「当たり前だろバカヤロー! みんな夢の国の住人だコノヤロー!」

 

「す、すみません!」

 

しげしげと缶詰に描かれてる絵を見て驚くベルだが、ここに描かれてるキャラが現実に存在すると聞いて更に驚く

 

こんな種族見た事が無い、夢の国とは一体……

 

「仏様はやっぱり凄いですね、僕が見た事が無いモノをたくさん知っているんですね」

 

「ん~まあこれでも勇者にお告げをして導くって役目を担ってるから? か~な~り物知りなわけよ、実際」

 

「本当ですか!? じゃあもしかして! 僕の叔父さんの事とか詳しくわかっちゃうとか!?」

 

「ん~ンフフ~、確かに私はね、君の叔父さんの事は凄く大好きだしかなり詳しいけども……ここで彼の話をハッキリ教える事は出来ないの、ごめんね」

 

「えーそんな~……」

 

「ここで君に彼の事をじっくり詳しく話そうとするモンなら……多分この世界は、跡形も無く消滅しますです、はい」

 

「消滅!?」

 

初めて叔父に会った時、ベルはあまり彼について詳しく事が聞けずに別れてしまった。

 

せめて名前だけでも知りたいと願うベルであったが、それは下手したら世界の崩壊を招くとして、仏がやんわりと彼の頼みを断っていると……

 

そこへ偶然にも

 

 

 

 

 

「おお?」

 

フラリととある人物が向こうからやって来た。

 

赤髪細目の、どことなく胡散臭い雰囲気を醸し出すその人物は仏をみると歩み寄り

 

「え、もしかしてお前、仏か? えぇ!? お前こっち来てたんか!?」

「ん? おお!? おお!? おお!? おおおーん!?」

「いやいや何度見すんねん」

 

相手の方へ何度も首を捻って二度見どころか四度見ぐらいし終えると、仏はびっくりした様子で目を見開き

 

「ちょ! ロキじゃーん! なになに超久しぶりじゃーん! 何世紀ぶりだっけ!?」

「いや毎年忘年会で顔合わせるやろが、そういうボケいらんねん」

 

仏とベルの前に現れたのはオラリオでも屈指の名門ギルド、ロキ・ファミリアの主神のロキであった。

 

飄々として気取らない性格、中々の切れ者であり、意外と団員からの信頼は厚い。

 

胸がコンプレックスであり、貧乳・微乳を通り越して無乳と称される絶壁なので、そこを突かれるとかなり深刻なダメージを負うらしい。

 

天界にいた頃は退屈凌ぎに他の神々を扇動して殺し合いをさせていたりと、なにかと物騒な神だった。

 

オラリオに来てからは随分と丸くなったみたいだが……

 

「なんや仏、いつからこっち来てたんや?」

 

「えーだいぶ前にうっかりこっちに来ちゃってから、ちょくちょく遊びに来てた」

 

「はぁ? だったらウチに遊びに来いや、最近子供達がロクに相手してくれなくて退屈してんねん」

 

「いやお前がいるってのは聞いてたんだけどさ、仏も色々忙しかったのよーマジでー」

 

 

ヘラヘラ笑いながら小突いて来るロキに仏も笑い返しながらやや強めにはたき返し

 

それに対してロキは半分本気の強さで彼に肩パンを食らわす。

 

そんな男子中学生みたいなしょーもないやり取りをしているのを、仏の隣でキョトンとしているベルに気付いてすぐに彼の背中を手で押しながら

 

「あ、コレ、我が仏・ファミリアのエースです」

「違います!! ヘスティア・ファミリアのベル・クラネルです!」

「ああ、あのドチビの所の少年か、最近ちょくちょく名が知れてきた……」

 

仏の隣で慌てて否定するベルを見てロキはすぐに何者かと気付く。

 

ヘスティア・ファミリアに所属して僅か一カ月半でレベル2に昇格した期待のルーキー。

 

以前神々の間で二つ名を決める時に彼の事が議題に出た時は、ロキは彼がどうしてこんな短期間で成長したのかずっと怪しんでいた。もしかして禁止されている神の力を使ったのではないかと。

 

しかしそれを主神であるヘスティアを問い詰めても答えようとせず、更にはフラリとやって来ていた美の女神・フレイヤに話を書き乱されて有耶無耶にされてしまった苦い記憶があった。

 

(あん時のフレイヤは明らか普通やなかったな、こりゃまたいつもの病気やなあの色ボケ……)

 

まあだからといってこのベルという少年に対して若干の怪しさは持っていても、特に嫌悪感があるという訳では無いので、ロキはごく普通に対応する。

 

「で? もしかして最近忙しいっちゅうのは、この少年と遊んでたからか?」

「遊んでねぇよ! 私は仏として! ベル君を立派な勇者に導いてあげてんだよ!」

 

そんな事一切していない、むしろ面倒事ばかり押し付けているクセに自信満々に答える仏

 

だが勇者と聞いてロキは小首を傾げる。

 

「あぁん? 勇者を導くってお前確か別の世界でやってた筈やろ確か、確かヨシヒコとかいう……」

 

「ヨシヒコはヨシヒコ、ベル君はベル君でキチンと分けて指導してるんですー」

 

「いやいや、あっちはなんか、世界を滅ぼす魔王と戦ってるんやろ? そんなヨシヒコから目を離してドチビの所の少年の面倒見てるなんて、大丈夫かいな……」

 

ロキは前に仏から度々勇者ヨシヒコの話を酒の席で聞かされていた。

 

なんでも超が付くほどのおバカなのに、幾度も魔王を滅ぼし世界の危機を救っている勇者だと

 

そんな彼を導きお告げを下すという大役を担っているにも関わらず、ただの冒険者に過ぎないこの少年を目に掛けているのはどうなのだろうか……と、基本的にふざけた感じのロキでさえも真面目に心配する素振りを見せた。

 

「なんならウチが代わりにヨシヒコにお告げしたろか? 退屈しのぎになりそうやし」

「ダメよ~ダメダメ~ん!」

「うわ懐かし、再現度ひっく……」

 

一昔流行ったギャグを今更やるのかと、ロキが仏の下手くそな物真似に苦言を漏らすと、彼はビシッと彼女を指差し

 

「お前みたいな天界でやんちゃばかりして、他の神々に迷惑を掛けていた悪戯っ子に! ウチのヨシヒコを任せられる訳無いでしょーが!」

 

「え~、えーやん一回ぐらい。一度そのヨシヒコっちゅう男を見てみたいと思っとったし」

 

「ヨシヒコはダメ、その代わり、ヨシヒコの仲間の金髪ホクロなら許す」

 

「誰やん金髪ホクロって、そんな奴どうでもええわ

 

そのあだ名の時点で仏にとってはかなりどうでもいい存在なのであろう。

 

ロキさほど興味がなさそうにくあしらった。

 

「そうそう、さっきからずっと気になってたんやけど、お前がその両手に持ってるモンってもしかして……」

 

「あ、気付いちゃった? これ、夢の国で買って来たお土産」

 

「おぉマジか……夢の国行ってきたんか……ランド? シー?」

 

「ランド、シーはまた今度行く」

 

「ええなぁ……一回ここ抜け出して久しぶりに遊びに行こうかな……人魚の演奏会めっちゃ好きやねん」

 

「あのね、後もうちょっと経ったらランドとシーにも新しいエリアが出来るから、そん時に行った方が良い」

 

仏が持つ夢の国で持って帰って来た戦利品をずっと気になっていた様子のロキ。

 

ベルにはわからないが、どうやら神々の間では夢の国という存在は結構有名らしい……。

 

「じゃあこうして会えたし記念に、はいコレ、あげる」

「おおあんがとな、ん? なんやコレ?」

「夢の国せんべい!」

「おーええやん、酒のつまみになるわ」

 

ベルが貰った時とは別の形をした缶詰を仏から土産として渡されてロキは、えらい上機嫌な様子でそれをすぐに受け取った

 

そして仏はチャンスと言わんばかりにそっと彼女の方へ歩み寄る。

 

「あの……それでちょっとお願いんがあるんだけど、いい?」

「えぇ~お前からのお願いって絶対ロクなもんじゃないやん……一応聞くけどなに?」

「そちらのファミリアにその~……あれ」

 

大事そうに缶詰を抱えながらこちらを怪しむロキに対し、仏は何か言おうとするも途中でベルの方へ振り返り

 

「ベル君なんだっけ? 君が超好きな女の子の名前」

 

「ちょ! 待ってください仏様! まさかアイズさんの主神であるロキ様に直接……!」

 

「あ、そうそう、そのアイズさんって娘がいるって聞いたんすけど」

 

「はぁ~? 確かにウチの可愛いアイズたんは紛れもないロキ・ファミリアやけど、それがどないしたんや?」

 

嫌な予感を覚えたベルの口から出て来た名前を聞いて思い出して再度ロキに話しかける仏だが

 

その少女に対しては強い愛情を注いでいるロキはますます疑り深く細目を若干開けて見せた。

 

「まさかとは思うが……ロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンタインを、そこのヘスティア・ファミリアの少年と惹き合わせようとか企んでるんじゃないやろな?」

 

「……オッケー?」

 

「んー……100パー無理やね、ただでさえ可愛いウチの子を、余所のモン、ましてやドチビの所のモンに嫁に出す真似なんて絶対せぇへんわ」

 

察しの良いロキに思い切って聞いてみる仏だが、答えは案の定ノーであった

 

「仏も奥さんからファミリア同士のルールぐらい聞いとるやろ? 別々に所属しているファミリア同士で男女の関係になるのは基本的にご法度やねん」

 

仏から貰ったせんべい入りの缶詰を指でなぞりながら、この世界の先輩らしくロキはキチンと説明する。

 

「結婚したらどっちかが相手のファミリアに改宗しなきゃならんとか、二人の間に産まれた子供はどっちのファミリアになるとか、色々とめんどくさくなるから特例が無い限り許されんのや」

 

「よしじゃあ……ベル君とそちらのアイズちゃんって子を……仏・ファミリアに改宗させましょう」

 

「なんでやねん! どうしてそこでお前出てくんねん! 仏・ファミリアってなんや!」

 

どちらかにつかないといけなくなるのであれば、ここで第三者である自分が受け皿となろうと自信ありげに提案する仏だが、速攻で却下するロキ。事はそう単純ではないのだ。

 

「とにかく、ウチのお気に入りのアイズたんは一生ウチの下におるんや。だからそこの少年がどう足掻いてもこれからどんどん強くなっても、決してその恋は実らんから諦めとけ」

 

「え、なに? もう絶対に、なにがあっても無理な事は決定な訳?」

 

「せやで、アイズはウチのモンや」

 

「そっかぁ……」

 

友人が相手であろうと首を横に振ってキッパリと断るロキに対し、仏は素直に引き下がるかと思いきや

 

「……じゃあ、アイズちゃん以外ならワンチャンある?」

 

「ほ、仏様ぁ!?」

 

 

まさかの妥協を試みたのだ、これにはベルも思わず叫んだ声が裏返ってしまう。

 

そんなの無理に決まっているし、そもそも目的が根本的にズレていると、ベルが急いで仏に指摘しようとするが……

 

ロキはしばし「う~ん……」と険しい表情を浮かべながらしばし考え込んだ後

 

 

 

 

「ベートならええで、最近勝手な行動ばっかしとるってリヴェリアも言ってたし、お灸を据えるという形でしばらくそっちに預けても構わへんよ」

「よっし!」

「いやいやいや! お二方で勝手に話を進めないで下さい!」

 

とりあえずコイツなら預けてやってもいいかととロキまでもが妥協して来たのだ。

 

困惑するベルをよそに拳を握ってガッツポーズを取る仏であった。

 

 

 

 

 

「ちなみに男やけど、その少年はそっちもいけるん?」

「えぇぇぇぇぇー!?」

「うーん……いける!」

「なんで仏様が答えるんですか! 無理ですからね!?」

 

勝手に答える仏に慌てて止めに入るベル。

 

結局この話は無かった事となり、アイズ・ヴァレンタインとの距離を縮める為には、まだまだ障害が多いと落胆するベルであった。

 

次回、ベート、兄貴と遭遇。

 

 

 

 

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