聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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十二説 アイズ、金髪ホクロと遭遇

いつもの様にオラリオを歩いている仏

 

今日も今日、やっぱり今日もお散歩しながらベルと仲良く街中を歩いていた。

 

「叔父さんがボーン!、ミノタウルス達がドーン! 壁もドーン! そして僕も感激してドドーン! いやもう本当に凄くて強くてカッコ良くて!」

 

「ベル君ベル君ベルく~ん! その話、仏前の前にも聞いたよー! なんかもう説明の仕方も雑だよー! 擬音ばっかでよくわかんないよー! てかなんだろう、喋り方がもう完全に私になってる!」

 

ダンジョンで遭遇した叔父の半端ない無双っぷりが今だ脳裏に焼き付いて離れない様子で興奮しているベルに

 

仏は雄叫びを上げながら、いい加減しつこいから仏ビームで叔父の記憶を飛ばしてやろうか考えていると……

 

ふと道の真ん中を歩いている途中でベルは向かいから来た人物に気付いてハッとした表情で足を止めた。

 

「ってあぁぁぁ!! ア、ア、ア! アーッ!」

「なになに急にどうしたん? 前に会ったワン公が兄貴との思い出を作った時の様な叫び声を上げてからに」

 

具体的な例えをしながら仏は急に慌て始めたベルに眉をひそめて心配そうに見つめていると、彼の方へツカツカと歩いて来る軽装の金髪少女が

 

「……こんにちわ」

「ア、ア、ア、アイズさぁぁぁん!!!」

「うるせ! ベル君超うっせ! え、アイズさん?」

 

感情が着薄そうな印象が窺えるどこかお人形の様な少女の方から挨拶されたベルが、顔を赤面させて突然の雄叫び。

 

その大声に耳元を押さえながら仏が顔をしかめつつも、彼が言った名前にふと眉間にしわを寄せる。

 

「アイズさんってもしかして、ベル君がずっとぞっこんラブでいつかチューしたいと思っている絶賛片思い中のアイズさん?」

 

「あぁぁぁぁぁ!! 仏様本人の! 本人の前で言わないで下さい!!」

 

「……」

 

思わずポロッとバラしてしまいそうになった仏の口を慌ててベルが抑える中

 

仏の言い方があまりにも独特的だったので、当人の少女には上手く伝わっていなかったのか、全くの無反応。

 

彼女はアイズ・ヴァレンシュタイン

 

ロキ・ファミリアに所属するレベル6のヒューマンで、ベルにとって命の恩人であり目標、そして想い人である。

 

物静かで感情をあまり表に出さないため、その美貌も相まって神秘的な印象を周りにもたれているが、実はやや天然である。

 

「剣姫」という二つ名が付いてるだけあって、表情を変えずにモンスターを容赦なく斬り捨てていくその美しい姿は正に絵になる光景なのだとか

 

実際ベルもミノタウルスに襲われてる時に助けてくれた彼女の圧倒的な強さと美貌を見たおかげで、あっさりと一目惚れしてしまっている。

 

「どどどどどうしましょう仏様……! まさかいきなり向こうからやって来るなんて……僕まだ心の準備が……!」

 

「落ち着けベル君、ちょっと私に彼女を見せて」

 

こちらに近づいて小声で混乱しているベルをよそに、仏は前々から彼がどんな人物が好きなのか興味を持っていた。

 

だからこそこうして現れたアイズに仏は目を細めながらジーッとチェックする。

 

「なるほどねぇ~、これがベル君の……あ~、いや~……」

「?」

「ハハハ……ちょ、これはちょっと……ハードル高過ぎじゃないかなぁ……」

 

急に見つめられてキョトンとしているアイズを眺め続けながら、そのレベルの高い容姿に思わず笑ってしまう仏。

 

「いや~こんだけ綺麗な子だとは思わなかったわ私、正直私から見ればまだ子供だけど、これ将来半端ねぇ事になるぜオイ……紐じゃ勝負にならねぇわ」

 

「あの……どちら様でしょうか?」

 

「あ、申し遅れました、わたくし、仏という神であります、ウチのベル君がえー、お世話になってます」

 

「ウチの?」

 

ベルは確か女神ヘスティアの眷属だった気がするのだが……いつの間に改宗したのだろうとアイズが疑問に思っていると、仏はニコニコしながら話を続ける。

 

「主な仕事は魔王を倒しに冒険している勇者にお告げを下し、世界を平和に導く事でございます」

 

「魔王……勇者……」

 

「そんないかにも神っぽい仕事をしている私がですね、手塩にかけて育成中のベル君はこれからもきっとよりよく成長し、立派な男になると保証いたしますので、えー何卒彼の事を暖かく見守って下されば幸いです、はい」

 

自己PRをしつつベルの事も忘れずに、より彼女に注目して貰う為に彼を担ぎ上げる仏。

 

我ながら良い仕事をしたなと仏は彼の方へ振り返って親指を立てると、ベルは声には出さないが「ありがとうございます!」と返事するかのように小さくガッツポーズする。

 

しかしアイズはというとそれよりもふと仏の口から出て来た単語が気になる様子で……

 

「魔王とか勇者って、おとぎ話じゃなくて本当に実在するんですか?」

 

「え、いやまあ確かにこの世界ではわからないけど、別の世界では存在するけど……あ~仏としてはそっちじゃなくてベル君の成長性に期待して欲しいという部分に食いついて欲しいと思ってたんだけど……」

 

「その勇者は、強いんですか?」

 

「やべぇもうそっちに興味津々になっちゃったよこの子、ベル君の事なんかすっかり興味ナッシングだよ……」

 

我ながら失敗してしまったと仏はベルの方へ振り返り申し訳ないと両手を合わせて軽く頭を下げると、ベルは声には出さないが「なにやってるんですか!」とちょっと泣きそうな顔を浮かべている。

 

そしてアイズは二人がアイコンタクトを交わしてるのも気にせずに自ら話を切り出す。

 

「勇者と呼ばれる存在であれば、それは私よりも強い存在なんでしょうか?」

 

「んーまあ、どっちが強いか弱いかなんかは些細な事だとは私は思うけども……とりあえず私が導いている勇者ヨシヒコは、バカだけどやる時はやる男だね、うん」

 

「ヨシヒコ……そんな名前聞いた事無い」

 

「そらまあこっちには来れないからねヨッ君は、今頃魔王を倒す為に別世界で頑張ってるだろうし」

 

「……」

 

聞いた事のない名前をポツリとアイズが呟いていると、仏は「んー」と顎に手を当てしばし思考を巡らせると

 

「あ、そんなに気になるならさ、会わせてあげようか? 勇者ヨシヒコに」

 

「えぇ!? そんな事出来るんですか仏様!」

 

「ま~アウトかセーフかだと、どっちかというとアウトなんだけども、これ以上ベル君じゃなくてヨシヒコの方に興味を持たれたら私としてもね、あまり喜ばしくない事ではありますしね」

 

そんな気軽に会わせられるのかとビックリするベルに苦笑いを浮かべると、仏はアイズの方へと再度振り返って

 

「こっからだと3分ぐらいしか向こうにいられないけど、行く?」

「……なんだか面白そうだから行ってみます」

「あ、割とノリ良いんだね君って、そういうの好きよ私」

 

素っ気なく断るかと思ったら意外にも乗っかって来たので、そんなアイズにヘラヘラ笑いながら仏は手の平をかざすと

 

「てことではいルーラァァァァァ!!」

「アイズさん!?」

 

仏の叫びと共に独特なSEが流れると、ベルの目の前でアイズはパッと姿を消してしまった。

 

「仏様! もしかしてアイズさんを!」

「うん飛ばした、これロキには言わないでね、マジでぶっ殺されると思うから」

 

口元に人差し指を当てて内緒にしてねという仕草をする仏に、ベルは心配そうにアイズが消えた場所をただただ見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

そしてあっさりと仏によって飛ばされてしまったアイズはというと

 

「……」

「……」

 

一瞬にして全く見覚えのない豪華そうな屋敷の中で突っ立っていた

 

そしていきなり現れた彼女の前には、鼻の下にホクロを付けた金髪の男が一人胡坐を掻いてキョトンとした様子で、爪切りを手に持ったままこっちを見上げている

 

「……え、なに? 誰?」

「……こんにちわ」

「あ、はいこんにちわ」

 

突然の来客に戸惑いつつも男は律儀に頭を軽く下げたアイズに会釈を返すと、眉間にしわを寄せまじまじと彼女を見つめながら

 

「……いやだから、誰? 怖いんだけど」

 

「仏という方から、ここに勇者ヨシヒコがいると聞いたんですが……」

「仏? え、ひょっとしてアイツ絡み? よくわかんないけど今ヨシヒコここにいないよ?」

「?」

「いやいや、首を傾げられてもなぁ……俺の方が首を傾げる展開だよコレ?」

 

勇者ヨシヒコはここにはいないと答える男に対しアイズはどういう事だと無言で首を傾げると、彼は苦笑しながら爪切りで足の爪をパチンと切る

 

「この街にある酒場で、他の仲間二人と一緒に飲み行ってるから、行って来ればいいじゃん」

 

「無理、ここにはあまり長居出来ないと言われている」

 

「あ~そっすか~……あ、ちなみに俺は別にハブられてここにいる訳じゃないからね? 最近日差しが強かったせいでちょっと気分が悪いから、先に帰ってこうして休んでるだけだから誤解しないでね」

 

「……」

 

「おいおいおいおい、なんだコレ、これはちょっと、俺一人だけじゃ荷が重いって」

 

冗談っぽく言ってみたのだが相手が全くの無反応だったので、気まずい雰囲気に耐え切れずにメレブは困惑しながらまたパチンと足の爪を切る

 

「なんでずっと何も考えてなさそうな無表情なの? 足の爪切る所ガン見されると切りにくいんだけど」

 

「あなたは勇者ヨシヒコの、仲間?」

 

「あ、はいそうです、ヨシヒコとは古い付き合いで色んな所を冒険している魔法使いです」

 

「魔王を倒す為に旅してるって本当?」

 

「うんまあ、そうっすね、魔王を倒すのが我々勇者一行の目的なんで」

 

「……」

 

あっけらかんとした感じでアイズの問いかけに正直に答えながら、男は右足の爪を切り終えて左足にチェンジして爪切りを再開する。

 

「まあ今はこうして拠点で休んでいるけど、明日になったらまた街から出て魔王の手掛かりを探す旅行くの、そういうモンなの勇者一行って」

 

「……勇者は強い?」

 

「ん、どうした? いきなり脈絡もないバカっぽい質問して来てからに、お兄さんますます困惑」

 

「私は小さい頃からただずっと強くなる事だけを考えて生きて来た、だから私はどんな方法でもいいから強さを手に入れたい」

 

「おい急に語り出したぞこの子……」

 

いきなりなに言ってんだコイツといった感じで呆然とする男に対し、アイズは再度言葉を投げかける。

 

「だからこそ教えて欲しい、勇者一行と呼ばれるあなた達がどれ程の経験を積んで魔王と戦う力を得たのかを」

 

「いやそんな事急に言われてもなぁ……あ、てかおたく、レベルいくつぐらい?」

 

「レベルは6」

 

「ひっく! なにそれひっく! マジ低すぎだなオイ!」

 

「!?」

 

仰天して驚く男の反応にアイズは初めて感情を表すかのように目をカッと見開いた。

 

レベル6といえばオラリオでもそうそういない高レベルの筈なのだが……

 

「いやいやいや! 6っておま! ごめんそれはちょっと低すぎだわー! 魔王以前に最初のダンジョンで苦戦する段階じゃん! もうちょっと頑張ろうよ!」

 

「そんなに……?」

 

「いや~だって、レベル6って、最初の街の周りをグルグル徘徊してればすぐにそんぐらいになれるモンだぜ?」

 

「!?」

 

なんと勇者一行にとってレベル6など安々と通過できる地点であるらしい、自分が血を流しながら積み上げてきた努力よりも、確実に強くなれる方法を彼等は知っているというのだろうか……

 

「そ、それじゃああなたのレベルは?」

「んーまあ、最近バニルっていう結構強めなボスキャラ倒したし……30前半はいってるんじゃない?」

「!?」

「あ、ヨシヒコのレベルは40超えてると思う」

「!?」

「でもまあ、魔王に挑むには大体みんな……60以上はあるかな?」

「!?」

「さっきからなんなの「!?」って、驚いてるのはわかるんだけど「!?」意外の驚き方無いの?」

 

なんという事だ、勇者と呼ばれる存在にもなると自分の10倍以上の実力を持っているというのか……

 

様々な試練乗り越え自分でも強くなったと自負していたアイズであったが、その自信はあっけなく崩れ去る。

 

ガックリ肩を落として傷心気味の彼女に、男は「だ、大丈夫?」と困惑しつつ怪訝な表情を浮かべていると

 

「そんな強くなりたいなら、超手っ取り早くレベルアップできる方法教えてあげようか?」

「あるの……?」

「食いついた……ちょい待ってなさい、すぐ戻るから」

 

そう言って男は立ち上がると屋敷の何処かへと歩いて行った。

 

そして一人取り残されて大人しく待っているアイズだが、突然頭の中で声が

 

『はーい仏でーす! 聞こえますかー!?』

「聞こえます」

『じゃあ、そろそろ時間なんでね、今からこっちに戻すから』

「延長お願いします」

『延長って……お客さん! ウチそういうシステム無いんすよ! 3分コースまでですから! てかそんなのどこで覚えたん!?』

 

頭の中で聞こえる声の主だと仏だと気付きながら、アイズは真顔でもうちょっと待ってほしいとお願い。

 

しかし融通の利かない仏は今すぐに彼女を元の世界に引き戻そうとする、だがそんなギリギリのタイミングで

 

「よーし我ながら上手く描けましたー、んーでももうちょっと愛嬌あった方が良かったかなー?」

 

どこかへ行っていた男が、両手に紙を持ってまじまじと見てブツブツ呟きながら、アイズの所へ戻って来た。

 

「はいコレ、その魔物倒せばいっぱい経験値貰えるから、強いし厄介だしすぐ逃げるけど、まあ頑張って」

「コレは……」

「そいつをレベル1の時に倒した場合だと、まあ12ぐらい上がるのかなー? だからレベルアップしたければそいつ倒すのが、こっちではもはやお約束なんすよ」

「!?」

「また出た「!?」、好きだねー「!?」」

 

男がヒョイと差し出した紙を受け取ってアイズがそこに描かれたイラストを眺めようとしたその瞬間

 

『はいお客さんお帰りですルーラァァァァ!!!』

 

頭の中で仏の叫び声が聞こえた瞬間、アイズはパッとその場から一瞬で消えてしまった。

 

いきなり現れた少女がいきなり目の前で消えた、そんな現象を体験した男はというと「は~?」と訳が分からんと首を傾げ

 

「俺、疲れてんのかなぁ……」

「メレブさんただいま戻りました」

「あ、おかえりヨシヒコ」

「メレブさん、酔いを治す呪文とか持ってませんか? 女神が飲み過ぎて屋敷の前で盛大に吐いてます」

「あぁ、ほっときなさい」

 

アイズの存在を蓄積された疲労から見えてしまった幻覚だったのだろうかなと片付けて

 

金髪ホクロの男ことメレブは、丁度そのタイミングで帰って来た勇者ヨシヒコを迎えるのであった。

 

 

 

 

 

そして一方で、仏とベルの前でちょっとした異世界体験をし終えて来たアイズが何事も無かったかのようにパッと戻って来た。

 

「あ、アイズさんが戻って来ましたよ!」

「ただいま」

「あ、おかえりなさい……」

 

右手に一枚の紙を握ったまま戻って来たアイズに、早速仏は歩み寄って

 

「ヨシヒコどうだった、元気してた?」

「勇者には会えなかったけど、代わりにその仲間だという魔法使いに出会いました……」

「勇者様の仲間に会えたんですか!? 凄い!」

「あ、それハズレだわ、ごめんもうちょっと正確にヨシヒコの所に飛ばしてあげればよかった」

「ハズレなんですか!?」

「いえ……」

 

勇者の仲間に会って来たらしいアイズがちょっと羨ましいと思うベルだが、仏曰くその人物はハズレらしい

 

しかしアイズは気にしていない様子でそんなハズレの魔法使いが紙に描いてくれたある魔物のイラストをジーッと見つめる。

 

 

 

 

それは妙にドロドロしてテカテカした、ヌメヌメの銀色の物体、そして何故か笑顔を浮かべている

 

「コレを倒せば私は更に強く……」

「な、なんですかアイズさんそれ……なんか物凄く可愛らしい……生き物ですか?」

「ごめん、ちょっとダンジョン行ってこのモンスター探してくる」

「ええー!?」

 

困惑して詳しく聞きた気なベルをよそに、迷い無く一人で駆けて行ってしまうアイズであった

 

目指すは銀色のヌメヌメモンスター

 

「仏様、僕はどうしたら!」

「迷うな! 追え! なんか知らんけど追ってお近づきになれ!」

「わかりました!」

 

あっという間に行ってしまったアイズに、自分はどうすればと困っているベルに仏がチャンスだと一喝。

 

するとすぐに彼はアイズが行った方向へと駆け出して物凄い速さで行ってしまう。

 

「いやー青春だなー」

 

見えなくなった若い男女を見送りながら、仏は我ながら良い仕事したなと一人で満足するのであった。

 

後々この行いが、大きく裏目に出てしまうというのも知らずに

 

 

次回、仏、対決する。

 

 

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